ポニョの音楽

単なる趣味です。ポニョ音楽の簡単な分析

今回はまた勝手に長々語ります。

本日は、
大好きなジブリ音楽の中から、
崖の上のポニョの音楽について、簡単な楽曲分析的なものを書いていきたいと思います。

音大卒業したからには、クラシック問わず、ゲーム音楽だろうがアニソンだろうが、なんとなく分析したくなります。

例えば、昨年一世を風靡したアニメ、進撃の巨人の、下半期のオープニングテーマである、

「自由への進撃」

記憶が正しければ、謎のドイツ語で浪々と歌われるハ長調の序奏から、平行調のイ短調にいき、イ短調の同主調の平行調である嬰ヘ短調に転調してAメロが流れます。

というように、まぁこれは単なる調判定ですが、とりあえず簡単にでも、こうやって分析してみるのは楽しいもんです。

さて、ジブリの宮崎駿が手掛けた後期の作品、

「崖の上のポニョ」

の音楽。

また勝手に長々語りますが、お時間ある方はお付き合いください。これを読んでくださり、そして、以前より1ミリでもポニョの音楽を違う角度から聴く手助けになれば、幸せです。

さて、崖の上のポニョ、この映画の音楽を作曲したのは、もちろん、我らが国立音大生の大先輩、久石譲。

サントラに収録されているのは全36曲。後で解説のときに使うので、一応全曲載せときます。

1 深海牧場
2 海のおかあさん歌
3 出会い
4 海の町
5 クミコちゃん
6 ポニョと宗介
7 からっぽのバケツ
8 発光信号
9 人間になる!
10 フジモト
11 いもうと達
12 ポニョの飛行
13 嵐のひまわりの家
14 波の魚のポニョ
15 ポニョと宗介II
16 リサの家
17 新しい家族
18 ポニョの子守唄
19 リサの決意
20 グランマンマーレ
21 流れ星の夜
22 ポンポン船
23 ディプノリンクスの海へ
24 船団マーチ
25 赤ちゃんとポニョ
26 船団マーチII
27 宗介の航海
28 宗助のなみだ
29 水中の町
30 母の愛
31 トンネル
32 トキさん
33 いもうと達の活躍
34 母と海の賛歌
35 フィナーレ
36 崖の上のポニョ(映画バージョン)

という感じです。

やはり有名なのは、主題歌の「崖の上のポニョ」ですが、この曲の主題である、ポーニョポーニョポニョさかなの子~、で御馴染みのこのメロディは、のちにライトモティーフとして、ふんだんに使用される重要なものです。

さて、ライトモティーフという単語ですが、音楽を勉強してる人なら既にご存知の方がほとんどかと思いますが、一応簡単に説明すると、
オペラなどで良く使用され、ある特定の人物などに関連して、繰り返し出現するメロディ、テーマみたいなもんです。全く同じ形で出てくるだけではなく、変奏されていたり、内声に隠れていたり、和声やリズムが変わっていたりと、様々な表現で出てきたりもします。
ワーグナーやウェーバーがメジャーな例でしょうか。
余談ですが、後にも書きますが、ワーグナーの楽劇、ニーベルングの指環の音楽と、崖の上のポニョの音楽には、かなり深い関係のものがあります。まぁ、ポニョの本名がブリュンヒルデという時点で、色々と意識していることは明らかですが。

さて、ライトモティーフですが、そのことを意識するだけで、ポニョの音楽を聴く楽しみが少し増えていきます。

まずは上記した、主題歌でも有名なあのメロディですが、これは、まさに「ポニョ」に関係したシーンや音楽に、しばしば出てきます。
ポニョの主題です。

上記した収録曲の中では、
1、3、5、6、9、12、14、15、22、25、35、そして勿論36曲目。

以上の曲に、ポニョの主題が現れます。色々な形で。
これ以外にもあるかもです、ちゃんと確認せず、これ以降も同様ですが、曲のタイトルだけ見て記憶を頼りに書いているので…もし他にもあったらごめんなさい。

とはいえ、さすが主人公兼ヒロイン。ライトモティーフの登場回数はトップですね。

さて、次に、ヒロインのポニョを、超一途に想う、男の鏡、宗介の主題です。
宗介の主題は、ポニョの明るいテーマと違い、少し物悲しいのです。

宗介の主題が現れるのは、
6、7、23、27、28、33。
33曲目は、少し変奏されてるので、初めて聴くと気づきにくいかもしれません。

6曲目に注目してください。
何気ない曲ですが、ポニョの主題と宗介の主題が絡む、唯一の楽曲です。自分の記憶が正しければ、ですが。
タイトルも、ポニョと宗介ですからね。

余談ですが、15曲目もポニョと宗介というタイトルがつけられてますが、これは個人的にイチオシの曲。映画館では、泣きました。一旦離れ離れになってしまったポニョと宗介が、盛大に他の人達に迷惑かけまくって笑、再会するシーンです。なんか、涙が流れたんですよね。本当に、純粋な映画だと思います。考えず、純粋な気持ちで感じなければいけない映画だと思います。神話との関連云々が謳われていますが、だから何なの?という感じです。大人になってしまった悲しさを痛感するばかり。幼い心が持つ純粋さは、敬意を払うべき、大人にとっての指針の一つではないでしょうか。

話が逸れました。
さて、次はポニョの父、フジモトの主題です。剽軽な主題で、特徴的です。
彼の主題が最初に現れるのは、
まず4曲目。ポニョが宗介に拾われ、それを取り返しにくる父のフジモト。疾走するリサの車を表現する音楽の中に、突如フジモトの主題が投入されます。長調から短調になるところなので、分かりやすいと思います。
そして、その後は、
10曲目。(もうタイトルがフジモトですからね笑)。
それと31曲目。曲の終わりにひっそりと、その主題が流れます。
記憶が正しければ、この3曲にしかフジモトのテーマは現れません。登場シーンの量の関係もありますが、でも少ないですね。
しかし!この映画には必要不可欠な、特別な要素を持った曲想です。おどけた雰囲気をもつフジモトのテーマは、この映画の良いスパイスになっていると感じます。

楽しげなポニョのテーマ、物悲しい宗介のテーマ、そして剽軽なフジモトのテーマ。

そして次のテーマですが、今度は、全てを包み込む、温かい、
「母」の主題です。個人的な解釈ですが、この母の主題は、二つあると思います。

まずは、ポニョの母である、
グランマンマーレの主題。
グランマンマーレが登場するほとんどのシーン、そしてこの映画のオープニング曲の、「海のおかあさん」で現れる、包容力のある優しい主題です。
個人的には、この映画の中で一番好きな主題。
何度聴いても癒されます。
前に、トリオで、海のおかあさんを少し編曲し、ヴァイオリンの子に旋律を弾いてもらって共演したときは、最高に気持ち良かったなぁ。

さて、この主題が現れるのは、
2、21、34。

そしてもうひとつの母の主題、
宗介の母、リサのテーマ。これもまた温かい旋律で、

この主題が現れるのは、
8、16、19、30。

8曲目は、有名な、モールス信号でやり取りするシーン。
そして30曲目、この主題が合唱で唄われます。心を浄化してくれるような、本当に温かく包容力のあるテーマです。

以上が、主要登場人物の主題だと思います。完全にライトモティーフだと判断して差し支えないのではないでしょうか。
しかし、この他にも、大切な主題があります。

まず、この映画のテーマのひとつである、

「海」

海の壮大さ、神秘を表現する主題が存在します。

このサントラの1曲目、つまり映画で最初に流れる主題が、それだと考えています。
この主題が現れるのは、
1、20、21、33、34。

ほとんどがグランマンマーレの主題が現れる曲と被っています。
その理由としては、やはり、壮大な海、そしてその海の全ての生物の母という立場であるグランマンマーレですから、かなり関係性は近い、むしろ同義として捉えて良いからだと思います。

また、この海の主題ですが、意図したのか、たまたまなのか、
宗介の主題に酷似していると感じるんですよね。これが意味するところは、どういうことなのでしょうか。

その他、ひまわりの家にいるおばあちゃん達が登場するときに流れる、素朴で優しい主題もあります。
これは13、29曲目に流れますが、かなり良い曲で、隠れ名曲だと思っています。ピアノでの演奏にもピッタリの曲で、よく弾いています。

あとは細々とですが、街が水没したあとに宗介が出会う、船団の主題(24、26)があり、27曲では、この曲調の上に宗介の主題が流れたりします。

そして最後に、上記もした、ワーグナーとの関連についても簡単に書いておきたいと思います。

ご存知の人も多いであろう、ワーグナーのニーベルングの指環の中の曲、「ワルキューレの騎行」。

この曲を模したような曲が、この映画には存在します。
それは、
12、14曲目の、ポニョが魔法で人間になり、海を荒れさせながらその上を走り、宗介に会いにいこうとするシーンで流れる曲です。

ワルキューレの騎行と、ポニョのサントラの12曲目と14曲目の中間部を聴き比べて見れば、すぐに分かります。これはもう、明らかに意識し、一種のオマージュとして使用していると思います。

ワルキューレの騎行を想起させる波に乗り、流れる旋律はポニョの主題。とても面白い曲です。

とまぁ、こんな感じに、色々意識して聴いてみると、曲を聴く楽しさも倍増です。
もっと細かい分析、主題がどのような形で流れるか、また、機会音楽としてどういう効果があるかなども書きたい気持ちですが、それを書き出すと、また同じくらいの長文が続いてしまうので、今回はこのへんにしときます。

ポニョの音楽

ポニョの音楽

  • 随筆・エッセイ
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-11

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