『 彼女は何故その箱を開けたのか 』

「いや、うん。シースルーとか流行ってるのかも知れないけどさ」

部屋の真ん中に、それはあった。
部屋の違和感なんか何のその。
まるで当たり前のように鎮座していた。

「……開けないよ?」

それはちっちゃい箱。
中に見たこともないちょっと可愛い生物の入った、箱。

「そ、そんな瞳で見つめられても、開けてあげないからね」

つぶらな瞳はまるで子猫みたい。
可愛い。
すごく可愛いんだ。
今すぐに箱から出してあげたいくらい、可愛いんだけど……。

「その文字が、ちょっとねぇ」

その生き物の胸元に、大きく書かれた『わざわい』の文字。
明らかに開けちゃいけない雰囲気。

「……きゅう」

そんな私の心を知ってか知らずか、鳴きながら可愛い生物は首を傾げた。

あああああ、パンドラさんもこうして開けてしまったんだろうか。
この一見ミスチョイスな透明な箱が、この潤んだ瞳が……。

『 彼女は何故その箱を開けたのか 』

『 彼女は何故その箱を開けたのか 』

極短小説。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-11-01

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