僕のマドンナ
俺は28歳。部下が美魔女で、色気があるので会社でも憧れのまと。
俺の同僚が彼女を見て好きになる。だが、俺も彼女の上司でもあり憧れている。
彼女が選ぶのは?
色っぽい部下
上司がまた企画書の催促をして、そのせいで午前1時を過ぎようとしていた。
「疲れませんか?」
俺も疲れていたが、遅くまで付き合っている美魔女と言われている部下の斎藤さんに声をかけた。
「疲れちゃいました」
と彼女も相当弱っているのが、声で分かった。
「もう少し、頑張ってください!2時には、かえりましょう」
とねぎらってみせた。
「そうですね。その方がいいですね。上司に怒られないためにも!」
と彼女もやる気が出てきたみたいだ。
「あー、これで終わりました!お疲れ様です。遅いので送りますよ」
と彼女に言うと
「帰り道、反対じゃなかったかしら?」
と言われたが、2時も回っていたのでこれくらいしないと男がすたるというもんだ。
「そうですね。お願いしようかしら」
彼女も行為に甘えてくれるようだ。
「じゃあ、俺の車の前で待ってて下さい。すぐ、行きますから」
と伝えて、俺は急いで車に向かった。
彼女は俺の来るのを待っていた。車のエンジンを掛け、彼女を乗せて車を走らせた。
「家は何処でしたっけ?」
俺は会社の社員名簿を見て知っていたが、知らない振りで聞いてみた。
「世田谷です。そこまでお願いします!」
了解と言った後アクセルをふかして夜の街を飛ばした。
彼女の周りには、いつも男が寄って来て、超がつくほどきれいなので、彼女のことを
会社の男たちは美魔女と呼んで憧れていた。
俺もその一人だ。
その彼女が俺の車に乗っていることも奇跡なのだが、顔はポーカーフェイスを装った。
このまま帰るだけでは、寂しいというか、もう少し一緒にいたい気持ちが抑えきれず、
飯、おごりますからいきませんか?」
俺の精一杯の言葉がこれだった。
「うふっ!まさか誘われるとは、思いませんでした。だって私の方が年上ですもの」
と言って見せた笑顔はまさに男を虜にする微笑みだった。
彼女は「連れてって下さい!おまかせで…」と俺の袖を引っ張ってそう答えた。
「時間も遅いんで、着いたら起こしますから寝ててもいいですよ」
と気使いながらも、寝顔が見れたらいいのにと思っていたのも事実であった。
彼女とデート?
彼女とデートしているような錯覚さえしている俺だ。
こんなに意識したことが会っただろうか?
今まで綺麗だと思うことはあっても、とても気になる存在になったことに気付くのだった。
彼女が不意にもたれかかってきた。
「んっ?」
助手席の彼女は眠ってしまった。
俺も男。
理性を押し殺してなんとか食事ができそうな場所へ着き、ようやく彼女を起こした。
「着きましたよ。起きてください」
眠そうな彼女が
「あっ、ここ何処でした?」
と寝ぼけた様子で聞いてきた。
「会社の帰りで、ご飯でも行きませんか?って誘って今、着いたんで起こしたんですけど。大丈夫ですか?」
目が覚めたばはりで混乱しているみたいだった。
「あ、そうでしたね。私、すっかり眠ってしまって。じゃあ、お食事にまいりましょう」
と起きたばかりの彼女は答えた。
彼女の寝起きの顔がまた無防備過ぎて愛おしく思えた。
店は赤レンガで建てられた洒落た外装だ。
中に入ると意外と店内は賑わっていた。
「ここなら、いいもの御馳走できそうです。好きなものありそうですか?」
彼女も店の様子をみて微笑んだ。
「お酒飲めるんですか?」
そんなに強くないけれど少し背伸びして
「普通ぐらいですよ」
と男らしいところを見せて答えた。
やっぱり女性が弱くないと、だらしない姿をさらすことになりかねない。
「お酒強いんですか?」
探りを入れて聞いてみた。
「カクテルが少し飲みたいなー!でも弱いんですけど。顔に出ますし」
やれやれ…といった気分だ。これくらいがかわいいんだ。
メニューを
二人で見た後、彼女が
「グレープフルーツのカクテルと、一緒にいろいろ頼み、二人でつまみませんか?」
と言ってきた。
「いいですよ。なんでも食べますし」
と嬉しい気持ちをおさえながら店員を呼んでオーダーした。
しばらくして、何品か持ってきた。
テーブルにカクテルが運ばれ、二人は乾杯した。
「うーっん、うまーい!」
一杯目は料理をつまみながら飲み干し、彼女もほろ酔いぐらいになっていた。
疲れも癒され至福の贅沢といった気分だ。彼女は目を開けているのがやっとといった感じになっていたので、
「もう、帰りますか?」
と尋ねた。
「そうですね。もう、眠たいですし」
と言いながらも半分寝ているみたいだった。
「今、代行頼みますから、待ってて下さい」
店を出ると彼女が俺の顔を覗き込んで
「今日は一緒に過ごせて楽しかったです。また、行きましょうね」
と言ってきた。俺はその時彼女を強く抱きよせ
「もちろん、好きじゃなかったら誘いません。今度は時間を作って会いましょう」
自然な流れ?なのか神様の御加護なのか嫌がる様子はなかった。
代行が俺たちを乗せて彼女の自宅へ向かった。
車の中で彼女は
「甘えていいんですね?」
と俺に挑発しているみたいに言った。
「こんなこと言われると俺だって意識してしまうでしょっ」
と嬉しさを抑えながら彼女の様子をうかがった。
俺を無言で見つめ、その潤んだ唇に俺は吸い寄せられるようにキスした。
彼女の家に着き
「早く休んでください。また!」
とお別れの言葉をもらった。
このまま、どうにかなればと思ってしまったが、まだ最初なのでお預けもいいかと思った。
夜、彼女のことばかり考えていた。
谷口君とショウコ
「おはようございます。昨日はどうも」
と声をかけた。
「おはようございます。昨日は楽しかったです。また、ぜひ誘って下さい」と言われ脈あり?なのかと思って喜んだ。
仕事をしていると、上司が寄って来て、
「今度、中嶋の送別会があるんだが、各部署に連絡してくれないか?」
とのことだった。リーダーと呼ばれる各部署の責任者には声を掛けることにした。
昼のミーティングでみんなに伝えるとみんな喜んで参加するとのことだった。
「送別会は来週の月曜、時間は7時からでお願いします。
場所は、新宿駅に集合です」
いつもなら斎藤さんを誘うだろう。しかし、俺は言わなかった。なぜだかみんなに取られてしまいそうで嫌だったのだ。
となりの部署の谷口君は俺と同じ年なので仲が良かった。谷口君が
「飲み会行きますよー。飲みましょうねー。岡倉さん」と明るくて背も高くわりとイケメンな彼がノリノリだった。
「あー、来てくれるの?頼んだよ!谷口ちゃん」
と仲間らしい言葉のやりとりだ。
今日は斎藤さんが研修でいないので帰りが遅くなってしまった。
そこへ、斎藤さんが現れた。
「あれ、どうしたんですか。何か用でも?」
とビックリもしたし、うれしいのでこんな風に言ってしまった。
「だって、明日リーダー居ないでしょ。だから、打合せもしたいし、戻ってきました」
そういうことか。期待した俺だが、仕事の話ならと、彼女に説明していた。
そこへ谷口君が現れ、
「ショーコ、サイトウ!」
と言ったので俺はつかさず、
「外人風ですねー」
と突っ込みをいれた。もちろん彼女もビックリしていた。
そのときは、何も思わなかったが、これがあとで厄介なことになるとは思いもしなかった。
次の日、彼女を見かけるたびに
「ショーコ、おはよう!」などと声をかけていた。
俺は結局、彼女に送別会のことを内緒にしていた。
当日俺は谷口君と開発部の吉田君と待ち合わせ場所に着いた。
彼女がいないことに気が付き谷口君が
「あれ?ショーコ来ないの?」
と俺に聞いてきた。俺は
「ああ、そうなんだ」
と適当に答えた。少し残念そうにも見えた。
俺たちは合流して、送別会が始まった。
普段酒は飲まないほうだが、今夜は相当飲んだ。
秘密
帰るのが無理なくらいになり、俺は
「谷口タクシーお願いしますー!」
といって送ってもらった。記憶が途切れた瞬間だった。
あくる日、谷口君が彼女に話しかけた。
「あれ?どうして昨日来なかったんですか?」
とうとう、秘密がばれてしまった。
彼女は「えっ?聞いてないんですけど」と
逆に聞き返していた。
「送別会あったんですか?聞いてないので行けるわけないわ」
「やばいなー。聞いてなかったんですか。どうしょう」
「いいわ。聞いてなかったことにしましょう。秘密ね!」
俺の知らない秘密が彼女たちの距離を縮めることになる。
どうも、毎日のように「ショーコ」と呼び捨てにするので、あいつも好きなんじゃないか思うようになっていた。
不安は的中した。谷口君は彼女と企画を任され吉田君もその中で仕事をしていた。
「ショーコ、仕事が丁寧だねー。ショーコの普段のこと知らないからなー。こんな風に仕事をするんだぞ。土田!」
と褒め、、一緒に残業していた。
「あー、ショーコ、お腹すいたなー。なんかほしいなー~」
と催促してきたので、
「はい。皆さんの分、用意してます。どうぞ、召し上がって」
彼女はスイーツの差し入れを出した。
「果物、好きなの選んでください。このゼリー、おいしいんです」
琵琶やフルーツミックスなどのゼリーが配られた。
谷口君はミックスをおいしそうに食べた。
「きのう、家に帰ったら、ご飯、ビビンバと豆腐しか用意してなくって。しかも、ビビンバはレトルトなんですよ」
と谷口君は不幸を語っていた。
「俺なんか、自分で作らないと何もないってかんじですっ」
と吉田君も奥さんがいるのに可哀そうだ。
そうこうしたみんなでゼリーを食べた頃、
「そろそろ、帰りますね」
と彼女が帰りかけると
「ショーコ、お疲れ」
と谷口君が声をかけた。
それを聞いていた吉田君が
「今の特別扱い的な言い方ですよねー」
と言っていたので彼も笑ってごまかそうとしていた。
ショウコの呼び方
次の日彼女にまた
「ショーコ元気ー?と聞いていた。
それを聞いていた吉田君が
「ただ、ショーコつて言いたいだけでしょ?」
と確信についてきた。すると、谷口君は
「ああ、ショーコつてただ、呼びたいだけ。だって、ショーコって、あんまりいないでしょ」
とそわそわした口調で弁解した。
「総務のショーコもいるか」
「ああ、そうだっけ」
二人の会話がショーコにも聞こえて
クスッと笑って彼を見つめた。
「盛り上がりましたか?ショーコって言いたいだけなんですね。
人前でやめてくださいね。」
少し迷惑そうに言った。
「嫌がってる?」
「そう、やめてほしいの」
谷口君はそう言って、その場を立ち去った。
そんなある日、谷口君がショーコを呼び出し、話したいことがあると切り出した。
「今夜仕事終わったら僕の車の前で待ってて下さい」
「何?」
「ちょっと、二人っきりで話してみたいと思いまして」
「分かりました。後で」
仕事が終わった。
とりあえず谷口君は車の中で待機した。
しばらくして、ショーコは車のとこに来た。
「ショーコ、乗ってください」
運転席から顔を出しショーコを呼んだ。
初キス
「お疲れ様です。乗ってもいいですか?」
「どうぞ。ショーコって、ホントに綺麗ですね」
突然顔を覗き込んでつぶやいた。
「どうしちゃったの?」
「ちょっと、車走らせてもいいですか?」
車には音楽が流れ谷口君は彼女に話しだした。
「実は今度、異動なんですよ。せっかく、ショーコと仲良くなれたのに。
残念で。だから、お願いします。今日だけ、僕のそばにいてほしい」
ショーコは、黙って谷口君の肩にもたれた。
静かに夜が過ぎた。
朝日が出てきた。
二人で朝日を見つめ、ショーコを抱き寄せた。
ショーコは少し抵抗し、「痛いよ」
といってみせた。
谷口君は、そんなショーコの反応がたまらなかった。
「谷口君はどうしたいの?」
「思い出にキスしたいな」
「そんなことされたら好きになっちやうかも」
谷口君のハートに火がついた。
ショーコを自分の方へ抱き寄せとうとう、キスした。
「僕のこと好きになってください」
「私、もう一人から言い寄られてたりもして」
「岡倉さんでしょ?きっと。岡倉さんも、今度、異動ですよ」
「そうですか。しかたないですね。二人に出会えて楽しかったです」
次の日、谷口君から俺はとんでもないことを聞くことになる。
岡倉君移動?
「岡倉さん、昨日、ショーコと朝まで過ごしたんですよ。そんな関係まではさすがにいかないですけど。いいム-ドでした」
朝から聞く話しではない。仕事に差し支える感じで正直きつかった。
やる気がなく仕事を適当に済まし、早く帰ろうとしていた。
そこへ、今度俺の代わりに異動してくるリーダーが来た。
「小林君、どうしたの?」
と岡倉が声をかけると、
「今、仕事の引き継ぎでもと思いましてきたんですけど。お時間大丈夫ですか?」
「俺はいいから。やっちゃおうか」
そう言って二人はデスクルームへ向かった。
小林君と斎藤さんは面識があった。
会社で研修会が行われるのだが、この二人はそのグループで二年前から顔見知りなのだ。
小林君は岡倉とは正反対の性格で岡倉が大らかな性格に対し、小林君は超真面目なタイプだ。
斎藤さんはどう接していいか不安だった。
二人はミーティングが終わると斎藤さんに挨拶をした。
「これからよろしくお願いします」
数日がたち、異動の日、岡倉、谷口は挨拶をみんなにして、整理をしていた。
斎藤さんが仕事をしていると後ろから
「お疲れ様です」
と声を掛けてきた。小林君だ。
九月、新しい人事で仕事が再開した。
小林君は仕事に真面目で一生懸命だった。
慣れない小林君を上手くリードし、小林君も分からないことをよく相談するようになった。
九月中旬、斎藤さんが取引先の入荷が不足したとの連絡を小林君に電話で伝えた。
「今から不足分、手配して下さい。私のいる場所は六本木ヒルズです。いつ、こちらに来れますか?」
「そうですね。8時過ぎますが、かまいませんか?」
「分かりました。また、電話下さい」
8時頃電話が鳴った。小林君からの電話だ。
「もしもし、今着きました」
「では、今行きますね」
「すみません。わざわざ、お呼び立てして」
「僕もしっかりしてなかったからすみません」
「この辺、来ますか?」
「そうですね。あまり来ないですね」
「じゃあ、少し歩きませんか?」
二人は六本木ヒルズをぶらぶらした。
「じゃあ、こちらは明日届けときますね。ありがとうございます」
「おやすみなさい」
斎藤さんは六本木ヒルズの最上階の自宅へ帰った。
斎藤さんが気になる
次の日、取引先には、無事納品させ会社に戻った。
小林君の心に変化が現れたのはこの頃からだった。
妙に斎藤さんの事を意識していた。
近くに斎藤さんが寄ってくると、ドキッとして顔を見つめたりしていた。
斎藤さんがパソコンを打っていると、小林君はこれはこうだよと後ろから離れなかった。
この頃、飲み会の予定が入った。
吉田君の提案で新入社員歓迎会と小林君の歓迎会ということだった。
飲み会の日、吉田君が斎藤さんに声を掛けてきた。
「斎藤さん、まだ仕事ですか?で、飲み会行きましょうよ!』
「実は仕事が残ってて居残りですね」
「俺、上司に上手く掛けあってあげますから」
しばらくして、小林君が斎藤さんに
「飲み会行けるように僕も手伝います。すみません。気がきかなくて」
「いいですよ。あとはこれを終わらせましょう」
吉田君に感謝する思いでお礼を言いに言った。
「ありがとう。飲み会行けそうです」
「いいえ。僕に何でも言ってください」
本当に優しいので斎藤さんは弟のように可愛がっていた。
飲み会は7時からなので、仕事を終わらせ急いで居酒屋に向かった。
「さあ、こちらですよ」
吉田君が席に案内してくれた。
小林君は髪の毛もきっちりセットして気合いが入っていた。
「さあ、飲み物選んで下さい」
上司の話などが終わり周りの人たちと楽しい時間を過ごした。
また、普段の変わらない生活が戻ってきた。
ある日、人事異動が出され岡倉さんの異動先を見てビックリした。
名古屋に異動…。せめて、もう一度会ってお別れしたいと思っていた。
と、ある日、夕方頃、なんと、岡倉さんが斎藤さんを訪ねてきた。
岡倉さん。さよなら
「お久しぶりです」
「もう、どうしたの?」
「いろいろ忙しくて。人事異動も急だったし。慌てて、引っ越しの準備とかが
ありまして…」
「もう、うわさしてたんですよ。あいさつなしで、水臭いわって」
「本当ですか。あいさつしたと言っといてください。お願いがあるんですけど。
僕、もう部外者なんで、うろうろできないんで、新聞紙を分けてもらえませんか?」
「しばらく、お待ちになって」
「はい」
斎藤さんは会えただけでも嬉しかった。声も聞けた。本当にもう会えないでお別れだと
落ち込んでいたのだから。
新聞紙を握りしめて、岡倉さんのもとへ戻った。
彼も優しいまなざしで迎えてくれた。
「あらがとうございます。これだけあれば、足りますから」
「最後に会えてうれしかったです」
「僕も会えて嬉しかったです」
「では、お元気で」
岡倉さんが最後に抱きしめながら
「斎藤さんも」
と言って彼は出て行った。
しばらく仕事も手に着かない感じで過ごしていた。
そんなある日、斎藤さんにも人事異動が命じられた。
「ちょっと、いいか?」
と課長が斎藤さんを呼び付けた。
「異動だよ。本社勤務だ。やりがいがあるぞ」
突然で何が何だか分からなかった。
私も異動
小林君に言ったらどうなるんだろう。
少しは寂しいと思ってくれるのか、先が見えないといった感じだった。
何かの拍子で言ってしまおうと、小林君と話すタイミングを見計らっていた。
「これから大変かもしれませんが、頑張ってください」
「なんか、どうしたんです?まるでいなくなるみたいですよ」
「実は、異動って言われました」
「えっ、本当ですか?」
「嫌です。正直。いつまでも言わないわけにはいかないし」
「わー、すごくどうしようって、今、焦ってきました」
「そうですね。大丈夫ですか」
心配そうで、切なそうな小林君だった。
とうとう、本社勤務となった。
斎藤さんが忘れかけていたあの人に再び出会うのだった。
谷口君が本社に会議で来ていた時、偶然にすれ違うのだった。
「よう、ショーコ!」
斎藤さんは、同僚と歩いていたので上手く言葉が返せなかった。
彼もまた、ショーコのことが気にらり始めるのだった。
何か始まるそんな予感がした。
もう、仕事に行くと特に面白いこともなく過ごす日々が繰り返されていた。
ある日、前の職場の吉田君から送別会の誘いの電話がかかった。
「吉田です。お久しぶりです。元気でしたか?」
「あら、吉田君。(^O^)/と言いたいところですけど、風邪ですね」
「そうなんですか。こんど送別会を開くので、来てください(^u^)」
「本当ですか。是非行きます」
「また詳しく分かりましたら連絡します」
「はい、分かりました」
「では、失礼します」
「はーい。失礼します」
ショーコは送別会で小林君に会えるのが嬉しかったし、もしかして、
谷口君が来るかもしれないと少し期待していた。
私の送別会
1週間が過ぎ、吉田君から連絡がきた。
「場所は、ショパンになりました。貸切に成功したんですよ」
「すごい。豪華ですね」
「そうです。日時は3日後の木曜の7時からです」
「そうですか。楽しみにしてます」
「はい、それじゃ、木曜日、お待ちしてます」
「失礼します」
送別会が近くなり、気持がソワソワしていた。
仕事もそのことばかりを考えていたので、あっという間に過ぎていった。
当日の朝、今日起こる出来事に予想もつかないそんな不安と期待みたいな感じで迎えた。
仕事も終わり、待ち合わせの時間となった。
ショーコは家族の誕生日ケーキの予約をするために、ケーキ屋へ急いだ。
すると、吉田君から電話が鳴った。
「お疲れ様です。仕事は済みましたか?」
「そうですね。でも、すみません。ちょっと、いま、ケーキを予約してから、行くので、
また、後からになりますね」
「分かりました。後からかけますね」
早速、お誘いの電話が掛ってしまった。
遅れるのは、ショーコも分かっていた。
だから、急いで予約を済ませた。
ショパンの場所を確認して、店ひ向かった。
また、吉田君から電話が掛った。
「今、どの辺ですか?」
「あれ、もう着いたと思うんですけど。
だって、吉田君の声、近くで聞こえるのよ」
と言った時に吉田君が姿を現した。
「お待たせ」
「みんな、待ってますよ」
キメテいた吉田君が若くてかっこいい。彼は見ているだけでいい
アイドル的な存在なので会社にいるだけでも光っていた。
扉の向こうには待ちわびた同僚がいる。
急いで店の中に入った。
谷口君も来た
「やあ、斎藤さん。久しぶりだね。仕事は忙しいの?」
「そうなんです。今までしてたんで遅れちゃいました」
「ご飯すごくあるでしょう。全部食べれないから、どんどん食べてちょうだいね」
「何人分頼んだんですか?」
「13人のところ、20人分はあるらしいよ」
「通りでいっぱいあるはずですね」
パエリア・スパゲティー・サラダ・唐揚げ・カルパッチョなど、大量に盛られた料理は食べきれそうもなさそうだ。
吉田君の後をついて行くと席を案内された。
新入社員の石田さんのとなりだった。
「今まで仕事して遅くなってしまったんです。なのに、ケーキの予約までしてたら、こんなに遅れてしまって」
「そうなんですか。私もかなり食べて、休憩です」
「やっぱり、斎藤さんは綺麗だよ。今、いくつだっけ?」
と同期の宮本君に言われた。
「奥さんと一緒な歳ですよ」
「そうだったね」
とたわいも無い話をしていると、ドアから、見覚えのある顔が現れた。
谷口君だった。
期待していたはずなのに、あまりの偶然に驚いてしまった。
「やあ、ショウコ」
いつもの調子で私を呼んだ。
「もう、いつも、呼び捨てですよね。どう思います?」
とみんなの前で言ってみた。
「おー、そういうことか」
宮本君がのってきた。
「おかしいでしょ」
ショウコは谷口くんから本音を聞きたい気持ちで言ってしまった。
谷口君も席に着き、雑談が始まった。
吉田君にやきもち
ショウコは新入社員の真由子ちゃんとしゃべった。
「もう、少しは食べたの?」
「はい、サラダと、カルパッチョとあと、チキンライスとか、
もう、今は、お腹いっぱいですよ」
若い子はとてもかわいい。
ご飯をモリモリ食べている姿がとても
ショウコは好きだった。
谷口君が場を盛り上げ始めた。
「あれ〰、中出君、ご飯すすんでる?もっと、もっと、さぁ、食べて食べてはい!」
中出君も調子の乗ってガツガツ食べた。
周りの歓声がすごく懐かしい。
次のターゲットになったのは、蟻塚君だった。
「食べてる?蟻ちゃん。俺が来たら何するか、分かってるよな?」
蟻塚君は笑いながら谷口君が何をするか身構えていた。
「最初はグー。じゃんけんぽーん」
谷口君が勝って、蟻ちゃんが、目の前の料理を無理やり流し込んだ。
「さぁ、次はよっしぃかな?」
吉田君は俺?というような顔で周りを見渡した。
「俺、食べてますよ」
ショウコがそれを見て、
「吉田君のケーキ好きなの知ってる?食べてるところ見てみたいなー」
それを聞いて谷口君が、
「俺も甘いの好きだけど」
ショウコに向かって言った。
それは吉田君に焼きもちをやいたようだった。
その顔つきを見て本当に驚いた。
少しふてくされた様子がありありだったのだ。
ショウコもそれに気がついた。
「谷口君もそうなの?」
とすねてるのをなだめようとしている。
「ショウコ、俺の好きなのも覚えてよ」
「はい。もう、覚えたから。甘いものですね」
なんとか谷口君のペースにはまったが
うまくかわせた。
愛人が帰るぞ
飲み会もそろそろ終わりになって、みんなで記念写真を撮ることになった。
グランドピアノの前に並んで二階から撮るようだった。
上向き撮るのは、どう撮ってもらうといいかざわついた。
「いきますよ。はい。キムチー!」
いまどきないシャッターのタイミングでびっくりだった。
でも、すぐ出来上がりガラスのフォトケースに入れてプレゼントですと
店主は笑顔で渡した。
みんなの顔が上向きでかわいく撮れていた。
会計が終わりみんな解散するところで名残り惜しそうに雑談していた。
外なので寒いが、みんな帰ろうとはしなかった。
これが最後の集合だからかもしれない。
ショウコはそろそろ帰ろうかなと上司に言うと
面白がって谷口君に
「おい、愛人が帰るぞ!」
と叫んでいた。
聞こえてるか分からないが多分聞こえただろう。
「お疲れ様でした!」
ショウコの姿をそっと見送る谷口君。これで終わりなのかなと
谷口君も弱気でいた。
一年が過ぎ、ちょうど会社に残ってコピーをしていると、谷口君がやって来て
「ショウコ、元気?今日は久々に俺と飲みに行こうよ」
突然現れていつも押し切っていく。そんなこと言わないでと
心にない素振りで突き放す。
「うそー。今度って、断ってばっかじゃないですか!」
「分かったわ。後でここで待ってますね」
「ホントですか!絶対ですよ」
「はい。予定しとくね」
と今日は付き合ってあげようと軽い気持ちで受けた。
最後のデート
谷口君は不安で一杯だった。
どれだけ誘ってもいい返事をくれなかったショウコに自信を無くしかけていた。
でも、こないだの様子では快く承諾してくれたみたいだし。
ショウコの顔を見るといつもどおりで、そんなにさけられてるようにも見えなかった。
そんなことを考えていると、ショウコから電話がかかった。
「もしもし、谷口君。今夜、私、いつものお店で待ってるから来て」
「えっ、ほんとですか!なんかうれしいな。ショウコから連絡くれるなんて」
「うん。じゃあ、後で」
「分かりました。絶対に行きます」
俺は、今からでもショウコに会いたいと思っているぐらいだった。
でも、俺の理性が我慢できるか。
俺は何度も想像で抱きしめている。
もし、ショウコに隙が見えたら何をするかわからないかも。
そんな思いでショウコを見ている俺だった。
ショウコは待ち合わせの店に先に着いていた。
席についてぼんやり外を見ていた。
「お待たせ。ショウコ。待った?」
「いいえ。今来たとこ」
「なんか、飲みますか?」
「そうですね。とりあえず、ワイン頂くわ」
「俺もショウコとワインでいいよ」
ショウコがお酒を俺と飲んで何を考えているんだ。
俺の妄想は次第にヤバいほうへ行きそうだった。
「なんか俺から誘っても来てくれなかったのに
どうしたの?」
ショウコの本心が分からなかった。
「ずっと前に谷口君からきれいだなって
言われた日から好きになりだして、意識してた。
いつか気持ちを伝えようと毎日考えてた。
だけど、勇気が出なくてそっちからなんか行動に
移してくれるのをずっと待ってた。
だけど、何も変わらなかった。
すごく辛くてどうしようもなかった。
そんなとき、目の前に谷口君が現れて
もう、私から声を掛けなかったら一生後悔するんじゃないかって」
「そんなにも前から悩んでたの?どうして、いってくれなかったんですか」
「言える立場じゃなかった。心の整理がつかなくて。でも、今日はちゃんと聞いて。
ずっと好きだった。今は別々の道でがんばっている。本当にあなたと出会えて良かった。
これから先もあなたとの思いでを忘れないから」
「別れの挨拶みたいだね。えっ、ショウコはもう、終わりでいいの?」
「あなたは私とは釣り合わないわ。
私のいいところを見すぎているもの。
本当の私はあなたが思っているような人じゃない。
このまま綺麗に終わりたいの。その方がましだわ。」
そう言って、ショウコは席を立ち出ていった。
俺の愛したショウコ。
つなぎとめられない俺の想いは
永遠に忘れることはないだろう。
ショウコ好きだよ
僕のマドンナ
僕のマドンナ
上司の岡倉(俺)が同僚の谷口くんから部下の斎藤さんのことが好きだと聞かされる。
部下の斎藤さんのことをいつもショウコ元気?と言って近くに寄っていく。
そんな二人俺と谷口君が異動することに。
ショウコ(斎藤さん)は誰を選ぶ?