神様が舞い降りた日

神様が舞い降りた日

お風呂に入ってパジャマに着替えた五歳の娘のサキが楽しそうに話し始めた。

「ママ、サキ今日神様に会ったんだよ」

母親はそう…とサキをベッドに寝かせながら優しく囁いた。

「神様がね、良い子は天国に連れて行ってあげるって言ったんだよ。サキも天国に連れて行って欲しいから神様にお願いしようと思ったんだけど…だけど…」

母親はサキの髪をそっと撫でる。

「天国に行ったらパパに会えるし、サキもすごくパパに会いたかったけど、でもサキが天国に行ったらママ一人ぼっちになるでしょ?だからサキ神様にお願いするのやめたの」

母親は泣きそうになりながら、娘の髪を撫で続けた。心地良い眠りの誘いにに落ちる寸前の娘に、ずっと一緒にいようね、と母親は呟いた。
母親は娘が今日の出来事を夢だったんだと思って欲しいとそう願った。
テレビでは今日の事件をニュースキャスターが伝えていた。

今日昼過ぎの市民公園に刃物を持った中年の男が突然現れ、意味不明な言葉を叫びながら周りにいた人々を切りつけるという事件が発生しました。遠足でこの市民公園を訪れていた近くの幼稚園児も事件に巻き込まれましたが幸いケガ人はいませんでした。男は私は神だ、良い子は天国に連れて行ってあげると声をかけましたが、声をかけられた少女は、私は悪い子だから天国に行けないと犯人に告げ、切りつけられずに済んだ模様です。
犯人の意味不明な発言に、警察は犯人の精神鑑定を早急に行う予定です。

神様が舞い降りた日

神様が舞い降りた日

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-29

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