『 彼女は何故その箱を開けたのか 』
。
「いや、うん。シースルーとか流行ってるのかも知れないけどさ」
部屋の真ん中に、それはあった。
部屋の違和感なんか何のその。
まるで当たり前のように鎮座していた。
「……開けないよ?」
それはちっちゃい箱。
中に見たこともないちょっと可愛い生物の入った、箱。
「そ、そんな瞳で見つめられても、開けてあげないからね」
つぶらな瞳はまるで子猫みたい。
可愛い。
すごく可愛いんだ。
今すぐに箱から出してあげたいくらい、可愛いんだけど……。
「その文字が、ちょっとねぇ」
その生き物の胸元に、大きく書かれた『わざわい』の文字。
明らかに開けちゃいけない雰囲気。
「……きゅう」
そんな私の心を知ってか知らずか、鳴きながら可愛い生物は首を傾げた。
あああああ、パンドラさんもこうして開けてしまったんだろうか。
この一見ミスチョイスな透明な箱が、この潤んだ瞳が……。
『 彼女は何故その箱を開けたのか 』