贈られてきた自分

はじめまして。
勉強の合間にふと思いついたまだ案の段階なので、細かくは書いていませんが、もしかしたら続くかもしれません。

プロローグ

暗くじめじめとした室内。床一面には液体で敷かれた(あか)絨毯(じゅうたん)
その上に生気を亡くし、手足や頭など一部失くなった人形がいくつも捨てられている。
錆びた鉄のにおいが充満しているその中で、彼だけは薄い笑みを浮かべて繰り返す。
「可哀そうに、可愛そうに。可哀そうに、可愛そうに。」
まるで何かに取り憑かれたかのように呟き続ける。
そして手を止めた。
「ああ、そっくりだ。」
歪な形の作品を見ながら男は言う。
「美しい材料はあの子を再現できた。」
優しく触れ、愛しそうに人差し指でゆっくりとなぞる。
「そうだ、ここに花でも足して明日にでもあの子に届けよう。」

にやり。

心底、幸せそうに笑った。

1.お向かいさん

高校に入学して2ヶ月が過ぎ、桜も夏色に変わる時期になった。
部活動をしていない私は自称“帰宅部”。六時頃、学校帰りにスーパーの袋を揺らしながら鼻歌を歌って歩いていた。
高校生になり、とにかくあの地を離れたくて親に銀行に振り込んでもらっているお金を少しずつ使って生活をする一人暮らしを始めたのだ。
とは言っても。田舎から田舎に移っただけ、通学中の風景はほとんど変わらない。畑と山ばかり。私が住んでいる場所は割と家が密集しているが、都会ほどではない。
しかもお隣さんがかなり古い木造の空き家ときた。
そして昼も夜も怖い雰囲気のそれを目印に曲がった。
すると家の前に這うような体制で人(?)が倒れているのが見えた。
そっと近づくと、縦に緑のラインが入った黒いジャージ、黒の生地に白い文字で“睡眠”とかかれたTシャツにボサボサの頭をした男性だった。この人全体的に黒いな。
「う……」
よかった、生きてた。
「あの、大丈夫ですか?」
重たそうに頭を動かしてこっちを見た。細めな黒縁メガネ。かなり濃い隈の眠たそうな目でゆっくりと答えた。
「お腹、空いた。」

とりあえず私の家に上げてレトルトカレーをご馳走した。それを無言で食べ終わると、 長い足を組みながらインスタントコーヒーを少し飲んで喋り出した。低すぎず、甘く優しい声色。でもなぜだろう。笑顔がすごく嘘くさい。
「ありがとう、助かったよ。一週間ぶりのまともな食事だった。」
「まともって言っても温めただけですけどね……仕事が忙しいんですか?」
「まあ、ずっと張り込んでたからね。」
張り込んでたってことは、格好はダサいけれど刑事さんだろうか。
「君、今僕の格好ダサいとか思ったでしょ。」
「え、何でわかったんで……あ。」
ぽろっと言ってしまってから慌てて口を押さえたが、向こうは口元だけ苦笑いしていた。
そして名前(北沢涼(きたざわりょう))、歳(27歳)、職業(探偵)、好きな食べ物(パンケーキ)を教えてくれた。お向かいに住んでいることも判明した。「先生と呼んでくれても構わないよ?」なんてニヤニヤしながら言われた。
「君の名前は?」
でた。初対面の会話で一番嫌なやつ。
からになったカップを置いて、今度は腕を組んだ。
「教えたくないです。」
「何で?」
いや、何でって言われても。
ものすごく恥ずかしいから。この名前で何度からかわれたことか。
「言わなきゃ駄目ですか。」
「どんな名前でも驚かないから。」
妙に静かになってしまった空気に溶け込むような声量でうつむきながら呟いた。
南條同炉椎(なんじょうどろしー)……です」
「……ご、ごめん。もう一回。」
「だから、ドロシーです!」
バンっとテーブルを強く叩いた手が痛い。逆ギレみたいな声が出てしまった。
「えっと……オズのなんちゃらみたいで可愛い、ね……。日本人だよね?」
「日本人ですよ。だから嫌だったんです!」
座り直すと、北沢さん____いや、先生は「古風な名前が恥ずかしいとかだと思ったらそっちだったか」と一人でぶつぶつ言っていた。
「病院とかじゃ『どうろ、しい、さん?』とか呼ばれますよ。」
「それはそれは。」
ははっと乾いた笑いを返された。もう穴があったら入りたい。埋まりたい。

結局、一時間くらい話をしてから先生は帰って行った。何か困ったことがあればおいでよと言ってくれた。
それから、お腹が空いたらまたうちに来るとも。

2.“なま”

そんな出来事から早一週間。いつものように学校から帰ると、玄関先に『なま』という機械的な文字が添えられたダンボールが置いてあった。
一体何ことなのかと小首を傾げつつ、丁寧に紙とガムテープをはがす。
ぺりぺりぺり、ぺり。
端まで全て取ると、重なっている蓋を開く。
何かに乗っている封筒を手に取った瞬間、その何かを見てしまった。
「____…… !!」

花で飾られた“なま”首は自分と同じ顔をしていた。


封筒には大きく殴り書きで『愛するドロシーちゃんへ』と書かれていた。

贈られてきた自分

キラキラネームってどうなんでしょうね。つけた親からすると可愛いのかもしれませんが、社会に出た時に大変そうだと思っているんですけど……偏見でしょうか?

贈られてきた自分

黒縁眼鏡、僕、長身男性。ポニーテール、泣きぼくろ、黒タイツ女子高生。 二人はお向かいさん。キラキラネーム。 以上のことが気になる方はぜひ。

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • 青年向け
更新日
登録日
2014-10-21

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  1. プロローグ
  2. 1.お向かいさん
  3. 2.“なま”