絶望
少年の周りを強い風が海の塩のにおいと共に吹いていた。
黒い雲が空を覆いつくすこの日。
岬に、波が当たっては砕けていった。
少年は、空を見上げた。
そこには、黒い雲だけがあった。
どこまでも続く黒い雲。
少年にはこの世界の全てが黒雲に思えた。
仲間などいない。
この世界は、人が恨みあい、傷つけあい、憎しみあい、殺しあう。
どこにも希望はない。
少年は、目線を地面に落とした。
仲間など、いない。
少年は、岬の先端から一歩、踏み出した。
後には、どんよりした雨雲と、赤く染まった海、そして、水平線の向こうの晴れ間だけが残されていた。
絶望