スイカ

諸事情により、800字ショートショートを練習中です。カップラーメンを待っている間にでもご覧下さい。
知り合いから頂いた西瓜を見て思い付きました。

スイカ

ある夏の日、私は彼の訪問を受けた。彼は私の旧友で、(あまり詳しくは知らないが)植物を研究している科学者だ。二ヶ月に一回ぐらい私の家へ遊びに来る。
やあ会いに来たよ、と笑顔で彼は言う。いつもならどこか食事にでも行くのだが、こんな真夏日に外に出るのは辛いだろうと思い、彼を家に招いた。
「今日は、君にお土産があるんだ」と彼は鞄から大きな西瓜を取り出した。
「ああ、立派な西瓜だ。また実験のかい?」
彼はこくりと頷く。昔から彼はこうやって野菜や果物を持って来てくれるのだ。どうやら、実験に使った植物を処分するぐらいなら食べると言って研究者達は持って帰るらしい。それが沢山あって食べ切れない、ということで私にプレゼントしてくれるのだ。最初は実験で使った物なんて食べる気になれなかったが、試しに少し囓ってみると、これがなんととても甘くて美味しいのだ。それからは逆に私が欲しいと言って彼から貰うようになった。
西瓜は早速包丁で切って食べた。これもとても甘くて美味しい。種まで柔らかくて食べられる。
「そういえば、今面白い植物を研究しているんだ」
「ほう、どんな植物だい?」
「なんと、擬態が出来る植物なんだ。そいつの種と他の植物の種を一緒に埋めると、その他の植物と全く同じ形・味になるんだ」
「そりゃ、凄い植物だな」
「但し、擬態の出来る植物には猛毒がある。食べてから5分後には心臓が止まってしまうんだ。食用には向かないから、しいて言うなら嫌いな人間を殺す時に使えるかな」
私は「それは怖いな」と言いまた西瓜を囓る。その時、壁掛け時計が視界に入った。
「ところで、スイカは美味しいかい?」
西瓜を食べ始めてから、約5分が経とうとしていた。

スイカ

スイカ

  • 小説
  • 掌編
  • ミステリー
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-06

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