兄と妹の夏季課題
続きです。5
ドンッ。
「いてて、、」
翔は一緒に寝ていた茜に蹴飛ばされ、ベッドから落ち目を覚ました。俺より寝相が悪いんじゃないのかと思い、時計をみた。時計の針は5時過ぎを指している。空は、少し明るくなっていた。
「たまには、早起きもいいな」
翔はそう呟き、ベッドで気持ち良さそうに眠る茜の頭を優しく撫で部屋を出た。昨日、お風呂に入ってなかったのを思いだし、翔はお風呂場に向かった。途中、幸子とすれ違った。
「おばあちゃん、おはよう 」
「おはようさん、早起きだね~」
「うん、おばあちゃんこそ早起きじゃん」
「この歳になると、早くに目が覚めってしまってね。それに今日はちょっと用事があってね、隣の村まで行かなきゃ悪いんだよ。朝ごはんは作って置いてるから温めて食べておくれ。遅くなると思うから、昼と夕飯は茜と協力して、作って食べなさいね」
「わかったよ、おばあちゃん。気をつけてね 」
ありがとう。と幸子は言い出掛ける身支度をするため、その場をさった。翔は、今日の昼と夜はどうしようか考えながら、お風呂場へ向かった。朝にシャワーを浴びるというのはやはり、気持ち良いものだ。翔は、次第に身体を覚ましていった。風呂を出て、身体を拭いていると、そこに顔を洗いに来た結衣がはいってきた。
「あ、しょーちゃんおはよ~ 」
翔は急いでタオルを腰に巻き、おはようと挨拶をした。
「早起きなんだな、結衣は」
「うん、なんか目が覚めちゃって。しょーちゃんこそ、早起きじゃーん?」
「俺は、茜にベッドから蹴り落とされ、目が覚めたんだよ」
「あーちゃんに変なことしたんじゃないのー?」
結衣はおちょくるように言った。し、してねーよ!あいつの寝相が悪かったからだ。と翔はおちょくる結衣に反論した。
「冗談だよー。んじゃ、私は顔を洗うから、しょーちゃんは自分の部屋で着替えて来なよ」
「ああ、そうするよ」
んじゃ、朝飯は3人で食おうな~と翔は結衣に言いお風呂場を出た。自分の部屋に戻り、服を着た翔は茜を起こそうと、部屋に向かった。部屋に入ると、ベッドで気持ち良さそうに寝る姿は変わっていなかった。起こすのは少し可哀想だなと思った翔だが、茜の肩を揺さぶり囁いた。
「おーい、あかねー、朝だぞ~」
茜はう~んと言いながら目を開けた。
「お兄ちゃん、、朝早くない、、?」
翔は時計を見るとまだ、六時前だった。
「まあ、お前に起こされたんだけどな、、」
翔は小さく呟き続けた。
「いやー、早起きは気持ち良いぞー。そういや、茜も昨日はお風呂に入ってないだろ?今朝も暑いし、汗もかいてるだろうからさシャワー浴びてこいよ。気持ち良かったぞー?」
そういい、翔は半ば強引に茜を起こし、お風呂場へ向かわせた。そして、翔はリビングへと向かった。テーブルには、朝食と書き置きが置いてあった。
「おばあちゃん、もう家を出たのか。早いな~ 」
そう呟き、翔は朝食に目を落とした。どれも、美味しそうなものばかりだ。さすがおばあちゃんだと感心していたところに、結衣がはいってきた。
「さっき、廊下であーちゃんにあったよ~。すごく眠たそうだったけど、二人とも昨日は何時に寝たのよ?」
「ベッドにはいってすぐに寝たぞ?いっとくけど俺より先に茜をがねたからな 」
そう2人は会話をし、朝食が並べられたテーブルについた。茜が出てきたら、3人で食べようかと翔はいい、茜がででくるのを2人は待っていた。
そのころ茜は、ちょうど良い温度に調整したお湯を頭から浴びていた。
「眠れなかったよ、、、」
茜は呟く。昨日茜は、おやすみのキスをした後、翔に抱きつき眠りについた。はずだったが、翔におやすみと、頭を撫でられ変に意識してしまい寝れなかったのだ。
眠りについたのは翔が起こしに来る、2時間前の事だった。茜は温度を少し低くし、次第に目を覚ましていくのだった。30分ぐらいシャワー浴びた茜は眠気もなくなりスッキリしていた。お風呂場を出て自分の部屋で着替えを済まし、2人が待つリビングへと向かった。リビングへ入ると椅子に座って待っている2人の姿があった。二人におはようと挨拶をし、席についた。
「目覚めたかー? よし、3人揃ったことだし、食べますか」
翔はいただきますと号令をかけ、少し早い朝食タイムが始まった。3人は美味しい美味しいと箸を進めた。あっという間に食べ終えた3人は、一息入れた。
「よーし、今日は結衣の楽しい思い出を完成させるために、3人で遊びにいこうじゃないか」
翔はお茶を飲みほしいった。
「そうだねー!今日は天気も良さそうだし、川で遊ぼうよ」
茜は泳ぐ真似をして見せた。
「なら私、お弁当をつくるよ!」
結衣はいった。結衣も乗る気満々だ。そうと決まれば早速準備だ!と食器を片付け始めた翔に続き、各々と片付け準備に取り掛かる。今日から結衣を無事成仏させるための夏季課題が始まった。
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夏の日差しにキラキラと反射する川の水。田舎だけあって、川の水は透き通った透明だった。川の流れは穏やかで、心の闇も綺麗さっぱり流してくれるようだった。翔は、川で遊ぶ少女2人を眺めていた。しかし、周りからみたら川で遊んでいるのは少女一人なのだろう。 お兄ちゃーん!と大きな声で兄を呼ぶ、茜はスクール水着を着ていた。程よく発達した胸をスクール水着が際立たせている。
しょーちゃんも泳ごうよー!と茜に続いて声をあげた結衣も、おばあちゃん家にあったスクール水着を着ていた。全く発達していない胸は泳ぐ速さを落とさないぐらいのものだった。翔は美少女2人に呼ばれている、男子高校生。このシュチュエーションは誰もが憧れるものだろう。この美少女が妹と幽霊ではなかったら。
「いまから、いくよー!」
翔は大きな声で返事をし、軽く準備体操をして、2人に駆け寄った。足を少しつけると、一気に身体中が冷えた。
「うひょー、つめてぇー」
翔はそう言いながら、身体をゆっくりと水につける。夏の暑さを忘れさせてくれるぐらいのオアシスだった。
「お兄ちゃん、気持ち良いでしょ?」
「あぁ、ちょっと冷たいけどな。うっ!やめろ結衣!つめたいだろ!」
結衣は手で水をすくい、翔に頭からかけ、えへへ、、と結衣は笑っていた。この野郎ー!と翔も手で水をすくい結衣にかけ返した。2人は楽しそうに、水をかけあっている。茜は羨ましそうにその光景を眺め、私にもかけろー!と吠えながら参戦していくのだった。 時間はあっという間に経ち、川について遊びだしてから3時間ばかりが経っていた。3人はしょっぱなから、はしゃぎすぎたため疲れ川からあがり、木陰に入っていた。
「いや~、あそんだな~」
「あそんだな~って、、お兄ちゃん。まだまだ、前半戦だよ!」
「茜は、若いね~。わしゃ、もう疲れたよ、、」
翔はおじいさんの真似していった。それに便乗した結衣は
「私も、はしゃぎ過ぎて腰がの~。あーちゃん若いの~」
腰をポンポンと叩き、おばあちゃん口調で言う。あんたらも、十分若いわ!と華麗にツッコミを入れた茜は、ぐー。とお腹を鳴らした。
「お腹空いちゃった、、」
茜は、恥ずかしながら言う。
「おれもだー。たくさん動いたから、腹減ったぜ。」
それじゃあ、お昼にしよっか! 結衣はそう言い持ってきたランチボックスを開いた。女の子が作ったお弁当と言う感じのちゃんとしたお弁当だった。
「おおー、おいしそうじゃん! 」
「結衣姉ちゃん、ちゃんとお弁当作れるんだね!」
「あったりまえじゃーん! 」
結衣はドヤ顔言った。それじゃ、食べよっか!いただきまーす!結衣が号令をかけ、みんなは結衣が作ったお弁当に箸を伸ばす。
「おいしーぞ、結衣!」
「うん、おいしー!」
翔と茜はどんどん箸を進める。結衣は美味しそうに自分が作ったお弁当にをたべてくれている2人をみて心がいっぱいになり、ごちそうさま。と小さく呟いた。
「ん?結衣はたべないのかー?早く食べないと俺らがたべちまうぞ ー」
「食べるよー!これ、美味しいでしょ?一番上手く出来たんだよー」
3人は楽しい、ランチタイムを終え、後半戦だー!と飛び出して行った茜に続くように翔と茜も再度、川に入るのだった。
それから、数時間と遊び続けた3人は、背中をオレンジに染め、帰り道を歩いていた。
「今日は、楽しかった~ 」
そうだね~と、茜と結衣は返事を返した。三人とも完全に遊び疲れ、行きよりも口数が減った、帰り道だった。やっとのことで帰り着いた3人は、荷物を置き、各々とベッドにダイブし、夕飯も食べずに寝るのだった。
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外は暗い闇に覆われ、虫たちが鳴いている夜中、茜の姿は翔の部屋にあった。
「お兄ちゃん、起きてよ」
茜はベットで寝ている翔の身体を揺さぶる。
「お兄ちゃん、起きてってば」
「ん、、なんだよ、」
翔は、目を半開き茜の姿を確認する。
「茜、、どうしたんだ、、」
「お腹空いちゃって、眠れないの」
「お前、お腹空いたって、、今、何時だとお 思ってるんだよ、、」
翔は頭をかきながら、時間を確認する。日付は変わって1時間を過ぎていた。
「だって、、夕飯食べずに寝ちゃったから」
翔は思い出す。川で遊び疲れて帰ってすぐ寝たんだ。
「結衣はどこいった、、?」
「いや、みてないよ」
「おばあちゃんにお腹空いたって言ったのか、、?」
「おばあちゃんはまだ帰ってきていないみたい」
やれやれと、体を起こした翔は大きなあくびをして言った。
「しょうがないな、、付き合ってやるよ」
「ありがとーお兄ちゃん」
翔と茜は部屋出て、リビングに向かった。リビングは静かで暗く、時計の秒針の音だけが響いている。電気を付け、カップ麺でいいか?ときく、翔はどこか頼り甲斐があった。
「うん、ありがとう」
翔とはその返事をきき、CMで人気のカップ麺二つにお湯を注いだ。二つ注いだ所でポット内の水が赤いバーを下回ったので、水を新たに入るのだった。
「3分な~」
翔はキッチンタイマーで時間をセットし、二つのカップ麺をテーブルに運んだ。茜は手際の良さに、少し感動しているぐらいだ。カップ麺を持ってきた翔は席に着き、一息入れていた。茜はカップ麺を向かい合わせて置いていたのに、翔の座っている右隣りに移動させ、茜は席に座った。
「ん、隣で食べるのか?」
「だめ、、?」
上目遣いで聞いてくる妹に戸惑いながらも、冷静を保ちながら構わないと答えた。
「お兄ちゃん、、」
「な、なんだ?」
「ありがとう、、」
そういった茜は、目をつぶり可愛らしい、ピンク色の唇をちょこっと突き出し、翔に顔を近づける。キスをせがんでいるのだ。翔も、何故かそれにつられ、顔を近づけ始めた。翔の鼓動は秒針の音よりも早く激しく、動いていた。お互いの唇の距離が数センチを切った所で、ピピピッとキッチンタイマーがなった。我に返った2人は間近で目を合わせ、食べようか。と恥ずかしそうに箸を手に取り、カップ麺のフタを開けた。もし、カップ麺の待ち時間が1分でも長いものだったら唇を重ね合わせていたのかもしれない。それも、お互いの意思で。翔の鼓動はまだ、落ち着かない。隣では、さっきまで目をつぶってキスをせがんでいた妹がカップ麺を食べている。
「美味しいか、、?」
「うん、お兄ちゃん。美味しいよ」
茜は微笑んでみせた。そうか、良かった。と翔もカップ麺を食べる。それから特に会話もなく、麺をすする音だけが部屋に響いた。茜は、最後のスープまで飲み干し、ごちそうさまと、手を合わせ空になった容器をキッチンへ捨てにいった。そして、まだ食べている翔に、歯を磨いてくるねと言い部屋をでていった。
「歯を磨いてくるって、、ここにまた戻ってくるのか?」
そう、呟き箸を進める。スープを飲み干したと同時に茜が部屋に帰ってきた。翔は、容器をキッチンへ捨てに行き、洗面所へ向かった。歯磨きをして、自分の部屋に戻ろうとするとリビングの電気が付いており、まだ茜がいるのかとリビングのドアを開けた。案の定、茜がソファーにちょこんと座っていた。
「部屋にもどらねーのか?」
「お兄ちゃん、、電気を消して、きて、、」
「きてって、、どこに?」
「隣に」
茜は自分の隣をポンポンと叩いて呼んだ。翔は首を傾げ、部屋の電気を消し、どうしたんだ?と呟きながら茜に近づく。部屋は月明かりが差し込み青暗くなっていた。茜のお望み通り、隣にすわると茜は翔に寄りかかり、少しだけこうしていたい。と囁く。翔は、わけが分からず、されるがままにそこにいた。しかし、茜の温もりは何故か懐かしいものがあった。すごく落ち着く。翔は優しく、茜を抱きよせた。
「お前とこうしてると何故か落ち着くんだよな」
「私も、お兄ちゃんとこうしてると心から安心ができるの」
翔と茜は恋人のように寄り添ってソファーに座っている。時間だけが過ぎていった。翔は眠気が来たのでもう、部屋に戻ろうぜと茜の顔を覗き込むと、目を閉じて寝てしまっていた。おいおい、ここで寝ちゃったのかよ。翔は自分に寄り添って眠る妹を優しく見つめた。秒針の音と妹の吐息、自分も目を閉じ、眠りにつくのだった。
兄と妹の夏季課題