隣の席の松本くん
隣の席の松本くん
何処にでもある田舎町。
何処にでもある、何の変哲もない駅から徒歩で約5分程度の場所に、何処にでもある、普通の公立高校がある。
高校の名は、『俺はあの時から聞こえてるんだよ…君の声が』高校である。
略して、『てる』高だ。
え?名前は普通じゃないだって?
そんな事を言ってはいけないよ。
そんな事に触れてはいけないよ。
俺は三十路だよ。
………。
そのなんとかという高校の2年3組のクラスの日常。
俺は脇役の沢渡TEM彦。
2年3組のクラス委員を半年前までしていた。
何故辞めたかって?そんなことを聞いちゃいけない。
世の中には知ってはならない事も、まあまああるんだよ。
そんな事はどうでも良いんだ。
今日は朝から機嫌が悪い。何故かって?
今日は何やら転校生が来るらしいんだ。
こんな時期に転校生とは…。
高校で転校生ってだけでも珍しいのに、こんな時期に……。
俺は神経質で、超がつくほど引っ込み思案だから、転校生なんて以ての外だ。緊張して、何を喋っていいのか分からない。どういうアプローチを心がければいいのか分からないのさ。
だから今日は朝から機嫌が悪いんだ。
許してくれ、読者。
俺は天才なんだ。
かっこいいんだよ、だから……許してくれ。
『何言ってんだお前、馬鹿じゃないのか?』
え?
何故、俺の心の声が…。
『いや、お前さっきからずっと独り言言ってるぞ』
そ、そんなバナナ…!
『古っ』
この、空気の読めない男、俺が唯一認めた世界で2億番目に頭の良い男。
名前は忘れた。多分山田だろう。そういう事にしとこ。
兎に角、この男には関わらない方がいいですよ、皆さん。
この男に何度殺されかけた事か…。
山田空気読めない太郎とは関わらない方が身の為…。
『誰が山田空気読めない太郎だって⁉』
頭を殴られた。
痛いよ、ママ。
『変なあだ名付けやがって、俺は三陸股三郎だ!』
『小学校から同じクラスなのに忘れたのか⁉お前は馬鹿か⁉変態か⁉』
俺は馬鹿ではない。
散々な言われようだ。
なんであんな空気の読めない野郎にそんな事を言われなきゃならないんだ。
皆さんだって忘れるでしょ?人の名前くらい。
え?忘れないって?
偽善者めっ。
俺は馬鹿なんかじゃない。
変態なのは確かだが。
………。
嗚呼、なんか眠くなってきたぞ…。
そろそろ寝ます、また明日。
それにしても、松本くんって誰だろう?
隣の席の松本くん