一人歩き

不意に一人であることを意識する瞬間がある。

ワンルームの住処でインスタントコーヒーを飲んでる時。
パスタを美味しく作れた時。
お気に入りの本を読んでいる時。
テレビで好きな曲が流れた時。
鼻歌を口ずさんだ時。
面白い言い回しが思い浮かんだ時。
煙草を吹かした時。
チャットで見知らぬ人と会話した時。

自分が世界の中で一人きりなのだと。
漠然と実感する。
誰かと関わりたい。
誰かと生身で会話したい。
誰かと触れ合いたい。
実感する。
孤独を実感する。
だけれど。
孤独な僕にはそれが叶わない。

孤独であることに心を苛まれ、堪えきれなくなった時。
僕はそれを享受することが出来なくて。
一人きりの住処から逃げ出す。
逃げ場はないのに、逃げ出して。
夜の街を練り歩く。
一人きりで。
繋がりを求めてはカフェやファーストフードの店に入るけれど、暖色の照明に包まれた店内には小規模のコミュニティに溢れていて。
僕は一人きりなんだと、浮き彫りにされる。
溢れているのだと、自覚させられる。
またそこから逃げ出して、一人歩きを続ける。

甘んじて孤独を受け入れられるのであれば、こんなに辛くはないだろうに。
でも、僕はそれが出来なくて。
叫び声をあげたくなる。
口の端しから零れそうになる声を、飲み込んでは、誰かに手のひらに乗るディスプレイ越しに囁いても、それが実体として出てくることはない。
虚像であってもいい。
誰か僕に話しかけて。
そう、助けを求めたい。

ビル群の中で。
住宅街の中で。
路地裏の中で。
僕は迷走を続ける。
孤独から逃げ続ける。
独りが嫌で、誰かを求めては孤独の中に更に逃げ続ける。
誰もいなくて。
恐怖から更に奥に逃げ続ける。
誰か。
誰か僕に話しかけて。
ただひたすら逃げ続ける。
水を求めながら、砂漠の中を彷徨い続けるように。

一人歩き

一人歩き

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-03

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