花
月を見ていた
どこかの物陰に潜んで
ひとりぼっちで笑っていた
太陽を嫌い 水を拒み
背中を曲げて俯いて
日に堂々と立つ者を
それでも心で嘲った
世界のなかで
自分が
自分だけが
いちばんきれいだと思っていた
いつか蜜蜂がやってきて
月明かりも 星屑も
おなじ 太陽の光であると知った
それから何も見なくなった
見ることなどできなかった
日輪達は楽しげに
こっちへ来いよと手招いた
だが動こうにも根は深く
日はあまりにもまぶしくて
明くる日花は枯れていた
醜く 惨めな亡骸を
子供が踏み散らして行った
花