手品のある情景 ~Magical Situation~

小説とか映画で マジシャンが登場するものは
そんなに多くは無いと思います

僕が知らないだけっていうことかもしれませんが・・・

特にマジシャンが主人公の物語は
あまり見たことはありません

不思議を作り出す人という特殊な人物なので
もっとあっても良いと思うのですが・・・

マジシャンが主人公の話というのは
大体は推理小説とかサスペンスで
主人公を務めている物語が多いように思います

たとえば
著者自体がマジシャンという「泡坂妻夫」さんの作品とか
漫画の「マジシャン」とか・・・

「トリック」っていう括りが同じなので
マジシャンが謎を解いていくという設定がぴったりなのでしょうね

もちろん それはそれで大変面白く読ませていただいているのですが
もっと普通の生活の中での話は無いものかと思っていました

もっと「マジック」を題材とした話ができると思うのに
と・・・

自分で書いてみようと思ったわけです

学生時代以降 あまり文を書くことも無く
ましてや 小説を1本書き上げるような根気と
なにより才能がないので 
ならば
マジックの現象やグッズを題材として 
そのマジックが出てくるシーンのみを抜き出して
物語にしてみようと思い立ちました

目指すところは オキ・シローさんのカクテルを題材とした短編や
(ANAの翼の王国に載っていたような物語)
カリオストロの城でルパン三世が手品を披露する名シーンを
文にしてみようと・・・

さて

いざ書いてみて 自分の才能の無さに辟易しているところではありますが
恥を恐れず公開してみたいと思います

ご笑読いただければ
これはもう 恐悦至極の境地でございます・・・・

Catch The ShootingStar

流星群って・・・

一生に一度か二度ぐらいしか見るチャンスのないものかと思っていたのだけれど
どうやら たびたび見ることができるものらしい。

あれは・・・
 まだ二人が「友達」ぐらいの関係で 
なんとなく食事をして 映画を見て
なんとなくドライブをして 
なんとなく帰りたくない感じになって
真っ暗な山の中で車を止めて とりとめのない話をしていたら

ひとつ・・ ふたつ・・ みっつと
たくさんの流れ星を見つけた。

後になってわかったことなのだけれども、
その日はちょうど しし座流星群を見ることができる日だったらしい。

偶然にも あたりに全く明かりがない山の中だったことが幸いして
満天の空に広がる星たちのショーを満喫することのできた
感動的な一夜だった。

そして二人は星に導かれるように
「恋人」になった・・・


それから 4年・・・

沙也加(さやか)と浩志(ひろし)は
3日に一度程のペースで 食事をしたり
休日には少し遠出をしてみたりといった
まあ、ごく普通の恋人同士という日々を送っている。

二人は同じ年で 今年25歳

そろそろ 結婚っていう文字がチラツキはじめていることはいるのだけれども
浩志にそれとなく振ってはみても
「ノレンニウデオシ」
っていう言葉がぴったりなほど 気に留める様子もないし
沙也加自身 今の生活から変化することが
面倒くさいような気になってきている自分に気づきながら
「まぁ いっか」
っていう日常を過ごしている。

そんな ある冬の日・・・

浩志が
「今度の金曜日 流星群が見れるんだって! 見に行ってみようよ」
と いってきた。
次の日は休みだし 帰りが遅くなっても そんなにガミガミいわれる年でもないので
7月生まれで ちょっと寒いのが苦手な沙也加だったが
また 4年前の あの場所へ行くことにした・・・


4年ぶりに見る満天の星たち
やっぱり うっとりするほど綺麗・・・

しばらくすると・・・
スーッと尾を引いて ひとつ星が流れた
それを待っていたかのように ふたつ・・ みっつ・・・
星たちのショーの始まりだ

「キレイねえ あっ また あそこにも」
「うん」

沙也加は「願い事3回」にチャレンジしてみた
「もう! 星が流れて消える間に 3回お願いすると
願いがかなうっていうけれど やっぱり消えるの早すぎ!」

「そうだね 無理だね」

・・・・・・・・・

「そういや・・・」
「なに?」
「昔見た映画で・・・ なんて題名か忘れたけど
子供が流れ星を捕まえる機械を持ち出してきて
星を捕まえようとするシーンがあったよ」

「へぇ・・」
「一人の子が 石ころを出してきて
お父さんが捕まえた流れ星だよって自慢して
みんなで一生懸命捕まえようとするシーン」

「カワイイね なんか夢があるね・・・
そういえば子供のころはいろんなことを信じていた気がする・・・」

沙也加は ふと サンタクロースを小学校の高学年あたりまで信じていたことを思い出した。
いつごろから そんなワクワク ドキドキした気分を
持てなくなったんだろうか・・・

すると 浩志が
「捕まえてみようか 流れ星」

「えっ?」

「捕まえたら 3回どころか 何回でもお願い事できるでしょ?」
少し笑いながら浩志が言う

そして 浩志は空を見上げながら
「ちょっと待って 次 流れたらね」

スーッと 一つ流れた・・・

「今だっ!」

浩志が 右手を星の流れたほうへ突き上げるように差し出した

でも 手には何もない・・・

「うん・・・ ダメだった ちょっと小さかったかな?」
「そうね 今度はもう少し大きいの狙ってみたら?」
沙也加も浩志に合わせて 少し笑いながらそういった

スーッ

こんどは さっきよりも大きく鮮やかに光る星が流れた

「それっ!」
浩志が右手を大きく開いて 星空へ向けて差し出す
そして つまむ動作をすると
今 消えたはずの星が 
浩志の指の間で 白く光っている!

「えっ?!」
沙也加は少し驚いた

なにせ 浩志は手に何も持っていなかったのに・・・
まるで 本当に星を捕まえたかのように
浩志の手の中には 白い光が見える。

「捕まえたよ!」
浩志が得意げに言った

「これを・・・」

浩志が右手の星を左手でつまむと 右手の星は消え
こんどは左手の中で 赤い光に変わって輝きだした

「逃げないように・・・」

左手の星を右手に投げ入れると 左手の星が消えた・・・

星は浩志の握り締めた右手の中にある・・・

その右手を 沙也加の方へ差し出し
すこし まじめな面持ちで

「これは 願いをかなえてくれる星・・・
ずっと消えない 幸せの流れ星・・・
・・・・
手を出して・・・」


差し出した沙也加の手の上で 浩志が握り締めた手を開くと
何かが沙也加の手の中に落ちた・・・

それは

大きく赤く輝く ルビーの指輪だった・・・



解説
ここではD-Liteというマジックグッズを使用しています。
とても簡単にできて面白いマジックです。
いろんなバリエーションや色があったり
手につまんだ光を花に投げ移したり
袋の中にいっぱいに入れて一気に吹き消したり
最近では、手から離れて光が宙を舞うものもあるようです。
多人数で光を投げ合う手順もとても楽しくてオススメです。

恋占い

「おいしいね! このワイン!」

同期の 平山 誠 と2人きりで食事をするのは初めてだ

会社の飲み会なんかで 何度か席を同じくしたことはあるけど
嫌いなわけではなく むしろ好感をもってはいるが
ドキドキする相手でもない・・・

「なんて ワインですか?」
ソムリエに聞いてみた

「イタリアのワインで マーマ・ノン・マーマ というワインです」

「マーマ・ノン・マーマ? ちょっと変わった名前なんですね」

「日本語で言うとマーマで「私を好き」ノン・マーマで「私を好きじゃない」
っていう意味ですね」

「えっ それって花占い?」

「そうですね 花占いですね、
作り手が このワイン 「好きですか?嫌いですか?」と問いかけている様でもありますね」

「私 スキ! このワイン ラベルもカワイイし」

「ありがとうございます」
そういうと ソムリエは由美のグラスにワインを注いで
ほかの席へ行った

「由美ちゃん 占いって信じる?」

「そーね よいことは信じるかも
悪いことは・・・
信じないことにしてる」

「ちょっと 相性占いとかしてみようか?」

「えっ 平山君できるの?」

「うん タロットとか本格的なのは無理だけど トランプとかなら」

「あっ 私やったことある! ピラミッドみたいに並べていくやつ」

「いっ いや もうちょっとシンプルなやり方で・・・
えーと トランプがいるね
すみませ~ん」
そういうと 誠はさっきのソムリエのほうへ走っていった

(居酒屋じゃないんだから 大きな声で・・・
だいたい トランプなんてないでしょ)

なにやら ソムリエと話して席へ戻ってくると

「なんかトランプあるみたい 探して持ってきてくれるって」
嬉しそうにいう

「え~ ソムリエさんも忙しいのに・・・」

・・・・・・・・・

「お待たせいたしました」
ソムリエの手に プラスチックケースに入ったトランプがある

「これでよろしいですか?」

「ハイ! 本当にありがとうございます」

「何か ゲームでもされるのですか?」

「いえ 二人の相性占いをしてみようかと思って・・・」

「良いですね このワインにぴったりだ
トランプがあってよかった」
ソムリエはそういって笑った

「そうだ! 甘えついでに ソムリエさんと由美ちゃんの相性占いしてもらって良いですか?」

「やめなさいよ ソムリエさんも忙しいのよ」

「いえ 大丈夫ですよ じつは今 ヒマしてるんです」
ウフフと笑う

そういえば 時間が遅いのか お客さんは自分たちだけになっていた

「じゃ 由美ちゃん トランプを切り混ぜて」
誠は トランプを由美に渡した

「きり混ぜるんだけれども 回数があるんだ
ソムリエさん 失礼ですけど お名前教えてもらってよいですか?
フルネームで・・・・」

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○

「フンフン 7文字ね
じゃ 由美ちゃん 7回だけ切り混ぜて」

「えっ 7回?」

「そう 相手の名前の数だけ
相手のことを思いながら」

「えーーー」

「なんか 照れますね」
ソムリエが言う

「こっちも照れるけど・・・ ソムリエさんかっこいいからやってみるわ」

「いや もっと照れるじゃないですか」
ソムリエははにかんで笑っているが まんざらでもないみたいだ

1・2・3・4・5・6
「7回っと」
由美は手際よく7回トランプを切り混ぜた

「じゃ ソムリエさん 相手を思いながら裏向きのままで
1枚引いてください」

「私が1枚引けばよいんですね」
そういって ソムリエは トランプから1枚引いた

「じゃ 何のトランプか見てみてください」
表を向けると
(クローバーの8)
だった

「これで何がわかるの?」
由美が言う

「クローバーは優しさだね で 8は広がりをあらわすんだ
2人の関係はソムリエさんが由美ちゃんを
父親のようにやさしく見守っている関係ということになる」

「まあ なんとなく当たっているといえば当たっている・・・ かな?」
由美が言った

「そうですね 当たっている感じですね」
ソムリエもそういった

「あと ダイヤだったら金銭的な関係 スペードだったら敵対
ハートは これはもう愛情」

「そうね・・・ イメージはなんとなくそんな感じね」
「そうですね」
二人がうなずいた

「で・・ なんだけど・・」
誠の顔が少しこわばった
ちょっと緊張しているようにも見える

「由美ちゃんと僕の相性なんだけど・・・」
誠の言葉が詰まった

すると ソムリエが
「では 失礼いたします 由美さんとの相性が良くてホッとしました
私も楽しませていただきました ありがとうございます」
といって 誠の顔をちらりと見ると
カウンターのほうへ去っていった・・・

「で・・・・
・・・・・・・・
もし・・ もしも僕がハートのAを引けたなら
僕と付き合ってほしいんだ・・」

「えっ!!」
突然の申し出に由美は動揺を隠せない

「一目ぼれなんだ・・・・
本当は・・・・ ずっと・・・・」

「そ・・・そんなこと・・・」

少しの間 二人の間に沈黙があった・・・・

実は 由美もなんとなくわかっていた
誠が自分のことをもしかしたら好きなのかな?
とは思っていた
由美もドキドキは無くとも
ゆっくりと もしかしたら好きになってるかも
と思い始めていた

「トランプは ジョーカーを除いて52枚
52分の一の確立に賭けてみたいんだ」
まっすぐに由美の目をを見つめながら誠が言う

(この人こんな人だったかしら)

今の由美には 誠が何か別の人のようにも見える
ひさしぶりに「ドキドキ」する気持ちだ

「いいわ ハートのAが引けたなら・・・」

こんなギャンブル的なことに自分の気持ちを預けてみるのも
悪くないと思った
なによりこの「ドキドキ」に抗うことができない自分がいることを
十分にわかっている

「じゃ 僕の名前
ヒ・ラ・ヤ・マ・マ・コ・ト
って 7回 名前を呼びながら きってくれる?」

「うん」

「ヒ・ラ・ヤ・マ・マ・コ・ト」
由美は誠の名前を 一文字一文字口にしながら
丁寧に 慎重にトランプを切り混ぜた

「良いね
じゃ トランプを僕に貸して」
誠はトランプを受け取ると

目を閉じ 深く深呼吸をして
スーッとトランプの束の中から 1枚抜き出した

「この想い
    1/52の確立なんて
       こえられないわけないよ」

誠はそういうと トランプを表に返した

それは まるで決定事項だったかのように
「ハートのA」だった・・・



解説
ここでは「ストリッパーデック」とよばれるトランプが使用されています
最後に「決定事項だったかのように」と書きましたが
このトランプを使えば それは本当に「決定事項」となります。
トランプ自体にある仕掛けが施されていて
相手の覚えたトランプを瞬時に抜き出すことが可能です。
それも難しいテクニックなど使わずに・・・
応用範囲の広いトランプなので 1つ持っていて損は無いでしょう。

手品のある情景 ~Magical Situation~

手品のある情景 ~Magical Situation~

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-01-23

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. Catch The ShootingStar
  2. 恋占い