思うところ ふたつめ 20141028

平瀬 透

毎朝同じ駅で、ある女性を私は見かける。
彼女はボロボロな洋服を着ており、靴は履かず裸足で体はすっかりやせ細り、駅と駅との間の歩道にある案内板の裏にへたりと座りこんでいて、いつもなにかを見ているようだった。

そのなにかは全くわからない。彼女の目の前にあるものかもしれないし、ずっと遠くのものを見ているかもしれない。
でも、彼女は確かに「なにか」を見ていた。横顔をちらりと見ると、そのカラスのような黒く鋭い目は、ガラスの板に穴が空くほどひらけた空の方にある「なにか」を凝視していた。

彼女のその姿は、毎日朝のうちしか見れず、お昼過ぎ位にはもう何処かへと行ってしまうのだった。

彼女のその姿を見た多くの人々は、様々な目線で彼女を見る。「何だか可哀そう」と思う人もいれば、「いつも同じ場所にいて、気持ちが悪い」と思う人もいる。いずれにしても、多くの人は、マイナスな視線を彼女に向けている。
それでも彼女はそんなことは気にも留めず、同じ所で、同じ時間に、同じ姿勢をして、彼女にしか見えない「なにか」をしっかりと見つめていた。


私はどうしても彼女があんなにも見つめているものがなんなのか気になり、帰り際に彼女がいつもいるあの案内板の裏にまわり、その景観を覗いてみた。
だがやはり、なにかおかしいといったものはなく、そこには少し古ぼけたカラオケ店や居酒屋だとかがあり、バスやタクシーが停まっては走るだけだった。


次の朝、また同じ場所に彼女はいた。やはり私には全く見えない「なにか」を見ている。

その隣では、国民の平等とか自由とかをマイク片手に得意顔で話している政治家のおじさんがいた。

そこからでも彼女の姿が見えるはずなのに、そのおじさんは、さも何も見えないように振る舞いながら、また正義だとか調子の良いことをおんなじ調子で言っていた。

貴女には一体、何が見えているの。

思うところ ふたつめ 20141028

思うところ ふたつめ 20141028

何時も見かける人について思うところを書きました。彼女はもしかしたら、「なにも」見ていないのかもしれませんね。 例のごとく段落わけがうまくいっていませんが、どうかよろしくお願いいたします。 20141028 脱字とかを修正、ちょっと加筆とかしました。 20141030 若干の修正、加筆をしました

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
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