【サンタのいる世界の理】夢と奇跡の造り手
ツイッターで募集した「リプしてくれたフォロワーさんを自分の世界観でキャラ化する」の小説もどき化。
過去に書いた小説の世界にフォロワーさんに住んでもらいました。
夢と奇跡の造り手
サンタクロースの正体は親である。
そんな答えが根付いてしまった現代。
子供たちにプレゼントを配るサンタクロースの存在は既に夢物語と化してしまった。
けれど、ほんの少し幸運な子供のもとにサンタクロースはやってくる。
赤い衣装に身を包み、大きな袋をぶらされて、眠った子供のもとへ。
「かーのーんさああん」
サンタクロースが住む森の奥に架音は住んでいる。
サンタクロースたちが届ける夢と奇跡のプレゼントを作る者だ。
「あら、どうしたの」
子供たちにプレゼントを届け終わって帰ってきたサンタクロースの少女の衣装はボロボロになっていた。
腕には何かで切られたような裂け目があった。
幸い体に傷はないようだ。
「ごめんなさい…、せっかく作ってくれた服…」
「いいのよ。でもどうしたらこんな…」
サンタクロースの少女は頬を膨らませ、少々怒りの表情を見せた。
架音は大事ではないと判断し、替えの服を棚から出した。
サンタクロースの服も架音が作っている。
サンタクロースだけではない、必要とあれば『世界中』のありとあらゆる服を作る。
「私、死神ってのに逢ったんです。そいつ、子供の死期が迫ってるから狩るって…」
架音はサンタクロースの少女に替えの服を渡した。
少女はその場で脱ぎ始め、架音にお礼を言うと、新しい服を着る。
「その死神と対象がかぶったの?」
「そう!ちょっと喧嘩になった。結局…その子、大丈夫だった。私が助けた…!だってサンタクロースは夢と希望を与えるんだもん!」
少々興奮気味の少女を落ち着かせようと架音は椅子に座らせた。
キッチンへ向かい、紅茶を淹れる。
「これでも飲んで落ち着きなさい」
「うん…」
ハーブのいい香りが少女を包んだ。
架音は優しく少女の頭を撫でる。
「お疲れ様。今日はもう休むといいわ。大変だったわね」
架音に撫でられ、落ち着いたのか少女は頷くと自室に帰って行った。
架音は脱ぎ捨てられたサンタクロースの衣装を拾い、まじまじと見た。
(結構丈夫に作ってるんだけどな…。それでもこの有様なのね)
どうやら死神とやらは手加減してくれないようだ。
今後は家に入るための秘密道具のほかに護身用の道具を作る必要があるようだ。
「よお、架音」
架音の部屋に一人の男がやってきた。
金髪にラフなTシャツとジーパン。右耳には緑のピアス。
架音は小さくため息をついた。
「管理者。あなた、またフラフラと出歩いているの。ちゃんと観測していないと困るわ」
管理者は『世界の管理者』と呼ばれる存在であり、複数の平行世界を管理する存在である。
このサンタクロースの世界も交わることのない複数の『世界』の1つである。
架音はこの管理者に依頼され、それぞれの『世界』に必要な様々な衣装や道具を作る。
「いやー、悪い悪い。実はその件で謝りに来た」
管理者はボロボロになったサンタクロースの衣装を指さした。
架音の眉間に皺が寄る。
「まさかあなた…」
「ああ、微調整して二つの世界をちょっとな。まさかサンタの方がやられるとは…」
管理者は頭を下げた。
「すまなかった」
架音はため息をついて、ボロボロのサンタクロースの衣装を机に置いた。
「今回は服がボロボロになるだけで済んだけど、次はそうとは限らないのよ」
サンタクロースには基本的に戦闘能力はない。
夢の運び屋である彼らに戦いは似合わないからだ。
その彼らといかにも戦闘慣れしていそうな死神ではサンタクロースがやられるのは目に見えていたであろう。
管理者は反省した表情で顔を上げた。
「ああ、わかってる。でもあの子供を救うにはそれしかなかったんだ」
管理者の方にも事情があるらしい。
架音はサンタクロースの少女に振る舞ったものと同様に管理者にも紅茶を淹れた。
「いい加減にしないと、お嫁さんのウエディングドレス作らないわよ?」
「うっ、それは困る!」
管理者の焦りように思わず架音は笑みをこぼした。
架音の笑みを見て管理者も安堵したのか紅茶に口をつける。
架音も自分に淹れた紅茶に口を付けた。
「実は依頼もある」
やけに真剣な表情で管理者が架音をみた。
紅茶のカップが机に置かれ、その音が響く。
謝るとき以外は普段いい加減でヘラヘラした表情ばかりを見せるため、架音も少し身構えた。
「何?」
「俺さー、もう少し神々しい恰好したほうがいいと思うんだよね。とある『世界』じゃ神様名乗ってるし…だから神々しい服を」
表情と発言の重みが一致せず、架音は無言で立ち上がった。
「なに?どうし」
「帰れ」
「は?」
「さっさと帰ってあなたはあなたの仕事をしなさい!『世界』が乱れる!!」
管理者を立たせ、架音は無理やり管理者を部屋から追い出した。
扉を勢いよく閉め、完全に追い出した。
架音は少々頭を抱えた。
「なぜあれが『世界の管理者』なのか…」
間違いなく『世界』で最も権力を持つもの。
それこそ『神様』に等しい。
染めたであろう金髪、鋭い目つき、口元から覗くとがった犬歯は悪魔にも近く見える。
(神々しい恰好したところで意味ないわ)
そう思いながら架音は布をしまっている棚を開けた。
「神々しい恰好ねー…。とりあえず子供たちのプレゼントが先ね」
架音は頭を悩ませながら机の上に設計図を書くために紙を広げた。
今日も森の奥では夢と奇跡を造る音が聞こえる。
【サンタのいる世界の理】夢と奇跡の造り手
こんな感じの設定でした。
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夢と奇跡の造り手。
サンタクロースの世界でサンタ達が届ける夢と奇跡のプレゼントを作る者。
サンタの行き先を決めたり、秘密道具を作ったりもする。
『世界の管理者』とは友達、図々しいお願いも聞いてあげる。
子供たちの笑顔の思い浮かべ、今日も彼女の手が動く。