【剣と魔法の世界の理】物語を綴る調律師
ツイッターで募集した「リプしてくれたフォロワーさんを自分の世界観でキャラ化する」の小説もどき化。
過去に書いた小説の世界にフォロワーさんに住んでもらいました。
物語を綴る調律師
世界は闇の魔王に制圧された。
世界中に魔王の手下である魔物がはびこり、世界は危機に瀕していた。
そこで王様より闇の魔王討伐を命じられた少年がいた。
名前をリアル。
かつて巨大ドラゴンを2体倒したことで英雄となったギルダの息子である。
「英雄ギルダの息子リアルよ。お主に闇の魔王を倒して欲しい」
誰もがリアルならば出来ると信じていた。ギルダの生き写しのようなリアルなら。
周囲の期待を背に、リアルは王様の命令通り、闇の魔王を倒す旅に出かけた。
「リアル。次の町で宿泊しましょう」
リアルと共に魔王討伐を命じられた魔法使いルウィがリアルに提案した。
旅の当初はリアル様と呼んでいたルウィも旅が進むにつれて親しくなった。
しかし、敬語はそのままである。
「ああ。もう何週間も野宿だからな。洞窟抜けるのがつらかった…」
「ええ。色々と補充するものをありますね」
洞窟には闇の魔王が手配した魔物が多くおり、リアルの剣もルウィの杖もボロボロになっていた。
明日には今の森を抜け、大きな町に着く。
そこで暖かな布団に眠り、物資を補充する。
「調律師がいると旅が楽なのですが…」
「調律師?」
リアルがルウィの隣で横になり、ルウィを見上げる。
リアルは剣の腕は確かだが、勉強の方は苦手である。
「剣や杖の整備、調薬を行うことができる職業です。調律師が1人いると格段に旅も戦闘も進めやすくなります」
「なるほどなー…町で仲間になってくれそうな人がいたら探してみるか…」
「ええ…」
瞼が落ちてきたリアルの頭を撫でながらルウィは空を見上げた。
木の隙間から見える星空。魔物も寝息を立てている。
隣の勇者も眠りに落ち、ルウィも静かに目を閉じた。
翌朝、二人は森を抜け、昼ごろには町にやってきた。
久しぶりの大きな町である。宿屋、道具屋がそろい、カフェや仕事の仲介をする役場まである。
「ルウィ。町名物のミルクアイスだってさ。食おうぜ」
「まずは宿屋が先です。ミルクアイスはその次にしましょう」
「おう!」
リアルとルウィが宿屋に向かうと、宿屋の前に人だかりができていた。
リアルが人だかりを覗き込むと、中心にはローブを深めに被った人がいた。
座り込んでいるため、男性なのか女性なのかははっきりしない。
さらに箱を机替わりにし、何かを書いている。
「はい、どうぞ」
その手が止まったと同時に箱の前に立っていた人に紙を渡した。
リアルが紙に視線を移すと、可愛らしいイラストが描かれていた。
どうやら人々の目当てはこの人が描くイラストらしい。
「れんたさん!今日はもうおしまいにしてください!人が減らなくて仕方ないわ!」
宿屋からでてきた女将と思わしき小太りな女性が中央の人物に話しかけた。
女将の一喝に人だかりはすんなりとはけて行った。
「はい。場所お借りしてすみません、女将さん」
「まあいいのよ。こっちも商売させてもらってるしね」
女将がリアルたちに気付いた。
一目で旅人と判断した女将はその目を光らせた。
「いらっしゃい。この町の宿屋はうちだけだよ。泊まっていくかい?」
「ええ。町の観光もしたいので荷物だけ先に置かせていただいてもよろしいですか」
ルウィの問いかけに女将は勿論だと頷き、ルウィの荷物を持って宿屋に入って行った。
ルウィも女将の後を追うように宿屋に入って行った。
宿屋に前で絵を描いていたれんたと呼ばれる人は机にしていた箱と画材を片付けている。
「あんた、絵描きなのか」
れんたは首を横に振った。
「絵は趣味です。僕は調律師で…普段はこの町の薬屋と道具屋を行き来しています」
「調律師!」
リアルはれんたの肩に手を置いた。
深めに被ったローブから表情は読み取れないが、れんたが驚いているのは誰がみても分かった。
しかしリアルは構わない。
「これだけ広い町で薬屋と道具屋に頼られてるってことは結構優秀な調律師とみたぜ!」
「え、その…」
「なあ!俺らと一緒に来てくれないか!闇の魔王を倒す旅の途中なんだ」
矢継ぎ早に話すリアルに圧倒され、れんたが困っていると、リアルの頭が背後から襲われた。
「何をなさっているのですか」
ルウィが魔法の杖でリアルの頭を殴ったのである。
その声は低く、目は冷ややかだ。さらにリアルの脇腹をめがけて魔法の杖を当てる。
横からの打撃にリアルはよろめき、脇腹を押えたまま宿屋によろめいて入って行った。
「リアルの悪い癖です。興奮すると少々強引になる…すみませんでした」
ルウィはれんたに対して小さく頭を下げた。
「大丈夫です。あの…もしかして…勇者のパーティーなんですか」
王様から命ぜられ闇の魔王を倒しに行く勇者のパーティーがいることは国中に広まっていた。
顔や名前は広まっていなかったが、闇の魔王を倒す旅にでているといえば勇者のパーティーとなる。
「ええ。魔法使いの私と剣士のリアルしかいませんが。ですからあなたのような調律師がいると非常に助かります」
ルウィは一礼すると宿屋に足を向けた。
「すぐにとは申しません。しばらくこの町にいるので…考えてみてください。途中まででも構いませんから」
そう言い残し、ルウィは宿屋の中に入って行った。
れんたは悩んでいた。
勇者のパーティーに誘われるというのはとても名誉なことである。
世界を救う旅、危険もある。
(でも僕は…)
空を見上げて相棒を想う。隣町に行き、すぐ帰ると言ってまだ戻ってきていない相棒。
(様子を見にいこうにも僕一人では隣町にいくことされかなわない)
隣町に行くためには長く深い森を抜けなければならない。
調律師は自ら先陣を切って戦闘することには適していない。
パーティーの補佐役であるため、一人で旅をすることは難しい。
れんたが悩みながら歩いていると、前から歩いてきた人にぶつかってしまった。
持っていた画材が音をたてて落ちる。
「あ。ごめんなさい!大丈夫ですか」
「あー、悪いな。俺もよそ見してたわ」
金色の髪の男はそういってれんたが落とした画材を拾い上げる。
落ちた拍子に開いた冊子を男は手にとり、中身をじっくりとみていた。
慌てたのはれんたの方だ。
「それはっ」
「あんたが描いたのか、この漫画…この辺じゃ絵物語っていうんだっけかな。うん、いいな、これ」
以前にれんたが趣味で描いた絵物語である。村娘と傭兵の恋物語だ。
男は満足げに笑うと、自身のカバンに絵物語をしまった。
代わりに虹色の輝く鉱物をれんたに手渡した。
それは見たこともない美しい鉱物だった。
「これと交換な」
「困ります!それは相棒に見せるものなので返してください!」
れんたが男のカバンに手を伸ばそうとすると、一瞬のうちに男は消えてしまった。
残ったのは虹色の輝く鉱物だけ。
れんたはため息をつきながら鉱物に目を向けた。
見たこともない鉱物。触っただけでもわかる魔力を秘めた鉱物。
この鉱物で整備した剣はどれだけ強くなるのだろう。
れんたの中で調律師の虫がうずく。
「……そういえば勇者さんと魔法使いさんの武器…ボロボロだったな…」
道具屋で購入した武器は長く戦闘をする間にボロボロになっていく。
道具屋がある町まで武器が持たず壊れてしまう。
調律師のいないパーティーではありがちなことである。
数日後、れんたは勇者のパーティーに加わることとなる。
次の町へ相棒を探しにいくまでという期限付きで。
怪しい男と無理やり交換させられた鉱物で作った剣が魔王を討つことになるのをれんたはまだ知らない。
【剣と魔法の世界の理】物語を綴る調律師
こんな感じの設定でした。
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物語を綴る調律師。
剣と魔法の世界で闇の魔王を倒すために戦う勇者のパーティーに加わる。
剣や杖の整備、調薬などパーティーの補佐役。
趣味で書いた本を怪しい男が気に入り、この世界のものではない鉱石と無理やり交換させられる。
その石で作った剣で勇者が魔王を討つ。