子供の名前に「愛」の漢字は入れない方が良い
ミルクちゃんにアイサンは言いました。「生まれ変わったら貴方の子供になりたい。」
アイサンは花真っ盛りを少し過ぎ、養分を差してやらないと綺麗に咲けない、くらいの年齢。女性であります。何をして暮らしているかは謎。セントバーナードのミルクちゃんと一緒に、もだもだと過ごしております。信じているのはお布団教。
ミルクちゃんは男性。アイサン曰く「こいつぁ人語がわかる」。だいたいの犬猫飼い主はそう言いますね。本当の所は蟹の味噌汁です。
この文章は、アイサンが自分の思う所をひたすらに喋る、盛大なマスべ文であります。とっても青臭い。お暇で死にそうな方、中学二年生を患っている方などにお勧めします。
今まで数え切れないくらいの生き物を殺して生きてきたのだから、死ぬ時は動物に殺されるのが道理な気がする、とアイサンは思いました。お風呂に入るため、皮膚の臭いのする部屋着を脱ぎながら思いました。真っ先に浮かんだのはクマ牧場。クレオパトラリスペクトな、毒蛇も浮かびました。
最終的に、大事にしているワンちゃんに噛み殺されるのが一番いいな、と思い、ミルクちゃんを買いました。
ミルクちゃんはお利口でした。まず、お手だけ覚えさせました。手の平にずっしりとしたモフモフが乗って来るのは、なんとも言えず幸福でした。少し硬めの肉球は、それでも人を幸せにする感触を持っていました。
次に「噛む」を覚えさせました。
噛むと音のするおもちゃを与えて、音がするたびに「噛むのがじょうず」「偉いね、噛む噛むしてるね」と褒めます。ポピィと音がするたびに褒めます。
「ミルクちゃんは噛む噛むじょうずだね」と言うと、彼はとっても得意気な顔をしました。
「その調子でさ、アイサンをお噛みになっておくれでないかい」
ミルクちゃんは噛んでくれません。ご主人なんて噛めねえぜ、としっぽを振るのをやめてしまいました。
「カマトトぶっちゃって!本能のままにがぶりとやっちゃってくださいな」
「ぐーん」
「ね、お願い、貴方に殺されたいのよ」
アイサンは続けます。
「それで、私を終わらせたら、すぐに遠くに逃げるの、捕まったらミーちゃんも殺されちゃうから、ね、それで優しい人に拾って貰うの。
ご主人なんて噛めねえぜって顔してるけど、きっと餌をくれて散歩に連れて行ってくれる人なら誰だっていい主人よ、また良い人に出会えるから、ね」
「人や自分に罪を着せたくないから、飼い犬に頼むのですね、あなたは。
とっても残酷で卑劣なご主人。お望み通り、噛みつきます。ご主人が大好きだけど命令だから噛むね、そっと噛むから、痛かったら言ってねって顔で噛みつきます。ご主人はセントバーナードのそっとは激しいな…って思って死んでいくのです。」
「残念ながら丸聞こえなのだった。」
「ばう」
「そうね、自殺はイエスさんに怒られてしまうし、何より怖いし。誰かに頼んだら、誰かが罪を被ることになるし。」
布団教の癖にイエスさんが怖いんだよなあ、とアイサンは思いました。日本人です。
「愛する者に殺されて終わりたいのね、ミルクちゃんが大好き。もふもふであったかくて、優しくて、賢くて、私のことが好きなミルク。ごめんね、大好きなの、本当愛してるの。だからお願い。ごめんね、ごめんねえ、」
ミルクちゃんはアイサンを噛みました。
アイサンはミルクちゃんに噛まれました。結局がっつり噛むんじゃねえか、と思いながら死んでゆきました。
ミルクちゃんはどうなったのでしょう。どうなったんでしょう。
優しいお父さんになってたら良いな、と思います。
子供の名前に「愛」の漢字は入れない方が良い
わんちゃんねこちゃんはこの星の宝です
このようなことはほんとうは絶対にしてはいけません、いけませんったら