機織りの娘(Claudine de Lyon)その1

Marie-Christine Helgerson 作

フランスの児童書の翻訳です。

ギートンカチャパン!ギートンカチャパン!朝日はまだ昇らない。それでも通りはすでに機織りの音で溢れかえっている。

クロディーヌは顔を洗い、黒いブラウスに袖を通すと仕事の椅子に飛び乗った。織物を巻きつけている大きな筒が彼女の腹を押す。シャトルを渡らせるのに常に身をかがめているため、11歳にしてクロディーヌはすでに丸まった背中をしていた。その足はひっきりなしに機械のペダルを踏んでいる。毎朝、毎日、夜明けから晩まで、クロディーヌは機織りに勤しんでいた。クロディーヌの横にはその父が、猛烈な速さで動く機械を操って仕事をしている。今は大きな赤い葵の花が咲く、金糸のベロアを織っていた。あまりに没頭していて、帰り支度を始めた妻や子供のことなど気にもかけない様子である。

クロディーヌは朝から飽き飽きしていた。
一日きっかり10時間、毎日毎日、何メートルもの青い布に向かい合うなんて!仕事はいつだって同じだ。また晩になれば、母が工場から帰ってきて、灯油ランプの明かりの下で2、3時間、娘の仕事を手伝うのである。そして父と娘の隣にもうひとり、18歳の若いトニーという見習いが仕事をしていた。彼はこの一家と生活をともにし、台所のそばの小部屋を与えられている。彼もまた、この家の生活ぶりを把握していた―仕事、仕事、そして仕事。クロディーヌの父、ボワションは仕事の注文や機織りの指導以外でトニーに話しかけることはなかった。

「クロディーヌ、黄色の生地を焼き直して」ボワション夫人が言った。「もしうまい具合にならなかったら水を足してちょうだいね。そのあと弟たちにそのパンとグラトンを食べさせて。晩までにキャベツも剥いておいてね」
クロディーヌはそっと母の顔色を伺った。やめようともしない。いつだって注文を受けては仕事をするその繰り返し。娘は考えていた。「なんで毎日同じ仕事なんだろう?なんでこの家の人は誰もお互いにしゃべろうとしないのだろう。どの人も頭は仕事のことだけ。私もお母さんみたいに、話すことも好きになってくれることもない男の人と生活しなきゃいけなくなるんだろうか?」

弟たちがベットでまどろんでいる仕事場では、彼女自身の声が聞こえてしまうほど静かで重苦しくなっていった。
「私は、大きくなったら、何になるの」
娘の声に不意を突かれた父はぼそぼそと答えた。
「お前は工場に行くんだよ。お前の母さんのようにな」

新たな沈黙が降りた。
クロディーヌは機を織る手を止めた。仕事場に飛び込んで父の向かいに座ると、背筋を伸ばしてこう言い放った。
「いや、私は工場なんかに行かない。学校に行く。学校に行って、いろんなことをいっぱい勉強する。周りの子はみんな学校に行ってるよ。なんで私はだめなの?」
ボワションは娘をじっと見据えたあと、平手をかました。
クロディーヌはうつむいたあと、また座り直した。不意に体を揺さぶる猛烈な咳が彼女を襲った。それでも彼女は起き上がって、父に言い返した。
「お母さんはまるでおばあさんみたいだもの。とっても悲しそう。ちっとも気にかけてもらえない。お母さんが楽しそうなところなんてみたことない。私はそんなふうに生きるなんてごめんだわ」
「ここじゃなまけものに使う時間なんてねえんだよ!特に今の時期はな。あとふた月でそれぞれ注文を仕上げにゃならん。俺はベロア。トニーはタフタ。お前は無地。なんか文句があるのか?」父は娘の肩を揺さぶった。
「文句でもあんのか、ええ?」クロディーヌは咳こむのを止められない。
「グダグダ言うな!」父が怒鳴った。「仕事をしろ!」
トニーはやりとりをただ見つめて、決して割り込もうとはしない。クロディーヌは逃げるように目を覚ました弟たちのもとへと近寄った。顔は紫に腫れ上がり、唇は戦慄いていた。
トニーはついに口を開いた。
「娘さんは風邪気味のようですよ」
「俺の苦労に比べたら屁でもねえ。この家では誰もが汗水たらして働いているんだ。おい、トニー、もし頼まれてもねえのにガキが騒いでいるのに口出ししたら、そんときはお前もたたき出してやる。そしたらこの仕事ともオサラバだ。ダチになる必要なんざこれっぽちもねえ。おいクロディーヌ、なめくさった口をきくようなら1日15時間働かせてやる。そうすりゃちったあ頭も冷えるだろうよ。」
クロディーヌは咳を堪えるのに苦労していた。しかし背はますます丸まり息苦しくなる一方であった。それでも、青い絹の布はあと3週間で完成させなければならない。そのあとには緑の布が待っている。クロディーヌはシャトルを手にした。機織りの音が仕事場を新たに埋め尽くす。ギートンカチャパン!ギートンカチャパン!

機織りの娘(Claudine de Lyon)その1

機織りの娘(Claudine de Lyon)その1

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-14

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