恋物語
「普通なんて存在しない」そう言い張る普通すぎるのが悩みの玲菜(れいな)が、だんだん魅力的になる物語である―――
「お母さん、あり得ないよ!」
一人の少女が母親に向かって必死に叫んだ。
「いいじゃない、男子校が男女共学に今年から変わった学校にくらい・・・・・・。ちょっとは、恋愛経験もした方がいいんじゃない?」
母親は娘の意思など気にせず、あくまで自分の意思を突き通そうとしている。
娘も娘で、母親に似ているのか自分の意思を突き通そうと必死だ。
この調子だと喧嘩になるんじゃないか? そんな雰囲気が漂う。
それを察したのか母親はこう言った。
「ささ、早く行きなさい。今日から双葉高校に行きます、って連絡しちゃったし。初日から遅刻はだめなんじゃない?」
いろんな事実と言い訳と、思いついたことをポンポンと言ってから、ほらっ、と娘の背中を軽く押して出発させた。
娘はしぶしぶ、
「いってきまぁす・・・・・・」
出発することにしたようだ。
少女が学校に着くまで幸いなのか不幸なのか、5分程度。いや、もしかしたらもっと早く着くかもしれない。そんな程度の距離だ。
まあまあ整備された一本道の両端には緑が植わっている。
歩道、道路、歩道・・・・・・、特にとりわけ高い建物もなく、かといって低すぎる建物も多くはない。
いわゆる、校外だ。
少女の容姿は肩よりちょっぴり長いセミロングの髪の毛、それに、最近の子らしく足も長め。
体型は、細くもなく太くもない標準体型のような体型。
目は少しくりくりしている。
肌質も悪くはない、かといって良くもない。
そんなごく普通の街に、ごくごく普通の子。
周りの人から見ても普通の光景としか言いようがない。
そんなくらい普通であった。
こんな、この普通に見える少女の唯一普通じゃないところがあった。
人に本音を言えないことだ。
嘘ばっかついて、人に合わせてばっかで、そんなのだから【友達】と呼んでいる人の誘いを断れない。
だから、友達に頼まれたらなんでもやっちゃうし、友達が人を嫌っていたら私も嫌ってしまう。
みんなはジャニーズを好きだという。だから、私も好きなことにしておいた。
優しいといえばそうなのかもしれないけど、この少女は自分を弱いと思っていた。
まっすぐ行って、コンビニのあるところを少女は右に曲がった。
その時、
「きゃっ、すみませんっ」
少女は人にぶつかった。
はっと前を見ると、同じ制服を着た男子生徒がたっていた。
身長は170㎝くらい。
顔は恥ずかしくて少女は見れなかったようだ。
「大丈夫だけど・・・・・・、もしかして、噂の転校生? 」
「噂・・・・・・?そんなに噂になるほどの容姿じゃないですけど」
そっけなくいった。
その後すぐに、あることを思い出した。
(ここって今年から共学なんだったっけ?)
「実は、共学に変わったものの女子生徒は君で二人目なんだ」
「えっ」
「人の言いなりになって、人の機嫌とって、それで人に好かれた。そんなののどこがいいの?!そんなんじゃペットと同じじゃん!!私は・・・・・・、少なくとも人に飼われるペットにはなりたくない!そんなのに・・・・・・なりたくないよ・・・・・・!」
それは、玲奈が初めて自分の本音を人にぶつけた瞬間だった。
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