シロ 0

蒼、鷺が飛ぶ、灰色の空、欠けた雨、そして色味のない世界の五作品をもって、シロ 0 とさせていただきます。
0 が完結したので、全てまとめました。

世の中には"魔女"という言葉がある。それは、タネのないマジックのような不思議な術を使う女をそう呼ぶ。
だがそれは謎と恐怖から生まれた悲劇の産物でしかない。

油蝉が暑さを引き立てるように抑揚をつけながら鳴く夏。
入道雲が蒼く澄み渡る空に、堂々と聳え立つ夏。
そんな夏のある日、文化祭を前にして奇怪な事件が起きた。
それはある高校の教室で起きる。
毎日のように誰かの机の上に花瓶にさされた一輪の花が置かれるようになったのだ。
死者を弔うかのようなその行動。
誰が行ったのか、教師や生徒がすぐにわかるはずもなく、淡々と毎日が過ぎて行った。
ある月曜日、犯人として疑われた少女、"神楽坂真尋"(かぐらざか まひろ)がいた。
彼女はアルビノという病気を患っており、肌や毛は白く、瞳の色素も薄い為に、彼女自身でも気にしているところがあるのか人と接するのを極力避けており、小さい頃から周りから浮いていた。
その彼女が何故犯人として名前が挙がったのか。
それは彼女の家が近く、早朝もしくは夜に仕掛けられる、という単純で、馬鹿げた理由だった。

そして、悲劇は始まる。
彼女の席は窓際の一番後ろ。いつものように白地のセーラ服にパーカーを着ており、スクールバックを机の横に掛けて音楽プレイヤーの電源を入れて音楽を聴き始めた。
「神楽坂さん………」
委員長の"赤坂千鶴"(あかさかちづる)が話しかける。
それを聞いてイヤホンを外す。
「何?」
「あなたでしょ?毎日花瓶をああやって置いてるの」
教室全体に沈黙が流れ、開け放たれた窓から風が吹く音がよく聞こえた。
「違う」
廊下にいる人も教室の異様な雰囲気を感じ取って覗き込み始めた。
「って言っても信じないんでしょ?好きに私が犯人だって思ってればいいよ。一応もう一回言うけど違うからね」
そう言うと外したイヤホンを耳にはめて再び音楽を聴き始めた。

その日から、執拗な"いじめ"が始まった。

毎朝机の上に白い百合の花が置かれていたり、上靴を隠されたり、教科書がゴミ箱に捨てられていたり。
でも彼女のいじめが酷くなるに連れて花瓶にさされた一輪の花が誰かの机の上に置かれるということが無くなることはなかった。
「魔女が儀式をしようとしている」と噂され、それを聞いた人がまたいじめを始めた。
学校にもはや彼女の居場所はない。それでも彼女は何も言わず、学校に通い続けた。

そんな彼女にも唯一の友達がいた。"隗龍也"(けわしたつや)である。
ただ中学から一緒だっただけであるのだが、なぜか彼女にまとわりつく。
「真尋、いいの?あれで」
「いい。関係ない」
「だってお前じゃないじゃん」
「うん、いいの」
「あれか」
「うん」
そして彼女は家へ帰って行く。

次の日の朝、彼女はいつも通り学校に行く。彼女が行く時間は予鈴がなる頃だが、いじめのせいで隠されたものを回収しないといけないので、十分ほど早めに学校に着いた。
だが今日、その行動は意味がなかった。久しぶりに上靴が所定の位置にあったので、すぐに教室に向かうことが出来たからである。
教室に彼女が着くと、彼女の席の周りに人が集まっていた。
「何やってるの」
「やべっ」
机にマジックペンで"死ね"とか"魔女狩りにあえばいい"とか書かれている。多分雑巾で拭いたところで綺麗に消えるとは到底思えない。
「ばっかじゃないの」
いじめ続けられる真尋。
こんな目にあっても彼女が耐え続けられる理由があった。

この日、彼女は隗を屋上に誘い、一番高いところに寝そべっていた。理由はただ、空に近づきたかったから。
「……大丈夫?私といて」
「大丈夫だ。お前が一番大丈夫じゃないだろ」
彼女は音楽プレイヤーを出しイヤホンを左耳にはめる。そして右耳用のイヤホンを隗に差し出した。
「ん」
隗はそれを受け取る。
そしてボタンを押して音楽が流れ始めた。
「新曲」
その曲が終わってリピート再生されると真尋が口を開いた。
「凄いよね、世界が広がる感じがする。それに屋上に来たからいつも以上に広がった。凄いな」
「あぁ、そうだな」
「大丈夫。私は大丈夫」
「そうか」
音楽プレイヤーの充電が無くなるまで二人はそこにいた。
夏の昼は長い。

「先生」
「どうした?隗君」
「先生はいじめが起きてるって、思います?」
「うちのクラスに限って無いと思いますよ。去年から凄くいいクラスだったし。あまり軽率なことを言うことはお勧めできませんね。」
悪気のない先生を責める気にはならなかった。
「そうですか」
大人がいじめを否定すれば、子供だって否定する。
人が否定すれば皆否定する。
否定は肯定の何倍も簡単である。

次の日の早朝。
クラスの真尋の席に黒い影が座っていた。
すると誰かがやって来る。その人は左手に花瓶を持ちつつ、右手でドアを開けた。
「やっぱり、お前だったのか」
クラスで待ち構えていた人は他の誰でもない、隗であった。
「ふざけんなよ」
「言わないでっ。誰にも言わないで………お願いだから…」
「何でこんなこと」
「いじめられてたからでしょ?」
ドアにもたれ掛かって真尋がそう言う。
「お前、いつの間に…!?」
「クラスは持ち上がりで前のメンバーとなんも変わらない。
学年が上がっていじめがなくなっても自分は楽しくない。
面倒なことを全て放るし。委員長だって押し付けられた。
今回の文化祭だって、全部いじめグループのやつらが勝手に決めて仕事押し付けて。
理由がそれだけじゃないだろうけど、ちょっとした恐怖を与えたかっただけでしょ?簡単な気持ちだったんでしょ?」
「うん……あいつらが嫌だった。どうしてもいじめから抜け出したかった。神楽坂さんを身代わりにしてしまったことは本当に申し訳ないと思ってる。でも私は……」
「だったら……」
隗が話終えると三人は吹き出した。

何人か生徒が教室に入ると皆呆然としていた。
文化祭の出し物が壊されていたのだ。このクラスでは喫茶店をやろうと準備していたのだが、ダンボールや板、布などが全て切り刻まれていた。
「誰がやったのよ」
「またお前か神楽坂!」
「私なわけないでしょ。誰かさんに隠された上靴を予鈴鳴るまでずっと探してたんだから」
「じゃあ誰が………」
「皆!そんなことより文化祭はもう近いのよ……早く直さなきゃ。皆でやればすぐ終わるよ!ね?」
「そ、それもそうだね」
教室中の生徒が一気に片付け、直し始めた。
「ったくなんて私が」
いじめグループの女子がそう言う。
「クラスの出し物なんだから。このクラスの人がやるのが当たり前でしょう」
先生が彼女達をなだめる。作業は幸いすぐに終わった。

真尋は学校の近くの少し古いアパートに一人暮らしをしている。
荷物を降ろし、充電器に音楽プレイヤーをさして、窓を開ける。
今日は風が心地よく吹いていて扇風機もいらなかった。
ピンポーン
「はーい、あ、大家さん」
「真尋ちゃんお帰りなさい。今日もやるのかい?」
「えぇ、明日が本番なので。ご迷惑をかけてすいません」
「いいのよ。真尋ちゃんの夢は私の夢なんだから。じゃあ」
「ありがとうございます。では」
彼女はヘッドフォンをつけ、音楽に聞き入った。

そして文化祭当日。
真尋は裏方だった。ひたすら飲み物を注いでいた彼女に隗が声をかけた。
「お前シフト終わっただろ」
「交代要員が来ない」
「そう、んじゃ俺が代わるから行けよ。終わったら行くから」
「ありがと。ちょうど頼もうと思ってた」
仕事が一区切りつくとすぐに真尋は教室を出た。

そして後夜祭、バンドや部活での発表も次々と終わって行った。
「はい、ありがとうございました!いやぁ凄かったですねいやぁ私もあんな声が出せたらなぁ。
っと準備が早い!さぁ、最後の人に移りましょう。
今回初出演!神楽坂真尋さんです、どうぞ」
「えぇっと……神楽坂真尋です。
と、その前に紹介したい人がいます」
その言葉を合図に赤坂さんがステージに出てきた。
「赤坂千鶴です。これから話すことは全て事実です。
私は去年、いじめにあっていました。辛くて、怖くて、それをこの神楽坂さんに押し付けてしまい、今では神楽坂さんがいじめられています。先生は気づいてくれません。親には言いたくありませんでした。毎日が暗い闇の中だったんです。
………私が何をしたって言うんですか!
コソコソやるくらいなら、堂々と言ってきなさい!
バカヤロォォー!!」
会場にいた人全員が唖然とした。
そして再び真尋が始める。
「私の夢は、シンガーソングライターです。
正直言って狭く厳しい道のりです。
想像してください。自分が机に座って仕事をしている姿を。
かっこいいと私は思います。でも、私がそこで何をしているのか、全く想像がつかないんです。
それよりも歌っている方が想像がついた。
だからこの道を歩みます。
いじめられたって、色んなことを自分のせいにされたって、一人だっていい。私には夢があるから」
「蒼」
彼女の音(夢)は魔法のように会場全体に弾け飛び、全生徒の心を震わせた。彼女の白く透き通った肌は、夏の夕焼けに映え、皆が見惚れていた。
そのライブの後、教室の物を壊したことを隗、赤坂、真尋の三人は告白したあと、花瓶の花についても赤坂自身で告白し、きちんとクラス全員に謝罪した。一方いじめグループは先生に呼び出されてだいぶしごかれた。
そして平和は訪れたが真尋の"魔女"というあだ名は消えることはなかった。

音が歌を作り、歌が詩を作った。
人の傷は消えないけど、音の魔法なら癒すことが出来る。
魔法はいつもあなたのそばに。

鷺が飛ぶ

単刀直入に言おう。私は同性愛者である。ゲイと言った方がわかりやすいだろうか。私の名前は岳琉(たける)。歳は二十一。
物心ついたときから女の子を好きになることが出来なかった。
嫌い、というよりかは友達、または家族以上に見ることが出来なかった。
と、言うのはよく聞くだろうか?
小説とか漫画とかテレビとか。
そんなところだと思う。大体間違っていない。
これ以外の言葉が見つからないので勘弁してほしい。
だからと言って電車で男の人を見つけたら襲うとか口説くとか変な目で見るとか、そんなことは無いので男性諸君、安心してくれ。
とりあえず私はそうだ。
と、前置きはここら辺にしてそろそろ待ち合わせの時間なので電車に乗ろうと思う。
今日は青山の映画館で先週公開されたSF映画を観ることになっている。
これは私がずっと応援し続けた川西(かさい)さんという作家の小説がついに映画化されたのだ。
やっと休みの予定が合って観に行けることになった。ウキウキしすぎて座っていられず、私はドアの一番近いところに立っていた。
すると私の前に可憐な女性が立った。大学生か卒業したばかりか。それくらいの歳に見える。
流行りの服に身を包んだスカートのよく似合う女性だった。
だが、私がその女性に運命を感じたり、好きになったりという感情はない。では何故私がこんなにも彼女を見つめるのか。
痴漢だ。
彼女が恥ずかしさで声を出せず、必死に堪えているのをいいことに後ろにいる男が彼女のお尻を触る。
男には後ろめたい気持ちはないのか。人を想う気持ちはないのか。
そう思うと私は激昂し、いつの間にか男の腕を掴んでいた。
「いい加減にしろ」
そう言って彼女と男を連れ、駅員室へ向かった。

「魔が差しただけなんです」
男はそう言う。魔が差しただけでこんなことをされちゃたまったもんじゃない。私はそう思った。
「あの、ありがとうございます。お礼と言ってはなんですが、お昼まだですか?」
「え?」
「お昼、食べに行きません?」
「え、あの……はい」
待ち合わせには十分時間があった。頼まれてしまうと断れないこの性格……直したいものだな。

「岳琉さんはこれからどこに行くつもりだったんです?」
彼女がナポリタンを食べながら私にそう聞く。
「人と映画を観に」
私はオムライス。
「彼女ですか?」
「……まぁ、そんなもん」
するとおもむろに彼女が鞄の中からトランプを出し始めた。一つ一つの動作が綺麗で女性らしさを感じた。
「ここにトランプがあります。七枚取ります。一、二、三、四、五、六、七枚。じゃあ数えたやつをもう一度数えます。一、二、三、四、五、六枚」
「あれ、一枚消えた」
自分で確認してみる。確かにカードが足りない。最初に数えた時は七枚きちっとあったのに。
「最初から六枚だったんですよ。
人間、最初と最後の印象ってのは違うものですね。
じゃあ私帰ります、岳琉さんもそろそろ時間でしょ?」
「はい、気をつけて」
「ここは約束通り私が払っておきますね。では」
彼女は手を振って歩いていく。ドアを開けて店から出る。店のガラスの外に彼女が歩いている。
とても素敵で魅力的な女性だった。話していても特に色々聞かれたわけではないし、女子独特の突っ込んでくる感じがなかった。
芝居というものを感じなかった。
私が普通の男だったら口説くだろうか。追いかけるだろうか。
よくわからない。
ただ、自由な恋はした覚えがここ最近ないな。と思い出した。

「遅い」
「すまん」
「香水の匂いがするぞ…女か」
「いや、実は」
待ち合わせには間に合ったのだがギリギリに着いてしまった。
私が話すことを最後まで聞いてくれる彼は彰人(あきと)。実は三年ほど前SNSで知り合ったのだが、もうそんなことは関係ない。
「やるじゃん岳琉。てか行こ。さっき時間調べたら二十分時間を間違えてた」
「ちょ、早く言ってよ」
私と彰人は小走りで映画館へ向かう。
中に入るとすでに予告が始まっており、少し損をしたような気分になった。
私はコーヒーのSを頼み、彰人はポップコーンとコーラのLを頼んだ。
私は映画の途中でトイレに行くのが嫌でこれしか買わなかったのだが、彰人は昔からポップコーンとコーラというセットを気に入っている。何故かはわからないが、こういうところだけ少し子供っぽい。普段の言動と比較すると腹を抱えて笑う友人も多いだろう。
「……岳琉…始まるぞ」
「おう」
映画館で出すこの小さな声。私は息と声が半々に混じった感じの声が自分だけに注がれている感じがして好きだ。

「面白かったな、ヒロインのミサの性格の悪さが引き立つんだよな」
「そうそう」
近くのカフェに移動したら感想の言い合いが始まった。これは当分続きそうだ。
「あ…………あの人…」
カフェの外に女性がいるのが見える。花屋の店員だろうか。エプロンをして花をいじっている。
「誰」
「ほら、今日電車で痴漢されてた女の人」
「………へぇ」
少し機嫌を悪くしただろうか。
「素敵な人だな」
「うん」
彼は私の気持ちをわかってくれていたようだ。
すると花屋にいる彼女の横をメガネをかけた男性が通った。すると彼女の顔つきが変わる。
彼女が急に動いた。
「えっ」
左手に銀色の物が見えた。
「キャーッ」
カフェにまで聞こえてくる悲鳴。
地面に倒れる男性。
それを前に仁王立ちしている彼女。
そして彼女が持っているナイフ。
彼女が、殺した………。
「嘘だ……嘘だろ……」
「……岳琉」
その後の記憶はあまりない。

あの後カフェを出てからどこにも行く気になれず、彰人の部屋に来た。彰人の部屋は殆ど初めてなのだが、彼女のことが気になりすぎて、そわそわとか感動とかあまりなかった。
「ん、コーヒー」
私は黙ってそれを受け取る。
一口飲むと何かが溢れた気がしてコーヒーを机に置いた。
彰人は何も言わない。ただただ、二人しかいない部屋に私の嗚咽が響く。
彼女の話を聞いたわけではない。もしかしたらとてつもない恨みをあの男性に持っていたのかもしれない。ストーカーされていたのかもしれない。
でもそんなことよりも彼女が起こした行動自体にショックを覚えた。
最初に会った時はあんなに可憐で素敵で魅力的な女性だったのに、まるでトランプのマジックのように騙されてしまったようだった。
「怖かったな」
彰人がそう言うと、私に近づいた。多分彼に私を慰めるつもりはない。救えると思ってない。
でも、彼が私の背中に回した手が、言ってくれた言葉が私の何かを流した気がする。
「ごめん………」
「いいから……」
私達は暫くその場所から動かなかった。
私は騙されたわけではない。
でも、騙された。
当分女性を好きにはなれない。

灰色の空

神楽坂真尋(かぐらざかまひろ)。それが彼女の名前。
白地のセーラー服に白いパーカーを着て、耳にイヤホンを入れ、音楽プレイヤーで音楽を聴きながらバスに乗っている。
彼女はバスの中で一人異彩を放っていた。理由は彼女がアルビノという肌や毛が白く、瞳の色彩が薄くなってしまう病気を患っているからだ。
その白い髪は短くカールして、透き通った肌の周りで揺れる。
「お姉ちゃん」
「ん?」
近くに座っていた小さな男の子が彼女に声をかける。
「何でそんなに白いの?」
男の子がそう言うと、母親と思われる女性があたふたし始めた。
「お姉ちゃん病気なんだ」
「へぇ、綺麗な病気だね」
「ありがと」
会話は短い。だがあまりそう言われない彼女にとっては嬉しい一言だった。
(綺麗な病気……か)
今日も素敵な一日が始まりそうだ。

今日は彼女が大好きな"MAKI"というシンガーソングライターのライブで、渋谷の駅前に彼女はいる。
渋谷の雑踏の中に彼女は入り込んで行く。ライブにはまだ早い。
ベンチに座り込み、人混みを見つめる。満面の笑みで電話をする女性、相手は彼氏だろうか。時計を見ながら走る男性、遅刻しそうなのか。ゴミ拾いをするお爺さん。ボランティアか、仕事か。
色んな人がいる。正直彼女は居るだけで目立ってしまうのであまり長居はしたくなかったのだが、その色んな人がいる空間が好きだった。色んなことを知ることが出来る気がして。自分に無い物を得られる気がして。

時間になって彼女はライブ会場に着いた。周りには多くの十代から二十代の女性達。彼女はニコニコしながらその時を待った。
すると突然パッ、と電気が落ちる。
「こんにちわ〜!!MAKIです!」
キャーと歓声が起こる。
「聞いてください、純白の姫」
彼女はMAKIの歌を魔法のようだと思っている。
その魔法は人々の心に入り、その中で響き、弾けて心を振動させる。
中には泣き出すものもいた。
彼女はそんなシンガーソングライターになりたい。そう思っていた。

「今日はありがとうございました!えー、また、会いましょう!」
MAKIはそのまま舞台袖にはけていった。
そんなMAKIを見て彼女は何かを感じたのか、珍しく音楽プレイヤーで音楽を聴かずに帰った。

「昨日のライブどうだった?」
学校についてすぐに中学からの友達の"隗龍也"(けわしたつや)が話しかけてきた。
「楽しかったよ」
「そっか」
特に会話は続かなかったが、そのまま近くに隗が居続ける。
携帯をいじり続ける隗は、思い出したかのように再び口を開いた。
「………今まで黙ってたんだけどさぁ………MAKIってさぁ………バイト先の常連客だったりするんだよね」
「はぁ!?何で黙ってたの?」
「いや、一応お客様の個人情報ですし」
「そ、そうだよね………今度行っていい?」
「っていうか今日来るんでしょ?」
「………バレた?」
「来なよ」
「うん」

そして放課後、隗のバイト先の喫茶店"ピアニッシモ"でMAKIを待つ。
ピアニッシモはあまり広い喫茶店ではなく、こぢんまりとした雰囲気がまたいい。
すると閉店間際にMAKIがやって来た。ウィッグに帽子、伊達眼鏡と変装をしていて一瞬誰かはわからなかったが、彼女はMAKIであると気づいた。
「いらっしゃいませ、もう閉めますのでごゆっくり」
MAKIは店長に会釈をして奥の席に座る。そこはちょうど彼女が座った席の隣だった。
彼女はノートを出して、店に来てからずっと作詞をしていた。
そしてMAKIも同じようにノートを広げた。バッグから銀朱色のペンを出してゆっくり書き出す。
彼女はMAKIの邪魔をしては悪いと思い、たまにMAKIの姿を見つつ、自分の作業を続けた。

MAKIが来て三十分程経っただろうか。二人とも夢中になり、手以外動かない。
「「空……」」
突然彼女とMAKIがそう呟く。
二人は自分が言ったはずの言葉が同時に隣から聞こえ、驚きお互いを見つめあった。
「あっ………すいませんMAKIさん」
「あなた……誰?」
「あの、神楽坂真尋と言います」
「真尋さん?あなたは今何をしてるの?」
「私、シンガーソングライターになりたくて、今作詞をしてました……」
「へぇ……ねぇ、今ここで何か歌える?」
MAKIが身を乗り出して彼女にそう言った。カウンターから見ていた隗がえっと驚き、店長にこらっと怒られている。
「聞いて……くださるんですか?」
「うん、お願い。このギター使っていいから」
彼女はMAKIのギターを受け取り、深呼吸をして「蒼」を歌い出した。
どんなに辛くとも、自分が決めたことは最後までやり抜く。結果がどうなったって、やらないで後悔するよりやって後悔した方がいい。あの蒼い空に届くまで。
そんな「蒼」は、彼女自信の写し鏡だった。
歌い終わるとMAKIが泣いていた。
「ありがとう……本当に」
「いえ、こちらこそ」
その日は夜の帳が下りるまで話していた。

次の日の昼休み、屋上で委員長の赤坂千鶴(あかさかちづる)と隗と三人でご飯を食べていた。
「え?真尋ちゃんMAKIと会ったの?嘘〜!」
「うん、近々新曲出すんだって」
「そうなんだ!」
購買で買った焼きそばパンを食べながら隗は二人の様子を静かに見ている。その日の空は曇っていた。

翌週、MAKIの新曲が発表された。
「灰色の空」
彼女は音楽サイトでダウンロードし、屋上で聞こうと隗を誘った。
屋上に着くと突然雨が降り出したので、屋上へ出る階段のドアに寄りかかり、聞くことにした。
「いい?」
「あぁ」
彼女は左耳に、隗は右耳にイヤホンをはめ、音楽プレイヤーのボタンを押す。
すぐにギターとピアノの音が聞こえてきた。そしてドラムの音。
軽快に前奏が流れる。
そしてMAKIの息を吸う音が聞こえる。
「君の私を呼ぶ声が聞きたいの
毎日電話を掛けたいの
嫌がられるかな?
嫌われちゃうかな?
今日の空には雲が一つ
君みたいな大きな空に
包まれた雲
私は雲になりたいよ」
MAKIの透き通った声がこの歌詞に染まって幸せにしていく。
誰もがそう思っただろう。
彼女以外は。
「嘘だ……これ、私がこの前書いてたやつ……」
「真尋…」
「嘘だ嘘だ嘘だ!」
彼女はイヤホンを外して雨で冷たくなったドアを勢い良く開け、屋上に飛び出した。
「私が作った歌なのに!MAKIが盗むはずがない!!私が作った歌なのに……!!」
隗のバイト先の喫茶店で書いていたこの歌詞を知っているのは彼女自身と、一緒に話をしていたMAKIだけ。なのにMAKIが自分の歌を歌っている。
自分が一番尊敬する人に自分を奪われた。
そして彼女は叫ぶ。
でも、彼女の叫びは雨が消し、誰にも聞かせようとしない。
そして彼女は崩れ落ちた。
「私が……私が……!」
隗が駆け寄り、彼女を後ろから包み込んだ。
「真尋っ」
「嫌だ……私の歌が……」
彼女の心が弾け飛びそうなのを必死に繋ぎとめる隗。
「離さない……」
彼女に回した手に力を込める。
「許せない……」
「あぁ、追い越してやろう。真尋の歌で。追い越してやろう」
「うん……ううっ」
彼女に冷たく降り注ぐ雨は、悲しみを流すことはなかった。
そしてその雨は地面に降り注ぎ、彼女の目の前に鏡を作った。
鏡の前で、彼女は泣き叫ぶ。
そして彼女は涙によって歪んだ景色の隙間に灰色の空を見た。


それから数日経ち、MAKIというシンガーソングライターはファンの一人に刺殺された。

欠けた雨

夏休みのその日は少し強めの雨が降っていた。
神楽坂真尋(かぐらざかまひろ)という少女がお風呂から上がってTシャツに短パンという姿でソファーに座った。
彼女はアルビノという肌や毛、瞳の色が薄くなる病を患っているため、少し和風なアパートから浮いている気もする。
高校生ながら一人暮らしをする彼女はそのせいか、少し大人びて見える。
すると彼女はリモコンを手に持ち、テレビをつけた。
「今日の特集は、先日「灰色の空」という曲を発表して亡くなったシンガーソングライターのMAKIさん。そんな彼女は一体なぜ亡くなったのか。犯人は誰なのか。
それではVTRどうぞ」
彼女が一番に尊敬するシンガーソングライターのMAKIは先日ファンによって刺殺された。
だが、その直前に発表した「灰色の空」という曲。これは真尋が作詞した曲であり、一度だけMAKIに会った時に見せた曲であった。
そう、歌を盗まれたのである。
どれだけのショックを受けただろうか。ギターやピアノが奥の部屋に押し込まれている。
そのニュースを見る彼女の目は少し淀んでいるように思えた。
彼女はテレビを消し、窓を開けた。
闇の中で降る雨は、夜の世界を一層狭くさせている。
「あれ……」
その雨の中に誰かがいた。
夏とは言え流石に雨の中にいては風邪を引いてしまう。
十分経っても二十分経ってもその人はそこから動かなかった。
彼女はパーカーを羽織り、外に出る。
道路に佇んでいた人は、彼女の存在に気づかない。
「風邪……引きますよ」
彼女は傘を佇んでいた人に差し出す。中性的な顔立ちをしている男性だった。
「あ………」
「大丈夫?」
彼は泣いていた。
彼女は悩み、家に入れることにした。
「うちに入りません?」
「いや、でも」
「傘持ってない人がわがまま言わないの。あ、ちょっと待って、タオル持ってくる」
彼女は彼を玄関に立たせ、タオルを取りにいく。

三十分ほど経っただろうか。髪や服が乾いたが、涙はまだ流れていた。彼女は横に座る。
「特に聞かないけど、言う気になったら言って。私は少し寝るね」
彼女はソファーに座り、目をつぶった。
彼はその様子をずっと眺めていた。
疲れていたのか、すぐに寝息を立てた彼女の顔にかかる前髪を整えながら左右に分ける彼。
そして彼女の横で彼も目を閉じた。

朝になって、二人はどちらかが目を覚ました音で目を覚まし、目を合わせた。
「おはよう……」
「……おはよう……あの、名前、聞いてもいい?」
「深月…大輝(ふかつきだいき)」
「仕事は?」
「大学生。バンドでヴォーカルもやってる」
「へぇ……」
すると真尋は奥の部屋に押し込んでいたギターやピアノを引っ張り出した。
「……どんな曲やるの?聞かせて」
深月はピアノの前に座り、弾き始めた。四小節間の前奏が終わると歌い出した。
それはまるで光が結晶となって弾けるようだった。中性的な声は高い音も低い音も自由自在に操り、絶対的な安心感を与えていた。
でも、真尋がその声から感じ取ったものはそれだけではなかった。
"悲しみ"
その声からは悲しみが伝わってきた。社会に認められない悲しみ。居場所がない悲しみ。
今にも胸が張り裂けそうだった。
すると深月は歌うのを止めた。
「そうやって聞いてくれたのは君が初めてだよ」

そして、一日が始まった

窓から夕陽がさして少し目が痛い時間、真尋はライブハウスの観客席の真ん中に立っていた。
観客の過半数を女子高校生が占める中、ステージでは深月が歌っている。彼には、ドラム、キーボード、ベース、ギターのアシストがあるからなのか、家で聞いたようなあの悲しみは伝わってこなかった。
「来てくれて……ありがとう」
その何てこと無い一言は観客を魅了し、人々の目が溶けてゆく。
彼は輝いていた。
ステージの上で輝いていた。
雨に打たれ、悲しみの塊だった彼は、ここには居なかった。

ライブが終わると、彼女は裏の部屋にメールで呼び出された。
「お疲れ様」
彼は片手を上げ、荷物を片付け続ける。額や首筋に残った汗に彼の音楽に掛ける気持ちを感じ取った。
するとギターを引いていた愛華(あいか)が彼女に話しかけた。
「ねぇ、あなたどこで彼と知り合ったの?」
彼女は答えに困った。
「どこだっていいだろ」
深月がそう答える。
「ふぅん、まぁいいけど」
すると部屋にスーツを着た男の人が入ってくる。
「あれ? その子誰?」
と、男の人は言う。
「あ、あの、神楽坂真尋です」
「この子昨日知り合ったの。この人は松川さん。俺らのマネージャーやってくれてるの」
「こんにちは、真尋ちゃん。松川彰人(まつかわあきと)です。よろしくね」
(マネージャーさん……か……)

そしてこの後、彼女は何人かと連絡先を交換して解散した。
彼女はと言うと雨が降って来たのでレストランの階段の脇の屋根に失礼する事にした。きっと少し待てば止むだろう。
彼女はいつもこういう時は曲を作って時間を潰す。
ありふれた言葉を摘んでパズルの様にはめて行くのはとても楽しく、そしてその歌詞に音を付ける事はもっと楽しいと思っている。
彼女はたまにこう言う。
『歌というのは歌詞があって、音があるから楽しいと思う。
歌詞があって音がなかったらそれは詩だし、音があって歌詞がなかったら少なくとも私は不完全燃焼だ。
だから私が歌って、人が歌って楽しいと思える歌を作る様にしている』と。

「……はぁ、お腹空いたなぁ」
よく思い出せば彼女はライブが終わってから何も口にしてない。レストランから香ってくるものがより彼女の頭を刺激してお腹の虫が歌いだす。
すると階段から誰かが下りてくる音が聞こえたので、とっさに彼女はお腹を隠す。
「彰人、今日も深月君達良かったね」
(男の人の声だ。彰人……あ、マネージャーさん)
「でも、やっぱりあいつらにはまだ何か足りない。特に深月。あいつの心の中に何かが足りないんだよ。それが埋まるまでは多分、売れないし、本当の意味で良くはならないよ」
「彰人が言うならそうなのかな」
階段を下りてタクシーに彼らは向かった。彼女の姿には気がつかなかったようだ。
(深月君に……何かが足りない、か)

彼女は雨が止んで来たので、屋根から顔を出して駅に向かって歩く。
すると後ろから誰かに肩を叩かれた。
「うわっ」
彼女はびっくりして声をあげてしまったが、彼女の肩を叩いた人の正体は深月だった。
「なんでここが?」
すると深月が携帯の画面を見せる。
どうやら松川さんに私の事がばれていたようだ。
「送っていくよ」
「え、でも」
「傘持ってない奴がわがまま言うなよ」
「……ありがとう」
私はふと思い出す。
松川さんが言っていた、深月には何かが足りない、という言葉が。
「深月君……あなたには何が足りないの?お金?優しさ?情熱?やる気?それとも……」
私のその言葉を遮る様に彼は傘を開いたまま地面に放り投げた。
それと同時に彼女の携帯から着信音が鳴る。だが彼は気にせず彼女の肩を掴み、唇を重ねた。

彼女は彼の瞼の奥にある何かを見つめる事しか出来なかった。
そう、瞼の奥の何かを。
彼女の携帯は、バックの中で光り、鳴り続けた。

色味のない世界

ある喫茶店に一人の少女がいる。
夕陽が喫茶店の窓から入って、少女の身体を橙に染めていく。
彼女の名前は神楽坂真尋(かぐらざかまひろ)。
よく見ると髪の毛が金色なのがみえるだろうか。正確に言うと白なのだが、夕陽のせいで金色に見える。
彼女はアルビノという病気を患っている為、肌や瞳や髪の色素が薄くなっている。そのせいかアンティークな家具でまとめられたこの喫茶店の雰囲気から少し外れているように見える。
すると、彼女に近づくものがいた。
「真尋……何で昨日電話で無かったんだよ」
「……雨降ってたから」
「だからって」
「傘持ってなかったんだから仕方ないじゃない」
「……あっそ」
彼の名前は隗龍也(けわしたつや)。簡単に言うと、腐れ縁である。
この喫茶店でバイトしている為、彼女はよくここを利用する。
すると、彼女がバッグからノートを出した。ノートの表紙には「作詞ノート」と書かれている。
彼女はシンガーソングライターを夢見ているのだ。
「真尋、今どんなの書いてるの?見せてよ」
彼はノートに手を伸ばす。
すると彼女は鬼気迫る表情でそれを遮った。
「……だめっ」
「………ごめんな」
彼女がこんな反応をするのは他でもない、過去にMAKIという尊敬していた歌手に自分の歌を盗まれたからだ。
それからというものの、彼女はどこかふさぎ込むようになった。
するとピロリンと通知が鳴った。
画面には深月と書かれている。
彼女はスマホを開いた。
「明日事務所に来て」
たったその一文だった。

次の日、彼女は言われた通り事務所に行った。
人通りはあまり無く、自分にさす日が少し暑かった。
深月大輝(ふかつきだいき)と知り合ったのはついこの前のことだった。彼女は雨に打たれ続ける深月を家に入れ、二人は仲良くなった。
事務所の前で立っていると、松川彰人(まつかわあきと)というマネージャーが出てきた。
「あれ?お昼過ぎって伝わってなかった?」
「……いや、時間言われてなかったので」
松川は額に手を当て呆れた表情を見せた。
「……あいつ。ごめんね、俺がメールすれば良かった」
「あ、いいんです」
「じゃあ中、入って」
松川は彼女を事務所に入れた。

「単刀直入に聞くよ。君歌手、目指してるでしょう」
彼女は、首を縦に振る。
「君をこの事務所に入れることを真剣に検討している。だってあの深月が上手いって言うんだ、間違いない」
「じゃあ……私は」
「ただし、条件があるんだ」
そう言い、松川はドアに向かって入ってと言った。
現れたのは、少年。
「初めまして……ましろです」
「初めまして、神楽坂真尋です」
彼にも、色が無かった。
「こいつと、組んでくれないか?もちろん、君に断る権利はある」
「考えさせてもらえませんか?彼の事よく分からないですし」
「そうだよな、うん、分かった。そうしてくれ」


松川はレッスン室が空いているからと、そこに二人を案内した。
「当分ここ使っていいから。俺この後まだ仕事あるからよろしくね。あんまり遅くまでいるなよ」
そう言い松川は部屋から離れる。

松川の足音が遠ざかり、時間差で重たいドアがガチャン、と閉まった。
真尋は松川が用意したミルクティーを口にする。喉が誰かに締められているようで、ミルクティーがあまり通らない。
ましろは自分のその前髪をいじる。
沈黙がしばらく続いた。
目が合わない。二人は話すタイミングを完全に見失ったようだ。
すると、椅子の背にかけていた真尋の日傘がカタンと倒れた。

「「き、君もアルビノ?」」

二人は同時に言った。
少年か少女か遠目から見たら分からない体格や顔立ちをしている二人は目を大きく開き、お互いを見つめる。それはまさしく合わせ鏡のようで、純白の二人はその場で吹き出す。
「ぷっ、改めましてましろだよ」
「神楽坂真尋。……君と組むなら私、まひろって名前にしようかな。ちょっと似てるし、響きがいい」
真尋は日傘を椅子の背にかけ直しながらそう言う。
「そうしなよ」
ましろはミルクティーを一口飲み、もう一度口を開いた。
「俺ね、ほとんど記憶がないんだ。記憶が無くなったのは一昨年の夏だったかな。何で無くなったのかも分からない。今は、学校に通いながら記憶が戻るのを待ってる」
ましろは頭を掻きながら蛍光灯を見つめて話す。


気がついたら自分は真っ白で、人と全く違う。しかも記憶がないなんて、きっと混乱しただろう。今まで色味のない自分に苦労してきたけど、彼はそれ以上の苦労をしたんだ。と、ましろの話を聞いた真尋は思う。
「俺には役目があるって思ってるんだ。それが何かは分からない。
だけど……絶対に思い出す」
真尋は、スカートの裾を握りながら口を開いた。
「私に、その手助けは出来るかな」
ましろはその白い髪の間からまん丸の目を出し、細める。
まひろの目を見て、ゆっくりと。


もちろん


都会の真ん中の、あるライブ会場。
深月率いるバンドグループ"MARKER"がステージの上でライトと歓声を浴びていた。ドラムやベースの波は足の裏から響き、ギターやキーボードの音は身体を操る。そして、その全てを深月の音がまとめていた。丸く、優しい音なのに、どこか刺々しい。そんな音楽だからこそ、多くの人間が彼らのファンになるのだろう。
「えー、皆に紹介したい人がいます。僕らの後輩になるディュオです。彼らの名前は、"White"」
深月は締まりのない声でそう言った。会場は一度暗転し、少し経つとステージの真ん中にスポットが当たった。そこには、赤と青のフォーマルな服を着た二人。
「ましろだよー」
「まひろです。Whiteという名前で活動してます。今日は二人で立つ初舞台です。緊張してるけど、よろしくね」
まひろはギターを、ましろはキーボードを。二人は見つめ合い、曲が始まる。





多くの人々は、色味が無い=白だと思っていた

だけど、

色が集まると、黒になる
今、世界のほとんどが灰色に変わった

そんな色こそが、色味が無いのだ

そんな事訴えたって誰もが信じなかった

だけど、

ある二人の天使が簡単に人々を信じさせた

白こそが、一番の色だと


色味のない世界を塗り替える……




「シロ」
………………始動。

シロ 0

全てのキーパーソンが揃いました。
それでは、シロ 1 でお会いしましょう。

シロ 0

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更新日
登録日
2014-10-06

CC BY-NC
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  1. 鷺が飛ぶ
  2. 灰色の空
  3. 欠けた雨
  4. 色味のない世界