素描1「あくび」
ぅはぁ
反射の一種と習うそれは、明らかに膝蓋腱反射とは性質を異にする。
私は幾度かの内省により、それがむしろ嚥下に近い半随意的な運動であることを認める。
快感を伴い、伝染力の高いそれは、まどろみの象徴でもある。
退屈を人に悟らせることもある。
欠かせないのは大げさに開けられる口よりも、
むしろ鼻と目の原始的な真剣さにあるように思われる。
無防備を意味することからも、エロスとの関連は明らかだろう。
体の伸展を誘発し、背骨の反り返りを要求することは、
猫のそれに最も見て取れる。
ピークまでに比べて、ピーク後は多様な差異を観察できる。
瞬きをするもの。唇を舐めるもの。大きく息を付くもの。
ふしゅふしゅという音を発するものまでいる。
乳牛はする。カラスはする。熱帯魚はしない。
雀がするのを私は見たことがない。
その最中に聞こえている音を、私は体の外の音か、内の音か区別できない。
あるいは、私がしているのかさえ。
素描1「あくび」