永遠に…。

永遠に…。

「009、終わりだ」
 声とともに、魔人像の崩壊が始まり、裂け目から壊れた部品が次々と吸い出される。広がる崩壊と、次々引きはがされていく機械類。
「――っ、うあっ!」
 足元をすくわれるようにして、吹き飛ばされる。
 一瞬、身体がバラバラになったかと思うような衝撃を受けて、意識が途切れかける。
 広い、宇宙。
 果てのない空間に、途切れた意識がばらばらになって散らばっていくような感覚。
 戻れない。
 ここで僕はひとりで死んでいくんだと、思う。
 覚悟は決めたはず。
 みんなが無事でいてくれるなら。消えるのが僕1人で済むのなら。
 でも、淋しいと思う気持ちは消せなくて。
 せめて、最後に一目会いたかった。
 最後の別れくらい、してきたかった。
 もう、間に合わないけれど。
 と。
 強く、手を握られた。
 驚いて目を開ける。
「002!」
 幻覚かと思った。
 僕が最後にもう一度会いたいと思ったから。
 でも、この手のぬくもりは、握ってくれる力強さは本物で。
 腕を引かれて、抱き寄せられる。
 不安に陥りそうな広い空間の中、この手に触れるぬくもりだけが安心感を与えてくれて、お互いにしっかりと身体を支えあう。
 閃光。
 爆風。
 魔人像の、崩壊。
 暗黒の世界に広がる光。
 それはやけに鮮やかで、綺麗に見えた。
「見ろよ、009。宇宙の花火だ。ブラックゴーストの最期だぜ」
 002が花火なんて言葉を使うから、僕が綺麗だと思った心の中を読まれたのかと思った。
 爆発が収まって闇色に戻ってから、頭上の地球に顔を向けた。
「002、みんなは?」
「無事だ」
「そうか、良かった」
 暖かい、青い色。
 青い色なのに、なぜこんなにも地球は暖かく見えるんだろう。
 あそこにみんながいる。
 無事で。
 それが判って本当に良かった。
「だがな、その仲間のところへ戻れそうもねぇ」
「え?」
 002が来てくれて、これでまたみんなのところに戻れると思った途端にそう言われて、驚いて002の顔を見た。
「エネルギーがもうほとんど無いんだ。ここまで来るのに使っちまって」
 それって、もしかして。
「助けに来たのに間抜けな話だぜ。――悪いな、009」
 002は判ってここまで来てくれたんだ。
 自分も助からないと知っていたのに、それでもこんなところまで。
「002! 僕を離せ! 君だけなら助かるかもしれない!」
 僕は死ぬ覚悟ができていたからいいんだ。
 君は、君だけは、生きていてほしい。
 だから。
 なのに。
「できるわけねぇだろ、そんなこと」
 君を死なせたくないのに。
 僕のせいで君まで。
 こんなところまで来てくれて本当に嬉しかったけど、でも。
「002」
「仲間なんだからよ」
「駄目だ!」
 君は、死んじゃだめだ!
 ――それなのに、どうして君はそんな笑顔を見せるの。
「死ぬときは、一緒だ」
「やめるんだ! 002!」
 やめて、本当に。
 そんな顔して、そんなこと言われたら……。
「おっと、もう遅いぜ、大気圏突入!」
「ジェット……」
 君は最初から判って来てくれたから。
 ……あんな、戯れみたいな約束も覚えていてくれたから。
 ジェットの目が優しくて、泣きそうになる。
 強く、抱きしめられて思いきり抱き返す。
 熱い。
 まだ、防護服も人口皮膚も、僕たちを守ってくれてはいるけれど。
 それ以上にジェットが僕を守ってくれているから。
 これじゃあジェットが先に燃えてしまうと思うのに。
 僕が君を守りたいのに。
 強く、胸に抱きこまれて動けない。
 どうして君はこんなにも優しいの。
「ジョー、君はどこにおちたい?」
 君とならどこにでも。
 いや、このままどこにも落ちずに空にいよう。
 そうして、みんなをずっと見守っていくんだ。
 君と二人で。
「――――」
 返事をしたかったけど、もう言葉になんてならなかった。
 それでもいい。このまま二人でいられるのなら。
 ねぇ、色んなことがあったね。
 悲しんだりしたことも沢山あったけど、それでも、僕には最高の人生だったって思えてるよ。
 君に出会えて、最後まで君と一緒にいられて、幸せだったと思ってるよ。
 ねぇ、ジェット。
 僕はずっと君が―――。



 星がひとつ、流れて落ちた。
 空は静かに冴えわたり、瞬く星はもう何も言わなかった。



BY.HARUKA ITO 20140929 どこ落ちの日にいきなり書き。すいません。

永遠に…。

2002年9月29日に平ゼロ「地上より永遠に」が放送された日なので、9月29日はどこ落ちDay、ということで、48話を見直していきなりざーっと書いてみたものです。
勢いだけであげてしまいました。すいません。

永遠に…。

サイボーグ009二次。 平29どこ落ち。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-30

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