蠢き
胎児は母の夢を見る
虫は大地の夢を見る
恐怖の育む異形は
未だ見ぬ空を思い続ける
今 目覚めた・・・・・・
初めて見た空は
広く 青く 果てしなく
どこまでも飛んでいけると
そう思った
思っていた・・・・・・
広すぎた
空は広すぎた
どこまでも飛んで行ける空は
どこかを諦めなくてはいけなくて
はるかに見渡す世界は
そのわずか一部にすぎず
そのすべてを知るには
虫の命では短すぎて
止まってしまった・・・・・・
あんなに憧れた世界を
あれほど夢にみた空を
それなのに飛ぶことが出来ないでいる
ああ、おまえは何だ
飛ぶために生まれてきたのではなかったのか
五体満足のくせをして
どんなに迷っても
宛もなくたって
止まっているより 余程良いというのに
ああ
そうか
そうだったのか
そう これは夢
きのこのゆめ
虫は未だ幼虫で
闇の中に蠢いていて
いつか居着いた冬虫夏草が
虫があまりにも空を願うばかりに
虫の養分をひきかえに
虫に与えた幻なのだ
なら いい
いつかまた旅立てる
冬草夏虫が息絶えて
誰もがそれを忘れた頃
再び虫は目覚めよう
今度は夢でなくていい
夢であってはいや
そのかわり次は虫らしく
鳥と歌でも歌いながら
小さく飛んでいきましょう
願わくば花と恋をして
そして死んでいきましょう
次に生まれてくるときは
絶えること無い命で
永遠の羽で
そんな風に思って
死んでいきましょう
いつか
だから
それまで
おやすみなさい・・・・・・
蠢き