ばるーん




俺はもうこれでいい


ここから動きたくない


そうして俺はそのまま


そのままを望んでは変化を恐れて


だからいつまでたっても宙に浮いてばかり



ここにいるのももう飽きたのに

いつまでたってもまたここに戻ってきてしまう


ずっとぷかぷか浮いていられるわけないのに



だから風が吹いたとき


だから大雨が降ったとき


だから日差しが照りつけたとき


だから割られそうになったとき


だから誰かに持ってもらったとき


だから誰かにふくらましてもらったとき


だから誰かに殴られたとき


だから誰かにつぶされたとき



ずっとしぼんでいられるわけないのに


ずっとそうしていられるわけないのに


このままでいたいならいればいい



できることなら逃げ出してしまいたい


だけどそれができない理由があるから



みんなみんな必死に逃げ出さない


そこにいる

その理由をわからないわけじゃないのに



みんなみんな嬉しくてムカついて悲しくて愉しくて


だから誰かにだから何かに



おかげでそのせいで影響されて流されて変わっていく



俺はずっとこのままがいい



そう思っていないくせに



この重たいだけの大きな体は



空っぽは微動だにしない



こころばかりが先走って




夏の終わりのこの季節のこの雨はやけに染みこむ



秋の初めのこの季節のこの風はやけに肌を撫でる




動かない俺を置いて季節が過ぎる


怖いくらいに

ばるーん

ばるーん

空気ってすごい、小さいころの謎のひとつでした。目に見えないし聞こえないし・・・電波とかホルモンとか。厳密に言うと形にできるんでしょうか。専門家でもないし興味もさほどないですが。聞こえるもの目に見えるものでも謎だらけなのに形もないのにそこにあってちゃんと役割があって、しかもそういうものの方がかなり重要だったりします。ふしぎ。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-17

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