お庭のご意見番

2012/01/24

 嫁入りの季節なのですよ。お庭のご意見番の出番かと思ってやって参りましたが、あれ、お呼びでなかったでしょうか。そんなことはお構いなしで、はじめてしまおうかと思いますが、よろしいでしょうか。
 よろしいですね。
 この前のお城のお客様ですが、彼はちょっとした間抜けですね、愚鈍であります。しかしあの背の高さは素敵だと思いますし、言い得て妙な不可思議さは大きな魅力ですね。彼の神秘的というか面妖さに見入られて、このお城でも熱を入れている使用人もいる様子ですので、侮れませんこと。お客様ですので、あまりご迷惑をかけたり、お恥ずかしい所をご覧に入れるのは、控えたいところですね。
 それから、もう一人のお客様。随分可愛らしくていらっしゃいますね。まだまだ子どもかと思っておりましたが、難しいこともよくご存知で、時折怖く思うこともありますの。可愛い顔してなんとやら、というやつですね。最近は日に日に背も伸びてしまって、大人への階段を三段飛ばしで上っていらっしゃいますので、楽しみな毎日となりますね。大きくなったら誑しに育つと思いますの。今から騙されているような女性は、痛い目を見ますことよ。
 でもやっぱり一番は大将様ですの。だって孤高の狼のような目と、理知的なお話、高貴なお立ち姿、理想的でございます。あのような方が我が国軍の大将でいらっしゃいますなんて、惚れ惚れしてしまって、訓練どころじゃございませんね。でも、ちょっとだけ、不安になります。あの方に少しでも嫌われてしまったらと思うと、寄る辺がなくてそら恐ろしく思えて。近づきたいような、触れたくないような、悩ましい存在なのですね。それに、戦争でお怪我でも召されたらと思うと心中穏やかではいられません。
 ちょっと、お聞きになっていらっしゃいますの。
 そんな可愛らしい笑顔ではぐらかしても、無駄でいらっしゃいますのよ。そうでしたわね、貴女はもうすぐ王妃陛下になられるんですものね、他の男性をお褒めになったりした日なんか、陛下がなんて仰るか分かりませんこと。陛下はお優しい方ですからって、そんな陛下は独占欲のお強い方ですよ、分かるんです。でも、貴女にはそんな心配入りませんね。陛下に首ったけですもの。
 ほら、お顔が赤くなっていらっしゃいます。相思相愛で、羨ましいことですわ。ご意見番は、少し物足りないというか、淋しいものですわ。恋する乙女、素敵ではありませんか。このご意見番、今、恋をしようと心に決めましたの。もう決めたことですの。
 もう恋をしているですって。そんな訳ありませんわ。どうしてそんなに笑っていらっしゃいますの。どうして何も仰って下さらないの。
 王妃陛下は意地悪でいらっしゃいますわ。

お庭のご意見番

続きません。

いつか物語になればと思います。

お庭のご意見番

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青年向け
更新日
登録日
2012-01-25

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