Gad Poem ~神々の詩歌~  一章  風の詩歌

150年前・・・神々が悪魔たちに封印されてしまい、世界の均衡か崩れた。悪魔が横行する世界を変えるための旅が今始まる。

プロローグ

今から、150年前突如現れた、悪魔により神々が封印された。

それにより、世界の均衡が崩れ悪魔たちが暴れだした。

それぞれの国には、強力な力を持った魔物が住み着き国を荒らし続けているという。

何度も倒そうと試みるも、敵う者は現れなかった。

次第に、国は荒れ人々は悪魔という脅威に怯えながら生きてきた。

それから150年後世界は大きく転機を迎える。

ある若者たちによって、世界は切り開かれる。


この世界には、6個の島国がある。

風の国、エラドレム。火の国、ランフォール。水の国、アルファルム。地の国、ドラドーロ。

神々の住むとされる、ゴレスト。

そして、悪魔の住む島、デムストロ。

この6個の島国から成り立っている。


そして今回は風の国、エラドレムでの出会いとすべての始まりのお話。

出会い

ここは、風の国エラドレムの港町アンサイル。

エラドレムは、農業・漁業などが盛んな自然豊かな国である。

一方でハンターが多く存在しており魔物退治などが行われている。

その港に一隻の船が入港してきた。

「ここが風の国エラドラムの港町・・・。綺麗なところだな。」

船か見える景色を見ながら青年が呟いた。

彼の名はリオン・ルーズ。

ゴレスト王国から修行の旅に出た青年だ。

世界を知らぬ青年がゆえに、親に修行の旅に出ることを命じられたのだ。

「さてどこからいこうかな?」

地図を広げ考えていると、船頭が話しかけてきた。

「お前さん、この国は初めてかい?」

「はい!」

「それなら、ベンデモールに行ってはどうだい?」

「ベンデモールですか?」

「ベンデモールは活気があっていいよ!なんせ市場が多いからね。」

「そうですか。行ってみます!ありがとう、おじさん!」


船頭と別れて、港町を見て回り馬車でベンデモールへ。

『ベンデモールか・・・どんなことだろう?』

と考えていたそのとき、黒い雲がかかる山が目に入った。

自然豊かなこの国には不自然だともいえる。

「おじさん、あの山は?」

「ああ、あれかい?あれは、サンドイ山だよ。」

「サンドイ山?」

「昔は綺麗な山だったんだが、100年くらい前から強力な魔物が住み着いたらし。」

「強力な魔物ってまさか・・・?」

「ああ。デムストロの魔物だよ。以来あそこには誰も立ち入らないように国王が手配したそうだよ。」

「国王までが、恐れるほど強力とは・・・。」

「悪いことはいわん。あそこには近寄らんほうがいい。」

そんな話をしているうちに、ベンデモールに到着した。

「おじさん、その話詳しく聞けるとこってしらなですか?」

「・・・聞くだけなら教会に行くといいよ。」

「そっか。ありがと。」

馬車を降り街中を散策してみた。

市場は賑わいを見せていて、見ていて気持ちいいくらいだ。

近くに酒場があったのでそこで休憩することに。

そして奥から、奇妙な話が聞こえてきた。

「昨日の夜また聞こえてきたよ。あの雄たけび。聞くだけで怖くて眠れないよ。」

「いやなもんだね。エリアンゼの二の舞にはなりたくないもんだな。」

「まったくだよ。あんなのくらったら一溜まりもないよ。ああおっかな。」

なんのことだろう?と思いながら教会を目指した。

町の中央にあるベンデモール大聖堂。

その扉はかなりの重圧感を秘めている。

扉を空けると神父とシスターだろうか何か言い争ってる。

「お前はまだそんなことを言っておるのか!」

「そんなことって神父さまにはそんなことだろうでしょうけど私には重大なことなんです!!」

なんだろ・・・?かなり気まずいところだが・・・。

「すみません・・・少しよろしいですか?」

急に声がかかり慌てて神父がこっちを向いた。

「なんでしょうか?旅の方。」

「神父さままだ話は終わって・・・」

「あとにしなさい!」

「もうよいです!!」

「アリア!」

さっきまで言い争ってたシスターが向かってきた。

そして思いっきりぶつかった。

そうこれが二人の出会いであった。

魔物が棲む山

さっきまで、神父と言い争っていたシスターとぶつかった。

「いてて・・・ごめん、大丈夫?」

「・・・・。」

シスターは、軽く睨みつけ何も言わず立ち上がり外へ走って行った。

「なんなんだ、いったい?」

「すみません、旅の方。お怪我は?」

「ああ、大丈夫です。」

立ち上がり軽く服をはたきながら神父に聞いてみた。

「お話の途中に、申し訳ない。少しあの山のことを聞きたくてきたのですが。」

神父の顔が少し曇ったように見えたが、すぐにこう答えた。

「あの山とは、サンドイ山のことですか?」

「そう、ここに来る途中に少し話を聞いて・・・。少しでもいいので知りたくて。」

「そうですか・・・、まあ立ち話もなんですのでこちらにどうぞ。」

神父に連れられ教会の奥へ。

「さて、どこから話しましょうね・・・。あの山は昔はとても美しい山で、山の恵みもたくさんありました。」

「そんなに美しい山だったのですか?」

「ええ、それはもちろん。ですが・・・」


「確か、魔物が住み着いたと?」

「そう。今からちょうど100年前でしょうか、突如現れあの山を占拠したのです。」

「なぜあの山なんですか?」

「あの山の頂上には、この国の神ウィ-デルスクの神殿がありそこには宝具が収められているからです。」

「宝具ってまさか・・・?」

「そう神々の武器ともされるあの宝具の一つ、『風の竪琴』それがあるからなんです。」

「『風の竪琴』ですか。そこに住み着いてから何かあったのですか?町の人が何かに怯えているように見えたのですが?確か、エリアンゼの二の舞には
なりたくないとか・・・?」

「そう思うのも仕方ないのですよ。エリアンゼとは、ここから南に行くとあった花の町でした。」

「あったって、今はないのですか?」

「はい。今から10年も前になりますが・・・。突然山に住む魔物が町を襲ったのです。理由はわかりませんが、村は焼かれ多くの者が亡くなりました。」

「生存者は誰も居なかったのですか?」

神父は目を細め話を続けた。

「いえ、一人だけ奇跡的に助かったのです。」

「その人はまだ生きているのですか?」

「ええ、その生存者はさっきのシスターです。」

「あの子が?」

「ええ、身寄りが居なかったのでうちで引き取ったのです。」

「そうなんですか。あの、お節介かもしれませんがさっき言い争ってたのは・・・。」

「あの子は、どうしても町のみんなの仇を取りたくて一人で倒しに行くと言って聞かないのです。」

「一人って、あの子は何か特技でもあるのですか?」

「ええ、あの子は魔導士なのです。最近では、あまり見かけませんが。」

「魔導士・・・確かに人口は減りつつありますね。」

魔導士。あらゆる力を使いこなすことのできる者のことである。

「あの子の杖は私が隠しているので、返して欲しいといつも口論になってしまうのです。」

「確かに一人では難しいことですね。それでも・・・」

「仇を取りたいのでしょうね。でも、相手は一つではないのですから。」

「あの子の名前は?」

「アリア・・・。アリア・クドール。根は優しいいい子なんですがね・・・。」

譲れないもの

神父の話を聞き、大聖堂を後にした。

魔物の存在が、どれだけ危険か改めて認識する話だった。

ただ、気になったのはあの子のこと。

アリア・クドール。彼女のことだ。

エリアンゼの町のただ一人の生存者。

両親や仲間の仇を、取りたいと思うのも無理もない。

と考えて歩いていると、アリアが木陰で泣いていた。

そっと近寄ってみることにした。

「大丈夫?」

突然声をかけられ驚いたように顔を上げた。

「・・・・・・ありがとう。」

差し出したハンカチを受け取った。

隣に腰掛けたリオンに、彼女はこう言った。

「・・・さっきはごめんなさい。ぶつかってしまって・・・。」

「ああ・・・、いいよ。気にしないで。」

そう話すと沈黙ちてしまった。

しばらくするとアリアが・・・

「さっき神父さまと、何を話してたのですか?」

「ああ、あの山のことね。」

「あの山って、サンドイ山のことですか?」

「そう。俺違う国から来たばっかりだから気になってね。」

「・・・・。」

「あと君のことも神父から聞いたよ。一人で仇を取るつもりなの?」

「ええ、もちろん。お父様たちの仇を取るのが、私の務め。残された思いよ。どうしても譲れない。」

「君の気持ちが強いのはよくわかった。でも、一人は無謀だよ。仲間を作らないと。」

「・・・・わかってる。旅の方にお願いしてみたけど、だれも引き受けてはくれなかった。無理だと、無駄死にしたくないと。だから一人で行くの。
 誰も引き受けてくれないなら。」

「・・・・・。なら俺が引き受けようか?」

「え・・・?」

「俺は行ってもいいよ。」

「ほ・・・本当に?」

「ああ。俺も確かめてみたことがあるんだ。君は魔導士なんだろ?俺は剣士だから、一人より二人のほうがいいだろ?」

「・・・っ!ありがと。」

アリアは泣きそうな目をしてこっちを見て微笑んだ。

「ああ、そうだ。自己紹介が遅れたね。俺は、リオン。リオン・ルーズ。」

「私は、アリア。アリア・クドール。よろしくね、リオン。」

こうして、おれはアリアと手を組み魔物退治を試みることになった。

まずアリアの親代わりである神父を説得することになった。

二人で、ベンデモール大聖堂に戻ることにした。

思いは願いと共に

二人は、神父の待つ大聖堂に向かう。

そして扉の前に立つとアリアは、とても緊張しえるようにも見えた。

「アリア?大丈夫かい?」

リオンが声をかけるとアリアは答えた。

「ええ。大丈夫よ。さあ、いきましょう。神父様が中々頑固だから覚悟してね。」

そしてアリアが扉に手をかけた。

中にはお祈りをしている神父の姿があった。

こちらに気がついたのかお祈りを止めこちらを向いた。

「おや、アリア。どこに行っていた?もうお祈りの時間だというのに、何をやってるのか。」

神父は少し怒り口調でアリアに声をかけた。

「神父様、お話があります。あの話の続きです。」

「その話は聞かん。お前一人では無理だと何回言ったらわかるのだ!」

「確かに、一人では無理かも知れません。でも、協力してくださる方をみつけました。」

「なに?!あ・・・あなたは昼間の・・・。」

神父は、アリアの後ろに居たリオンを見て驚いた。

そして慌ててリオンにこう言った。

「旅の方、悪いことは言いません。今からでもお止めください!無茶です!!」

「神父様、なにを!」

アリアは神父を抑制しようと声をかけたが、リオンはすかさず神父にこう言った。

「神父殿、自分は止めるつもりはありません。それに、彼女のような境遇なのは一人ではありません。自分の国でも、同じような光景をたくさん目にしてきました。だから、自分の力でなんとかしようと思い旅に出た身です。あなたが、心配するのもよくわかります。でも、彼女の思いは彼女の物です。たとえそれは、誰が止めようと揺るがないもの。彼女は、自分が守ります。だから、行かせてあげてください!お願いします。」

リオンは頭を下げた。

ここに来るまでの道中にアリアの思いを聞いていたからだ。

どうして倒したいのか聞いた時アリアはこう答えた。

『どうしてかって?それはね、救いたいの。この国を。そりゃ復讐もしたいけど、でも神父様やこの国の人は、とってもいい人ばかりだし困ったときは助け合える、そんな人がたくさんいるの。こんな境遇の私にも優しく家族のように接してしてくれた。だからみんなには、幸せであってほしいの。だから恩返しの意味をこめて魔物を倒したいの。あれさえなければ、この国は平和なんだから。』

その思いにはリオンも共感できたからだ。

「・・・・。」

神父は頭を下げたリオンを見て黙り込んだ。

アリアはリオンが頭を下げてくれるとは思ってなかったからかなり驚いていた。

沈黙が続いた。

そして、沈黙を破ったのは神父だった。

「・・・・・。本気なんですね?」

その問いかけにリオンは、

「はい!この決意は揺らぎません。」

そして重い口を開いた。

「はぁ・・・、あなたのような方は何を言っても駄目です。アリアは本当にご両親によく似ている。わかりました。良いでしょう。正し条件があります。これを守って頂くことが条件です。」

二人は、緊迫した雰囲気に息を呑んだ。

アリアは神父のいつになく真剣な顔つきを見て、

「神父様・・・それはいったい・・・?」

「約束してください。たとえどんなになろうとも希望を捨てず『生きて』いてください。そして、いつかここに帰ってきてください。私はここで、無事を祈り続けます。」

思いがけない言葉にアリアは言葉が出ず涙をこぼした。

「神父殿・・・。」

リオンは、アリアが言う『いい人』というのがわかった気がした。

家族のように接するからこその愛情だったのだと。

だからこそ、ここまで言えるのだ。

神父のアリアに対する愛情の深さが良くわかる。

「アリア。魔物を倒すのはとても困難なこと。でもお前の持ち前の心の強さは如何なる状況も乗り越える素晴らしいもの。だから、どんなときも忘れてはいけませんよ?」

「神父様・・・・。はい!リオンと二人で頑張ります!」

その返答を聞き満足そうに微笑んだ神父は、リオンのほうを向きこう言った。

「リオン様でしたか?どうかアリアのことをお願いいたします。」

「はい!お任せください。必ず守り通してみせます。」

「さぁ、もう日が暮れます。明日の朝に出発されるといい。今日はここにお泊りください。」

「では、お言葉に甘えて・・・。」

こうして神父の説得に成功したアリアとリオン。

翌朝の出発に向けアリアは準備を始めた。

食事を終えリオンは大聖堂の裏手にある河原から月を見ていた。

「リオン!」

不意に名を呼ばれ振り返るとアリアが立っていた。

「隣いい?」

「ああ、いいよ。」

少し黙って月を見上げた。

そしてアリアが口を開いた。

「さっきは、ありがとね。」

「?どうしたの急に。」

「ああ言ってくれたのすごく嬉しかった。親身になって言ってくれる人ってなかなかいないから。」

「まぁ、そうかもしれないけどね。でもあのときはそう思えたんだ。俺の国でもアリアと同じ境遇の人をたくさん見てきたからかな?」

アリアは、そう語るリオンの横顔を見ながら月に視線を戻してこう言った。

「・・・・ねぇ。明日出発する前に、寄り道してもいいかな?」

「それは構わないけど・・・?どうして?」

「どうしても行っておきたい場所なんだ。」

アリアは真剣な顔をしていた。

リオンはそれを見て深くは聞かないでおこうと思ったので追求はしなかった。

「・・・・。わかった。町を出る前に行こうか。」

「・・・・ありがとう。」

「明日は早い。そろそろ寝ようかな。」

「そうね、おやすみなさい。リオン。」

「ああ、おやすみ。アリア。」

そうして眠りについた。

これは壮絶な日々が始まる前の最後の穏やかな日だったのかもしれない。

旅の理由

早朝、剣の修練をしていたリオン。

そこへアリアがやってきた。

「おはよう、リオン。」

「おはよう、アリア。どうしたんだこんな早くに?」

そう訪ねたところこう返ってきた。

「昨日言ってたことなんだけど、今からでもいいかな?早めに行っておきたいんだ。」

昨日のこと・・・確か一緒に来てほしいところがあるって言ってたことだ。

「構わないけど、近いのかい?」

「ええ、そうかからないわ。馬を使うつもりなんだけど・・・馬の扱いは心得てる?」

「ああ、もちろん!ならいこうか。」

「こっちよ。ついて来て。」

そう言われアリアについって行った。

早速馬に乗り町を出て南の草原を走り抜けて10分ぐらいすると荒れた町が見えてきた。

急にアリアが馬を止めた。

不思議に思ったリオンはアリアに訪ねた。

「アリア!」

「うん?」

「どうしたんだ?それにここは?」

アリアが少し俯きすぐ顔を上げて言った。

「・・・ここはエリアンゼ。私の住んでた町で、数年前に魔物にやられたの。」

「!?」

そういえば神父様が言ってたのはこのことか・・・。

アリアが馬を歩かせ話を続けた。

「ここは国内でも1を誇る花の町だったの。年間を通していろんな綺麗な花が咲く素敵な町だった。」

リオンは、淡々と語るアリアを見つめて話を聞いてた。

「この町は、平和で笑顔があふれてた。なのに、突然魔物が襲い掛かってきてこの有様。」

町を見渡せば建物も無残に壊されていて、当時の酷さを物語っていた。

「町の人はなんにも悪いことなんてしてない。ただ普通に暮らしていただけ。なのに、何で殺されなくちゃいけないの?!」

話ながらアリアは肩を震わせていた。

気がつけば何かの石版の前まで来ていた。

「アリア・・・これは?」

リオンは、目の前にある大きな石版を見た。

「これは、エリアンゼの石版。亡くなった町の人の名前を刻んでるの。」

よく見ればたくさんの名前が書いてある。

アリアは馬を下りて石版の名前に触れていた。

『ガロニース・クドール エリエ・クドール』

リオンはその名前の主が誰かわかった。

恐らくアリアの両親だ。

「アリア・・・その名前・・・もしかして。」

アリアは振り返り少し悲しそうに微笑んだ。

「そうよ。私のお父様とお母様の名前。町が襲われた時にね。」

アリアは石版に刻まれた名前に視線を戻しこう言った。

「お父様もお母様も優しくて、大好きだった。けどあの日魔物に殺されてしまった。何の罪のない人々と一緒に。だから私は誓ったの。罪のない人を虐殺した魔物を倒すって。」

「それが、魔物を倒したいっていう・・・」

「うん。だからそう簡単には譲れなかった。でもようやくそれを始められるの。だから・・・」

そういってアリアはまっすぐにリオンを見つめ言った。

「リオン、あなたのおかげでやっと進めるの。私の我がままに付き合ってくれてありがとう。こらから大変になるだろうけど改めてよろしくね!」

「ああ、こちらこそよろしく。町の人たちのためにもがんばろうな!」

二人は握手を交わした。

「さて、そろそろベンデモールに帰ろうか!」

「ああ、そうだな。旅の準備もしないといけないな。」

「ええ。っと忘れるとこだった・・・。」

アリアは石版に向かいこういった。

「お父様、お母様、町のみんな。アリアは魔物を倒しに旅に出ます。必ず魔物を倒してこの国に平和をもたらします。だから、見ていてくださいね!では、お父様、お母様。行って参ります。」

っと言い終わるとアリアは振り返り馬に乗ってベンデモールに向かって走り出した。アリアはもう、振り返ることはなかった。

出発

エリアンゼから戻った二人。

とうとう出発の時間になった。

大聖堂の入り口に神父と教会のシスターたちが見送りに集まりみな別れを惜しむようにアリアと話をしていた。

それを見ていて良くわかるが、とても慕われていたということを。

それも、微笑ましい。

アリアを眺めていリオンに神父が話しかける。

「まさか、こんな日がくるとはね・・・。小さかったアリアがこんなにも成長しみなに慕われて、あの子の両親がみればさぞ喜んだだろう。」

「・・・・。」

リオンは静かに語る神父を黙って見つめた。

「時にあの子は、周りが見えなくなる。それが、自分の身の危険に繋がる可能性のなくはない。だから、心配なのですが、やっとあなたのような人に巡り会ったのだから舞い上がっているでしょう。」

リオンは、神父に補足した。

「舞い上がってなどいないと思います。」

「何故ですか?」

不思議がる神父にこう言った。

「アリアは、自分の目的のためだけに戦おうとしていません。あなたやシスターたちや街のみんな、この国の人々が安心して暮らせるようにしたいと、自分に話してくれました。彼女は恩返しも含めて決心を固めていたのです。だからきっと大丈夫。自分はそんな気がします。」

神父は、リオンの横顔を見つめこう言った。

「やはりあなたは、きっと何か特別なものをお持ちのようだ。あなたになら安心してあの子のことを任せることができる・・・。」

神父はリオンのほうに向き直り、

「リオン・ルーズ殿。どうかあの子を、アリアのことをどうかよろしくお願いいたします。」

とふか深く頭を下げた。

「神父殿、このリオン・ルーズの名にかけてお約束は必ずお守りいたします。」

と厚く握手を交わしたのであった。

「さて、アリア!そろそろ行こうか。」

その声にアリアが振り返った。

「ええ、いきましょう!あっと、その前に・・・。」

と神父の前に立ってアリアがこう言った。

「神父様、今日まで本当にありがとうございました。すべて終わったら必ず帰ってきます!神父様の教えを忘れず毎日を精一杯生き抜きます。だからどうかお元気で。」

「・・・・はぁ。知らぬ間にこんなにも立派になっていたのだな。うむ、行って来なさい。私はここでおまえの無事を願っているよ。いつでも帰ってきなさい。アリア、行ってらっしゃい。」

「はい!行ってきます。」

そうしてアリア、リオンは教会を後にした。

二人の後ろ姿を、見えなくなるまで神父は見つめた。

そして、空を見上げこう言った。

「やっぱりお前の娘だね、負けん気とまっすぐなとこがそっくりだよ。ガロ、どうか二人を見守ってやってくれ。あと、約束は守ったぞ・・・。」

神父は空を見上げつぶやくように微笑んだ。


二人は、歩きながら今後の話をいていた。

アリアは目を輝かせリオンの話を聞いてまるで小さい子供のようだ。

「ねぇ、リオン。この後どうするの?」

「このあと?ああ、エリーヌに行こうと思うんだ。」

首をかしげているアリア。

「エリーヌってハンターの町よ?何で行く必要があるの?」

と聞き返す。

どうやら、アリア的にはそのまま山に向かうつもりだったらしい。

旅をしたことはないから、その辺はまだまだ詰めが甘い。

「そのまま山に行くつもりだったのかい?」

と聞いてみたら。

「そのつもりよ。・・・ってダメ?」

気がついたのかリオンの顔を焦ったように見つめる。

「だーめ。それこそ死にに行くようなもんだろ?まずは情報を集めないと。敵を知らないまま行くのは、危険だからね。これ、旅の基本。」

とリオンの言われ・・・

「す・・・・すごい。やっぱり旅をしてるとそんなことまで考えるのね。」

と尊敬されてしまった。

「アリア。急ぐのもわかるけど、情報とあと武器も調達しないと丸腰のままだからね。あ手伝ってくれそうなハンターも探さないとね。多いほうが心強いし。」

「なるほど!ならまずは、エリーヌの町を目指しましょう!」

と序盤かテンションの高いアリア、それを冷静に見守るリオン。

二人はエリーヌの町を目指しベンデモールを後にした。

Gad Poem ~神々の詩歌~  一章  風の詩歌

Gad Poem ~神々の詩歌~  一章  風の詩歌

初めての作品なので、あんまり自信ないですが読んでくれると嬉しいです。 自分なりのストーリ展開で、読みにくいかもしれませんがどうぞ最後までお付き合い頂けると幸いです。

  • 小説
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-01-12

Copyrighted
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Copyrighted
  1. プロローグ
  2. 出会い
  3. 魔物が棲む山
  4. 譲れないもの
  5. 思いは願いと共に
  6. 旅の理由
  7. 出発