悪の才女
拓海と才女
百合根 凜。あいつはそう名乗った。
いかにもお嬢様って感じで、多分世間知らずなんだろう。
隣に引っ越してきたらしい。
「これから宜しくお願いします。」
学校では同じクラスになった。
担任の町田が言うには、ピアノ、バイオリン、作曲、作文、絵画、書道などのコンクール
で、たくさんの賞を獲った才女だと。
何でだか、随分細かいところまで覚えていた。
今思えば、それは、虫の知らせだった。
放課後、俺はあいつの後を追っていた。
すると、あいつの声が聞こえてきた。
「ねえ、どうすれば良いかは分かってるのよね。」
とても冷たい声。
男がそれに応え、
「もう、金は無い。頼むから黙っててくれ。」
「嫌」
男はナイフを取り出した。
あいつは、それを弾き返して、男を地面に押し付けた。
俺はもう、動けなかった。
あいつは不意にこちらを見た。
悪の才女