りんごダイエット



シャリッ。

何も食べずに我慢していた、口の中に、
新鮮で甘酸っぱいりんごの汁が広がって、耳の後ろから唾液が染み出てくる



すごくおいしい

お腹すいたー。



噛むたびにお腹がぐるぐると鳴って、必死に吸収しようとしてる


生きてるってこういうことかもしれないな、
体の仕組みに感激していたら、

ふと現実に戻される


「ねぇ、なんでお昼にりんご丸かじりなの?(笑)」

そうだ、今学校の昼休みだった


予想通りA子に突っ込まれる
変な空気になるのは分かったうえで、持ってきた


「実はね、ダイエットはじめてさ、りんごダイエット!これ、一食りんごにするだけで痩せるらしいの。なんか、塾の友達もテレビで見てそれで痩せたらしくてねー、、、」

その違和感を埋めようと必死になるほど、ぺらぺらと話してしまう


「そうなんだ、流行ってるんだね~、私も痩せたーい(笑)」

流行ってるという言葉に安心するように、空気はそのまま動きを止めず、流れ始めた



シャリッ



「・・・それ、貸して」


!?



声でわかる、彼の声


私は動揺を抑えようと、笑顔を作る

「え?これ?なんでよー、私の昼ご飯!」



必死になる私の手から、食べかけのリンゴをひょいと掴む


「なんかね~、流行ってるらしいよ~(笑)」
A子がけらけらと話す


「へー。」

彼は無表情のまま
私がかじった部分をそのまま這うようにかじる


!?

お腹がぎゅーっと縮まる

き、気のせいだ


「ん。」


リンゴを返してもらって、変に意識してるのがばれないように、
ちょっだけずらして、下を向いたまま一口かじる

シャリッ

変な緊張感で、さっきまでの甘酸っぱい味が、全くしなくなってる・・


A子がご機嫌で、自分の話を笑いながらする中、


また、私の手からりんごが奪われる



恐る恐る見上げると、
また、ずらした部分にそって、かじられる


わざとだ・・・


「も、もう、私のお昼これだけだから、とらないでよね(笑)」


そう言って笑うけれど、
その笑顔は彼に何も通じず、
さらにもう一口かじられる


・・・だめだ、逆らえない


A子はこの空気に気づいていない



しばらくりんごは、二人から交互にかじられる

だんだん、
手がリンゴの汁でべたべたになって


なぜか罪悪感が出てくる



「ダイエットしなくていーじゃん」

と言うと、芯だけになったリンゴを持ったまま彼は戻った


没収されてしまった、リンゴの芯までも、、、




お腹が、一杯だよもう。

りんごダイエット

りんごダイエット

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-09

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