永遠のアセリア 『鳳翼のファリナ ラキオス戦闘報告書』
このショートショートの不定期連載は、Xuse様にて自分が企画・シナリオ・ゲームデザイン担当した『永遠のアセリア -The Spirit of Eternity Sword-』のスピンアウトの二次創作本である『永遠のアセリア -The Phantasmagoria Spirits Guide-』シリーズというイラスト設定資料集の補完的意味合いのものです。基本的には本ではあらすじまでしか触れられなかった、キャラクター性などを日記的なテイストで短い内容で紹介するといった内容です。
このシリーズでは『永遠のアセリア』より以前にあった戦争『四王子戦争』を舞台にしています。C85で頒布した『永遠のアセリア -The Phantasmagoria Spirits Guide-』にてある程度、あらすじが語られています。もしよければメロンブックス様にて在庫があれば販売しておりますので、お手にとっていただけるとリンクするかと思います。逆に読んでない方には「何がなにやら」状態だと思います(笑)
気楽に書いていける分量なので、たまに更新していきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
感想などがあればお待ちしております。
鳳翼のファリナ ラキオス戦闘報告書ショートショート Wing.01 ファリナ
■第一詰め所 戦闘報告書
この報告書はそれぞれ戦闘員が、交代制で状況に変化があった場合や、訓練の状況、戦闘情報などを書くものとする。交代制なのは多角的な視点でお互いの状況を監視しあい、無駄がなく間違った方向に進んでいないかを確認するべきものである。
問題点があればすぐに責任者に提出し、しかるべき処置をとるように。本戦闘報告書の管理はフィオニア・トゥーニードに一任する。以上。北方戦闘管理局。
▼着任!白い翼の少女(かっこいい!) from ファリナ・レファイン
ふへへー、今日もハイロゥは絶好調!かなり一気に飛べたよ。このままなら、いつか。ふひひ。
よっと……ここが任務地かな?
私はファリナ! ファリナ・レファイン・ブルースピリット。自慢じゃないけど「かなり飛べます!」。私の翼は「航行距離」「飛行速度」「展開速度」全てにブルースピリットの中でも段違いなのが自慢なんだ。
今日はびゅーーーん!と所属していた訓練施設のベルタリスタ先生から『卒業』の『証』を貰ったから、赴任先に休みなく飛んで来ちゃった。『証』それは先生から頂く名前なんだ。私が頂いた名前は「レファイン」。これはね、『果てない空』って意味なんだって!ピッタリだよね。そう思うよね?
ん?これ誰宛に書いているものなのかって?やだなぁ。戦闘報告書だよぉ~。それの輝かしい最初の項だよ。
今日から赴任先の『聖ヨト・ロードザリア北方地域・第一詰め所』任務に就くんだから。細かく状況をこうやって記して置かないとね。
ん、何のぞき込んで……これじゃ日記?いやいや、ただ報告だけしても、戦闘時の意識とか考えみたいのが伝わらないよ。硬いのはよくないね。うん!ってあなたは誰?ってそんなにジーッと見つめられたら照れるよ。
見つめてない?あはは…フィオニアさんって言うんだ。フィオニア・トゥーニードさんね。うん、覚えたよ。え、フィオニアでいい?うん、わかった。
じゃ私は……ん、なんで名前知っているの。報告があった?あ、それもそうか。ファリ……うわっ!凄い風!ごほん、もう一度、私はファリナ・レファイン。今日から北方任務に……って、どうしたの顔を真っ赤にして……俯いて……。
ん?風?違う?服?何?下?何が?「はいてないじゃない!」って何をって、あー!!!下ね。うんうん。「はいてない」よ。それがなにか?
私、飛行速度が落ちるの嫌だから、できるだけ軽量化を……って、そりゃ服は着るよー恥ずかしいもん。何を言っているのフィオニア。
え、下をはかないのも恥ずかしい?そうでもないよ、スースーしてて気持ちいいし。え?はきなさい?いやだよー、絶対にはかないもん。絶対に遅くなるもん。
前に計測した時に、その差は……え?なになに?ぐえっ!?フィオニア!!後ろに引っ張らないで!首が!首が絞まるぅぅぅぅっっっ~~。
詰め所にて……って連れていかれたんだけどね。
ええと、私はファリナ・レファインです。永遠神剣・第七位『鳳翼』のファリナ。高高度飛行からの突撃を得意としています。ハイロゥと飛行速度に関しては自信があります!
なんて言い切っちゃった!思いっきり真面目な顔で話をしてみたんだけども……なんだか誰も聞いてない感じがする。むふー。
この第一詰め所のいま机についているのは、さっきの強行に私に対して「下着」という問題物を履かせようとしてきたフィオニアと、つまらなそうに外を眺めている小さな娘。この娘はリルって言うらしい。うぅ……全然、こっち向いてくれないよぅ。
リル・ファスタト。ブラックスピリットで実は私たちの訓練施設まで名前が知られている有名な娘。何が有名ってもの凄く強いってところ。
ちなみにフィオニアはホワイトスピリットで、ちょっと私たちの間では稀少な存在。私の話を真面目に聞いてくれているようなんだけど、視線がすごく痛い……。
さっき猛烈に抵抗したことを根に持っているのかな。ちょっと怖い。あの目。普段は静かだけど怒らせると猛烈に怖い感じがするよ。気をつけよう……。
あれ?この詰め所って、私合わせて三人だけなの?いくら北方は静かだとはいえ、少ない気が……。
それだけ期待されちゃっているのかな。私たち!
ぐふぅ~。
おかしな笑い方しないでくれる!って?リルちゃんが喋ってくれた!リルちゃん、私ファリナよろしく…ね……ってまた外を。がっくりだよ。まずリルちゃんと仲良くしないとね。フィオニアちゃんとは……なんだか自信がない。怖いもん。
自己紹介がそれぞれ終わったところで(リルちゃんは「リル・ファスタト」って言っただけだけど)、フィオちゃん(と命名)が隊長であることを説明し、後もうひとり訓練が終了し『卒業』したら参加するんだって!楽しみだなぁ……って不安も多いんだけども。
自己紹介と、簡単なそれぞれの得意分野の紹介をしたりしたら今日は解散。あとはもう夕食の時間。食卓に行くとそこにはフィオちゃんが用意したと思われる食事があった。訓練施設では、簡単な野戦食ばかりだったけど、今日はとても豪華!
「今日は赴任した特別な日だから。ようこそ北方第一詰め所へ」
フィオちゃんが顔を赤くして言った時には、ぎゅぅっと抱きしめたくなったよ。フィオちゃんかわいいよ!もう一度言うよ!かわいいよ!!
リルちゃんも席につき、私ははじめてのみんなとの食事を楽しんだ。会話はほとんどなかったけど、とても暖かな食卓だった。とっても嬉しかった。この「嬉しかった」には花丸つけておこう!
そういえば食事中にリルちゃんが一言だけ、「明るいね」って言ってくれた。これも嬉しかったから花丸!
そう私は、いま王子様たちがちょびっと領土問題で小競り合いをしているんだ。そのために私たちは戦うの。でもね。私は戦うことが存在理由にしたくないんだ。戦った後!これが大事だと思うんだ。
戦争の後って多分「平和」って「時間」になるんだよね?教官が言ってたよ。この「時間」ってとっても。とぉぉぉぉぉぉっっても大切だと思うんだ。
だってみんな戦わなくていいんだもん。「戦うため剣を持つ者はいる?」……リルちゃんそれはきっと「古い」んだよ。みんな訓練所の時も、私の考えと同じ娘はいなかったけど、きっと解ってくれる誰かが現れるし、みんなも解ってくれるよ!
ぜっぇぇぇっったいに、誰か私の考えと同じ人が現れるね。予言しちゃう!な、なに!?二人ともあきれ顔で見ないでっっ。
そしてもう深夜、ねぇねぇ!すごいんだよ!ここおっきなお風呂があるの!みんなで入ったら楽しい。みんな恥ずかしがり屋で一緒に入ってくれなくて寂しかったんだよ!絶対に打ち解けてみせるんだから。
私に与えられたのは詰め所の二階の一室。ここからはフィオちゃんが多分育てている花壇が見える。綺麗だなぁ。私は不器用だから絶対に真似できないなぁ。お淑やかだし。私も自分で装飾品とか作れるくらいに器用になりたいよ……。服を脱いで薄っぺらい布にくるまる。北方だからちょっと寒い。
見上げると窓から月が見える。訓練所時代も良く見上げてたな。
いつか私は『龍の爪痕』を越えてハイ・ペリアへ行くのが夢。そのために訓練をいっぱいしたし、これからも自分の翼を進化させていく。きっとそこには何かがあるはず。何もないっていう娘もいたけど、そんなことはきっとない。この夜のように明けないことはないんだ!
私は「平和」って時間を過ごすことと、「ハイ・ペリア」に行くことの夢は絶対に諦めないんだ。何度でも挑戦してみせるんだから!
ふわぁぁ……ねむく…なってきた……。いっぱい……とんだからかな……。
明日は…フィオちゃんが意気込んでた……別の服を着せることから……逃げない、と。
これが本日の戦闘報告書です。次は誰が書くのかな?
私のお手本にしていいからね。
おやすみなさい。
ファリナ・レファイン
鳳翼のファリナ ラキオス戦闘報告書ショートショート Wing.02 リル
■第一詰め所 戦闘報告書
この報告書はそれぞれ戦闘員が、交代制で状況に変化があった場合や、訓練の状況、戦闘情報などを書くものとする。交代制なのは多角的な視点でお互いの状況を監視しあい、無駄がなく間違った方向に進んでいないかを確認するべきものである。
問題点があればすぐに責任者に提出し、しかるべき処置をとるように。本戦闘報告書の管理はフィオニア・トゥーニードに一任する。以上。北方戦闘管理局。
▼リルの戦闘訓練報告書 from リル・ファスタト
先日、新たに赴任してきたファリナ・レファインだけど、自己紹介の時点から問題がありそうな空気を醸し出していたけど……やっぱりそうだった。今日の訓練の時から、フィオの神剣通信をちゃんと受け取れないし、そのせいで空中でリルと接触するし……正直ガタガタといっていいだろう。フィオの通信を受け取れないなんてどれだけ素人なんだろう?
リルはフィオを心から信頼している。あんまり言いたくないんだけど、正直言ってリルは「頭が良くない」。いや、そういう言い方をするとあんまり女の子としてどうかと思うので、「考えるのが苦手な方」ではあるんだ。そういう言い方にしておこう。うん。記録に残るしね。これ。
それより書き方なんだけど、最初のファリナ・レファインがあんな日記にしたせいでこちらも合わせないといけない気がしてきて、どうもちゃんとした報告書になっていない気がする。あとでフィオが怒られないといいんだけども。
突然だけど正直言って、リルとフィオの二人が組むとかなり強い。北方地域では敵はいないといっていい。これは自信がある。リルは「考えるのは苦手」だけど、フィオは「考えるのは得意中の得意」なんだ。
リルは戦闘能力には自信があるんだけど、どうしても何も考えずに飛び込んでしまう癖があるから、フィオからの神剣通信による指示ってとっても大きいんだ。だからフィオがどんな危険な地域に飛び込めといってもリルは何も疑問はもたない。フィオの言うことに間違いはないから。フィオは常に考えて未来を見ているから。
それはファリナ・レファインの言っていた「夢」みたいなものとは違う。本当の「未来」。だからリルは信じられる。ファリナ・レファインの言っているのは「夢」でしかない。
リルたちがスピリットであることを忘れているんだ。私たちがすべきことは、神剣の意志が語りかけるように、戦闘区域にて同胞であるけれど敵対スピリットたちを消滅させること。これが全てといっていい。
リルの永遠神剣『千輝』はスピリットを消滅させるために存在する。ただそれだけ。リルも訓練所時代に師匠から人が持つ「夢」や「希望」というものを習ったことがある。それは人が持っていればいいものだとリルは思っている。スピリットに「夢」はいらない。スピリットは人の夢を実現するための道具にすぎない。きっとフィオもそう言うと思う。
あのファリナ・レファインが特殊すぎるのだ。戦場であの考えは危険すぎる。刃に躊躇いを生む。あの娘は危ない。
リルは自分で言うのもなんだけれど、心が少し脆い。多分『千輝』の影響が強すぎるんだと思うんだけど、戦闘が終わったあとも心がまったく落ち着かない。それをフィオが神剣通信で……実際に抱き留めてくれて……リルを癒してくれる。心が落ち着くまで。
だからリルは全てにおいてフィオを信頼しているんだ。フィオが死んでって言ったらきっと躊躇わないと思う。きっとそれは何か大きな「未来」に繋がっているはずだから。
……実はちょっと恥ずかしいんだけど、リルは戦闘が終わると……その……ちょっと退行しちゃうというか……心が幼くなってしまうというか……『千輝』の力の跳ね返りだと思うんだけども……そういう時はフィオにベタベタと甘えちゃう癖が……出ちゃう。そうしないと心が保てないというか、ハイロゥが黒くなっていくというか。怖いのかな、リルも……心が飲まれちゃうのが。
それはいいや、現状の戦闘訓練報告に戻るけれど、ファリナ・レファインは正直、使えない。フィオは最大約五十体までのスピリットと神剣通信ができるほどの強者。その通信を集中しているのに、ちゃんと指示を受けて戦闘行動ができないなんて、力が足りなすぎる。ただ速いだけでは実戦では役に立たない。これでは次にくるという娘も期待できないな。
フィオが言うには、遠方の神剣通信を傍受した結果、色々ときな臭い動きがあるらしい。きっと大きな戦いになる。フィオは現実しか言わない。だからリルたちは準備をしておかないといけない。この北方をしっかり護れるように。
予定編成だとちょっと防御と神剣魔法が弱い。直接打撃面では、リルやファリナ・レファイン、次にくる娘でなんとかなる。フィオは完全に支援だから、どうしてもどこに配置されても戦えるスピリットが必要になる。そんな万能なのは存在しないんだけども。だからリルはちょっと不安なんだ。
……ダメだ。どうしてもすぐに不安な気持ちになっちゃうのはリルの悪い癖だ!ちょっとはファリナ・リファインのことも見習わないといけないのかも……。あそこまで軽くは考えられないけど。考えたくもないしっ!
とにかく、明日からはファリナ・レファインを徹底的にフィオと一緒に鍛え上げていくんだ。実戦ではスピリットは連携がすべてと言ってもいいから。
今日の結果を見て、フィオが恐ろしい特訓予定を組んでいたから大丈夫だとは思う。あとはあの娘がどこまで根性があるかどうかだけど。逃げ出していくスピリットもいなかったわけじゃないし……。そしたらまたリルとフィオの二人で頑張ればいいだけ。
リルはそんなに仲間たちというのに期待してない。ふたりで戦えればきっと大丈夫。
もし……もしもだけど、リルたちをまとめ上げるような人物が現れたら、リルのなかでも何か考えが変わるのかも知れない。リルはまだ本当の仲間たちとの戦いって知らないから。フィオ以外ね!
とにかくあの頭が空を飛んでいっているあの娘を、徹底的に鍛えるところから始まるのかな。時間はかかりそうだけどね……。才能はありそうなんだけども。まだ信頼できないな!
よし、これで戦闘報告書は終わり。訓練関係についての報告だからこれで大丈夫だと思う。少し前の娘のせいで、いままでの報告書と違う感じになっているけど、問題があればフィオが止めるし、思いつくままに書くのも悪くはないと思う。
これファリナ・レファインも読むのかな。それだけは何か恥ずかしいな。フィオになら隠すことなんて何もないんだけど。あの娘は何かと馴れ馴れしく近寄ってくるし。
まあ、あの娘、そのうち力つけたら名前くらいでは呼んであげてもいいんだけどね。せめて互角に訓練できるようになってからかな。
……あとね。リルが恥ずかしいから、ちゃんと下を履いて欲しい。本当に!!!
訓練報告書、終わり。
リル・ファスタト
鳳翼のファリナ ラキオス戦闘報告書ショートショート Wing.03 ティータ
■第一詰め所 戦闘報告書
この報告書はそれぞれ戦闘員が、交代制で状況に変化があった場合や、訓練の状況、戦闘情報などを書くものとする。交代制なのは多角的な視点でお互いの状況を監視しあい、無駄がなく間違った方向に進んでいないかを確認するべきものである。
問題点があればすぐに責任者に提出し、しかるべき処置をとるように。本戦闘報告書の管理はフィオニア・トゥーニードに一任する。以上。北方戦闘管理局。
▼ティータの戦闘訓練報告書 from ティータ・コトラ
現在、ディレスター訓練所を『卒業』し、私、ティータ・コトラ・ブルースピリットは北方詰め所に向かい飛行中です。いま考えているのは着任後にすぐに記すことになっている報告書の内容です。
たぶん、これを読んでいる人はどうやって書いているのか?と疑問に思っているだろうけど、私は飛行しながら書いています。こういうちょっと器用なところは自慢だったりします!うん!
ちなみに背中には私の身長より長い永遠神剣『雷鳴』が取り付けてあります。訓練所の仲間たちにも言われてたけれど……剣っていうより……長い棒なの。私の神剣は。こう考えると『雷鳴』から抗議の声が聞こえてくるんだけどね。うぅ、やっぱり剣じゃないよね。これ……。
どうして私に限って、こんな形状だったんだろう。もっとブルースピリットらしく切れ味の鋭い神剣が、せめて両手剣がよかった。私の神剣って刃がついてないんだよ?おかしいよね?うぅ……。
ああ、脱線。私、ティータは北方地域にての防衛任務に就くことになっています。あそこには、伝説のリルさんと、フィオニアさんという『ディアダルの鎌』と呼ばれる凄い二人がいるんです!
ちなみに『ディアダル』というのは、私たちの龍の大地に大きくあいた穴の奥底にあると呼ばれる『バルガ・ロアー』に存在すると言われる大鎌の悪魔のことですっ!すっ、すごいんですっ!お二人は……。
もうすでに新しいブルースピリットさんが着任しているというお話を聞いています。きっと私なんかより、遙かに、遙かに、優秀な方なんでしょう。きっと真面目でしっかりとしているに違いありません。
元々、守備隊をウテジル先生に志願したのですが、なぜ私は前線任務になったのかよくわかりません。戦闘能力は自分でいうのも何ですが……低いんです。それも……。
いたたたたたたたっっっっ!!!!
『雷鳴』やめてっ!わかったってば!あなたのせいじゃないから。そんなこと思って……ちょっぴりしか思って……いたたたたたたっっっっ!!!! もうっ、頭が痛いよぅ。
この『雷鳴』ってば私がいつも弱気というか……その、根暗?なこと言うとすぐに頭痛を引き起こす……痛いってばぁ!!うぐぐぅ。
こんな感じで『雷鳴』と私ってあんまりうまくいってないの。それが原因みたい。
スピリットは永遠神剣との間での『精神同調』が極めて大きな力を持つの。神剣には『位』があって私の『雷鳴』は第七位。だけど、それより下の『位』の娘でも『精神同調』が高い娘は神剣の力をとても強く引き出す。
私は神剣との同調もそうだし、何よりどこかまだ「わかり合ってない」感じがして駄目みたい。それに訓練時代の他の娘より明らかに使い憎……あいたたたたたたっっっ!!
もぅっ!
なんだかどんどん訓練所時代のみんなでやってた報告書って名前の交換日記みたいになっていっているけどいいのかな?
フィオニアさん厳しそうだし、着任して早々にこれで怒られそうで怖いです。きっともうひとりの方はしっかりしていそうだし、私だけズレてそうで不安すぎです。怒られるのは慣れているからいいんだけど……。
ううん!ティータしっかりしよう!
私だってきっとやればできる。やれば!やれば……やれれば………。
あとね。それにね。聞いて!すごく重要なことなの。これも。
聞いてって誰に向けているのかもうわからないけど、訓練所のみんなじゃないのに。
これ報告書じゃなくて、みんなへのお手紙にしようかな。
あ、違う!そう、これ!
この私の戦闘服。訓練所時代は、しっかりみんなと同じでしっかりした軍服だったの。
それが卒業と同時にウテジル先生は、私専用の戦闘服をあつらえてくれたの。これは普通に考えればとても名誉なこと。
それに『コトラ』という卒業と同時に頂いた名前の意味は「かけがえのない数」ってことなの。落ちこぼれな私だけど、いても良いんだと思って感動したの。
……でもね。この服はないと思うの。
確かに私たちスピリットは人間様に比べて、こう自分を着飾る習慣とかはほとんどない。私たちはあくまで戦闘のための存在。いえ、永遠神剣を振るうための道具。私はなるべくそうは思いたくはないんだけど。
……でもね。この服はやっぱり「ない」と思うの。繰り返すけども。
まず、この、その……ぎりぎりまで見えちゃうイスーサ!
思いっきり腰を強調するボネテ!そして後ろの派手に大きいレゼナ!
極めつけは、このウォーテ・クネリのように、お胸が強調されるようなのっっ!!
なに?これ……。
ううっ、嫌だよう……こんな格好、嫌だよう……。
どう考えても、北方の英雄さんたちや、新しい方は、しっかりした服装に決まっているし、こんな露出が高い服なんて着てないはずだし。私だけどう考えても変な娘。絶対にそうだ。みんな正統派な軍服に身を包んでいるはず。
私だけどうしてこんな格好なの!?ねぇ、ウテジル先生、ティータは悪い娘でしたか?確かに戦闘ではいつも足を引っ張っていたし、いつも居残りさせられてましたし、でもあんまりです!こんな仕打ち!
神剣は使えない……変な格好しているし。もう変な娘……確定です!
ああ、ただの愚痴日記になっちゃった。私がひとりで文章書くといつもこうなっちゃう。暗くなるのは駄目!
ウテジル先生のことだから、この服だって私専用という意味があるはず。そうだよね!
オーセにリケイラ。あなたたちが南方守備隊の時は普通の軍服だったけど、私は何か期待されていると思うことにします。します!
でも、この服装で初対面は恥ずかしいなぁ……私、ちゃんと自己紹介できる自信ないよ。
もうすぐ任務地だ。書いているうちについちゃった。
ああ、もうすぐ怖い時間が来ると思うと気が滅入る。
『雷鳴』も最初、いつも通り驚かれるだろうし、それに加えてこの格好だし。
絶対、変な娘だと思われる。絶対に。
もう、なるようになれです!!
よし最初の言葉だけは真面目にいつも通りの私で行こう!
あとはなるように……なるかなぁ。でも、頑張るです。
よし、挨拶の言葉でこの報告書を締めくくろう。
「『雷鳴』のティータ・コトラ・ブルースピリット。北方詰め所に着任いたしました。以後、よろしくお願いいたします。先輩方!」
ティータ・コトラ
永遠のアセリア 『鳳翼のファリナ ラキオス戦闘報告書』
■戦闘報告書の流れ
ファリナ → リル → ティータ → ?