かぼちゃのポタージュ

ドアチャイムが鳴ったので見に行くと、玄関先にマウスとアライグマが立っていた。


「おやまあ」
片手でドアを押さえながら、私は喜びの声を上げる。
「ずいぶんとお久しぶり」


「久しぶりだね」
とアライグマが言い、
「久しぶりだ」
とマウスも言った。


アライグマは小さな手押し車を脇へ置いていて、そこにはぼってりとよく育ったかぼちゃが乗っている。
マウスはそのかぼちゃの上へちょこんと乗っていて、かぼちゃの深緑色に真っ白な体がよく映えている。


「ごちそうしに来たんだよ」
アライグマが得意そうに言った。
「立派なかぼちゃがとれたものだから」


「とにかく立派なんだ」
と、マウスも言った。
「本当ね」
私はしげしげとかぼちゃを見つめてうなずく。
「とってもおいしそうなかぼちゃだこと」


とにかくまあ中へということで、アライグマとマウスと二人して、玄関マットで念入りに足を拭いて中へ上がった。


ごちそうしに来た、というのは要するに、「かぼちゃを持ってきたのだから、何か作ってくれ」という意味らしい。
二人とも特に何をしようという風でもなく、ただ黙ってダイニングテーブルへついて、私がキッチンへ立つのをじっと待っている。
しかたがないので、私がかぼちゃを調理する。


皮をむいて薄切りにしたかぼちゃを、玉ねぎと一緒にバターで炒めていく。
それだけで香ばしい匂いがキッチンに立ち込め、マウスとアライグマは忙しなく鼻をすんすん鳴らす。
小麦粉も加えて炒めたものをコンソメスープでふつふつと煮込み、
それをミキサーでぎゅいーんとペースト状にしてから、牛乳と一緒にまたふつふつと煮る。


お鍋の中に、きれいな黄色のポタージュがたっぷりと出来上がった。


薄皿に注いだポタージュを、マウスとアライグマの前に差し出す。
かぼちゃの皮ももったいないので、ベーコンとジャガイモと一緒に炒めてカレー粉で味つけしたものを出してみる。


それから、ちょうど今朝買ったばかりの丸パンがあったので、
紙を敷いたバスケットにいくつも盛って、小皿にバターも添えておく。


「さあ、いただきましょう」
私の合図で、簡単な食事が始まる。
マウスもアライグマも、初めは澄まして静かに味わっていたけれど、
気づくと忙しなくかきこむように口へ運んでいた。


結局食事が終わるまで、三人ともほとんど無言であった。


「ふーー」
満足そうに背もたれに深く寄りかかりながら、アライグマが言う。
「おいしいものはいいね」


「そうだね」
と、マウスもうなずく。
「おいしいものはいい」


私も心から賛同する。
二人の言う通りだ。
おいしいものはいい。


りんごがあるけれどまだ食べる気はあるか尋ねると、二人とも素早く何度もうなずいたので、
食後のりんごを剥くためにもう一度席を立った私であった。

かぼちゃのポタージュ

かぼちゃのポタージュ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-15

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted