罪と罰

残念ながら、旦那さん…やはり浮気をしていましたよ

「残念ながら、旦那さん…やはり浮気をしていましたよ」

そうですか、と小さくつぶやき机の上をじっと見ている女性に時田は書類を突き出した。
「この一ヶ月の間の彼の動向を調査したものです。出張と偽って温泉旅行に行ったりしていたようですな」
そうですか、と、もう一度確かめるように言ったきり女性は黙り込んでしまった。時田の事務所に沈黙が訪れる。時計の針の音だけが規則正しく鳴っていた。
「それで、例の写真は…」机の上を見つめたまま女性が言った。時田は依頼されていた写真を封筒から抜き出すと机の上にそっと置いた。「不倫の現場、しっかりと収めてあります」
再び、沈黙。「どうします?」時田が促すように聞くと、女性はパッと顔を上げた。そこにどんな感情が込められているのか、時田にはわからなかった。
次の瞬間、女性は目の前の写真をビリビリと破り捨てた。突然のことに面くらった時田は「いいんですか?」と尋ねる。「いいんです」と答えた女性の顔には清々しさが見て取れた。スッキリしちゃった、と言いながら立ち上がると「このこと、誰にも内密にお願いしますね」と言い残し、去って行った。
呆気にとられたまま時田は事務所のドアの向こうへ消える女性の姿を見送った。

そして「女ってのは怖い生き物だね」とひとりつぶやいた。



++超能力者++
時田 健一(ときた・けんいち)
ESP:被写体を写真の中に閉じ込める

罪と罰

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罪と罰

1分で読めます。「話の中に必ず超能力者がひとりは出てくる」というしばりで掌編の連作を執筆中。 超能力者の名前と能力が必ず最後に記載されてますので、答え合わせ感覚で読んでいただければ幸いです。

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更新日
登録日
2014-09-10

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