影泥棒

あんた、影泥棒の話を聞いたことがあるか?

あんた、影泥棒の話を聞いたことがあるか? あいつはとんでもないやつだ。ちょっと油断をした隙に影を盗んじまうんだから。
影を盗まれたらどうなるかって? 影の無いやつになっちまうんだよ。言葉の通りだ。そこにそいつがいたって誰も気づかない。そいつが慌てて誰かに声なんかかけたって駄目だよ。もう忘れてしまってるんだな。さっきまで仲良く話し込んでたような相手が「あんた、誰だい?」ってな調子さ。
そんなわけだから、この町じゃあもう昼間に出歩くやつなんかいないよ。みんな光を避けて影が出来ないように、おっかなびっくり歩くのさ。こんな明るいうちから表を歩き回るなんて、影泥棒にタダで影をくれてやるようなもんだ。あんた、ヨソもんだろう? わかるんだよ。まだ昼間で明るいってのにウロウロしてさ。
俺かい? 俺はちょっと用事があるんだよ。今日は日蝕だろう? あんたも日蝕を見にきたクチだろう。そうでもなきゃ、こんな辺鄙な町までくることもないよな。
ほら、日蝕だよ。あたりが暗くなってきたから町のやつらも出てきたぞ。そろって怯えたような顔してら。よし、俺はそろそろ行くよ。
…そうだ。面白いことを教えてやるよ。今夜、よく晴れていたら空を見上げてごらん。夜空に見たことも無いような金ぴかの丸いものが浮かんでいるから。驚くぜ。名前なんてないさ。名前があったとしても同じことさ。なんてったってみんな忘れちまってるんだからね。
それじゃあ。


++超能力者++
影泥棒
ESP:影を盗む

影泥棒

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影泥棒

2分で読めます。「話の中に必ず超能力者がひとりは出てくる」というしばりで掌編の連作を執筆中。 超能力者の名前と能力が必ず最後に記載されてますので、答え合わせ感覚で読んでいただければ幸いです。

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-10-01

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