屋上の指揮者
千草はそっとベットを抜け出した
千草はそっとベットを抜け出した。朝の5時。お父さんもお母さんもまだ眠っている。昨日の天気予報で、今朝は雪になると言っていたのだ。
はやる気持ちをおさえ、マンションの階段を駆け上がる。屋上の扉をあけると、柔らかな雪が鼻先に落ちてきた。「雪だ!」そう歓声をあげて、落下防止のフェンスまで走りよる。
見渡す町は一面、積もった雪で真っ白だった。静かな空にしんしんと降る雪の音だけが響く。雪が降ったら、一度だけやってみたかったこと。千草はすうっと息を吸い込むと大きな声で号令をかけた。
「白は、とまれ!!」
耳を澄ます。積もる雪の中で眠る町は、寝息さえたてない。満足気に見下ろす千草の前で、吐いた息が行くあてなく停止していた。
++超能力者++
大島千草(おおしま・ちぐさ)
ESP:指定した色を号令のとおりに動かす
屋上の指揮者
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