月を見ていた
 どこかの物陰に潜んで
 ひとりぼっちで笑っていた
 太陽を嫌い 水を拒み
 背中を曲げて俯いて
 日に堂々と立つ者を
 それでも心で嘲った

 世界のなかで
 自分が
 自分だけが
 いちばんきれいだと思っていた

 いつか蜜蜂がやってきて
 月明かりも 星屑も
 おなじ 太陽の光であると知った

 それから何も見なくなった
 見ることなどできなかった
 日輪達は楽しげに
 こっちへ来いよと手招いた
 
 だが動こうにも根は深く
 日はあまりにもまぶしくて

 明くる日花は枯れていた
 醜く 惨めな亡骸を
 子供が踏み散らして行った

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-20

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