とある一学生の災難

 「これで、よし」
ゴールデンウィークが終わろうとする夜、明日時間割をみて、準備をしていた。
今年は、いつも後回しにしてしまう宿題を、ゴールデンウィーク初日に片付け、残りの連休を思い切り遊んだ。
恐らく、これほど楽しいゴールデンウィークは、無いだろうな…楽しかった連休を回想する。
例えば…一昨日にやった草野球のスイングを真似してみる。
すると、机の上に立てて置いた通学用鞄が、床に落ち、中身が散乱してしまった。
現代文・数学・英語・日本史・化学と散乱した教科書をすべて拾う。
しかし、床には入れた覚えのない400字詰め原稿用紙が綴じられていたものが落ちていた。
それを見た途端、脳裏に浮かんだある光景。
 ゴールデンウィーク初日。連休には十分過ぎる程の課題が出ていた。でも、国語の宿題は、てっきりないと思っていた。
実は、課題が出ており作文を書くようにと現代文の先生が言っていたことを。
提出期限は、ゴールデンウィーク明けの最初の授業。
つまり…明日。しかも、1時間目。
素直に、「忘れました」と名乗り出るべきか…
しかし、その先生は生徒や若い先生達から"湯沸かし器”と恐れられている年輩の先生だ。
まぁ、名乗り出たところで、怒られることは間違いから、今から仕上げることにした。
 しかしだ…ゲームやパソコンで夜更かしをしていた為、時計は3時前を指していた。なので、凄く眠い。
それでも、眠たい目を擦り、欠伸を噛み殺し、途中で眠りかけたりもしたが、何とか書き上げた。
 夜は明けて、5時前を指していた。このままでは眠いので、2時間程仮眠をとることにした。
 その行為が裏目に出てしまった。
2時間寝て7時に起きるつもりが、倍の4時間寝てしまい、起きたのは9時前。
既に、ホームルームが始まっている時間だった。
慌てて制服へと着替え、鞄を持ち、家を飛び出した。
全力で自転車を漕ぎ、学校に着いたのは、1時間目の最中だった。ガラっと扉を開け、
「おはようございます」
「おっ、ようやく来たか。遅刻だと言う事は分かっているな。理由は?」
先生が尋ねる。まだ怒ってないな。
仮に、ここで「宿題をしていました」なんて言ったら、逆鱗に触れることになりそうなので、
「いやー少し、病み上がりで」
とっさにそう嘘を吐いた。しかし、
「そうだ。宿題はどうした?いくら、病み上がりとはいえ、やって来ていないとは言わせないぞ」
「う…はい。勿論」
無駄な抵抗はせず、素直に従うのがよい。そう考えて、宿題である原稿用紙を渡した。
「馬鹿者!」
先生は、その作文に目をやった瞬間。雷が落ちた。
「お前は、先生を舐めているようだな。字が解読出来ない、こんなの作文と呼べるわけ無いだろ!書き直せ!」

とある一学生の災難

ごくごくありふれたミスですよね。
気をつけているつもりが、どこか抜けていたってことはよくあるはずですよね。

とある一学生の災難

見習い物書きが送る掌編小説第1弾。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-26

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