みたらし団子
わたしはふと思います
日本というものは
世界そのものなのではないのかと
桜の香りを身にまとい
新緑の葵をくぐり
茜の雲を追いかけ
雪の重さを踏みしめる
暑さの幸せ
寒さの幸せ
全てが暖かい
いいところの独り占めである
対象に
なんとも情けのない大人達は
自分よりも目上の機嫌をとり
その場で唇を噛んで
ぼそりと後で吐露するのである
「あぁ、なんて窮屈な世界なのか」と
子供達はそんな大人たちを見て
続けるのです
「僕たちにこの世界は狭すぎる」と
くちばかりでなにもできない
持て囃されて調子に乗った子供達と
憂鬱にぶら下がった大人たちは
同じ電車に揺られて
家へ
職場へ向かう
美しい景色や四季を
見つめることもなく
ただただ無心で
世界というものは狭く広い
私の知っている世界がすべてなら良いのに
暗いことに背を向けて
ただスルメのような世界を噛み締めるのである。
未来を生きる子供達
大人は子供に過去を教え未来を見せる
子供は過去を見て今を生きている
大人たちは子供達に未来を残そうとする
子供たちは残された未来を拾いながら
昔描いた自分の未来を思い出す
大人たちは子供達に手本を残しながら思い出す
昔描いた自分の未来を思い出す
大人たちは「未来を生きる子供達」に自分たちの全てを託す
けれど
子供たちは今を生きている
そして
大人だって今を生きている
すきま
久しぶりに学校に来た彼女は
一年ぶりに会う
季節の匂いも連れてきた
随分と冷たくなった彼女のブレザーと
随分と冷たくなった私の心の間に
すきま風があらあらしく通る
そこにはなにも残らない
みたらし団子