ソレが怖い!

推理もの、です。気楽に楽しんでください。
ちなみに私のオリジナル探偵「ミステ・リ・アリスト」シリーズの主人公・アレー&みっちゃんの高校生コンビが出てくるシリーズ番外編です。
そのうち本編も載せていきたいな…とは思っております。

老人の発作の原因は何か? 意外な事実が解き明かされる

 変わったオジさんだった。

 そして、彼は堀越恒夫、と名乗った。

 きっと偽名だろう、と少女は踏んだ。

 だから、自分もユカ、とだけ名乗った。

 それは偽名ではなく、彼女のあだ名だ。しかし、小学6年生のときに1年だけ使われたあだ名で、本名とはなんの関係もない。床がひんやりして気持ちいいから、よく家では床に転がっている、と友達に言ったら、しばらくそう呼ばれたのだ。倉野江都子という本名とは、なんの関係もないから、そのあだ名も中学に進学すると同時に消えた。小学生時代の友だちと、どこかでばったり会うことがあっても、今ではそのあだ名は出て来ない。

 堀越は、最初から背広なんて着てこなかった。ハデ目のプリントシャツに白のスラックス。年齢は38歳だと言ったが、中年太りとは無縁そうな、けれどもがっしりした体躯で、ヒゲを生やして、いつも怒ったような目の鋭さと、楕円形の水色メガネが印象的だ。30歳前後と言っても通じるような人だったから、いっそ本当に恋人になってもいいかなと江都子は思う。
 だが、彼はそんな話どころか、性的な関係も一切匂わせるようなことはしなかった。ただ、会話だけをした。
 別れ際に、江都子は彼から小遣いを受け取った。それは決して少ない金額ではなく、「これからもよろしく」と言われた。

 半年経っても、堀越と江都子は土曜・日曜の昼から夜まで会って、街をブラブラと歩き、食事をして別れる。その間にすることは、お喋りだけだった。
 会話はこの半年間、堀越の仕事のことが中心だった。彼はデザイン事務所を経営しているという。別れ際には必ず、少なからぬ金額が江都子に手渡された。江都子は、デザイン事務所の経営というものがそんなに暇で、そんなに儲かるものだとは思えなかったが、この半年間の会話のなかで、堀越の実家がある程度まとまった財産を持っていることと、彼の仕事が個人事務所で経理も彼がひとりでやっており、そこそこは軌道に乗っていることを聞いていたので、納得することにした。
 仕事の話には、例えば現在のクライアントがなかなか自分の仕事にOKをくれないとか、そんな内容も多々あり、そんなとき江都子は、相槌をうつほかに、ごくたまに自分がかつて見た名前も知られていないイラストレーターのこととか、堀越の仕事に関して思うこととか、率直に話していた。堀越は江都子の話をいつも黙って聞いていた。

 ある日、堀越は初めて家族の話をした。堀越は独身だが、若い頃から早々に家を出て、自室を事務所として仕事を始めたという。ところが最近、実家に住んでいる老いた父に、痴呆が始まってきた。たまに発作も起こすらしい。その発作というのが、突然悲鳴を上げて、うずくまってしまうというものなのだ。なぜそんな発作が起きるのか判らない。母の話では、テレビを見ていても、本を見ていても(痴呆が進み出してからは、読んでいるというわけではないようだ)、街を散歩していても、なにをきっかけにしてかは不明だが、突然起こるというのだ。
 こんな発作なら、心臓にかける負担も相当なものだろう。早速医者に相談したが、過去に受けた精神的外傷、いわゆるトラウマが、痴呆が進んだ現在になって甦ったものではないかと言われたという。
 堀越には兄がいて、結婚して子どももおり、あまり実家に帰らない彼の代わりに、よく家族とともに実家に帰っている。孫の顔を見れば、老人の調子も良いらしく、以来毎週帰っているらしい。
 ところが先週、兄一家の前で老人が発作を起こした。その日堀越の兄は、子どもにせがまれ、ファーストフードのドライブスルーで買い物をした後、実家を訪れたそうだ。そして空になった、ストローの刺さった紙コップを、子どもが蹴飛ばしたときに発作が出たという。
 発作の原因が紙コップだと知り、老人からは以来、紙コップは遠ざけられるようになったが、なぜ紙コップなのかは、長年連れ添った母親にも判らないという。

「…例えば昔、紙コップに入っていた飲み物を飲もうと口に運んだら、それは釣り人がエサ入れに使っていたもので、中にはミミズやゴカイがどっさり入っていた、なんてことはないかしら。うっぷ。あたしも気持ち悪くなってきた」
 江都子が思いつきで口にする。
 しばらく考え、堀越が話を続けた。
「実は、昨日、また親父が発作を起こしたそうなんだ。兄貴の家族とお袋と、みんなでファミリーレストランに出かけたらしい。そこでなんだ。だけど変な話だと思わないか? ファミレスで紙コップってのは使わないだろう。第一、まだ席に着くどころか、入口に入ってすぐのことだったんだそうだ」
「ねえ。お父さんが持っていたトラウマって、そもそもどんなものだと思っているの?」
 堀越はしばらくその質問に思いを巡らせているようだった。
「俺が子どもの時、聞いたことがある。親父は若い頃、太平洋戦争に出されていたそうなんだ。で、そこで親父の部隊は親父を除いて全滅したことがあったらしい。けれども復員して…ユカには復員って意味判るか? 戦争から帰ってくることだ。復員してから、戦後は随分ヤクザなんかとケンカしていたっていう。だけどそれで、死の恐怖を特に感じたことはないみたいだ。戦争の経験がよほど凄まじかったんだろう。一度もヤクザ相手に尻ごみしたことはないって話だ。俺が知っている範囲で、親父がトラウマを抱えるような出来事っていえば、そんなもんだ」
 江都子が「ふうん」といいながら、もう何も乗っていない皿をフォークでカチャカチャとつついていると、ウェイターが皿を下げにやってきた。
「ねぇ堀越さん。今度、そのお父さんに会わせてくれないかな」
「そりゃ…無理だよ。大体ユカのこと、なんて言って紹介すりゃいいんだ」
 もっともだった。ふたりだけで街を歩いているのなら、傍から見れば親子とか、ちょっと無理して見れば歳の離れた兄妹に見えないこともない。しかし江都子は中学生に見間違われることはあっても、社会人に見間違われることはなかった。堀越のことをよく知っている両親に、まさか援助交際の相手だとばらすわけにはいかない。性的な関係はないといったって、信じてもらえるとは考えられない。
「原因が判ったら、精神治療でお父さんを治してあげることができるのかな?」
「それはどうかな…。痴呆が始まっているからな。少なくとも発作のきっかけからは、離してやることはできるんだろうが」
 その日は、また老人の発作があったら教えて欲しいと話をして、江都子は堀越と別れた。

 翌日の日曜日、いつも通り堀越から江都子の携帯電話に連絡が入った。会うのは土曜・日曜と決めてある。江都子は学校にはちゃんと通うようにしていた。江都子の通う学校は、一応県下でも少しは名前の知られたお嬢様高校だ。ただ規則が厳しく、アルバイトすら認められていない。そんな学校にいながら、援交しているなんて知られたら、即、退学だ。
 待ち合わせの約束をする前に、堀越がまた父親に発作が起きた話をした。
「つい昨日だ。俺たちがその話をしている頃だったらしい。親父は兄貴の子どもと、借りてきたビデオを見ていたんだそうだ。ディズニーのアニメ映画で『アラジン』だったといっていた。それが始まるかどうかの時に、親父は突然悲鳴をあげて、膝に乗せていた兄貴の子どもを放り出してうずくまっちまったんだ。『アラジン』は俺も見たことがあるよ。ユカも見たことがあるか? 結構面白い映画だったけれど、あの話には紙コップは出て来ないよな。テレビや本で発作を起こしたときには、それらに紙コップが映っていたり載っていたりしたのかと思ったけれど、そういうわけじゃなさそうだ。こりゃ…紙コップは関係ないのかもな」
 江都子はそれを聞いて、今日会うのはやめにしたいと言った。ちょっと考えたいことがあるから、なにか思いついたら、こちらから連絡すると言って電話を切る。
 電話を切ってしばらくして、江都子は家を出て街に向かう。江都子は考え事をするとき、人混みの方が落ち着くからだ。

 江都子が街をあてもなく歩く。周囲を見るとカップルの数も多いが、援交っぽいカップルは見当たらない。なんとなくいたたまれなくなって、自分の足を見つめながらぶらぶらしていると、横を流れる人の群れのなかから、ひとりの肩が、不意に江都子の肩にぶつかった。
「あ、すみません」
 思わず江都子は顔を上げて相手を見た。
「い、いえ。こちらこそすみません。慌てていたもので」
 その声の主は、少年だった。見たところ江都子と同じ高校生くらい。背は決して高い方ではないが、顔立ちは可愛くもあり同時に格好良くもあった。清潔そうで、明るく快活な感じがする。少し、ドキっとした。
「どうもすみませんでした。では」
 彼が踵を返したので、江都子も歩き出そうとする。その時だった。女の子の声がした。
「みっちゃん。なにポヤポヤしてんだよう。そんなだからはぐれちゃうんだ」
 おや、彼女持ちだったか、と江都子は思わずその声の主を見た。すると相手の女の子と目が合った。
「あ…」
「?」
 どことなく、初めて見た相手ではないような気がしたが、彼女が先に話しかけてきた。
「あの…間違っていたらごめんなさい。もしかして倉野さん?」
 自分の名前を知っている彼女は一体…と江都子が記憶の人物名鑑の棚を検索すると、程なく彼女のことを思い出した。
 うちの学校の、同じ学年で、たしか隣かそのまた隣だったかのクラスの子だ。名前は…全然思い出せない。随分と目立たない子。いつも縁の厚いだっさいメガネをかけている子だ。
「あー。あんた。もしかしてデートの最中? 結構いい彼氏じゃない」
 彼女の名前を思い出せないのはごまかす。しかし、彼女は江都子をしっかり覚えているのだから、ちょっとばつが悪い。
「え? いや、彼氏って訳じゃないんだけどね…。ちょうど良かったよ。ねえ、倉野さん。時間あるかなぁ? もし良かったら、ちょっと聞きたいことがあるんだけれど。ここでしづらい話なんだ」
 彼女はこんなに社交的というか、積極的だったのか? 江都子は学校の廊下で何度かすれ違ったことのある、記憶の中の彼女とのギャップにちょっと驚き、次いで好奇心が出てきた。
「いや。全然急がないよ。おっけおっけ。そこの喫茶店でいいかな?」
 3人はすぐ近くにあった喫茶店に入った。日曜日ということで客も多く、店内はちょっとざわついている。
 4人がけの席に座り、彼女がアイスコーヒーを注文したので江都子も同じものにした。彼氏はプリンアラモードを注文する。なんとも…意外なチョイスじゃないか。
「いくら食べても太らないみっちゃーん。キミ、そのうち全世界の女性を敵にまわすよぉー」
 彼女のその言いようが面白かった。
 この彼女、学校では目立たないのによく見ると、ややキツイが大きくて綺麗な目をしている。メガネが目立つから分かりづらいが、ちょっと自信を持っている江都子より、顔の造作が整っていた。
「おふたり、恋人じゃないって、さっき言ってなかった? じゃあ、なんなの? 姉弟?」
 江都子の問いには、彼氏が答えた。
「ええまぁ。そんなようなものです」
 つまりは姉弟ではないということか。まあ、こんな煙に巻くような言い方をするなら、あまり触れて欲しくはない話題だということなんだろう、と江都子が内心でひとりごちたとき、彼女が話を始めた。
「で、聞きたいことなんだけれど、倉野さんって、前世は信じる人?」
 また唐突に、アブない質問だ。
「信じないってば。というより、必要ないよ。そんなのは何かから逃避したい人にだけあるんだよ」
「ねぇ聞いたみっちゃん? 倉野さんはボクと同意見だよ。嬉しいな。じゃあ次。倉野さんは『鉤の社の杜』っていう本は知っている? なんちゃらいう自己啓発セミナーの人が出して、先月タウン誌にも紹介されたから、この辺じゃちょっと話題になっている本なんだけれど」
 一体何の話なんだ? と江都子は訝しむ。
「あたし、そういう世界って大嫌い。名前も聞いたことない。聞いてもすぐ忘れるようにするわね」
 彼女はうんうんと力強くうなずく。我が意を得たり、とでもいった感じだった。
「じゃあ最後に。市内で、首のないお地蔵さんの話って聞いたことないかな? できれば場所を知りたいんだけれど」
 それなら江都子は知っていた。家から近いのだ。以前から少し気になってもいたのだ。場所を教えてやる。
「ありがとう。本当に助かった。みっちゃん、これでなんとかなりそうだよ。行こうか。あ、倉野さんはよければゆっくりしていって」
 と、オーダー伝票を掴み立ち上がろうとする彼女に、江都子は思わず声をかける。
「お金はいいよ。それより、もしよかったらあたしの話も聞いてくんないかな…」
 本当は今の訳の判らない質問の事も聞きたかったが、それは置いといて、江都子は親戚の老人の話ということにして、問題の発作の話を始めた。座り直したふたりは、余計な合いの手を一切入れず、ふんふんと最後まで話を聞いた。
「でね。あたしは、その発作のきっかけっていうのには、見当がついているの。多分、アルファベットの“W”だと思うのよ。例えば、紙コップの件。ファーストフードでドライブスルーをやっている所って、大体マクドナルドでしょ。ケンタッキーもやっている店舗が少しはあるみたいだけれど。マクドナルドの紙コップって、トレードマークのMの字が書いてあって、逆さまから見れば充分Wに見えるわ。そしてファミレスの件だけど、どこのファミレスも入口の足拭きマットには『ウェルカム』って書いてあるもんじゃない。アタマの文字であるWは、ロゴにもよるんだろうけれど、大体一番でっかく書いてあるわよね。そして『アラジン』の件。ディズニー映画って、最初に“ウォルトディズニー”って出すでしょ。お城の絵と一緒に。あれもアタマの文字で、一番でっかく書かれているのはWだわ」
 聞いていた彼女が、目を丸くした。
「すっごい! すごいよ倉野さん。名探偵だ! みっちゃん、名探偵はどこにでもいるのよ。ちょっと洞察力が鋭くって、頭の回転が速ければ、誰でも名探偵になれるんだ!」
 そう言われて、江都子は少し嬉しくなった。しかし…。
「でも、なんで“W”がトラウマになっちゃうんだろう。こんなんじゃ憶測もいいところだよね。きっかけだけじゃなくて、原因も判れば家族の人にも納得してもらえるんだろうけれど」
「うーん…。確かにそれはちょっと…。でも、お爺さんは戦争で酷いことになっちゃったんでしょ? それしか思い当たらないなら、そこで何かあったと考えるのが自然だよね。お爺さんの戦友を全滅させた敵のアメリカ兵の名前にWが付いていた、っていうのは無理があるなぁ」
 江都子はうなずく。
「うん。あたしも最初考えたんだ。敵の兵隊がウィリアムとか、ホワイトとか、頭文字がWの人なんじゃないかって、ねぇ」
 そうしたら、スプーンをくわえていて、いままで何も喋らなかった彼氏が、発言した。
「アメリカで、兵士に名前を大きく書いたゼッケンでも付けさせていたなら、それも有り得なくはないよね。でも、それは違うと思う。きっと、お爺さんの部隊は歩兵かなにかで、アメリカの戦闘機の地上掃射を受けたんだ。真正面から突っ込んでくる戦闘機の機関砲が、お爺さんの戦友たちを次々に蜂の巣にしていったんだろう。たまたまお爺さんだけに、致命傷はなかったけれど、周囲の戦友は皆めちゃめちゃに空から撃ち殺されたんだ。僕たちには想像もできないけれど、目の当たりにしたら、とても正気でいられないほどの恐怖だと思うよ。そうは考えられませんか?」
 最後の一言は江都子に向けられていた。
「…みっちゃん。見てきたように言うね」
「うん。これも憶測だけれど、多分当たっていると思うよ。もっとも、僕の場合はたまたま以前本で読んで得た知識があったというだけなんだけれど。もしよかったら、そこの向かいの書店に付き合ってもらえませんか? あなたを納得させてあげられるかも知れない」
 喫茶店を出て3人は向かいにある大きな書店に入った。エスカレーターで5階に行く。
「ええと、ここじゃなくって…ここでもない…あ、あった」
 手に取った本をぱらぱらと捲る間、彼氏は喋った。
「戦闘機には、目的によっていろいろな性能が求められるんですけれど、基本的な事は敵機よりも大馬力で、いかに早く・高く飛んで敵機を迎撃できるか、なんです。そこで、大戦末期に登場したアメリカの戦闘機に、大馬力エンジンに大きなプロペラをつけて、高性能を実現させようとしたものがありました。でも、それは空の上では理想的ですが、もっと初歩的なところに問題がありました。離着陸ができないんです。プロペラが大き過ぎて、地面をこすってしまうんですよ。ああ、それは海軍機なので、離着陸ではなくて、発艦・着艦ですね。そこで、ランディングギア…主脚…車輪が付いた脚の事ですけれど、それを、もっと長くすればいいってことになったんです。そうしたら、また別のところで不都合が起こりました。主脚を長くしたら、強度が足りなくなる、同時に揺れる空母の上では不安定すぎる、といった問題です。そこで、主翼の形状を変えたんです。逆ガルタイト翼と呼ばれるこの翼は、正面から見るとVの字になっていて、下の角に主脚を付けました。これだと、機体はプロペラを甲板にこすらせない充分な高さを得られて、同時に主脚は安定性を得るのに充分な短さを保てるんです。で、このF4Uコルセアと名づけられた戦闘機は、正面から見たとき、胴体を挟んでVの字形をした主翼が左右にあるわけですから…」
「Wになる!」
 江都子は思わず言った。
「はい。お爺さんは南方に派兵されたんでしたよね。このF4Uは大戦末期に約2千機が投入されています。日本とアメリカの戦いといえば、大戦後半は南方と日本本土ですから、お爺さんの部隊を襲った戦闘機がこれだった、という可能性も充分考えられます。ラバウル航空隊を叩いた戦闘機も、F4UやF6F、P40ですから。場所も時期も重なるなら、これがWの正体だと考えるのが、一番自然じゃありませんか?」
 彼氏がそう言って、本を見せてくれた。そこには、その戦闘機の正面からの写真が掲載されている。
 “W”はそこにあった。

 江都子は別れ際、ふたりに手を振った。
「どうもありがとう。あんたのそのメガネって、そばで見ると伊達だってまるわかりだよ。おふたりさんってば、随分お似合いだと思うよ」
 ちょっと無神経な物言いかなとは思いつつも、江都子がこう言うと、彼女はにっこり笑って手を振り返してくれた。
 名前も知らない同級生。彼氏に至ってはもう会えるかどうかすら判らないけれど、まぁ運が良ければ会うこともあるだろう。と思った。
 いま、江都子の手の中には、彼氏が見せてくれた本がある。説明を聞いた後で、そのまま江都子が買ったものだ。
 そして、取り出した携帯電話で、堀越の携帯電話の番号を押す。すぐに堀越は出た。
 事情を説明すると、すぐに会いたいと言ってくる。江都子は、今自分のいる場所を伝えた。そして携帯電話の電源を切ると、なんとなく、援交はもうやめようかな、という気になった。

ソレが怖い!

この作品はかつて「御手洗パロディサイト事件2 バロサイ・ホテル」という、パスティーシュ作品集ノベルズに掲載していただいた「それが怖い!」の原型となったお話です。
とはいえ、謎の核である部分以外はまったく違います。これでもかというくらい違うお話です。
あちらでは里美ちゃんのお友達に泣きつかれた石岡くんが、謎解きに翻弄する、というキチンとした(?)タイプの推理小説でした。
でもこちらは随分と…アンニュイな小説に仕上がってしまったように思いますが、楽しんでいただけたのでしたら幸いなのですけれども。

ソレが怖い!

私は交際相手のおじさんから、雑談混じりの打ち明けごとをされた。それは彼の老いた父が起こす謎の発作の話。 発作の原因は何か。 私は意外なところから、その発作の正体を知ることになる──。 人死が出ないタイプの青春推理小説。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-28

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