嘘食い悪魔Bの独白


ぐわ、と大きく口を開け、黒く澱んだ炭の塊のようなそれを口内へ招き入れた。どうやら今回の嘘は余程大きなものだったらしく、拳大のサイズの割にとても固く、じゃりじゃりとしていた。


自分、Bは悪魔である。
様々な異能を持つ悪魔たちの中でもとても稀有な嘘を見て触れる能力に加え、その嘘を食らう能力を持っている。そのためかよく、嘘つきを矯正しろという依頼が回ってくる。

例えば夫が嘘をつくから食らって欲しい、友人がどうしようもない法螺吹き野郎だから食らってほしいと。

正直、そんなことは内輪でどうにかしろと切に叫びたいが、自分で金を稼ぐ方法はこれしかないために、嫌々嘘を食らっているというのが現状である。嗚呼悲しいことだが、これも運命か。

先ほど嘘を引っペがしたターゲットも凄まじいものだった。長年嘘をつくのが癖になっていたのか、まるで全身を覆うように黒いモノがまるで蛇か何かのようにうねっていた。そんな状況の人を見る度に思うのだが、生きづらくはないのだろうか。口元まで澱んだ嘘に覆われ、自分から見ると満足に呼吸も出来ていないように見える。それどころか、自分の吐いた嘘を吸って、さらに大きな嘘を吐き出しているようにも見えるのだ。

まぁ、ターゲットと依頼人に必要以上に干渉してはいけないだろうと、そのときは考えを途中で打ち切り、力任せにその嘘を剥ぎ、握り潰して食らったが…。

「げ、」

まだ口のどこかに嘘の欠片でも残っていたのか、軽く歯を合わせるとまるで砂でも噛み砕いたような音がした。

嘘食い悪魔Bの独白

嘘食い悪魔Bの独白

「嘘」が物質として見える悪魔、Bの昔のはなし。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-28

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