首の痕
首の中央に1センチメートルほどの赤紫色の痣ができている。
鏡に映る仏頂面。これはキスマークだとかいうロマンチックなものではない。
自らつねったのだ。親指と人差し指の間に挟んで執拗に。
思い通りにはいかない現実が苦しいものだから。
身をつねることによって自分を傷つけようとしたわけではない。安心を得ようとした。
痛覚を感じることで自分の存在を確認できる。
今ここに生きているという証拠を残すことができる。
私には目立たない仏さまの表層につけた痕は血の色をしている。
いつか会えるだろうか、仏さまに憧れながら、今を生きる。
首の痕