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「白ってかわいそう。」
刑事の質問とは裏腹にさっきから支離滅裂なとこばかり繰り返す少女。
「はぁ、どのへんが。」
「棘、刺さっちゃってる。」
「棘ですか?」
「うん、棘。いたそう。」
呆れた、という感じで刑事は溜息を吐いてもう一度少女に向き直った。
「山本柑奈さん、君と同級生で家もご近所の、鈴原朝日くんとはなんの関係もなかったのかな。教室で話してたところはクラスの子や先生が見てるんだけどね。」
「んー。知りません、そんなひと。わたし学校嫌いだったから、あんまり思い出したくないです。」
「そうですか。ところでいまは何を?」
答えない。
この少女は感情こそ表に出さないものの、常に何かを見て、常に何かを考えるような目をしていた。目の前の刑事のことなんて蝿くらいにしか思ってないのだろう。
黒か、白か。
「山本さん、最後に一つだけ。」
「?」
「黒は、かわいそうではないんですか。」
「あー。ふふふ、黒は大丈夫です。下からちゃんと支えられてるから。」
「そう、ご協力ありがとうございました。」
部屋を出るとき少女は軽くふっと微笑んだ。
今日見た中で1番美しく1番残酷な表情だった。
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