最後の花

最後の花

あの花火大会の日。

君と私は、同じ空見上げて。

永遠に一緒だと思っていた。

思っていたんだ。

でも、そう思っていたのは、私だけだった。

「あ、始まってんぞ!」
バーーンという音と共に隣を歩く幼馴染の顔が明るく照らされる。
ふと視線をあげると、大きな花が、夜空一面に咲いていた。
始めて見る花火はとても美しく、けれど、数秒で儚く散ってしまう。
らしくもなく、押していた自転車を停めて見惚れてしまった。
様々な形が夜空を彩り、消えて行く。
掴めそうな気がして手を伸ばすが、遥か上空で消えて行く花が、どうしてか切なかった。
「花火って下から見ても丸いって本当だったんだなぁ。」
隣の彼は、興奮を抑えきれない様子で、押していた自転車のベルを指で弄ってチリチリ鳴らしている。
「………本当だな。」
私も彼も、空から視線を外すことができなくて、暫く「すげー」だの「綺麗」だの感想を口にしながら立ち止まっていた。
「あ、早く行こうぜ。じいちゃんスイカ用意してるって言ってたぞ。」
「マジか。」
スイカ、スイカ♪と歌いながら二人自転車に跨る。
私が走り出すと、鳴り続いている花火の音に紛れて、微かに彼の声が聞こえた。
「ん?何か言った?」
自転車を停め、振り返ると、彼は、自転車に跨ったまま前籠のバックの中からポーチを引っ張り出した。
「……………………」
彼が何やら喋っているが、距離もあり、先ほどより一段と大きくなった花火の音にかき消されてきまい、聞こえない。
「ん?何て?」
問い返すも、彼の声は聞こえない。
「……………悠?」
なんとなく嫌な予感がして、慌てて自転車を方向転換させ、ペダルを踏み込もうとしたその時。
カッと、光が照った。
あまりの眩しさに、思わず目を瞑る。
花火じゃない、この光は………。
花火の音よりも爆音が鳴り響き、それに負けない程の悲鳴がこだまする。
バーン、バン、と不規則な花火の音が再び響く。
恐る恐る目を開けると、まさに文字通り、目と鼻の先。
悠の自転車の前輪が不自然に私の目線の高さにある。
そこから数メートル先には、破れたガードレールとそこにすっぽりハマり、ヘッドライトが潰れてしまっている大型のトラック。
そこからここまで暖かい水溜りがジワジワと迫ってくる。
一瞬ガソリンかと思って警戒したが、違った。
それは、街頭の無いこの道でもハッキリわかる緋色。
不規則に咲いては散る花火に儚く照らされたそれ、そう、丁度、トラックの下。
紅の水溜りの源が何なのか。
この液体は何なのだろう。
私には、理解できなかった。
ただ、儚い花火の不規則な破裂音が嫌に耳にこびりついた。


眩しい光と遠くから聞こえる声に目を覚ましたのは、日が登りきった頃だった。
階段を降りて角を曲がったところの父の自室で、今日も寝巻きのままの父が、大好きなSF映画を大音量で見ていた。
迷彩服を着て銃を装備した外国人と、あからさまに着ぐるみなエイリアンが戦っていた。
「おぅ、やっと起きたか。」
「あぁ、おはよう………」
父は顔だけこちらに向けると、人の良さそうな顔をへにゃりと歪めた。
私はというとかなり朝には弱いので、(昼だけど)ぶっきらぼうな返事を返す。
「どうした?寝汗でぐっしょりじゃないか。クーラーつけといたんだけど、暑かったか?」
父は一時停止を押すと、椅子を回転させてこちらを向いた。
縁なし眼鏡の奥の真っ黒な瞳が私をまっすぐ見据える。
私は、心配されるのがなんだか気恥ずかしくて、視線をそらして、ボソリと呟いた。
「お父さんが大音量でこんな映画を見てたからだろ………。」
あーぁ、とため息をつくが、父は小首を傾げるだけだ。
「変な夢をみたんだよ。」
と答えると、どんな夢だった?と超SF展開を期待してくるし、正直面倒くさい。
それに、言えるハズないじゃないか。
悠が死ぬ夢、なんて。
でも、なんだか何かを忘れている。
昨日の煮物をレンジで温めながら、コーヒーを淹れる父を横目に、うんうんと唸る。
忘れているというよりも、欠けている気がする。
パズルのピースが足りないような。
そうして、形を留めていないモヤモヤと抱えて大切な日曜日を消化してしまった。


「悠ーー。」
「なんだよ?」
「なぁゆーう。」
「だからなんだっつーの!さっきから!」
いつもの朝。なのに、昨日の夢がどうしても引っかかって、悠がどこかに行ってしまいそうで、話題もないのにただただ名前を呼んでいた。
……悠は、何処かに行ったり、しない…よな?
ないない。なに考えてんだ私、と、軽く頭を小突く。
昨日の夢がいくらリアルで気になるのはわかるけど、夢、夢夢夢夢、ただの夢なんだから。
私の脳が記憶とかをゴチャゴチャにしてみせただけ。
気にすることないよな。
どうせすぐ忘れるーー……。
「あれ……?」
頭の中で抜けていたピースがカチリと音をたててはまった気がした。
「どうしたんだよ?今日鈴何か変じゃね?」
悠は歩みを止め、私のおデコに手を添える。
「いや、大丈夫だけどーー……。なぁ、悠。」
「んー?」
悠は私の額に手を当てたまま、顎を引いて目を合わせる。
私は自然と見上げる形になり、何時の間にか差がついてしまった身長が少し寂しい。
「私も悠も、花火みたことないよな?」
私がそう問うと、悠は僅かに眉を寄せた…ような気がしたが、すぐに笑顔になって、
「あぁ、明日の花火大会な!こんなど田舎に花火とか、テンション上がるよなー。」
と、言いながらぐるぐる踊り(なのか…?)だした。
「明日、5時半集合な!」
華麗にかなり意味不明な決めポーズをとり、はにかむ。
「はぁ?5時半とかまだ明るいじゃん。そんな早く行ってどうすんの?」
悠はにししと笑って、
「ふっふーん、甘いな、鈴!花火は待っちゃくれないぜ!!」
バッとポーズ変更。
「はぁ?」
今日なんか、異常にテンション高くないか?
花火が上がるからってこんな………。
そう、なんか、こう…………。
違和感がある………。
「りーん!きいてんのかよ?」
「あーはいはい、5時半だろ!りょーかいっ」
「何怒ってんだよー」
「怒ってない!じゃあ後でな!」
訝しげな顔をする悠を放置して、一人角を曲がる。
「そっちじゃないだろー」
後方から声が飛んでくる。
ちらりと振り返ると、少し遠くに立っている悠が、不思議そうな顔をしていた。
「今日はこっちから帰るんだよ。」
なんとなく……この前の夢がどうしても気になって、悠と一緒に居辛い感じがあった。
悠は、未だ不思議そうにふーん…と不思議そうな顔をしたが、すぐに右手を上げた。
「気をつけて帰れよ。」
そういった時の、悠の表情……声色もだが、落ち着いていて、低く、躊躇うような言い方だった。
しかし私はさほど気にも留めなかったのだ。
悠は、わかってたのかもしれない。


悠は、きっと、何かをわかっていたのだ。
それとも……知っていたのか。
濃い紺の地面。
ボコボコの地面。
紅黒い水に濡れた腕が視界に入る。
誰の手?
一体、何が起きて--。
「鈴!鈴!!」
遥か遠くに聞こえる、自分を呼ぶ声。
駆け寄ってくる人影。
誰?誰??
見えない。
わからない。
私は、何も--。


目が覚めると、いつもの自分の部屋。
日は昇りきっており、眩しい光が部屋を埋め尽くしている。
あれ、今日は…何日?
そう、昨日悠と喋りながら帰ったのが月曜日だから……今日は火曜日……。
!?
「遅刻ッ!?」
何でこんな真昼間まで起こしてくれなかったの!?
慌てて体を起こすと、遠くでボーン、バーンという破裂音や、ガラガラと何かが崩れる音が聞こえた。
もしかして、またお父さんはまた、SFを見ててそれで――。
「勘弁しろよなー…」
若干呆れながらも、シャツを引っ掛け、早足で階段を下りる。
「お父さん!どうして起こしてくれなかったんだよ!」
リボンを止めながら曲がり角の向こうをひょっこり除くと、父の部屋の扉からチカッチカッと光が漏れていた。
「お父さんッ!」
「うわっ鈴か。びっくりしたー。」
さほど吃驚してなさそうな風に落ち着いて一時停止を押すと、これまたゆっくり椅子を回転させて向き直る。
その姿に、何故か既視感を抱いてしまう。
あれ、どこで見たんだっけ。
よく見ると、一昨日と同じ映画を見ていて、一時停止も同じ場面で止まっている。
――そんなことって、ありえるのだろうか。
父は私の姿を見て、ぷっと吹き出した。
「な、何笑ってんだよ!こっちはお陰で遅刻…」
あ、まただ。
縁なし眼鏡の奥の真っ黒な瞳に見つめられる。
前に全く同じ様なことがあった気がする。
それも最近――。
くつくつと笑っていた父は、ハッハッハと声をあげて笑い出した。
「何を寝ぼけてるのかは知らんが、今日は日曜日だぞ。」
「…………は?」
父はそれはそれは愉快そうに目に涙を溜めていたが、私には何がなんだかわからない。
だって、昨日は月曜で、授業も受けたし、悠と一緒に帰って―――……。
あれ?
帰って…家に着いたっけ。
何か忘れてる気がして、でも思い出せなくて、悶々と唸る私をみて、笑いが収まってきた父は一言。
「夢でも見たんじゃないか。」
そうだろうか。
あんなリアルな夢があるだろうか。
確か、悠と一緒に帰って、花火の約束をして…そうだ、私は違う道から帰って……。
歩道に…トラックが突っ込んできて………。
その先は思い出せない……でも、必死に私の名前を呼ぶ声は、耳にこびりついて離れない。
「やけに生々しい夢だな………。」
ぽっかりと抜けたように思い出せない。
霞がかった頭を覚まそうと、キッチンへ。
牛乳を一気飲みしていると、父がひょっこり顔を出した。
私の朝昼兼用御飯をレンジで温めながら、コーヒーを淹れはじめる。
こぽこぽとリズミカルな音を奏でながら、段々といい匂いがしてくる。
私の正面に腰掛けた父は、淹れたてのコーヒーを啜りながら、ふぅ、と息を吐いた。
「そんな夢、僕はしょっちゅう見るよ。」
急に会話をぶり返されて、一瞬なんの話か、と目を丸くしてしまった。
「母さんだよ。目の前で段々弱っていって、死んでいくのを見てるしかなかったんだ。母さんから流れ出した血に溺れて、為す術がなかった。」
父は、自嘲するように、鼻で笑った。
母は私が小さい頃、交通事故でなくなった。
大型のトラックと、私たち親子三人が乗った車が正面衝突した。
原因は、トラックの故障。
子会社で整備が不十分だったのだとか。
今、社長は刑務所に入ってるはずだけど。
まだ幼稚園前の私を、助手席の母が覆うように抱き、父も私も殆ど怪我がなかったのにも関わらず、母は死んでしまった。
私は何が起きているのかさっぱりで動かなくなった母の腕の中で泣きじゃくるばかりだったらしく、父は車や瓦礫の破片に挟まれ、身動きひとつ取れずに、ただ血を失っていく母を見ているしかなかったんだとか。
チーンという軽快な音で、父は静かに立ち上がった。
電子レンジから煮物を取り出し、私の前に置く。
ふわり、と醤油の匂いがした。
「いただきます。」
手を合わせて、大根を口に運ぶ。
辛いくらい、味が染みこんでいた。
もぐもぐと黙って食べる私をみて、コーヒーのカップを置いた父は、静かに言った。
「お前も、どこかでその時のことを覚えているのかも知れない。夢は、脳が記憶の処理で見るものらしいぞ。記憶にないことは見ないらしいからな。」
「お父さんはSFの見すぎ。」
はは、そうだな。と笑って、父は空になったマグカップを流し台に置く。
記憶にないことは見ない…かぁ。
そういえば昨日もこんな話………。
「あっ」
そうか、夢の中で話した内容か。
でも、だとすると、引っかかることがある。
「お父さん!」
続きを見に行こうとしていた父を呼び止める。
「うん?」
父はドアノブに手を掛けたまま、振り返る。
「私って、花火見たことないよな?」
父はあーそうだな、と頷き、
「だから、明日初めて見るんだろう?」
と笑った。
僕も楽しみだよ、と。
「そっ…か。ありがと。」
うん?どういたしまして。と不思議そうな顔をして父は扉を閉めた。
キッチンに一人残された私は、箸を置いた。
カチャリという音だけが、不気味すぎるほど静まり返った部屋に響いた。
何かが、繋がった気がする。
月曜日に見たこともない花火をみる夢を見た。
そこでは悠が死に、目が覚めると日曜だった。
次に、私が下校途中に(恐らく)事故にあった。
目が覚めると、日曜だった。
足りなかったピースが、空白にぴったりはまった。
「でも、そんなことって………。」
ありえるのだろうか。
答えは、悠だけが知っているような気がした。


「どうしたんだよ鈴、だんまりなんて。具合悪いのか?」
「いや……。」
こうして悠と月曜日の夕暮れを歩くのも三回目……。
相変わらず悠はいつも通りで。
いつも通り過ぎて、不安になる。
「あ……。」
前回私が曲がった曲がり角。
やはり悠と居辛い感じはあったけど、今回は角の向こうの空気が異質に感じられて。
「…………鈴。」
低く落ちついた、私を呼ぶ声に、びくりと体が跳ねた。
悠から発せられたとは思えないほど、強張っていて、それでいて、酷く冷たい声だ。
「悠?」
「なにやってんだ?そっちじゃないだろ?ホラ、早く帰って準備しとかねーと。女ってのは身支度に時間かかるんだろ?」
そう言っていつもと同じ笑顔を見せる悠が、今は必死に取り繕ってるようにしか見えなくて。
どうしてだろう。
ホラ、と差し出された手と悠の顔を交互に見つめる。
「んー?」
悠は私の顔を覗きこんで不思議そうな顔をした。
私は悠の視線から逃れるように俯いた。
どうして、こんなに遠くに感じるんだろう。
悠は私にいつも通りだし、距離だって目と鼻の先だ。
なんでだろう。どうしてだろう。
私は…………………。
どうして、こんなに悲しいんだろう。
そう思うと目頭がどんどん熱くなっていく。
顔を覗きこんでいる悠にばれないように、前髪で隠すが、悠は異変に気付いたようで、私の手をぎゅっと握った。
「おい、本当に大丈夫かよ!?さっきから様子はおかしいし、顔色だって………やっぱり、今日はやめといた方が………!」
悠は頬や額に手をあて、心配そうに私をじっと見つめる。
その様子に私は涙が零れそうになって顔を背ける。
「そう、かも。………ごめん。帰って休む。」
そういうのが精一杯だった。
「わかった、送っていくよ。」
悠は私の手を引いて、歩き出す。
しかし、家に着くまで、会話は一言もなかった。


薄々は感じ取っていた。
でも、私と花火を見に行かなければもしかしたら……なんて思ったのだ。
結局、運命を変えることなど出来なかったのだけど。
仕事帰りの父から告げられたのは、悠の事故死。
あぁ、これで私はまた、繰り返すのだろう。
その時、背筋に嫌な寒気が走った。
もし、繰り返さなかったら?
その可能性を考えていたのだろうか。
何故繰り返すかはわからない。
ならば、もし、今日眠りについて、そのまま火曜日が来てしまったら?
悠がいないまま、私は、私は…………。
「うわぁぁぁぁぁああぁぁぁあああぁぁぁぁぁあぁぁぁああぁぁぁぁぁあッ!!!」
父がいるのも忘れ、涙と鼻水で顔がぐちゃぐちゃになるのを気にも留めず、ただ叫びながら部屋を飛び出し、階段を上る。
私の部屋に飛び込み、窓を開けると、もうすぐ夏だというのに、ひやりとした風が頬を撫でる。
今日は私が寝ていたせいで、洗濯物が掛かりっぱなしのベランダに素足で出る。
足裏からの冷感に、全身の細胞が震える。
私が生きている証を、全身が教えてくれる。
あぁ、あぁ。
私はなんて馬鹿なんだろう。
私はなんて愚かなんだろう。
私はなんて卑怯者なのだろう。
私はなんて……臆病なのだろう。
「さよなら、世界。」
住宅の光が少ない田舎の夜景を眺めながら、堕ちていく。
どこまでも。どこまでも。


あぁ、そういえば、そんなこともあったなぁ。
お父さんとよく遊園地に行ったっけ。
お父さんについて行くままジェットコースターに乗って、トラウマになったりしたなぁ。
最初は料理もあんまり美味しくなかったし、家事だってまともには出来なかったけど、段々上手くなっていって、今はもう立派な主夫だ。
毎日起こしてくれたし、毎週SF一緒にみたし、毎日仕事の合間に帰ってきては「元気かー。」なんて言って、御飯を作って掃除をして、洗濯をして、また会社に戻るんだ。
仕事、家事、育児。
どれも大変なはずだ。
趣味にだって没頭したいだろうに。
父は、いつだって、笑顔だった。
そして、あいつとはいつだって一緒に居た。
一緒に幼稚園に通っていた頃は毎日飽きもせずに喧嘩したし。
私の家でおやつをぶちまけてお父さんにこっぴどく叱られっけ。
あの時のあいつの泣きそうな顔といったら、見物だったなぁ。
喧嘩した後は必ず泣いて謝ってきたし、なんだかんだでおやつも最後には半分こしてくれたし、なんだかんだ文句言いながらも買い物についてきてくれたし、私の誕生日には必ずプレゼントくれたし、毎日笑顔だったし、毎日迎えにくるし、毎日一緒に御飯食べるし、毎日毎日毎日毎日………。
毎日、あいつがいた。私の毎日は、あいつだった。
私の世界は、お父さんとあいつだけだった。
あいつがいないと私は、私は…………。
今よりもっとやんちゃだった悠が森に探検とか言って出かけたのにこっそりついていって、私だけ迷子になったりなんてこともあったなぁ。
その時からだっけ、悠が無茶をしなくなったのは。
でも、根っこのところはあいつのまま、何も変わっていないな、と思う。
悠は昔だって今だって、私の傍にいてくれる。
私は、そんな悠が大好きだったのだ。
……あぁ、そうか、思い出した。
ずっと一緒にいることに慣れて、すっかり忘れていたのだ。
私は、悠がこの世の何よりも大切で、大好きで。
口にしたことはなかったけど、幼い私はそれをちゃんと知っていたのに。
忘れてしまったなんて。馬鹿みたいな話。
あぁでも、そうか。
悠と約束したっけ。
結婚して、一生一緒にいよう、なんて。
小さい子供がよくする結婚のお約束。
もう、お互いに覚えてなんかなかったけど。
あぁ、でも、満更でもなかったのに。
一生一緒に?悠が言い出したくせに。
うそつき。
どこか遠くで、ぐしゃりと鈍い音がした。


見覚えのある後姿と、悠は真剣な面持ちで話していた。
話の内容は断片的にしか聞き取れない。
悠?誰と何を話しているの?
声は出ない。
ただ、私は遠く離れたところから見守っていた。
--つら…かも知れ…いけど……
--はい…鈴もうす…す感づいて……と思い…す
私?私がなんて…?
--飛び…りなんて…………相当…らかった……ろう……
相手は後姿しか見えず、その表情は伺えない。
--でも………するには………なこと……です
--あたしも……に……てもらうことは……じゃなかったけど………じょうぶ………
表情が見えないはずの彼女が、微笑んだ気がした。


眩い光に誘われて目を開けると、やはり自分の部屋。
日付を確認してみても、日曜日で間違いない。
ほっと息を吐いて、父の元へ。
もう何度目かの父の煮物を食べる。
やはり同じ味付け。
でも、やっぱり、美味しいな。
何度食べても、何日連続でも、お父さんの愛が詰まってる御飯は、なんて美味しいんだろう。
もう、涙は枯れていた。
泣き疲れたような気がする。


「今日は5時半集合な!絶対だぞ!!」
「ハイハイ。ってか、絶対明るいだろ。」
またいつものように約束して、いつものように集合する。
バーン、パン、バーーンと不規則な花火を見た後、悠の祖父の家に着く前に悠か私が轢かれ、日曜の朝に戻る。
あぁ、またトラックか。
なんだっていつもトラックは私の大切な人を奪ってしまうんだ。


何回目だっけ、考えるのも億劫だ。
また約束の場所で、悠を待つ。
確信があった。
このタイムリープは、悠が起こしているものだ。
でも、なんで。
私を助けようとしているのはわかるけど。
どうして、自分の死から逃れようとしないのか。
「おぉ、なんだ。珍しく早いな!」
てってって、と軽快な足音とサンダルの踵が地面に擦れる音を引き連れてやってきた悠は、眉尻を下げて、すまーんと右手を上げた。
「……まぁ、まだ五時半じゃないし………。」
ふいっと視線を逸らすと、あんだよーと不服そうに顔を覗いてきた。
「お前、最近ずっと暗くね?前だって同じ反応したよな?そんなに遅れてきたの怒ってるのかよ?」
眉間に皺を寄せて、腕を組む。
だって、もう疲れたんだよ。
大好きな人が目の前で死ぬのも、知らないところで死ぬのも、自分が死んで悲しむお前を見るのも。
「そ、そんなことないけど………。」
「ホラ、無理してる。………あのなぁ、お前、段々疲れてきてんだろ?」
「そんなこと……………え?」
前?段々?
目を見開き、顔を上げると、思っていたより至近距離に、悠の顔があった。
その表情は見たこともない真剣で影があって、何を考えてるのか全くわからない顔で……。
その迫力にぞっとした。
見開いた目は焦点をあわせられなくなってきて、半開きの口の中がカラカラに乾いてきた。
「……………………やっぱりな。」
はぁ~~っと長い溜息をつき、右手でガシガシと頭を掻き毟る。
「ゆ、悠………………?」
「お前、違う帰り道で帰って轢かれた鈴だよな?ベランダから飛び降りた鈴だよな?」
その瞳の奥は見えない。
これほど、悠がわからなかったことはなかった。
わからないというのは、なんて恐ろしいんだろう。
「なん…で。」
どうして。
私は必死に隠したのに。
悠が何をしてるのかわからないけど、どうしてもどちらかが死ぬ運命を変えようと、歯を食いしばっているものだと思っていたから。
悠には悠の、考えがあると思ってたから。
「なんでって………お前。」
じっと見つめる悠の後ろで、ひゅ~~と間抜けな音が響く。
バーーーン、バン、ドーーン、バン。
花火が始まる。
花火に目もくれない悠の瞳には、私しか映らない。
「悠、どうして、繰り返してるんだ?」
沈黙に耐えかねた私は、恐る恐る口を開く。
目を合わせるのが辛くて、俯く。
カラカラに乾いた喉からは、乾いた声が発せられる。
「どうしてって?」
聞き返す悠の真意は読めない。
瞳は、いつもの輝きは失われ、くぐもって見えた。
「だって、死を回避しようとしてるんなら、まだわかる!でも、お前は………ッ!」
知らず、声が大きくなる。
空一体に響く破裂音に負けないように、その儚い輝きに負けないように、声を張り上げる。
「私を庇う為にわざと死んでるようにしか思えないんだよッ!!」
そんなの………見せられる私の身にもなってくれよ………っ。
枯れたハズの涙が、頬を伝う。
俯いたままなので、簡単にポロポロと落ちた涙が地面を濡らす。
瞳いっぱいに涙が溜まっているのであろう、自分の足がぐにゃりと歪む。
瞬きするたびにポロポロと落ちる涙を袖でこする。
どんなに声を噛み殺して歯を食いしばっても、過呼吸になり喉の奥から嗚咽が漏れる。
どうして。
どうして?
私はずっと君と……。
悠と、一緒に………居たかったのに。
永遠に一緒だと……信じて疑わなかったのに!
どうして……ッ。
「生きる、のを諦め、たみ、たいに……どうして、そう、なんか、い、もッ………。」
言いたいことは山ほどあるのに。
聞きたいことは山ほどあるのに。
嗚咽が優先され、声にならない。
喉の奥から、う、ぐ…と声が漏れる。
はぁぁ~~と、また悠が溜息を吐いて、私の頭にポンと手のひらを乗せる。
顔を上げると、先ほどとは打って変わって悲しげな微笑を浮かべている。
「薄々どころじゃなかったってか……。」
また、ふぅ……と、息を吐き出す。
「泣くなよ…………無理させちまったな……。」
ポンポン、と私の頭を、本当に申し訳なさそうに撫でる悠が、私より無理しているように見えて。
そう、私以上に悠が気を張ってたんだ。
私以上に、辛い思いをしてきたんだ。
私が惹かれようが飛び降りようが、きっと後で悠は死んでいたんだ。
知らない場所で、いつものように。
何度も死んでしまう経験なんて、身近な人が死ぬ以上に辛いことだって、私は知ってるから。
その何倍もの経験をしてきた悠は一体、どんな思いをしてきただろう。
どんなに辛かったことだろう。
「ど、して……そ、こまで……っ」
また涙が溢れてきて、袖で瞼を擦る。
擦りすぎて、目の端がじんと痛い。
それすら気にならず、瞼から溢れる涙も止まらない。
あまりの嗚咽に、過呼吸が続き、息が苦しい。
「だ、だ、だ、っ……って……っ!わ、たしがっ……わたし、わ、わたっ……ふ…っえぇ……う…………っ」
どこからこんなに涙が出てくるのか。
体中の水分が干からびてしまうんじゃないかと思うくらい、どんどん涙は溢れる。
頭も体も熱い。
ただ、涙で濡れた袖が、夜風に撫でられ、熱を感じさせなかった。
そうするうちに、段々と悠の眉尻が下がり、泣きそうな顔になってくる。
そうだ、辛いのは私じゃない。
悠の辛さに比べたら、何倍もマシだ。
悠は、思いっきり泣いたのだろうか。
泣かせてあげないと。
悠。悠。悠。
悠に、悠に!
だから、私は泣き止まないと。
悠に、辛かったねって、笑ってあげないと。
慰めてあげないと。
なのに、なのに……。
いつまで泣いてんだ、私。
何がそんなに悲しくて。
何が……。
あぁ、そうか。
悠。悠。
悠が……。
気付いていたんだ。私も。
頭に乗せられた手に、一瞬力が入ったが、すぐにそれは、力なく私の頭を滑り落ちた。
顔を上げると、俯いた悠は、口を真一文字に硬く結び、目を伏せていた。
我慢してる。
私のために。
私なんかのために。


「……少しは落ち着いた?」
ポンポンと頭を優しく叩く悠の瞳は優しかった。
不規則な破裂音と同時にほのかに悠の横顔が照らされる。
「……うん。」
目尻はヒリヒリするし、まだ涙が流れないわけではないけど。
心はやけに穏やかだった。
まだ、混乱はしていたけど。
「バーン。」
悠の声に視線をあげると、遠くの花火にじっと見入っている悠が。
その視線はもっと遠くを見据えてる気がして、急に不安になる。
「花火。」
「え?」
悠はまだ夜空を見上げていて、花火の音にかき消されそうなほど小さく呟いた。
「一緒に見れて、良かったな。」
「―――ッ…」
なんて顔して…笑ってんだよ……。
何で、私の目を見ないんだよ……っ!
「……はぁ。」
面倒そうに頭を搔く仕草とは裏腹に、どこか諦めてるような…切なげに溜息をつく。
「なぁ、鈴。」
今までずっと目を逸らしていた悠は、意を決したように私の瞳を覗き込む。
その瞬間、心臓が跳ね上がる。
こんな、こんな綺麗な瞳をしていただろうか。
こんなに、優しく見つめてきていたのだろうか。
こんなに、こんなに………。
悲しい目を、悠がしたことなどあっただろうか……。
いや、私は、知っている気がする。
私は……いつ、見たんだろうか。
自然と、暖かいものが頬を伝った。
「え?あ、あれ?お、おかしいな……?」
涙は枯れたはずではなかったのか。
なんでもない、と笑顔を作るが、堰が切れたかのように、溢れた涙は止まらない。
「…………鈴。」
悠は、ぎゅうぅっと力強く、私を抱きしめた。
ふわりと香る悠の匂い。
昔より、少し臭くなったなぁ。
なんて。
そんなことを思うだけでも涙が溢れて。
「……ごめん、ごめんな。」
悠は……泣いているのだろうか。
「そんなつもりじゃなかったんだ。鈴に辛い思いさせるつもりは……泣かせるつもりなんてなかったんだっ……」
「悠……。」
抱きしめる手に力が加わる。
あぁ、知らない間にこんなに力強くなってたのか。
頼もしいとさえ、感じた。
「俺は……どうしても、お前を救いたかったんだ、お前の」
悠は一旦言葉を切った。
「お前の、母親のように……」
え……。
ん、なん、で。
口がパクパク動くも、言葉は紡ぎ出せないし、抱きしめられている形の今、お互いに表情を伺うことは出来ない。
「不自然だと思わなかったか?あんな大きな事故があったのに、運転席の父親と、母親に抱きしめられていたお前はほぼ無傷だったなんて。」
確かに、それは、私が一番最初に父から話を聞いたときに感じた違和感だった。
でも、実際私も父も生きているわけだし、お前だけでも生きていてくれてよかったよ。と笑う父になんだか納得してしまったのだ。
「それは、お前の母親が、お前と父親が死なないように何度も何度もその事故の瞬間を繰り返したからだ。」
え――…。
その言葉を理解するのに、私は一体何秒かかっただろう。
悠は、静かに、抱きしめる力を緩め、私の顔を伺った。
数分にも感じられる沈黙の後、私の口から出たのは、なんで、の三文字だけだった。
「それは……お前たちを愛していたからだよ。」
悠は目を伏せた。
何かを迷っているようだった。
「俺も…………。」
小さく呟く。
唇は殆ど動いていない。
花火はクライマックスになっていた。
ババン、バンババン。
バババババババババーーーン。
花火が何発も何発も連続的に発射され、遠くから微かに歓声が聞こえる。
悠の呟きは、かき消されてしまう。
遥か上空で放たれる花。
一瞬で散ってしまう。
儚くて、切なくて、何よりも愛おしくて、何よりも美しい。
あぁ、母のようだ。
何よりも大切なものを守るため、散り行くための一瞬を繰り返した母。
そして、悠。
悠は言葉にならない声を絞りだしていた。
「俺も………っ鈴をっ……………。」
―――守りたかったんだ……。
うん。
知ってる。
知ってた。
あなたが誰よりも私を心配して、守って、愛してくれたこと。
私も悠が、大好き。
大好きだった。
でも、それでも。
私はもう、彼と共には居れない。
わかってるんだ。
彼は、私を守るため、何度も自分の死を繰り返して、繰り返して。
そうして「今」に辿り着いた。
私の我儘で彼の努力を無下にできない。
私が守られてばっかりの卑怯者じゃなかったら、その手をとって他の道を探せたのに。
私は卑怯者だ。最低だ。
あぁ、やはり、私は。
酷く臆病者だ。
「鈴、鈴。もう、俺を追いかけるのはやめてくれ、俺は、俺は、お前を助けたいのに。」
悠は、目に溜めた涙を流しまいと、見られまいと、しゃくり上げる体を歯を食いしばって抑える。
悠も、大概馬鹿だなぁ。
泣いてもいいのに。
私が泣かせてしまっているのに。
「もう、俺を追いかけないでくれ!……どうせ、どちらかは助からないんだ……。」
うん。うん。うん。
どうして、そんなことはないと、他にも方法があると言えないんだ?
私は、私は…強くなんて、なかったから。
大切な人に守られた檻の中で傷を受けなかっただけ。
外の檻は、傷だらけだったというのに。
「悠、悠、嫌だ、い、や……ずっと、一緒に……って、や、やく、そく……したの、にっ……!」
あぁ、馬鹿。
どうして最後まで我儘ばっかり。
「鈴、俺、お前が死ぬところはもう見たくないんだ………自分勝手で、ごめんな……」
違う。
何で、私はボロボロと涙を流して、悠は涙を堪えて謝るんだ。
逆だろ。逆だろう?
追いかけられないなら、にっこり笑って、ありがとうって。ごめんなさいって。
笑えよ。抱きしめてやれよ。縋るなよ。鈴。
「俺が、死んでしまうのは決まってることだ。変えられないことだ。」
違う。違う。
私が死ねばお前は助かるのに。
「でも、最後に、鈴に、伝えたいことがあるんだ。」
最後。今度こそ、私は助かり、悠は死ぬ。
そう、わかっている。わかってる。知ってる。
だから、やめてくれ。聞きたくない。
「俺……ずっと。」
やめて、やめて。
それを聞いてしまうと、もう追いかけられなくなる。
「鈴のこと…すk「悠、愛してる。」
瞬間、悠の目が見開かれる。
微妙に逸らしていた視線も、ばちりと合った。
その、素っ頓狂な顔。子供の頃みたいだ。
もう、戻れない、宝石のようなあの日々。
あの時、伝えきれなかった、愛を。
叫びたい。叫ぼう。叫ぶしか、できない。今の、私には、もう。
「愛してる、愛してる、好きじゃ足りない大好きじゃ足りないずっとずっと小さい時からずっとずっと悠が、悠を、悠だけを―-ッ!」
ふわり。
暖かさに包まれる。
「うん。」
耳元で、悠の声が聞こえた。
「俺も、ずーーっと、鈴だけを愛してる。」
暖かいものが、頬を伝って。
「これからも、ずっと、ずーーっと。」


あぁ、またここか。
私は二つの人影からは見えないほど遠くにいて。
表情の読めない後姿と、傍らに佇む悠。
――――もう、大丈夫なの?
聞き覚えのある声が呟いた。
――――えぇ、俺は、大丈夫、です。
今度は、はっきりと聞こえた。
――――そっか。なら、鈴も大丈夫ね。
――――えぇ…だといいんですけど。
――――大丈夫よ。なんたって、私の……
背中を向けていたはずの彼女と、目が合った気がした。
彼女は、清楚で素敵な笑顔を浮かべ、とても優しい目で。
愛おしいものをみるように、笑った。
――――私たちの自慢の娘だもの。


遠くから微かに聞こえる慌しい足音に目を開けると、私は見覚えのない真っ白な部屋で横になっていた。
綺麗に整えられた純白のシーツは、私の寝汗で少し濡れていた。
体を起こし、見回すと、そこはどうやら病院の病室のようで。
傍らにはつい先ほどまで父がいたのであろう、皺の寄った座布団が置かれた椅子。
枕元に置かれた電波時計は、火曜日の昼前を指している。
あぁ、帰ってきたんだ。
やっと、火曜日がやってきたんだ。
足音が近付いてきて、病室の扉が開かれる。
珍しくスーツをきっちりと着込んだ父が、ダラダラと顎を伝う汗を真っ白なタオルで拭いながら、扉を閉める。
「あぁ、鈴。起きてたのか。」
右手に紙袋を提げた父は、空いた左手でパタパタと自身に風を送っている。
「どうだ?調子は。大丈夫か?」
父が珍しくそんな心配をするものだから、私は小首を傾げる。
どうして私は病院にいて、父はスーツで。
そんな疑問を巡らしていると、父はふ、と真剣な顔になり、落ち着いて聞けよ、と前置きして重々しく口を開いた。
「お前と悠くんは、昨日、花火大会に行く途中に事故にあったんだ。」
「…………うん。」
私はなんとなく父が言わんとしているとこを理解してしまって、現実なのだと、悠がいないのだと、実感してしまう。
だから。
「それで…悠くんは………。」
言わないで。
「…………………………それ、私の制服だろ。」
父の言葉の続きを聞くのを拒絶して、私は話題を先に進める。
父が傍らに置いた紙袋を指差す。
きっと、葬式のだ。
「……あぁ。」
悠の、葬式だ。
「そう、か……。」
それ以上言葉が続かなくて、病室に静寂が訪れる。
何も言葉にならなくて、何を言ったらいいのかもわからない。
「…………………鈴。」
父は、心配そうに私の横顔を覗き込む。
そして、静かに立ち上がると、何も言わずに出て行った。
本当に、優しい人だ。
その瞬間、ぽた、と、純白のシーツにしみが落ちる。
それは一滴に留まらず、何度も、何度も、何度も。
ぽたぽたぽたぽたぽた…。
最後にはシーツを丸ごとびしょ濡れにしてしまいそうなほど溢れてきて、止まらない。
あぁ、駄目だ。泣くな。
悠が助けてくれた命を、悠が愛してくれた私を、涙で濡らしたくなんてない。
でも、でも、溢れてくる。
悠が、いない。会えない。もう二度と。
悲しくないはずがない。
愛していた。大好きだった。一緒にいたい。ずっとそばに。それだけだったのに。
泣くな。悠が、悲しむ。
折角、悠は、自分を犠牲にしてまで、助けたのに。
意味がなくなってしまう。泣くな。泣くな。泣くな。
でも、大好きだったんだ。ずっと、ずっと。
だから、今日だけ、今だけは…。

最後の花

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
文弥と申します。

拙い文章の上、支離滅裂な内容で、大変読みにくく申し訳ございません。
意味不明な点も多々あるとは存じますが、次回作もお付き合いいただけたらこれ以上の幸せはございません。

本当に、ありがとうございました。

最後の花

繰り返せたら、あなたは、誰に会いたいですか? 何を伝えたいですか? 俺が死んでしまうのは決まってることだけど、最後に。 最後に、ひとつだけ、君に--。 死を約束された少年と、 幼馴染の死に魘される少女。 二人は繰り返す。 死が、二人を別つとしても。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-01-27

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