みあちゃんの石ころ 4

石田 はじめ

みあちゃんの石ころ 4

石ころ集めが好きな、みあちゃん、パパに川原へ連れて行ってもらいますが、今日は、気に入った石が見つかりません。

赤ちゃんの石ころ 

赤ちゃんの石ころ 

 保育園バスの停留所には、いつもママがお迎えに来ていました。
 でも、今日はパパがいます。
「ママは?」
「ママはね、びょ・う・い・ん・・・」
「病気なの?」
 それにしては、パパの顔がにこにこしすぎています。
 今にも大声で笑い出しそうです。
「ねえ、どうしたの? ママはどこが痛いの?」
「神様がね、パパとママとみあに、すてきなプレゼントをくれたんだよ」
「プレゼント?」
「そう! ママのおなかに赤ちゃんの種をくれたんだよ」
「赤ちゃん? 家に赤ちゃんが来るの?」
「みあは、おねえちゃんになるんだよ!」
「すてき!」
 みあちゃんは飛び上がってパパに抱きつきました。
「公園、よってく?」
「みあ、川へ行きたい!」
「石ころさがしだね?」
「そう!」
「よし!、じゃあ、一度家に帰ってからだ!」
「わ~い!」

 パパがいつも連れて行ってくれる川原は、きれいな石ころがいっぱいあって、みあちゃんにとっては『宝の山』です。
 でも、今日は、どうしたことでしょう。お気に入りがなかなか見つかりません。
 なんだか、心がふわふわして、石ころがよく見えません。
「あれ? もういいの?」
 みあちゃんが座っておやつを食べ始めたので、パパは不思議そうに、みあちゃんの顔をのぞき込みました。
「今日はない」
「そっか」

 その日から、みあちゃん家では、あたらしく家族になる赤ちゃんの話で、もちきりです。
 パパは、名前をいくつも考えて、そのたびにママに「NO」と言われ、また新しい名前を考えます。
 みあちゃんは、お気に入りのお洋服やおもちゃの中から、プレゼントを選びます。
 それも、ママは「これは赤ちゃんにはまだ早いわね」と言って、OKが出ません。
 ママはというと、ため息ばかりで、ご飯をあまり食べません。
 ママとお風呂に入ったとき、みあちゃんはママのおなかをつくづくながめました。
 いつもと変わらないおなかです。
「ほんとにこの中に赤ちゃんがいるの?」
「そうよ、まだほんとにちっちゃいけど、だんだん大きくなるのよ」
「どうやって、おなかから出てくるの?」
「うーん、そのことについてはパパも入れて三人で相談しましょう」
「相談したらわかるの?」
「うちはかしこい家族だから、きっとわかると思うわ」

 楽しい日が続いていたある日、
 みあちゃんは、ママのおなかの中の、赤ちゃんの写真を見せてもらいました。
 びっくりしました。
 ママのおなかはすぐ目の前にあるのに、
 写真の赤ちゃんは、みあちゃんの手の届かない遠い世界にいるようです。
 パパもママもうれしそうですが、みあちゃんは何故か不思議な感じがしました。

「みあ、みあちゃん・・・」
 夜中にパパがみあちゃんのベッドにやってきました。
「パパ?・・・」
「ママがね、おなかが痛いって。救急車が来るから、みあも服を着ていっしょに行こう」
「もう、赤ちゃんが来るの?」
「ううん・・ちがうよ」
 パパの顔は青ざめています。
 支度をしていると、すぐに救急車が来ました。
 みあちゃんは、生まれて初めて救急車に乗りました。
 外から見るとかっこいいのに、中はいろんな機械があって、まるで病院の中みたいです。
 こわい・・・と、みあちゃんは思いました。
 ママの顔を見ると、パパよりもっと真っ青です。
 目をギュッと閉じて、苦しそうです。

 サイレンが鳴って、車が走り出しました。
「パパ、こわいよ・・・」
「大丈夫だよ」
 そう言うパパも不安そうです。
 このままどこか恐ろしい所に連れて行かれる・・・みあちゃんは、パパの胸にしがみつきました。

 大きな病院でした。
 ママがいつも行っているクリニックとはちがいます。
 朝になって目をさますと、病室のソファで、パパがみあちゃんを抱いたまま、じっとベッドのママを見つめていました。
 目が真っ赤です。ずっと起きていたのでしょうか。

 病院の1階にコンビニがありました。
 二人はパンと牛乳を買って外に出ました。
 受付の前はもう人でいっぱいです。

「パパ、ママはどうなっちゃうの?」
「神様が赤ちゃんを取り返しに来るかもしれない・・・」
「どうして?」
「あんまりかわいいから、手放すのがいやになったのかもしれないね・・・」 
 それっきり、パパは黙ってパンをかじりました。

 二人が座っている芝生の前に、大きなくるみの木がありました。
 みあちゃんは、木のそばへ行ってみました。
 ここにも、石ころはありました。
 川原の石とちがって、草のかげで、ポツン、ポツンとさみしそうです。
 みあちゃんは、それを、ひとつひとつ、つま先でツンツンとつついて歩きました。
 
 そして、みあちゃんの足が止まりました。

「パパ! 見つけたよ!」
「どうしたの?」
「あったの! ママにあげる石ころ! あかちゃんの石ころ!」
 みあちゃんの手のひらにある石ころを見たパパは、少しだけ胸がチクリとしました。
 その石ころは、小さなくぼみの中に、もっと小さない石をやさしく抱くように包み込んでいたのです。

「ねっ! ママのおなかの写真とおんなじでしょ!」
「これを、ママにくれるの?」
「そうだよ! きっと、ママと赤ちゃんを助けてくれるよ!」
「すてきね」
 ママはパパを見て、にっこりと笑いました。
 それを見て、みあちゃんも、にっこりと笑いました。



 



 

みあちゃんの石ころ 4

みあちゃんの石ころ 4

石ころ集めが好きなみあちゃん、パパに川原へ連れて行ってもらいますが、今日は、気に入った石が見つかりません。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日

CC BY-ND
原著作者の表示・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-ND