「クロノ・サーカス 」(ボイスドラマ用シナリオ版)全13話/完結
「僕らの悲願、それは神をも恐れぬ究極の大罪だった」
小惑星エウロパ。
物語はこの、まるでダイヤモンドのような形をした奇妙な星の島国、ジパングから始まる。
この国で、留学生として至って平凡な女子高生生活を送っていた主人公、スミレだったが…。
ある目的を持って乗り込んだ時空間移動装置、シンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーでの時空旅行のさなか、
同行していた津田サクラ、伊達ツバキ及び、システムオペレーターの千本崎ユリと共に、とんでもないハプニングに巻き込まれる。
行き着いた先の過去には、死の窮地を乗り越え、恋に落ちるスミレの両親の姿があるはずだった。
しかし、そこでスミレが目の当たりにしたもの。
それは、スミレの存在を根底から覆すような、恐るべき陰謀の魔の手だった…!
そして物語のカギを握るのは、千本崎ユリの身につける謎の腕時計「クロノ・サーカス」。
この不思議な腕時計を操り、次々と襲いかかる困難を乗り越えてゆく四人だったが、待ち受けていたのは、過酷すぎる試練の数々だった。
次第に明らかになってゆく、異世界の住人ナイトメアの存在も、四人の運命を翻弄してゆく。
果たして、世界の未来に待つものは、光か闇か…。
「未来は、僕らの手の中に。」
クロノ・サーカス/第1幕「広げた手のひら、翳りゆく未来」
クロノ・サーカス
第1幕
「広げた手のひら、翳りゆく未来」
第1幕 登場人物
・スミレ・メアリード
・津田サクラ
・千本崎ユリ
・伊達ツバキ
・栗原ボタン
(スミレ)
もう…再起不能だよ…恋するの…疲れちゃったよ…うう…。
…これで何度目…?...あり得ないでしょ…?あんなピンチに…女の子だけ残して逃げちゃうとか…ッ…!
あまりのショックと怒りで…チンピラ君にはひどいことをしてしまった…
軽くやっつけるつもりだったのに…フルボッコにしてしまった〜!はぅう…。
…もう無理…もう信じらんない…ッ…男の子なんて…みんなおんなじ…ッ
いざってゆう時には…逃げ出すのよ…!
サクラ「すーみれっ、続きは?」
スミレ (…ほんと無理…男の子なんて…男の子なんて…!)
サクラ「...すみれ?」
あたしの名前は、スミレ・メアリード。
只今、ここジパングのとあるハイスクールに留学中。
予定では華の高校生活を満喫してるはずだったんだけど…。
今のところ、恋人は部活動の「カラテ」っていう残念な女子高校生。
サクラ「お〜い、すみれっ!」
スミレ「はあ…」
サクラ「ねえってば!すみれ!聞いてる⁉︎」
スミレ「あっ…!サクラ…ゴメン、聞いてなかった…」
サクラ「はぁ…?あたし呼び出したのすみれでしょお?しっかりしてよネもう〜!」
スミレ「うん…ゴメン」
サクラ「で、もっかいあんたの話まとめると…今日で17歳になった、
んでんで、ようやく搭乗資格をゲットしたからの、、なんだっけ、、、
あの長ったらしい名前のハイテクマシンにライドオンしちゃいたい、ってわけね?」
スミレ「あ、うん…」
サクラ「で、何を見に行きたいんだっけ?」
スミレ「うん。…あたし…昔お母さんからよく聞かされたお話があるんだ…」
サクラ「へーどんな?」
スミレ「うん…お母さんとお父さんが…。…恋に落ちた時のお話…」
サクラ「ふーん…あたし別に両親の馴れ初めとかぜんぜん興味無しだけどナー」
スミレ「そうなんだ…?あたしは...ちょっと興味ある…」
サクラ「ふ〜ん」
スミレ「だって…その瞬間が無かったら、あたし今ここにいないもん…」
サクラ 「あー、まあね、そりゃ確かにそーだ」
スミレ「でね、そのエピソードがすごく憧れちゃうってゆうか…アニメみたいなお話なの」
サクラ「アニメか…ふむふむ」
スミレ「…うん、ほんと奇跡が起きたんだよ。その時。。」
サクラ「奇跡か…ドラマチックだね」
スミレ「うん…そう、それでお母さんね、その時お祭りに行ってたんだって」
サクラ「お祭りか。恋が動くシチュだね」
スミレ「うん。それでね...って!ああっ!そーじゃなくって!本題思いだした〜!」
サクラ「え、そこで中断フラグマジオコなんだけど!」
スミレ「サクラ…改めてお願い!」
サクラ「んにゃ?」
スミレ「...付き合ってくれない?」
サクラ「え〜//////ちょ!ガチ!?」
スミレ「…?じ、時空の旅、、だよ?」
サクラ「あ!ああ〜笑そっちか〜!いや...ちょっと心揺れたあたしもなきにしもなきしだけど…!
でもっ...あたしにはツバキがぁぁぁぁ//////////」
(スミレ)
彼女はツダ・サクラ。弓道部の主将でその腕前は全国クラス!
おまけに才色兼備なみんなの人気者!
こっちで出来た初めての友達にして、今ではなんでも話せる親友ッ♥
まあ...時々ちょっと雑なとこもあるけれど...笑
スミレ「サクラ…お願い!初めての時空旅行だし…一人じゃ心細いの…!だから…お願いっ!」
サクラ「うあー//////スミレ・スマイル来たー//////それ反則な//////その天使スマイル...ズッルイでしょおがぁぁぁ/////////」
スミレ「…ダメ…?」
サクラ「ちょ///////その顔目の前にしてどうやって断るのか教えて〜////////」
スミレ「サクラ...!」
サクラ「分かった分かった!付き合ってあげるし!」
スミレ「!…ありがとうサクラ〜!大好き〜!」
サクラ「ま、まあ親友として当然なアレな/////」
スミレ「サクラ…ほんっっっとかっこいい!男の子なんかよりも断然イケメン!」
サクラ「…スミレ…あんた…。こないだのこと…やっぱまだ…」
スミレ「!……サクラ、行こっ…」
サクラ「あっ、スミレ…ッ」
モニター越しから栗原ボタンの声『千本崎くんいる?休憩時間終わりよ〜。お〜い、千本崎ユリ〜応答せよ〜』
ユリ「はーい、千本崎ユリ、只今休憩より帰還です〜。
栗原ボタン『はい、お疲れ様』
ユリ「栗原管制官もお疲れ様です」
ボタン『ありがと。では引き続き、タイムナビゲーション宜しくネ』
ユリ「はーい。じゃあシステムチェック入りま〜す。…ふむふむ、計器異常なし、だな…よし、起動準備完了。さて…そろそろ時間だ。。」
その時、室外通路奥から何者かの足音が近づいてきた。
ユリ「お…、足音」(…早速搭乗客のおでましだ)
電子ドアの開閉音がする。
ツバキ「お〜…これが噂のタイムマシーンか…すごいなこれは…!」
ユリ「あ…」
ツバキ「ん?う〜む、、あのう、ちょっとお伺いしますが、オペレーターの方はどちらに?」
ユリ「あ…当システムのオペレーターは、僕になります…」
ツバキ「おいおい汗...冗談だろ?君はどう見たって若過ぎる。
こんな入り組んだ機械を君が操作するって言うのか?」
ユリ「はい…僕は一応、エンジニアでもありますから…」
ツバキ「ほう、なかなか手の込んだ芝居をするもんだな。
ん?名札まで作ったのか?なになに…千本崎、か」
ユリ「は、はい…」
ツバキ「変わった名前だな。面白い。だが本題に入ろう。
このシステムのオペレーターを大至急ここに呼んでくれ」
ユリ「で、ですから!僕がそのオペレーターなんです…!」
ツバキ「千本崎、、お前…コスプレが長じてここに忍びこんだんだろう?」
ユリ「あーもう!違うんです!これが僕の身分証明です!ほら見てくださいッ!」
ツバキ「…なるほど…これは…。うむ、納得だ。よし、では千本崎、打ち合わせに入ろうか」
ユリ「ちょ、ちょっと!切り替え早くないですか笑」
ツバキ「男子たるもの、切り替えは早く、が信条でな。おっと申し遅れたすまん。俺は伊達ツバキ。貴様は?」
ユリ「き、貴様って...笑あ、はい…僕は千本崎…と申します。このシステムのオペレーターです。よろしくお願いします」
ツバキ「よろしく、千本崎。では今回のミッションを説明する」
ユリ「ミ、ミッション笑...ま、まずは僕の説明から聴いてもらえませんか??」
ツバキ「ん?そうか?分かった。話してみるがいい」
ユリ「は、はい笑」
スミレ「ハーイ到着!ここに時空間転送システムがあるのか〜…!」
サクラ「んー…てか、これ大丈夫なんだよね?」
スミレ「え…大丈夫って…?」
サクラ「んー、いや、単純に初体験じゃんか?事故とかあり得ないのかな?」
スミレ「ま、まぁね…時間を飛び越えるなんて…ほんとに出来るのか不安だよネ…」
あたしとサクラは、恐る恐るその施設の入り口に足を踏み入れた。
「ヴィィン…」
ツバキ「だから...!日付けまで覚えてないと言っているだろう!なんとかならないのか?」
サクラ「え…ツバキ…?」
ユリ「いえ、ですから…。お客様による過去の日時、場所など、具体的なご希望を頂けませんと、
僕としてもオペレーションを実行出来ないんです…」
ツバキ「と、とにかく!俺とサクラはだな、ちょうど一年くらい前のこの時期に!交際をスタートさせたんだ」
ユリ「は、はい…」
ツバキ「その記念すべき最高の瞬間をだな、もう一度見たいんだよ!細かいことはそっちでリサーチ出来ないのか?」
サクラ「こ、こんにちはー…」
ツバキ「ん?」
サクラ「も〜ツバキ…///////立ち聞きするつもり…ちょっとしかなかったんだけど…/////」
ツバキ「サ、サクラ⁉︎」
サクラ「えっと…あたし達の記念日は、、6月2日の…16時。場所は、、繚蘭高校南校舎、3階渡り廊下だよ」
ユリ「それです。実に具体的」
ツバキ「お、お前…なんでここにいるんだ…⁉︎それにスミレ…お前まで…」
スミレ「こんにちは…ツバキ君」
ツバキ「最悪だ......!!スミレ…今のは忘れろッ!いいな…!?」
スミレ「ふふ。了解だよ、ツバキ君....!」
ツバキ「ぐっ…」
(スミレ)
彼はサクラのダーリン、伊達ツバキ君。
ちょっと変わってるけど、サクラと同じく武道の達人で、強豪剣道部の主将!
カップル揃ってめっちゃ強い!
ユリ「…ようこそおいでくださいました。ご搭乗されるお客様ですか?」
スミレ「あっ…ハイ」
ユリ「…。…失礼ですがお客様。当システムにご搭乗頂くには年齢制限がございまして…
満17歳以下のお客様には、搭乗をご遠慮していただいております」
スミレ「はい…」
ユリ「理由としては、自己統制未成熟の恐れによる搭乗後の精神崩壊および
著しい破滅思想などを未然に防ぐことが、目的としてございます」
サクラ「な、なんかちょっと緊張してきた。。」
スミレ「あ、あたしたち!二人とも17歳です…!」
ユリ「承知いたしました。では、ID認証を失礼します」
(スミレ)
その時、挙動不審なあたし達をスキャンするかのように、グリーンの光線が浴びせられた。
ユリ「…認証に成功しました。それでは早速ですが、行き先の時空をご指定下さい」
スミレ「ハイッ…ええっと、、今から20年前のオケムジーク、首都ヴェニス…時計塔広場、夕方でお願いします!」
ユリ「かしこまりました。では、出発の前に今一度、当システムについてご説明させていただきます」
スミレ「ハイっ」
ユリ「当システム、シンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーの運行は、
あくまでもお客様が過ぎ去りし過去に、忘れられない場所で、想いを馳せることを目的として作られたもの。
…ですから、未来へは参りません。どうぞご了承くださいませ」
スミレ「分かりました…!」
サクラ「あーそーなんだ。未来行けないんだネ…てか名前なんだって?めっちゃ長くな?」
ツバキ「ああ、さっき俺も説明を受けたが、どうにも覚えられん」
ユリ「シンクロサイクロトロン・スピリチュアライザー、でございます。…他にご質問などよろしいですか?」
スミレ「はいっ…あの…!過去の誰かとおしゃべりしたり…ってゆうのは…」
ユリ「それにつきましては、世界時空保護法、最重要禁止事項に該当します」
スミレ「最重要…禁止事項…」
ユリ「はい。原則的に、こちらからの何らかの発言、行動による過去へのコンタクトは、
正常なる時空の営みにとって、多大なる影響を与えかねないものです」
サクラ「え…じゃあ、、ひょっとしてうちら、この装置から過去の景色を眺めるだけ?行動できないんだ?」
ユリ「はい。もし、仮に…行き着いたその過去で、何か突発的なトラブルをこちらが起こしてしまったとしましょう」
スミレ「トラブル…?」
ユリ「そうです。それが原因で未来が捻じ曲がり、あなたの誕生に由来する出来事に作用してしまった場合...」
スミレ「…その場合…?」
ユリ「あなた方の存在が、その場で失われる可能性があるということです」
サクラ「ちょ、シャレんなってないし…」
ユリ「しかしながらそれは、万に一つも起こり得ないこと。
この球体モニタリングルーム及びシステムは、最新テクノロジーにより設計された
安全極まりない乗り物にございます。どうぞご安心くださいませ」
スミレ「ハイ…分かりました…」
ユリ「他にご質問などありませんでしたら、どうぞご着席下さい」
ツバキ「おい、千本崎…」
ユリ「あ…!失礼致しました…!伊達様の受付が先行でしたね。時空経度は判明しましたが…いかがなさいますか?」
ツバキ「あ、あれは…キャンセルだ」
ユリ「…?かしこまりました…!ではこちらのお客様のリクエストへと移らせていただきますね」
ツバキ「そうしてくれ」
サクラ「ねえスミレ、座ろ?」
スミレ「…うん」
ユリ「…では改めまして、この度はご搭乗ありがとうございます。
この度、当システム運行及び、オペレーターを務めさせていただきます、千本崎と申します。
どうぞよろしくお願いいたします」
サクラ「ハイハイよろしくですー!あ!ちなみに千本崎さん、下のお名前なんですか?」
ユリ「ふふ。それもご質問に違いありませんが…」
スミレ「ちょっとサクラ…!」
サクラ「ん?まあまあまあ!リラックスして行こうよ〜!せっかくの時間旅行じゃん?」
スミレ「ん〜。…うん!それもそーだ!」
ユリ「致し方ありませんね。。ではお答えします。私の名前は…ユリと申します」
サクラ「ユ、ユリ君てゆうんだ…?ステキ!なんか…可憐な名前だね…!」
ツバキ「男のくせにユリだと...!?」
ユリ「お褒めいただき、ありがとうございます。この国では主に女性に用いられるお名前のようですね」
サクラ「そーそー笑だからびっくりー!」
ユリ「よく言われます。ですが、私の故郷では男性の名前として一般的なんですよ?」
スミレ「うん…あたしも、知り合いにその名前の男の子いたりする」
サクラ「え!スミレとユリ君てご近所生まれな訳!?」
スミレ「かもね…。あたしはオケムジーク…ユリ君は?」
ユリ「僕は…」
その時、不意にコンピューターから呼び出し音が響いた。
栗原ボタン『マスター・コントロール・ルームより業務連絡よ。
現在待機搭乗者多数につき、ルーム・アカウント千本崎、速やかにナビゲーションを遂行せよ』
ユリ「おっといけない。では皆さん、オペレーションに入らせていただきます!」
サクラ「ひょえ〜忙しい仕事なのね〜」
ユリ「はい。。。」
サクラ「じゃあユリ君、歳だけ教えて!」
ユリ「…分かりました。僕は17歳です」
サクラ「やっぱり〜/////だよね?なんかすっごい若く見えるってゆうか、同世代なんじゃないかなーって思ってたー!」
ユリ「…はい笑...奇遇なことに、この場に揃ったのは全員同い年でしたね」
サクラ「ねー!びっくり〜/////」
スミレ「ハイッ…あっ、じゃあ千本崎さん…は硬いから...ユリくん!そろそろ出発でお願いします…!」
ユリ「かしこまりました。クロノ・ドライブの途中、ご気分など優れないようでしたら速やかにお知らせくださいね」
サクラ「わっかりましたぁ!」
ツバキ「ちょっと待て」
サクラ「ツバキ?」
ユリ「これはこれは…伊達様、失礼致しました。退室されるのですね?」
ツバキ「馬鹿なことを言うな」
ユリ「...と、仰りますと…?」
ツバキ「ふん。どこの馬の骨ともわからん貴様に、サクラを任せるわけにはいかない、って意味だ」
ユリ「僕が…馬の骨…。クスクス。この国の言葉は、やはり面白いですね」
ツバキ「ふっ。掴み所のないやつだ。まあいい、これからどこにタイムスリップするのか分からんが、俺も同行させてもらおうか」
サクラ「ちょっと...ッ!ツバキッ...?」
ツバキ「スミレに聞こう、構わないか?」
スミレ「え…あ、うん…わかった。でもあんまり面白いものは見せられないと思うけど…」
ツバキ「決まりだ、千本崎。すぐに出してくれ」
ユリ「…承知いたしました。では参ります。…システム、オールクリア。エンジン出力、次元補正、ステルスモード異常無し。ピピッピピッ」
スミレ
ユリ君がコンピュータをせわしなく操作してゆく。
やがて、私たちのいる空間の照明がフェードダウンした。
サクラ「ね、スミレ…ユリ君この歳からお仕事なんて…すごいよねぇ」
スミレ「うん…」
ユリ「…お待たせしました。それでは皆様、快適な時空の旅をお楽しみ下さい」
サクラ「うわー…マジかー。。ガチ本番来たぁぁぁ…!」
スミレ「サクラ…ツバキ君…行くよ…!」
スミレ
こうしてあたしたち四人の時空旅行は、順調に幕を開けた…はずだった。
今思えば、あたしがこの時、わずかながら感じていた得体の知れない胸騒ぎは、
これから始まる未来崩壊への前触れだったのかもしれない。。
第2幕へ続く
クロノ・サーカス/第2幕「悪の華、憂いの闇に咲き誇る」
クロノ・サーカス
第2幕
「悪の華、憂いの闇に咲き誇る」
第2幕 登場人物
・ペンタス
・クレオメ
・ムスカーリ
・スミレ・メアリード
・津田サクラ
・千本崎ユリ
・伊達ツバキ
・栗原ボタン
ペンタス「…あの大戦によって失われた未来…アースの復元は、忌々しいあの魔女によってまぼろしと消えた…」
クレオメ「うん…ほんと余計なことするよねぇ、魔人てさ…」
ペンタス「…魔人共は、いったい何を考えこの未来を導きだしたのか…」
クレオメ「ペンタス…あんたの悲しみは痛いくらい分かるわ」
ペンタス「僕と共に来るか、クレオメ」
クレオメ「ふふっ…愚問だわ、ペンタス」
ペンタス「…未来を変えようとすることは、森羅万象のことわりに牙をむく行為だと誰もが言う。だが…果たしてそうだろうか」
クレオメ「ナンセンスよね、そんなの。あたしはね、定められた未来なんて信じないわ、ペンタス」
ペンタス「君もそう思うか、クレオメ」
クレオメ「ええ、あたしたちが今、こうして動き出そうとした瞬間に、未来はもう変わってるもの。要するに、可能性の話だわ」
ペンタス「その通りだクレオメ。君は賢い。…準備は、既に整えてある」
クレオメ「⁈まさか…ペンタス…あんた…!」
ペンタス「ああ…時空の王はもういない。クロノスは…」
クレオメ「…クロノスは…?」
ペンタス「…僕が封印したよ」
クレオメ「キャァァ最高じゃない♥︎ペンタス!分かったわ、あとはアクションするだけね?」
ペンタス「そうだ。あの魔女さえいなければ世界は蘇る。アースは再生の未来を辿るはずだ…!」
クレオメ「そうよ。じゃああたし、早速その魔女を亡き者にしてくるわ」
ペンタス「クレオメ。君が手を汚すことはない。ちょっとした運命のイタズラというやつを利用しよう」
クレオメ「な〜に企んでるの?」
....................................................................................
クレオメ「頭良い〜!それは楽チンだわ、ペンタス」
ペンタス「…この方法なら一石二鳥なんだ。もう一人の危険因子、シェイン・シャンブルーロも、
自責の念に駆られ自ら堕落するだろう」
クレオメ「あんたってほんと悪いひと。大好きよ、ペンタス。じゃあ行ってくるわ」
ペンタス「すまないな、クレオメ。魔力が回復次第、僕もそっちに向かうよ」
クレオメ「ペンタスは休んでて!クロノスとの闘いで疲れてるでしょ?…大丈夫。あたしに任せて。すぐに戻るわ」
ペンタス「ああ」
クレオメ「さてと…。時空座標…MMTゼロワンゼロ、オケムジークヴェニスPMエイト…!クロノ・ストリーミング!ブゥゥゥン…」
ペンタス「…クロノス。闇の底から見ているがいい。アースは…必ず我々が取り戻す…ッ!」
ムスカーリ「…計画は順調かい、ペンタス」
ペンタス「…はい、ムスカーリ様」
ムスカーリ「そうかい。…では引き続き、私たちの明るい未来のために…頑張っておくれ」
ペンタス「…ムスカーリ様」
ムスカーリ「なんだい」
ペンタス「今一度確認させていただきたいのですが…。この計画が成就した暁には…」
ムスカーリ「もちろん…当初の予定通りさ。アースの時空は、ナイトメアの王であるお前が支配する。そして…」
ペンタス「この惑星から、すべての魔人の生命を奪い去り、冥界の王であるあなたの楽園、地獄界にいざなう…」
ムスカーリ「そう。地獄界が未曽有の人数の亡者で満たされたなら…
お前たちの生きる糧である、人々の恐怖は…この惑星を飲み込むほどに膨れ上がることだろう」
ペンタス「悪夢と絶望が蔓延する世界…。胸が高鳴ります」
ムスカーリ「私の王国も栄華を極めるというものよ。…昨今の魔人共は、長生きでねぇ…。
骨の髄まで恐怖を絞りだした死者は、砕けて砂になるばかり。
過疎化のせいで悲鳴が途切れるような今の地獄界は、嘆かわしい限りさ…」
ペンタス「地獄界の衰退は、我々ナイトメアにとっても遺憾極まりない未来…。
アースが復活すれば、エウロパはもとい、レムリア、アステカの生命すべてを散らせることでしょう」
ムスカーリ「クロノスを仕留めたあんたのおかげだよ」
ペンタス「ムスカーリ様。あなたの裏切りが無ければ…クロノスには太刀打ちできなかった」
ムスカーリ「クロノスは、変化し続ける未来に必要のない存在だ」
ペンタス「変化し続ける未来…」
ムスカーリ「この結末は、あのひとが自ら招いた未来さ。悲しいねぇ…愛に生きるなんて。…馬鹿な男だよ」
ペンタス「…愛」
ムスカーリ「…さて、それじゃあ私は失礼するよ。ペンタス…世界に闇をもたらしておくれ」
ペンタス「…真の邪悪とは…ムスカーリ様のことに他ならない…
我々ナイトメアの悪行など、彼女の前では子供騙し、といったところか…。恐ろしいお方だ…」
(スミレ)
奇妙な感覚だった。あたしとサクラは、お互い手を繋いで力んでいる。
すると、その繋いだ手が不意に、溶けて一つになるような。不思議な気持ち。
あたたかい風が、ほほに触れた気がした。
直後、無機質なシステム効果音。あたし達は目を開けた。
千本崎ユリ「皆様、ご気分はいかがですか?」
伊達ツバキ「こ、これが時空間移動…か!」
スミレ「あっ…ぜんぜん平気ですっ」
津田サクラ「あたしも。むしろにやける〜!なんかさ〜あたしとスミレのハートがシンクロして溶けちゃったみたいな?キャ〜♥︎」
千本崎ユリ「お気持ちは分かりますが(笑)落ち着いてください、サクラさん」
スミレ「ふふ、サクラってば」
サクラ「や、だって!あ、、はい…」
ユリ「システムの影響ですね。時空間移動の最中は人体の五感といわれる感覚が素粒子レベルにまで研ぎ澄まされますから」
スミレ「そ、素粒子…ど、どれだけ敏感になってたんだろ…」
ユリ「では皆様、両脇のモニターウィンドウをご覧ください」
ツバキ「いったいここはどこなんだ…」
サクラ「なんか暗いねぇ…今、夜なのか…」
スミレ「時計塔…遠くに花火の音…ここで間違いない…お母さんから聴いた情景とピッタリシンクロする…!」
サクラ「あー、で、これから何が起きるわけ?」
スミレ「あ、うん…。お母さんね、この時お祭りに来てたんだって。それで、、お酒飲み過ぎちゃって、けっこう酔ってたみたいなの」
サクラ「ふむふむ、からの〜?」
スミレ「でね、そんな危ない状態でほうきに乗って、、上空でコントロールを失って…落ちてしまったの」
ツバキ「ほうきで飛んでたのか…!なるほど、スミレの母親は、魔女というやつだな…!」
サクラ「ツバキ…そこ問題じゃないから…汗えー!それからそれから⁉︎」
スミレ「うん…それを間一髪のところで救ったのが、、あたしのお父さんなんだ」
サクラ「お〜!スミレママ助かって良かったね〜!あ、それがきっかけで、二人は恋に落ちていったフラグなわけか…!」
スミレ「そう♥︎ドラマチックすぎるよね〜♥︎あたしももしそんなシチュエーションに遭遇したら…助けてくれた男の子に…ちょっと恋せずにいられないかも♥︎」
千本崎ユリ「スミレさん、時空経度時間点は、およそで到着しましたが、今のお話を伺う限り、そのシーンはわずかな時間のようですね」
スミレ「ですね。ん〜…ちょっと外の様子見てみます…。。あっ!」
サクラ「スミレ?どした?……うあ…!なんか空から降ってきてるの…あれスミレのお母さん…?」
スミレ「…あれが…17歳のお母さん…!うん、きっとそう!この瞬間に空から落下してるのはお母さんくらいしかいないはず…!」
ツバキ「な、なんて落ち着かないシチュエーションなんだ…」
サクラ「ってことはさ、そろそろお父さんが駆けつけるわけよね…?」
スミレ「そのはずよ…」
サクラ「どこにいるわけ…?あんたのお母さんに向かって走ってるメンズ見当たらな…あっ!いた!来た!」
スミレ「ほんとだ!あれが…17歳のお父さん…!」
サクラ「てかスミレパパ足めっちゃ速!まるで風なんだけど!」
ツバキ「確かに。疾風のごとき走りだ…!」
スミレ「お父さん…頑張れ…!」
(スミレ)
あたし達は、固唾を飲んでその一部始終を見守っていた。直後。
サクラ「あっ!!スミレパパ、なんかすべった…?」
スミレ「お父さん…⁉︎」
サクラ「なんか…ちょっとヤバくない…?てかこれ間に合う…?」
(スミレ)
その時、モニターウィンドウの向こうから、お父さんの声が聞こえてきた。
シェイン「くっそ…!なんでこんなところに油が撒き散らしてあるんだ…⁉︎…!これじゃ足にチカラが…入らない…ッッ!」
スミレ「油…?お父さん…ッ…?」
サクラ「…ねぇ…スミレ。あたしだけ?」
スミレ「サクラ!ちょっと今無理!」
ツバキ「なんだあの生き物は…コウモリにしてはデカすぎる…」
サクラ「いや…なんかさ、あんたのパパの周りを飛び交う生き物が見えるんだけど…」
スミレ「えっ…⁉︎その当時の出来事、、お父さんからも聞いたことあるけど…そんな話は聞いたことない…!」
サクラ「…マジ?てか…スミレ…。お、落ち着いて…聞いて…?」
ツバキ「スミレ…!お前…ッ」
スミレ「な、なに…?…あたしが…どうしたの…?」
サクラ「いや…あんたの身体…だんだん透明になってきてる…!」
スミレ「ハッ…!なにこれ…!なんで…?」
ユリ「スミレさん、、何かがおかしいです…!」
スミレ「何か…って…?」
ユリ「万が一にも起こり得ないケースが今…あなたに…ッ…起こりつつあるッ!」
スミレ「ユリ君…あたし…あたし…!」
ユリ「こんなこと…ッ…あってはならないんだ…ッ!」
サクラ「ユリ君…ッ!なんとかならないの⁉︎」
ユリ「今考えてますッ…!でも…時間がない…ッ!」
スミレ「ユリくん…あたし…どうなっ…ちゃうの…ッ?」
ユリ「落ち着いて、スミレさん…ッ!」
スミレ「落ちつくなんて…ッ無理ッ!」
ユリ「しかし…ッ…すぐに原因を突き止めなくては…!」
サクラ「ツバキ!ユリ君ッッ!さっきのコウモリがこっち飛んでくる!ここに来る気だよッッ!?」
ツバキ「おい...まさか...!」
ユリ「な…ここに向かってッッ?そんな…ありえない!見えるはずがない…ッッ 」
その時、唐突にモニターから声がした。
栗原ボタン「緊急連絡!こちら栗原!千本崎応答せよッ!」
ユリ「く、栗原管制官ッ⁉︎」
ボタン「千本崎くん⁉︎なにやってるの⁉︎今すぐステルスモードを発動しなさいッ!」
ユリ「既に発動してッ…!な!発動…してない…⁈ステルス機能ダウン…⁉︎制御が効かないッ…!」
ボタン「未確認物体が接近してるのッ!大至急コンタクト回避しなさいッ!」
ユリ「み…未確認…物体⁉︎」
ツバキ「千本崎ッッ…!来るゾッッ!モニターウィンドウを破る気だッッ!」
けたたましい強化ガラスの破砕音が鳴り響く。
クレオメ「キャァァァハッ!」
ツバキ「ぐうっ!」
サクラ「ツバキッ!!」
ツバキ「き、貴様...ッ何者だッ...!」
第3幕へ続く
クロノ・サーカス/第3幕「千本崎ユリの選択」
クロノ・サーカス
第3幕
「千本崎ユリの選択」
第3幕 登場人物
・スミレ・メアリード
・津田サクラ
・千本崎ユリ
・伊達ツバキ
・栗原ボタン
・クレオメ
栗原ボタン「緊急連絡!こちら栗原!千本崎応答せよッ!」
ユリ「く、栗原管制官ッ⁉︎」
ボタン「千本崎くん⁉︎なにやってるの⁉︎今すぐステルスモードを発動しなさいッ!」
ユリ「既に発動してッ…!な!発動…してない…⁈ステルス機能ダウン…⁉︎制御が効かないッ…!」
ボタン「未確認物体が接近してるのッ!大至急コンタクト回避しなさいッ!」
ユリ「み…未確認…物体⁉︎」
ツバキ「千本崎ッッ…!来るゾッッ!モニターウィンドウを破る気だッッ!」
けたたましい強化ガラスの破砕音が鳴り響く。
クレオメ「キャァァァハッ!」
ツバキ「ぐうっ!な、なんだこいつはッ⁉︎ぐあっ!」
サクラ「ツバキッ!!」
ツバキ「ぐぅ…ッ…き、貴様…何者だッッ!」
クレオメ「んふふ…あたしはクレオメ。あんたたちこそ何者?」
サクラ「ひっ…」
クレオメ「あ〜ん?返事なし?...ま、偶然現れた時空旅行者よね?とりあえずあの女はここで墜落死させることになったの!キャハハッ」
ユリ「ば、バカな…こいつは…未来を書き換えるつもりなのか…!」
クレオメ「バカはお前だろー!このメガネがッッ!キャァァァハッシャアッッ!」
ユリ「グアッ!」
スミレ「ユリ君ッ!」
ツバキ「おい!あの化け物オンナ!またスミレの父親のもとへ向かったぞッッ!」
ユリ「させない…そんなこと…絶対…ッ!」
サクラ「…ユリ君…⁉︎何する気ッ⁉︎」
ユリ「出番だよ、クロノ・サーカス…今こそ君たちの力を…解き放とうッ…!」
スミレ「…クロノ…サーカス?」
ユリ「…リューズ・アジャスト…!エフェクト・ハイパースロー…!巻き戻せッ!リワインド・アクションッッ!」
ツバキ「千本崎ッッ?!腕時計なんかいじってる場合じゃあないッ!」
ユリ「いえ。。これでひとまずピンチは切り抜けるはず…」
スミレ「サクラ…ッ…外の様子がなんか変ッ!」
サクラ「…⁉︎…。え…世界が…止まって…る?」
ツバキ「な、これはいったいッッ…⁉︎あの化け物…静止して…いや、こちらに少しづつ戻ってきてるぞ…⁉︎」
ユリ「皆さん、きちんとした説明は後回しにさせてください…!」
ツバキ「千本崎…⁉︎」
スミレ「みんな、ユリ君の話を聞こう…!」
ユリ「まず、この現象について説明します。僕の腕時計を見てください」
ツバキ「1.2.3.4…千本崎…お前、なんで四つも腕時計を…⁉︎」
ユリ「この四つの腕時計。タイトルは、クロノ・サーカスといいます」
ツバキ「タイトル…クロノ・サーカス…?」
ユリ「はい。僕は現在の職業訓練生になるまでは、故郷で時計職人を目指して修行していました。
その当時の最後の試作品がこの、クロノ・サーカスです」
サクラ「キラキラして…キレイ。。」
ユリ「皆さんにこれをひとつづつお渡しします。速やかに利き腕に装着願います。…スミレさん、、ど、どうぞ…」
スミレ「あ…はい…」
ユリ「サクラさん、どうぞ」
サクラ「あ…ハーイ」
ユリ「伊達さんもどうぞ」
ツバキ「あ、ああ…」
ユリ「…よし、皆さん装着完了ですね。ではご説明させていただきます。
このクロノ・サーカスには、様々な機能が内蔵されていますが、まずはそのひとつ。バトル・エフェクトから発動していただきます」
ユリ「おい、千本崎…お前いったい何の話をしている…?」
ユリ「これから僕らに待ち受ける時間は、のっぴきならない時間、恐らく…命がけの闘いです」
ツバキ「い、命がけの…闘い…?あの化け物とか…?」
ユリ「はい。でも落ち着いてください。相手は未知なる生物ですが…先ほどのコンタクトから計り知るに、僕らと同じく実体のある存在です」
サクラ「ユリくん…あたし…闘うの…?」
ユリ「場合によっては…全員で立ち向かう必要があるかもしれません…僕らがこのピンチから生きのびるために…!」
ツバキ「その眼差し…。あながち冗談ではなさそうだな……説明を続けろ」
ユリ「ありがとうございます。ではまず、皆さんが闘うにあたって、どんな武器を手にするか、イメージしてください」
ツバキ「俺は…もちろん剣だ…」
サクラ「あたしは…えーと…弓かな…」
スミレ「ん…」
ユリ「スミレさん、あなたは?」
スミレ「…あたしはこの、両手両足…です!」
ユリ「...カラテですね。よし、決まりました…!次です。では皆さん、そのイメージをクロノ・サーカスに向けて念じてみてください」
ツバキ「こ、こうでいいのか…」
ユリ「その調子です!伊達さん!もっとイメージしてください!」
ツバキ「むぅぅ…!」
サクラ「わ!ツバキ…」
ツバキ「ん…?おお…これは…黄金色に輝く…ツルギだ…!」
ユリ「お見事です伊達さん!」
スミレ「ハァァァァ…ッ!」
ユリ「うん!スミレさんも素晴らしいです。両手足が見事にバトルフォーム化しています…!」
サクラ「わぁぁ…あたしもやるやるやるー!んんんッ…ギリギリギリギリ…」
ユリ「サクラさん!それです!」
サクラ「ハッ!ってな感じで射つんだヨネ?!」
ツバキ「…サクラ⁉︎うおッ!!」
サクラ「あっ」
制御しきれずにサクラから放たれた矢の精神エネルギー弾がツバキの鼻先を掠める。
ユリ「クスクス…サクラさん、それです。今サクラさんが弓を構え、放った。
皆さんのその武器は、精神エネルギーがクロノ・サーカスによって具現化されたものです」
スミレ「精神エネルギー…ユリ君、これって魔法に近いよね?」
ユリ「はい。魔力や魔法の類いをシステム化したものと言えるかもしれませんね」
ツバキ「魔力...魔法?…千本崎、俺にもそんなチカラがあるのか…?」
ユリ「ええ。魔法とはエウロパの歴史上、女性に特化された能力であることが定説としてありますが…。
クロノ・サーカスのシステムは、その概念の範疇に適用されません」
ツバキ「男女問わず、ということか」
ユリ「はい。精神が耐えうる限りその効果は持続しますが、気をつけなくてはならないのはスタミナ切れです。
必要ない時はもちろん発動を解除してくださいね」
サクラ「わわっ!ユリくぅん!そうゆうことは早く言ってよぉ!あたしなんか絶対魔力の量少ないからぁ!」
ユリ「すみませんサクラさん。ですが、、今まさにこの時が、、クロノ・サーカスを発動すべき時です…!」
ツバキ「その通りだ、千本崎。しかし、サクラ、スミレ。お前たちは下がっていろ」
スミレ「えっ、ツバキ君…?」
ツバキ「戦いは男の仕事だ。この化け物は、俺と千本崎で仕留める」
サクラ「ツバキ…」
ツバキ「お前たちを危険な目にあわせるわけにはいかないからな」
ユリ「伊達さん…了解です。あ…そろそろ時間の逆流が終わります。
敵はきっと、すぐには事態を把握出来ないはずです。狙うのはその一瞬。最初から全開でお願いします!」
ツバキ「委細承知だ」
ユリ「伊達さん、構えてください……時空が正常化します!あなたに攻撃が来ます!」
ツバキ「いつでも来るがいい」
サクラ「ツバキッ逆流が止まった!」
ツバキ「ふん…」
もの凄い勢いでモニターウィンドを
ぶち破り突入してきたクレオメ。
飛び込みざまにツバキに鋭い爪の
一撃を仕掛ける。
クレオメ「キャーッハアアアッッ!…え…?」
ツバキ「ふん…残念だったなあ…!」
クレオメの一撃を見事に受け止めるツバキ。すぐさま反撃に転じる。
クレオメ「なっ⁈⁉︎」
ツバキ「ハッッ!」
クレオメ「ギャッッ!」
サクラ「やったっ!ツバキの攻撃が脳天直撃ッッ!」
ツバキ「ふん…何者かは知らんが、これでさっきの借りは返したぞ」
ユリ「伊達さん!お見事ですっ!僕が助太刀するまでもなかった!」
ツバキ「喜ぶのは後にしろッ!スミレの父親は間に合うのかッッ⁉︎」
ユリ「確認しますッッ!」
ユリのそばに歩み寄るスミレ。
スミレ「ユリ君…ちょっとどいてて…!」
ユリ「…スミレさん?」
拳に力を入れ、一撃のもとにモニターウィンドを叩き割るスミレ。
スミレ「ハァッッ!」
ユリ「なっ⁉︎スミレさんッ⁉︎」
ガラス破砕音
サクラ「スミレ⁉︎窓なんか破ってどうするつもり⁉︎」
スミレ「もっとよく聴きたいの。お父さんのこえを…」
ユリ「スミレさん…」
(スミレ)
直感に任せた行動だった。
もし、あたしがここで終わりなら。。
せめて最後に、お父さんとお母さんのいる時空と繋がっていたい、そう思ったのかもしれない。
サクラ「あっ!スミレパパの声が聞こえるッッ…」
シェイン「うっ⁉︎な、なんでこんなところに油がまかれてるんだッッ⁉︎これじゃ足に力が入らないッッ!」
ツバキ「むう。。。やはり時間の巻き戻しが足りなかったか。。油による走行妨害は、依然阻止出来ていない...!」
ユリ「謎の敵を倒すことは出来ましたが…危機に変わりは無いッ!どうすればいいんだッ…⁈」
サクラ「ユリ君!さっきみたいに時間を止めて⁉︎」
ユリ「サクラさん…クロノ・サーカスの連続使用には…間隔が必要なんです…最低でも5分…ッ」
サクラ「5分っ⁉︎」
ユリ「…事前テストの結果データです…」
ツバキ「ならばッッ!スミレの母親の落下地点に先回りだッッ!俺のクロノ・サーカスを使えッッ!」
ユリ「それも不可能です!この四つのクロノ・サーカスはスペックを共有してますッッ!今はまだクロノドライブを使えませんッッ!」
ツバキ「じゃあクロノ・サーカスの回復を待って、また過去に遡ればいいッッ!」
ユリ「寿命で亡くなった方が過去に存在するのは当然です…しかしッッ!
こんな起こり得ないアクシデントによって失われた命が…未来に存在するかどうかの保証は無いんです…ッッ」
ツバキ「他に打つ手は無いのかッッ!」
ユリ「恐らく…ッッ…スミレさんのお母さんがここで命を落とした瞬間に…僕らのいた現実、そして未来は書き換えられるでしょう…ッ」
サクラ「未来が…書き換えられる…?」
ユリ「…スミレさんの存在は…無かったことになる…ッッ。
僕らの記憶からスミレさんの記憶が消えれば…もう二度とスミレさんを思い出すことは無いでしょう…!」
ツバキ「千本崎ィィッッ!打つ手は無いのかと聞いているッッ!」
ユリ「ちょっと静かにしてくださいッ!パニックなのは僕だって同じですッッ!…く…ッ…いったい…どうすればいいんだ…ッッ⁉︎」
スミレ「この声を…届けます!」
ユリ「スミレ…さん…?」
サクラ「ユリくん…スミレのクロノ・サーカスが…なんか変ッッ!」
ユリ「何が…起きるんだ…?だが今はとにかくアクションするしかないッッ!スミレさん…ッ!奇跡を…起こしてくれ…ッッ!」
スミレ「みんな…また会えるといいね…」
サクラ「スミレ…やだぁ…やだよぉ…」
ツバキ「スミレッッ…!」
スミレ「お父さんッッ!…諦めちゃ…ッ…ダメェェェッッ!」
ツバキ「ぐっ⁉︎」
サクラ「キャあっ⁉︎」
(スミレ)
その時。あたしのクロノ・サーカスから放たれたのは。。
ビュオオオッッ!
計測不可能と思えるほどの、暴風だった。
ユリ「…追い風だ…!スミレさんの…お父さんへの想いがッッ…。バケモノみたいな追い風を巻き起こしたんだッッ…!」
(スミレ)
あたしは。。持てるチカラの限りを振り絞って叫んだ。それだけ。
風が疾走ってゆくのをぼんやりと見ながら、あたしは…結末を見届けようとしてる。
スミレ「お父さん…。お母さんを…守って…ッ!」
サクラ「スミレ…ッ!スミレのパパ…あの風に乗ったっぽいよ…!」
シェイン「確かに今...声が聞こえた。。。そうだよ...ッ!こんなとこで...ッ...諦めて…ッたまるかぁぁぁぁ!」
ユリ「…速い…ッ!スミレさんのお父さん…追い風を掴んでスケーティングしてる…ッ…!」
ツバキ「行け行け行けェェェッッ!」
サクラ「スミレパパ頑張れ〜ッ!」
(スミレ)
あたしの声は…お父さんに届いたかな…。
もし…あたしがここで消えちゃったとしても……お父さん。。お母さん。。あたし…。
二人の子供に生まれて…幸せだったよ。ほんとに…ありがとう。
第4幕へ続く
クロノ・サーカス/第4幕「スミレ、愛を叫ぶ」
クロノ・サーカス
第4幕
「スミレ、愛を叫ぶ」
第4幕 登場人物
・スミレ・メアリード
・津田サクラ
・千本崎ユリ
・伊達ツバキ
・栗原ボタン
・ペンタス
・スミレの父シェイン(当時17歳)
ユリ「…魔法による追い風だ…!スミレさんの…お父さんへの想いがッッ…。
バケモノみたいな追い風を巻き起こしたんだッッ…!」
(スミレ)
あたしは。。持てるチカラの限りを振り絞って叫んだ。それだけ。
風が疾走ってゆくのをぼんやりと見ながら、あたしは…結末を見届けようとしてる。
スミレ「お父さん…。お母さんを…守って…ッ!」
サクラ「スミレ…ッ!スミレのパパ…あの風に乗ったっぽいよ…!」
シェイン「諦めて…ッ…たまるかぁぁぁぁ!うああああああ!」
ユリ「…速い…ッ!スミレさんのお父さん…追い風を掴んでスケーティングしてる…ッ…!」
ツバキ「行け行け行けェェェッッ!」
サクラ「スミレパパ頑張れ〜ッ!」
(スミレ)
あたしの声は…お父さんに届いたかな…。もし…あたしがここで消えちゃったとしても…
…お父さん。。お母さん。。あたし…。二人の子供に生まれて…幸せだったよ。ほんとに…ありがとう。
ユリ「スミレさんのお父さん…もうすっかり遠くなって…見えなくなってしまいましたね…くっ…」
ツバキ「ああ…無事に間に合ってるといいんだが…」
サクラ「スミレママ…助かったの…⁉︎どっち⁉︎どっちなの⁉︎…って…ああっ‼︎」
ユリ「サクラさん⁉︎見えましたか⁉︎」
ツバキ「サクラっ!何が見えたんだっ!」
サクラ「あ…あ…」
スミレ「サクラ…?」
サクラ「見えたもなにも…ってかクッキリ見えてんの!スミレがクッキリとォッ!」
ユリ「なっ…ああっ⁉︎ほんとだ!」
スミレ「みんな…。あたし…あたし…ッ…生きてる…?」
ユリ「あ…当たり前ですッ…!だからこうして僕らは…あなたを見つめているんですっ…!」
ツバキ「よ〜〜しっ!ひとまず!一件落着、だなっ」
スミレ「お父さん…間に合ったんだ…。良かっ…た…ぅぅ…」
危機が去ったことを知り、安堵する余り気を失うスミレ。
サクラ「スミレ…⁉︎」
ユリ「ああっとぉ!」
サクラ「ユリ君ッッナイスキャッチ〜!」
ユリ「…きっとスミレさんは…極限の時間を過ごしたんだと思います…あの一瞬に…全身全霊を込めて…」
サクラ「そうだね…って、あれっ⁉︎」
ツバキ「サクラ、どうした?」
サクラ「いや…さっきまでそこに寝転んでたあいつが…消えてる…!」
ツバキ「なっ…いつのまに…!なんとも得体の知れない奴だ…。まだ近くにいるかもしれん。全員油断するなよ」
ユリ「…いえ、ひとまず謎の敵の脅威は去ったようですよ、伊達さん」
ツバキ「なに?なぜそう言い切れるんだ千本崎」
ユリ「クロノ・サーカスの機能ですよ。念のため、さっき敵の物質波動をスキャンしておきました」
ツバキ「物質波動?」
ユリ「はい。まあこの機能はおまけみたいなものなんですが…あ、実は僕、よく落し物するんです」
サクラ「落し物?」
ユリ「はい。だから僕の身につけてるものすべては、クロノ・サーカスに物質波動を記憶させてるんです。
どこに自分が落し物をしたか、すぐに分かるように」
ツバキ「なるほどな。で、奴は今どこにいる」
ユリ「えっとですね…ふむふむ…(電子音)見つけたぞ…。あ、伊達さん。分かりました。
どうやら敵は、随分遠い過去に遡ったみたいですね…」
ツバキ「それは好都合だ」
サクラ「ツバキ?」
ツバキ「まず俺たちは議論を交わす必要がある、今後の動向についてな」
ユリ「はい。…それにしても、驚きました…。恐らく敵は、僕らの生きる世界の住人ではありませんね…」
ツバキ「異世界から来た化け物ってわけか」
ユリ「そうとしか考えられませんね。しかし、見たところ、時空移動装置のようなものは身につけていませんでした」
サクラ「うん、だよねぇ」
ユリ「そこが気になります。一体どうやって、、何の目的があってこの時空経度にやってきたのか…」
ツバキ「確かに…薄手の衣服を纏っていた以外に、それらしき小道具は見当たらなかったな」
ユリ「はい。結論から推察するに、あの生物もなんらかの方法で、時空間移動を可能とするんでしょうね…」
ツバキ「魔法の類いか?」
ユリ「ええ、恐らく。魔法にたくさんの種類があることは知っていますが…時空移動に関する魔法は、
どの文献でも見かけたことはありません」
ツバキ「そうか…」
サクラ「ねえ、それも気になるけど…あたし、スミレのことも心配だよ…!」
ユリ「はい…とりあえず、今後の動向を話し合うのは、スミレさんの回復を待ってからにしましょう」
サクラ「うん」
ユリ「それまでに僕は、ちょっとこの非科学的な出来事について検証をします」
サクラ「あの化け物…アレほんと謎ね…」
ユリ「はい。まずはサクラさん、スミレさんの介抱をお手伝いいただけますか?」
サクラ「あ、うん、分かった」
(スミレ)
どれくらい気を失っていたのだろう。あたしが目を覚ますと、傍らに、笑顔のサクラ。
サクラ「スミレ…おかえり」
スミレ「サクラ…。うん。ただいま…」
ユリ「あっ、スミレさん。ご気分はいかがでしょうか…?」
スミレ「うん…大丈夫…平気です」
ユリ「良かったぁ…。ううっ…」
ツバキ「千本崎⁉︎」
ユリ「ははは…大丈夫です。ちょっと気が抜けちゃったみたいです…」
スミレ「ユリくん…あたし。生きてるよね…」
ユリ「スミレさん…。はい。間違いなくスミレさんはここにいますから…」
スミレ「…怖かった…」
サクラ「スミレ…うんうん…でももう大丈夫だかんね…」
ツバキ「…千本崎」
ユリ「はい…」
ツバキ「お前を含め、みな疲れているとは思うが…」
スミレ「ツバキくん…あたしならもう大丈夫…」
ツバキ「…そうか。分かった、では千本崎。話してくれ」
ユリ「はい…スミレさんが回復するまでに、僕はこれから成さねばならない、いくつかのプランを想定しました」
ツバキ「うむ。どんなプランなんだ」
ユリ「はい。まず、今回僕らが遭遇したアクシデントですが…かなり深刻であると言えます…」
サクラ「あ、うん…それはあたしでも分かるくらい…ヤバイ事件だと思う…」
ユリ「はい。。第1の問題としては、なぜスミレさんのお母さんの命が狙われたのかということです」
スミレ「うん…あたし…まさか過去に来てこんな展開になるだなんて…思ってもみなかった…」
ユリ「はい…こんなこと…万が一にもあってはならないはずでした…」
ツバキ「その万が一が起きて…俺たちはこれからどう動くべきなんだ?」
ユリ「はい…幸い、クロノ・サーカスによる先程の敵の存在時空は判明しています。
僕らのいるこの時間点から、過去へ180年飛んだ時空時間点です」
ツバキ「180年…イマイチぴんとこないが…追うのか、千本崎」
ユリ「はい…一度、僕らの現在時空に帰還して、態勢を整えてから…と言いたいところですが…そうも言ってられなさそうです…」
サクラ「そうよね…またあの敵がいつ、他の過去を塗り替えようとするかわかんないもんね…」
ユリ「ええ…」
栗原ボタン「ピピッ…千本崎くん?応答しなさい!」
ユリ「…はい、栗原管制官。千本崎です」
ボタン「無事だったのね…!良かった!あ、さっきの異常事態について、詳細を報告してもらえる?」
ユリ「…詳細は…正直定かではありません」
ボタン「…どうゆうこと…?」
ユリ「…分かっていることだけ、とりあえずご報告させて頂きます…」
ボタン「分かったわ。それで?」
ユリ「まず…状況ですが、僕を含めた搭乗者5名は、軽傷こそありますが、全員無事です」
ボタン「それはなによりね…続けて」
ユリ「はい。それと…先程栗原管制官にご指摘を頂いた、未確認物体から接触を受けた件ですが」
ボタン「ええ…」
ユリ「…ひとまず退けたものの、依然として予断を許さない状況です…」
ボタン「コンタクトは免れなかったのね…それで?まだ近くにいるのね?」
ユリ「…いえ。この時空からは去ったようですが…」
ボタン「確かに…レーダーにそれらしき反応は見当たらないわね…。とりあえず千本崎くん、一度現在時空に帰還しなさい」
ユリ「…」
ボタン「千本崎くん?聞いてるの?」
ユリ「…栗原管制官。お言葉を返すようで申し訳ありませんが…。事態は急を要します」
ボタン「それは分かってるわ。でも接触があった以上、もう既に手遅れですもの。…だから!一度こっちに戻って対策を練る必要があるって言ってるの!」
ユリ「もちろん分かっています。ですが…」
ボタン「これはお願いじゃないの!命令よッ!」
ユリ「…分かってます。分かっていますが…僕は…いえ、僕らは。このまま事件の解決に向け行動します!」
ボタン「な…バカなこと言わないで…!それにあなた…!今あなたと一緒にいる方がどなたか分かってるの⁈」
ユリ「…スミレさんのことですか」
ボタン「そうよ!彼女はオケムジークの王女にあたるの!国賓よ国賓!
搭乗していただくお客様に優先順位なんて無いけど!今回の場合は!
もしものもしものことすら許されないの!分かるでしょう⁉︎」
ユリ「…はい。だからこそ、なんです」
ボタン「意図が見えないわ…説明して」
ユリ「はい、謎の敵の真の目的は不明ですが、事実としてここにいるスミレさんのお母さん及びその未来が、
亡き者にされようとしたことがまず第一にあります」
ボタン「それが本当だとしたら…これは世界的な事件だわ…」
ユリ「ええ。つまり、言うまでもなくスミレさんの存在までもが奪われようとしたのです…」
ボタン「確かにこの事件…どうやら奥が深そうね…。それで千本崎くん、どうするつもりなの?」
ユリ「…真相を解明するとともに、解決します…!」
ボタン「でも…!あなたに何が出来るの…?千本崎くん…そこからどこへ向かうつもり?」
ユリ「それについては…すべてが未知数で、今はまだ説明できま…」
ボタン「ふざけないでッ!」
ユリ「ふざけてなどいませんッ!これは!…僕らにしか解決出来ない事件です…!」
ボタン「では説明をなさいッ!」
ユリ「…栗原管制官は…今日がこの惑星最後の日かもしれないとしたら…それでも僕を…引き留めますか…!」
ボタン「千本崎くん…ハッ…あなた…!まさか…あなたは…!」
ユリ「通信を一旦終わります…」
ボタン「待ちなさいッ!千本崎くんッ!…プツン」
ユリ「…」
サクラ「スミレ…今の女の人が言ってたこと…あれ…本当なの…?」
スミレ「…」
サクラ「答えてよッ!」
ツバキ「…サクラ、よせ」
スミレ「サクラ…ツバキくん…隠してたことは…ゴメン」
ツバキ「思うとこあってのことだろう。別に俺はお前が王女だろうが聖者だろうが、
友として付き合い方を変えるつもりなどない」
サクラ「ツバキ…。あ、あたしだって…ッそれはそうだけど…ただ…ちょっとショックだったってゆうか…ッ」
スミレ「ツバキくん…ありがと。サクラ…ゴメンね…。ツバキくんの言うとおり、あたし、身分とか晒して…特別扱いされたりするのが…いやだったの…」
サクラ「スミレ…。もう!馬鹿だなぁスミレは…!あ…あたしは!…なんてゆうか…今ようやくスミレのこと、全部知ることが出来たみたいな気分で…ちょっと悔しいけど…嬉しいの!」
スミレ「…うん。隠してたこと以外は、サクラに何でも話してたからね…」
サクラ「ふふ…そだね」
ユリ「あの…話の腰を折るようですみませんが…」
スミレ「ユリくん…」
ツバキ「いや千本崎、続きを話してくれ。事態は一刻を争うんだろう」
ユリ「はい…では続けます。これから僕らは、先程皆さんにお伝えした、謎の敵の追跡を開始します」
サクラ「えと…180年前だっけ…」
ユリ「はい。危険は伴いますが、まず最優先すべきは敵の目的の解明および、抑制です」
ツバキ「闘いになるのか」
ユリ「恐らく…」
ツバキ「ふん…さっきのは互いに不意打ちだったが…予め臨戦態勢に入っていれば、俺はそうそう遅れは取らん」
ユリ「頼もしい限りです、伊達さん」
ツバキ「ふん」
ユリ「スミレさん」
スミレ「はい…」
ユリ「皆さんも、クロノ・サーカスに向けて、ファスト・ヒーリングと命じてみてください。音声認識で発動しますから」
ツバキ「ファスト・ヒーリング?今度はどんな新機能なんだ?」
ユリ「ファスト・ヒーリングとは、クロノ・サーカスの発する時空超音波により、肉体と精神の疲労をリカバリーする機能なんです」
スミレ「時空超音波って何?」
ユリ「時空超音波とは、一時的に僕らの体内時計および新陳代謝を加速活性化させる電磁波のことです」
サクラ「それ使えるねぇ!」
ユリ「はい…ですが…」
サクラ「え、なんかデメリットもあるみたいな?」
ユリ「はい…簡単に言うと、ファスト・ヒーリングを使用した時間の分、全身には軽い老化現象が起きます」
サクラ「げ!それはマズイし!」
ユリ「ご安心ください。テストデータの結果では、外的な変化のみが起こり、それも時間経過とともに回復しましたから」
サクラ「外的変化がマズイってぇの!具体的にどんな?」
ユリ「クスクス…肌年齢が一時的に10歳ほど老化するんです。ですがそれも約5分ほどで回復しますから」
サクラ「あっそう…ならいいけど」
ユリ「はい。では皆さん、お願いします」
サクラ「ふぁ…ふぁ…」
ツバキ「サクラ、真面目にやれ」
サクラ「ツ、ツバキは男だからいーけど!あたし女の子だかんね⁉︎」
ツバキ「サクラ…!」
サクラ「はいはいやるやる〜!クロノ・サーカス〜!ファスト・ヒーリング!」
ツバキ「クロノ・サーカス、ファスト・ヒーリングだ」
スミレ「よし…ファスト・ヒーリング…!わあっ…すごい…こんな感覚初めて…チカラがどんどんみなぎってくる!」
(スミレ)
数分後、私たちは改めてユリくんからのプランニングに耳を傾けていた。
ユリ「では皆さん、いよいよ問題の時空時間点に乗り込みます…!気を引き締めて宜しくお願い…」
ツバキ「…ん?千本崎、どうした」
ユリ「伊達さんッ!後ろだァァァッ!」
ツバキ「なに…⁉︎ゴァッ!」
サクラ「ツバキッ!」
ペンタス「…こちらから出向いてやったぞ…愚かなる魔人どもよ…」
ユリ「なっ…今度はいったい…ッ」
第5幕へ続く
クロノ・サーカス/第5幕「君の理想、僕の正義」
クロノ・サーカス
第5幕
「君の理想、僕の正義」
第5幕 登場人物
・スミレ・メアリード
・津田サクラ
・千本崎ユリ
・伊達ツバキ
・ペンタス
・クレオメ
・栗原ボタン
*ドロシ・メアリード(スミレの母)
*ルンカ・メアリード(スミレの叔母)
*トレスホーク
*ミニベル
千本崎ユリ「では皆さん、いよいよ問題の時空時間点に乗り込みます…!気を引き締めて宜しくお願い…」
ツバキ「…ん?千本崎、どうした」
ユリ「伊達さんッ!後ろだァァァッ!」
ツバキ「なに…⁉︎ゴァッ!」
サクラ「ツバキッ!」
ペンタス「…やれやれだ。わざわざこちらから出向いてやったぞ…愚かなる魔人どもよ…」
ユリ「なっ…今度はいったい…ッ」
ツバキ「…カッ…カハッ…き…貴様は…ッ」
ペンタス「僕か…?僕はペンタス。先程はクレオメが世話になったな…」
ツバキ「…お…ガ…ア…ッ」
ユリ「ペンタス…!伊達さんから手を離せッ!伊達さんが死んでしまうッ!」
ペンタス「…訊くまでもないが、小僧ども。覚悟は出来ているのだろうな?…僕の最愛の存在を傷つけた代償は、その命で償ってもらうぞ?」
サクラ「ツ…ツバキを離しなさいッ!じゃないと…じゃないとアンタを射つッ…!」
ペンタス「その震える手で、か?…ふ。クレオメがやられたというから、一体どんな敵かと思えば…ただの烏合の衆ではないか…興醒めだ。…これは返すぞ」
サクラ「!キャアッ…グッ」
ツバキ「…ハァッ…ハァッ…サ…サクラ…だ、大丈夫か…」
サクラ「…あたしは平気だけど…ッ…ツバキ…ッ」
ペンタス「貴様ら魔人どもには、ことごとく失望させられっぱなしだ…殺す価値すらない…ここでおとなしく指をくわえて成り行きを見ているがいい。この惑星の時間軸は、我々ナイトメアが支配する」
ユリ「ペンタス…お前たちはいったい…何が目的なんだッ!」
ペンタス「いい質問だ、小僧。貴様は…アースの存在を知っているか」
ユリ「…アース。もちろんだ…僕らの住むこの惑星エウロパは、遥かな昔、巨大な球体式の惑星だった…!それが今は大規模な地殻変動により、三つに分解したッ!」
ペンタス「…その通りだ。アースは現在、この惑星エウロパと、アステカ、レムリアの、3惑星に分裂したきりという、なんとも嘆かわしい様相を呈している」
ユリ「…分からないな。惑星の分裂なんて出来事は、誰かのチカラでどうこう出来たことじゃあない…ッ」
ペンタス「確かにその通りだ。だがしかし…僕の望む未来では、アースは再びその姿を取り戻すはずだった…」
ユリ「…惑星の…再生…?」
ペンタス「そうだ。アースが最新現在時空において、未だにあるべき姿である球体をなしていないのは何故か…」
ユリ「そんなの…この惑星の史実文献では一切の記述を見た覚えが無いッ…」
ペンタス「シラを切るんじゃあない。答えは明白だ。貴様ら魔人の愚考によってその未来が潰えたんだろうが…忌々しい種族め…!」
ユリ「僕らの…愚考⁈」
ペンタス「貴様らはこの惑星を蝕む寄生虫だ。自然破壊に海洋汚染も貴様らの仕業だろう」
ユリ「僕らが…アースの再生を阻害しただって…⁉︎」
ペンタス「ほんとに何にも知らないようだな…ならば教えてやろう。先ほどクレオメが塗り替えようとした事実。まんまと生き延びたドロシ・メアリードという魔女についてだが…」
スミレ「⁉︎…ドロシ…ですって…?…あんたが…あたしのお母さんを…よくも…よくも…ッ!」
ユリ「スミレさん。。気持ちは分かりますが…ッ…今は抑えてください…ッ…」
ペンタス「…お母さん…だと?貴様、あの忌々しい魔女の娘か…?」
スミレ「…ううっ…!」
ペンタス「…どうやら間違いなさそうだな。まさかここであの魔女の娘に出くわすとは…。ふん。よく聞け、小娘」
スミレ「誰が小娘よッ…!あたしはスミレッ!」
ペンタス「スミレ・メアリード、か。覚えておいてやろう。そして知れ。貴様の両親が犯した大罪を…」
スミレ「なっ⁉︎…今…なんて言ったの…?」
ペンタス「貴様の両親が犯した大罪…それは許しがたい暴挙だ。我々がいるこの時空から、数ヶ月後に起きる革命のともしびを…貴様の両親は見事に叩き潰した」
スミレ「そんなこと…お父さんとお母さんがするはずないッ…!」
ペンタス「黙れスミレ・メアリード。その暴挙さえなければ…アースは今頃その姿を取り戻していたのだ…。誤算だったよ。我々が仕込んだ希望の種がまさか、貴様ら魔人どもによって根絶やしにされるとはな…」
ユリ「スミレさんのご両親が犯した罪とは…いったいどんな罪だったんだ…!」
ペンタス「ミッチャム・アリストルウィンダ、ハリオン・ガブリエル。…この者たちの潜在意識に仕掛けた暗示は、僕の悲願を叶えるための切り札だった」
スミレ「…ミッチャムおじさん…ハリオンおじいちゃん…!」
ユリ「スミレさん…?」
ペンタス「そうだ、スミレ・メアリード。貴様の遺伝子のルーツに関係する者たちの選んできた選択肢は、どれも邪悪そのものだ。なぜ僕の導きに背いたのか理解しかねる」
スミレ「…だから…お母さんを…殺そうとしたの…?」
ペンタス「…そうだ。貴様の両親さえいなければ、僕の望む未来は無事に訪れるはずだ。それに今この惑星の時間軸を支配しているのは、我々ナイトメアであるという事実。クロノスをも亡き者にした今、僕の悲願を邪魔する者はいない」
クレオメ「…あ〜痛い痛い…ペンタスお待たせ」
ペンタス「クレオメ。今後の動きについては以前話したとおりだ」
クレオメ「了解よん。それにしてもクロノスのいない時空のなんてすがすがしいこと!」
ユリ「…そうか。彼が僕に警告したのは…お前たちの存在だったのか…!」
クレオメ「…彼?そういえばさっきあたしが一杯食わされた時も妙な感覚だったわねえ…」
ユリ「…お前たちが…ナイトメア…ッ!」
クレオメ「なぁんか匂うねぇ…ハッ…!まさかお前たち…ッ!クロノスの意志を継ぐ者かッ⁉︎」
ユリ「その通りだ…ッ。僕は彼の意志を継いで…ここに存在してるんだ…ッ!」
ペンタス「聞き捨てならないな。やはり今この場で始末しておいたほうが得策か」
クレオメ「ペンタス、そのほうがいいよ」
ペンタス「あのくたばりぞこないめ…つくづく往生際の悪いやつだ。だが待て…クレオメ」
クレオメ「あ、ペンタス。ま〜たなんか悪いこと企んでる顔だ」
ペンタス「ふん…クロノスの遺産であるこの小僧どもに…僕らの描く未来を見せてやろうと思ってな」
ユリ「アースが再生する…未来か」
ペンタス「そうだ。クロノス亡き今、それはそれで刺激に不足する現状であることも事実だ。ここでひとつ、ゲームをするのもいいな」
クレオメ「どんなゲーム?」
ペンタス「簡単なことだ。このクロノス最後の希望とやらが、僕らを止めることが出来るかどうか、だよ。もしも貴様らに我々を止めることが出来なければ…分かるな?」
ユリ「ど…どうゆうことになるんだ…ッ」
ペンタス「つまり、貴様ら魔人には…未来など存在しなくなる、ということだ」
スミレ「…お願い…やめて…ッ」
クレオメ「あん?」
スミレ「もう…!…誰かの未来を奪うのはやめて…!」
ペンタス「貴様ら魔人どもはいつもそうだ。自分たちの未来ばかりを最優先する。お前たちこそが真の邪悪だ。この惑星に巣食う最たる害虫と言っても過言ではなかろう」
クレオメ「そうよそうよ。あんたたちの無責任な文明の進歩が!この惑星にどれだけ負担をかけてるかわかってんの?都合のいいことばっか言ってんじゃないわよ!」
スミレ「た…確かにあたしたちは…豊かな暮らしと引き換えに、この星のエネルギーや自然を消費してきた…それは認める!…でもッ!」
ペンタス「貴様ら魔人は本当に自らの正当化が得意だな…!聞く耳など持たぬ。時間の無駄だ」
クレオメ「まちがいない。時間の無・駄」
ユリ「なっ…ちょっと待ってください…ッ!話せば分かることだってあるはずだッ!」
ペンタス「まだ何か話したいことがあるなら、我々のゲームを受けてみろ」
ユリ「くっ…ッ!」
ペンタス「どうする。スミレ・メアリード」
スミレ「…それしか…道は無いの…?」
ペンタス「ああ。そのゲームに勝って我々を止めるか、ここで消滅するのを待つか、その二択だ」
スミレ「ユリくん…」
ユリ「スミレさん…ッ」
サクラ「スミレ。あたしもツバキも…こうなったらとことん付き合うから…ッ!」
ツバキ「ああ。こんなところで消滅するのを待つのはごめんだ。…千本崎、貴様はこの状況をどう見る」
ユリ「伊達さん…」
スミレ「ユリくん…あたしも…闘うッ!」
ユリ「スミレさん…ッ。クスクス。とんでもない展開になってしまいましたね…」
ツバキ「この局面で笑うとはな。千本崎、貴様なかなかに肝の据わった男だ。勝算はあるのか?」
ユリ「分かりません…。ですが…。この試練は、僕に答えをくれる気がしたんです」
ツバキ「答え…?」
ユリ「はい。…誰もが望む幸せな未来。彼らともいつか、僕らは分かりあえる気がします」
サクラ「ユリくん…それってつまり…」
ユリ「…はい!」
ツバキ「ふん。貴様にしては上出来な選択だ、千本崎」
ユリ「ありがとうございます、伊達さん」
サクラ「ツバキ、スミレ…」
スミレ「うんっ!」
ツバキ「おうっ!」
ペンタス「では改めて訊こう。我々の提案を飲むか否か…。答えろ…!」
クレオメ「さあ僕たち。ど〜する?」
一同「…受けて立つッ!!」
ペンタス「面白い、そうこなくてはな。よかろう、ではこれから我々が向かう時空へ共に来るがいい。
時空座標、MMT100、デッドスターエンド、PM5だ」
ユリ「デッドスターエンド...!」
ツバキ「千本崎、知ってる場所か?」
ユリ「ええ、この星の終着点ですね...」
スミレ「エウロパの終着点…デッドスターエンド…!トナおばあちゃんから聞いたことある…!昔そこで大規模な闘いがあったって…!」
ユリ「ええ。伝承によれば、そう遠くない時代に、この惑星の存亡をかけた、聖戦といわれる闘いがあったようですね」
ツバキ「な、なにやら凄まじい場所なんだな…!」
ユリ「はい。巨大なクレーターの中心に向かって流れ込む大量の海水。この惑星の中核へ続くと言われるその大穴ですが…内部構造は明らかにはなっていません。未知なる世界ですね…」
ペンタス「…貴様らはそこで、全てを知るだろう。だがそれは、新たなる未来。我々の描く未来だ」
クレオメ「あの局面、多勢に無勢でなければさぁ…ミッチャムはデザインを実行してたはずなのよね。アースの復元を…」
ペンタス「さて、、お喋りはここまでだ。この先は貴様ら自身の目で確かめるがいい。先にゆくぞ、ついてこい」
クレオメ「ふふっ、じゃあまた向こうでね」
サクラ「…あっ!…き、消えた…!」
ユリ「やはり…彼らは魔法での時空間移動を可能とするようです…!そして皆さん…急展開もいいとこですが…。この星の未来を決める…ゲームが。始まりを告げました…!」
スミレ「ユリ君。あたし達…あの二人を止められるかな…」
ユリ「スミレさん…」
スミレ「…やるしか、ないよね」
ツバキ「スミレの言うとおりだ、千本崎」
サクラ「そうだよ、ユリ君。絶対止めよう、あの二人を…!」
ユリ「もちろん…そのつもりです…!僕にも…望む未来がありますから…!よし、皆さん。これから彼らの指定した時空へと移動します!クロノ・サーカスでの移動も可能ですが、多少なり身体的負担もありますから、ここはシンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーで移動します。各自座席についてください!」
ツバキ「ようし、お前たち、気合い入れろよ」
スミレ「ツバキくんは怖くないの…?」
ツバキ「ん?まあ、複雑ではあるが…。恐れるより先に、血が滾ると言った感じ、だな」
サクラ「も〜ツバキったら…男らしいなぁ!」
スミレ「ふふ。ツバキくんありがとう。なんだかあたしもますます闘志湧いてきた…!」
ユリ「スミレさん…!」
スミレ「…ユリ君?」
ユリ「ス…スミレさんのことはッ!僕が絶対に守り抜きますッ!」
スミレ「え…?」
ユリ「ハッ…あ、いえ、そうじゃなくって…すみません…皆さんを無事に…でした…!」
サクラ「わぁお。ユリ君積極的ィ♥︎」
ツバキ「ふん、こんな時にメロドラマしてる場合か、まったく…けしからん」
スミレ「ユリ君…ありがとう。あたしもユリ君やみんなを守ってみせるから…!絶対みんな無事で帰ろうね…!」
ユリ「…絶対に…はい。では皆さん!目的地を目指しクロノ・ドライブに入ります!」
(スミレ)
ユリ君がオペレーションを開始する。そしてあの不思議な感覚。
あたし達は今、この星の未来を決める闘いに向かってる。
なにもかもが不確かだけど…あたし達はもう引き返せない。
みんなの未来は…絶対に守ってみせるッ!
(栗原ボタン)
千本崎くん…。君みたいに冷静沈着な人がなぜ、こんな行動に出たの…?
今日が惑星最後の日だなんて…一体どういう意味だったのかしら…。
こうなってしまった以上、私も覚悟を決める必要があるわね。。
王女スミレのご両親に、この事件について伝えなくては。。
「栗原管制官、オケムジーク王室事務局と回線が繋がりました」
ボタン「ありがとう。後は私から説明するわ…」
「よろしくお願いします…!」
ボタン「…もしもし、こちらジパング国立時空研究所の栗原と申します。
失礼ですが、ドロシ・メアリード様でいらっしゃいますか?」
ドロシ・メアリード「…はい」
ボタン「突然ご連絡差し上げまして申し訳ありません」
ドロシ「いえ。…あの、娘のスミレが何かご迷惑をおかけしましたでしょうか…?」
ボタン「…滅相もございません。ご迷惑をおかけしているのは、こちらでございます…」
ドロシ「え…?といいますと…?」
ボタン「はい。実は…先ほどこちらの時空間移動装置にご搭乗されたスミレ様ですが…クロノ・ドライブの途中で、トラブルに巻き込まれてしまった恐れがあります…!
ドロシ「トラブル…ですか?それで、スミレは無事なんですか⁉︎」
ボタン「はい、今のところは…と申し上げたいところですが…。詳細につきましては現在全力で調査中でございます…!」
ドロシ「スミレに繋いで頂くことは可能でしょうか…?」
ボタン「…申し訳ありません。先ほど当施設添乗員と通信した際、安否の確認は取れたのですが…現在、通信はお繋ぎ出来ない状況にあります…ですのでご連絡を差し上げた次第です」
ドロシ「わたしに何か出来ることはありませんか…⁈」
ボタン「私はこれから原因究明のため現場へ向かいます。オケムジーク王妃ドロシ様、、無責任なことは申し上げられませんが、事件は…世界レベルでの危機的状況であると私は見ています…!」
ドロシ「…今すぐわたしもそちらに向かいます!」
ボタン「…ご同行のお申し出、ありがとうございます。…ですが…宜しいのですか…?」
ドロシ「娘のピンチにじっとなんてしてられませんから…!10分ほどでそちらに駆けつけます!」
ボタン「え⁉︎ドロシ様の現在地からこちらまでは距離にして2000kmはございますが…!」
ドロシ「ジェット気流で参ります!」
ボタン「…?わ、分かりました…お、お気をつけていらしてください…!」
ドロシ「ハイッ!では失礼しますッ!…さて、大変なことになって来たわ…」
トレスホーク「ドロシ様…いかがなさいましたか?」
ドロシ「トレスホーク隊長…。実は、スミレの身に危険が迫っているみたいで…ッ」
トレスホーク「…なんと。王にご連絡は?」
ドロシ「シェインは今、大事な世界閣議の真っ最中…!現場であるジパングへは、わたし一人で向かいます…ッ!」
トレスホーク「お一人、ですか…?ドロシ様、なりません。このトレスホーク、近衛兵団隊長として…ドロシ様をお守りするため、同行いたします」
ドロシ「ダメですッ!そしたら誰がこの王宮を護るのですか!それに…ご存知でしょう?わたしは、ひとりですがひとりではありません…ッ!」
トレスホーク「!…なるほど、ルンカ様がご一緒であれば、、ふ。承知いたしました。道中お気をつけて行ってらっしゃいませ」
ドロシ「ありがとう、トレスホーク隊長ッ!さてと...」
(ドロシ)
…ルンカ?緊急事態ッ!スミレがピンチなの!すぐに来てッ!
ルンカ(…あ〜ん?ゴメ、あたし今ナッツとバカンスなうなんだけど?…ってか今なんて言った?)
ドロシ(スミレがピンチなのッ!)
ルンカ(あ〜、そゆこと。現場どこ?)
ドロシ(ジパング!)
ルンカ(うわ遠いし)
ドロシ(ジパング国立時空研究所だかんね!大至急だよ!10分で来てッ!)
ルンカ(きっつwwwまいっか、超了解だし。スミレ〜!お姉さんが助けに行くぞ〜!)
ドロシ(お姉さんてなによw叔母さんでしょ!)
ルンカ(それはイヤァ)
ドロシ「…トレスホーク隊長、後ほどまたこちらから連絡を入れますッ!ススキーノッ!おいでッ!」
トレスホーク「ハッ!」
ドロシ「ススキーノ、飛ばすわよ…!しっかりね!…ティアドロ…ジェットストリームッ!!」
トレスホーク「おいおい…嘘だろ…!ドロシ様!ここでそれ呼んだら駄目ですって!」
ドロシ「あっ…。あはは…。すみません!後片付けよろしくお願いしますッ!」
トレスホーク「はは…は……おぉい!メイドに召使い諸君!死にたくなければ身を伏せろッ!今すぐだッ!」
トレスホークの号令を受け、ざわめく王宮広間。
トレスホーク「そーら、おいでなすったぞ…あらゆる風を統べる暴君、ジェットストリームのおでましだッ!…よっ!」
突如、窓を破り侵入する暴風。
ドロシ「行ってきますっ!そぅれっ!」
辺り一面に散乱するガラスや木片。一瞬の出来事に、唖然とする王妃の家臣たち。
トレスホーク「…ふぃ〜。我が国の王妃ときたら…本当無茶するお方だぜ…苦笑」
ミニベル「ふぁあ…トレスホーク様ぁ…これはいったい何の騒ぎですかぁ…!」
トレスホーク「お、召喚魔導師団長のミニベルじゃあないか。実はちょいと緊急事態発生だ」
ミニベル「あんれまぁ…こつらでも緊急事態ですかぁ…。あだすのほうも悪い知らせがあるんずらぁ」
トレスホーク「悪い知らせ?」
ミニベル「んだ。先ほど王宮で大騒ぎになった、ドロシ様の身体が透けて見えるようになってしまった事件…」
トレスホーク「ああ、あれは奇妙な出来事だった…すぐに回復したから良かったものの…」
ミニベル「あの事件…今度は世界中で起こってるみたいずらぁ」
トレスホーク「何…?」
ミニベル「ニュース番組は今、その事件で持つきりだぁ」
トレスホーク「今度は…世界中で、だと…?」
ミニベル「驚ぐよなぁ…トレスホーク様ぁ…あだすをよぐよぐ見てけろ…!」
トレスホーク「…なっ⁈ミニベル…君の身体にも同じ現象が…⁈…まさか…!」
ミニベル「そのまさかずらぁ…」
トレスホーク「俺の身体までも…うっすら透けてきてやがる…ッ!
いったい…世界でどんなデカイ事件が起きてるんだ…?」
ドロシ「スミレ…ッ…どうか無事でいて…ッ!」
第6幕へ続く
クロノ・サーカス/第6幕「世界の終わりの始まり」
クロノ・サーカス
第6幕
「世界の終わりの始まり」
第6幕 登場人物
・栗原ボタン
・ドロシ・メアリード
・ルンカ・メアリード
・スミレ・メアリード
・津田サクラ
・千本崎ユリ
・伊達ツバキ
・ペンタス
・クレオメ
・ムスカーリ
(栗原ボタン)
それにしても…千本崎くんたち、無事かしら…。
もし彼らに万が一のことがあったら…私は…いったいどんな顔でドロシ様に…。
...ダメよ...こんな時こそ私がしっかりしなくちゃ…ッ!
「く、栗原管制官…」
ボタン「…どうしたの?」
「研究所周辺の市街地モニターをご覧になってくださいッ!」
ボタン「…な…なんなのこれは…!…この動き、街行く人々がまるで…ゾンビみたいに…ッ!」
ムスカーリ「やはり…生きる者はエネルギーに満ちている…」
ボタン「ハッ…誰⁉︎」
ムスカーリ「…ふふ」
ボタン「そ…それ以上近寄らないで…ッ」
ムスカーリ「…我が名はムスカーリ」
ボタン「…すぐに警備員を呼んでッ!…?…ちょっと、あなた…⁉︎」
「…ムスカーリ様に…栄光あれ…ムスカーリ様に…栄光…」
ボタン「ひっ…!彼女まで…ゾンビに…ッ」
ムスカーリ「…私が強く念じ見つめた者は…弱者であればたちまちしかばねと化す。
お前もこうなりたいかい…?」
ボタン「…あ…あ…」
ムスカーリ「それとも...見逃してほしいかい?」
ボタン「…ひ…ッ…」
ムスカーリ「ふふ…では、この施設の全機能を直ちに停止せよ」
ボタン「な…ッ…そ、そんなことしたら…ッ…出動中の部下やお客様が…ッ!」
ムスカーリ「…よく、考えるがいい。自らの命と他人の命を天秤にかけるだけだ。
お前も自分の身が一番可愛いだろう…?」
ボタン「…わ、私は…ッ…あなたなんかの命令には従わない…ッ」
ムスカーリ「ふ。…栗原…ボタン、か」
ボタン「⁉︎…なぜ…私の名前を…ッ!」
ムスカーリ「よろしい、その勇敢さに敬意を表し、まずはお前の両親の命から奪うことにしよう」
ボタン「え…ッ⁉︎…」
ムスカーリ「出でよ…ケルベロス…」
ケルベロス「…ガルル…」
ムスカーリ「ふふ、見えるぞ…」
ボタン「…なにを…見てるの…?」
ムスカーリ「…お前の記憶さ。…なるほど、栗原カエデと…栗原キキョウ、か…」
ボタン「し、信じられない…ッ…いったい何故父と母の名を…ッ⁉︎」
ムスカーリ「ケルベロスよ…二人を直ちに餌食とせよ。骨まで残すでないぞ…?行け…ッ」
ボタン「嘘…でしょ…ッ…やめて…ッ!」
ムスカーリ「…何か言ったかい…?」
ボタン「…う…うぅ…ッ」
ムスカーリ「…ケルベロスは鼻が効くやつでねぇ…ものの数分でお前の両親の居所を嗅ぎつけ、
大好物の頭から噛み砕き、味わうであろうな…」
ボタン「…ッ…お願い…やめて…ッ」
ムスカーリ「遠慮するな。私の命令には従わないのだろう…?」
ボタン「…私は…ッ…うう…っ…私は…ッ…あなたの命令に…ッ」
ムスカーリ「そうだ、それでいい…」
ボタン「し…従い…ッ…」
その時、不意に何者かが窓ガラスを叩く音がした。
「お待たせしました〜!開けてくださ〜い!」
ボタン「え…ッ…あなたは…ッ!」
ムスカーリ「…只者ではないこのオーラ…もしやあの魔女…」
ルンカ「ドロシのばかちん。今これ彼女多分ピンチだしィ!
窓開けに来れるわけないでしょ!モタモタしないッ!」
ドロシ「そ、それくらいわたしだって見たら分かるわよっ!ティアドロ…アクアタッチ…!」
ムスカーリ「!...ほう…触れるだけで窓ガラスを一瞬で液化し…鍵を開けるか…」
ボタン「ド、ドロシ様…お逃げください…ッ」
ドロシ「…あなたがわたしにご連絡をくださった、栗原さん…ですね」
ボタン「…はい…ッ」
ドロシ「ん〜、きちんとした状況を把握しかねますが…そちらの方はどなたですか?」
ムスカーリ「お前がドロシ・メアリードか…そしてその部下、ルンカだな?」
ルンカ「ちょ…ッ…誰がこのバカちんの部下だって…?
…ふん!挨拶代わりにこれでも喰らいなッ!ティアドロ…ッ…ゴールドスパークリングッッ!」
ムスカーリ「…ほう」
ルンカ「…ったく、あたしはルンカっつーの!ドロシがあたしの子分だしィ!」
ドロシ「…はぁ。ルンカ、今あんたの煽りに付き合ってる暇はないわ。油断しないで…!」
ルンカ「あん?」
ムスカーリ「…さすが大魔女と言われるだけのことはある。なかなかに強力な魔法だ」
ルンカ「うっ…!あたしの攻撃を喰らって…無傷⁉︎」
ムスカーリ「この身を包む黒炎のオーラは…あらゆるものを焼き尽くす地獄の業火。
いかなる魔法も私には届かぬ」
ルンカ「一体…あんた何者⁈」
ムスカーリ「我が名はムスカーリ。冥府を治める者だ」
ルンカ「…冥府?あの世のこと言ってるわけ?んなもん信じらるかっつーの!」
ムスカーリ「ふふ…お前たち魔人は、間も無く滅亡するさだめ。いずれ冥府にて私と再会するだろう」
ルンカ「…こいつ…ガチなわけ…?」
ドロシ「…分からないけど…とにかく嫌な予感しかしないわ、ルンカ」
ムスカーリ「…察しがいいな、ドロシ・メアリード。
今すぐにお前たちを殺すのは造作もないが…それではペンタスに申し訳ない…
お前たちの息の根を止めるのは、彼らの悲願だからね」
ルンカ「…はぁ?…殺せるもんならやってみ!」
ドロシ「ルンカ、よして」
ムスカーリ「余計な邪魔が入らぬよう、予めスミレ・メアリードの生きるこの時空を封鎖しておこうと思ったが…」
ドロシ「スミレ…?」
ムスカーリ「まさかペンタスの宿敵のお前たちが現れるとはな」
ドロシ「…スミレがこの事件に関わっているんですか…⁉︎それに…ペンタスってどなたなんですか…?」
ムスカーリ「…偶然にもお前の娘スミレは、この惑星の未来を左右する事件に巻き込まれたのさ」
ドロシ「エウロパの…未来?」
ムスカーリ「ふ…お前がペンタスを知らぬのも無理はない。そして、知ったところで今更なにも変わりはしない」
ドロシ「…詳しく話してください…ッ」
ムスカーリ「…余談が過ぎた。…この施設の破壊は、私自ら執り行うことにしよう」
ルンカ「…破壊?」
ドロシ「詳しく話しなさいッ!」
ムスカーリ「ふふ…」
ドロシ「⁉︎…天井をすり抜けた…!ルンカ!止めるわよッ!」
ルンカ「当たり前だしッ!」
ムスカーリ「…お前を手にとるのは久しぶりだ、ディアボロス…!破壊の限りを尽くし、存分に暴れるがいい…!」
ルンカ「…うあ…なんなの…あのバカみたいにデカイ鎌…ッ!ヤバすぎるッ!ああッ!」
ムスカーリ「すべてを狩り取れッ!」
ドロシ「やめなさいッ…ああッ…!」
ムスカーリ「くくく…これでもう邪魔は入らぬ」
ドロシ「…時空研究所が…めちゃくちゃに…!」
ルンカ「…あんのババァ…ッ」
ムスカーリ「これでお前の娘はもう、帰る時空を失った。そしてドロシ・メアリードよ。お前の最期も迫りつつある」
ドロシ「な…ッ…わたしの最期…?」
ムスカーリ「そうさ…お前は死ぬ。あの聖戦でね…!」
ドロシ「…まさか…過去を塗り替えるつもり…?」
ムスカーリ「…絶望に怯えるがいい。…さらばだ」
ドロシ「あっ…待ちなさいッ!……消えた…ッ」
ボタン「なんてことに…ッ…私のせいで…千本崎くん…それに…スミレ様やご友人の皆様が…ッ」
ドロシ「…栗原さん…」
ボタン「…私のせいで…私の…ッ」
ルンカ「あんたのせいじゃあないし…ッ」
ドロシ「そうです…ッ!栗原さんのせいじゃあないです…」
ボタン「ドロシ様…ルンカ様…ッ」
ドロシ「…今回の事件、スケールが大きすぎます…。あの世とか…時空とか…ッ!」
ボタン「はい…」
ドロシ「正直…今すぐには打つ手が思いつきませんが…。私たちにだってやれることがあるはずです…ッ!スミレや…巻き込まれてしまった皆さんの為にも…ッ」
ボタン「…はい…ッ…私たちが諦めちゃ…ダメですよね…ッ。…各方面に大至急連絡を取ります…ッ…!一刻も早く彼らを迎えるシステムを復旧させますッ!」
ドロシ「…栗原さん。はい…ッ、私たちもこの事件について、いろいろ調べてみますッ!」
ボタン「分かりました…ッ」
(栗原ボタン)
千本崎くん…ッ…無事に戻ってきて…!
千本崎ユリ「皆さん、まもなく目的地である時空時間点に到着し…」
スミレ「ユリ君…?」
ユリ「なんだ…?この物体は…」
ツバキ「千本崎、どうした」
ユリ「時空移動線上に…何かが存在しているんです…それもひとつじゃない…!少なく見ても100はあります…ッ!」
サクラ「ツバキ…あたしどうにも悪い予感しかしないんだけど…!」
ツバキ「ああ、サクラ。俺もだ…!」
スミレ「ユリ君…そのレーダー反応、目的地ではないんだよね…?」
ユリ「ええ、目的地のわずかに手前です…」
スミレ「ユリ君…!指示を出してッ!」
ユリ「スミレさん…!分かりました…ッ!もうここまで来たらある程度のことじゃあ驚かないぞ…!」
ツバキ「ある程度のことだといいがな…!」
ユリ「はい…ッ。皆さん!バトルエフェクトを発動願いますッ!」
一同「りょーかい!」
ユリ「…間も無く接触します…ッ!皆さん、警戒レベルを最大にして臨んでくださいッ!来るぞッ!」
(スミレ)
ユリ君がそう言い放った直後だった。シンクロサイクロトロン・スピリチュアライザー全体に、叩きつけるような激しい衝撃。それは四方八方から聞こえてくる。
スミレ「この揺れは…ッ!」
ユリ「攻撃されています…ッ!シンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーを一旦停止させます!いったい外部で何が起きてるんだ…⁉︎」
場面変わり、ペンタスとクレオメの根城にて。
クレオメ「ねぇ〜え、ペンタス」
ペンタス「なんだい、クレオメ」
クレオメ「さっきからなにか…悪いこと企んでる顔してる!」
ペンタス「ふ…。ちょっとしたテストを奴らに仕掛けたのさ」
クレオメ「…テスト?」
ペンタス「ああ。このテストをクリア出来ないようでは話にならない。これから僕らが向かう舞台は、この惑星において屈指の激戦が繰り広げられる場所だからな」
クレオメ「んふふ。じゃあ坊やたち、今頃テストの真っ最中なわけネ」
ペンタス「せいぜい健闘してくれたまえ、魔人共の希望の星たちよ…」
場面再びシンクロサイクロトロンスピリチュアライザーのスミレたちへ移る。
ユリ「が…ッ!こ、この凄まじい衝撃…ッ!いったい僕らは何者に攻撃されてるんだッ⁉︎」
ツバキ「おい…千本崎…よくよく考えたらこのモニタリングルーム…窓が割れたままだ…!侵入されるゾッ!」
「フシャァァァッ!」
スミレ「ツバキ君ッ危ないッ!」
ツバキ「チィッ!こいつらッ!」
スミレ「ハァッ!」
「ピギィッ!」
スミレ「ハァ…ッ…ハァ…ッ!」
サクラ「スミレ…ッ…敵の正体は…!」
スミレ「分かんない…こんな生き物、見たことないもん…ッ!」
ツバキ「こいつは…小人…なのか…⁈」
サクラ「てか…この鬼みたいな顔した小人…今ツバキに殴りかかってきてたよね…?」
ユリ「恐らく…ペンタスの差し金でしょうね…」
スミレ「あの悪魔が…?」
ユリ「はい…推測の域を出ませんが…僕らとゲームをする前の、ちょっとした力試し、といったところではないでしょうか…」
ツバキ「ふん…で、こいつは偵察係だった、って訳だ」
スミレ「ね、ねぇ、みんな。急にあのうるさい音が…消えた…!」
ツバキ「窓の外はどうなって…む、暗くてよく見えんが、窓はどこだ…?」
ユリ「うっ…!伊達さん…違う…窓は僕らの正面にある…!なぜ伊達さんが窓を見つけられなかったのか…それは…ッ…小人たちによって窓が覆いつくされていたからだッ!」
「ピギィ!!」
ツバキ「サクラ!スミレ!俺と千本崎の後ろにつけッ!」
サクラ「ひっ…!わ、分かったぁ!」
ユリ「来るゾッ…!」
「ピギャァァァァス!!」
ツバキ「先手必勝だッ!伊達豪快流、雷式…閃の太刀ッ!怒髪天ッ!カーッ!」
「グッギャァァァスッ!」
ユリ「す…すごい。伊達さん…今ので軽く30匹はやっつけたぞ…!」
ツバキ「ふん…意識したことは無かったが、俺が今日まで身につけてきた技。これも一種の魔法の類いだったのかもしれんな」
サクラ「そうだよツバキィ!」
スミレ「…だめ、みんな。まだ終わってない…ッ!天井にまだ何かいるッ!」
「ピギャァァァァスッ!」
ツバキ「ぐっ…ごぁっ!こ、こいつら…ッ!か、数が多すぎる…ッ!討ち取りきれんッ!ハッ!ダッ!」
サクラ「キャアッ!うっ…」
ツバキ「サクラァァァッ!貴っ様らァァァッ!ぐおお…ッこんな数の化け物どもを相手に…ッいったい…どうすればいいんだッ⁉︎」
スミレ「くっ…ッ!これじゃあ防戦一方だわ…ッ!ユリくん!クロノ・サーカスをッ!」
ユリ「ハッ!そうだ…ッ!僕だけバトルエフェクトを解除すればいいんだッ!」
スミレ「急いでッ!」
ユリ「ハイッ!クロノ・サーカスッ!リワインド・アクションだッ!」
スミレ「よしッ!」
ツバキ「サクラッ…大丈夫か…ッ!」
サクラ「ツバキ…うん…」
ツバキ「千本崎…時間を逆流させたはいいが…このピンチをどう切り抜けるつもりだ…」
ユリ「そうですね…。あ、シンプルなアイデアですが、いなくなってもらえば問題ないと思います」
スミレ「いなくなってもらう…?」
ユリ「はい。置き去りにするんです。伊達さん、このモンスター達を外部に運ぶのを手伝っていただけませんか?」
ツバキ「う、うむ…」
(スミレ)
ユリ君とツバキ君が協力して、小人達をシンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーの外へと運び出した。
ユリ「ご苦労様でした。では皆さん、目的地へ向け再出発しましょう」
ツバキ「おい…千本崎、こいつら追ってこないのか?」
ユリ「はい、恐らく。シンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーの時空移動速度は、時速にしてマッハ17ですから。進路に立ちはだかられてさえいなければ、どんな生物だって到底追ってはこれないかと」
ツバキ「マッハ…17。途方もないスピードだな…」
ユリ「はい。ここで一つ豆知識ですが、僕らが今存在している場所。その名をタイムラインと言います。まるで巨大な光の束のように、下から上へと伸びるこのタイムラインを、今僕らは上へと、つまり先ほどスミレさんのご両親の存在した時空より未来へ向かっています。僕らにとっての現在時空は、これから到達する目的地の更に20年ほど未来です」
サクラ「うーむ…なかなかにややこしいね…」
ツバキ「サクラ、もう大丈夫なのか?」
サクラ「あー、うん。ちょっと腰が抜けちゃっただけ…」
スミレ「サクラ、あたしだって怖かったよ〜!」
サクラ「スミレ…。でもスミレ、やっぱ強い!あんなモンスター相手にバッチリ渡り合ってたもん!」
スミレ「がむしゃらにやってみただけだよ〜!」
ツバキ「さて、千本崎。では行動再開とゆこうか」
ユリ「はい。では皆さん、移動を開始します」
(ユリ)
ユリ君が再びオペレーションに移る。ほどなくして、ユリ君が口を開いた。
ユリ「皆さん、無事目的地の時空座標に到着です。これからタイムライン内部に潜行し、具体的な時空時間点へ向かいます」
ツバキ「ここからが本番、というわけだな」
ユリ「ええ…僕らの未来を賭けた闘いに…突入することになります…!」
スミレ「ユリ君…頑張ろうね…!」
ユリ「スミレさん…。ハイッ!」
サクラ「…なぁんかあの二人さ、ちょっといい感じじゃない?」
ツバキ「ん?…まあそう言われてみるとそうかもしれんな…この危機的状況にも関わらず。のんきなやつらだ」
サクラ「ふふ。いいじゃない。恋するチカラって馬鹿に出来ないのよ、ツバキ」
ツバキ「そ、そうゆうものなのか…うむ」
ユリ「時空時間点…MMT100…デッド・スター・エンド、よし、ここだ…」
サクラ「ね、ねぇ…なんか地鳴りすごいんだけど…」
ツバキ「うむ…ただならぬ雰囲気だ…」
スミレ「ユリ君、外に出てみよう」
ユリ「はい」
(スミレ)
そしてあたしたち四人は、得体の知れない不安を抱えながら、シンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーの外に出た。
第7幕へ続く
クロノ・サーカス/第7幕「主張したくば、生き残れ」
クロノ・サーカス
第7幕
「主張したくば、生き残れ」
第7幕 登場人物
・ スミレ・メアリード
・ 津田サクラ
・ 千本崎ユリ
・ 伊達ツバキ
・ ペンタス
・ クレオメ
・ トナ・メアリード
・ ミュー・ライオネル
・ ソレイユ
・ トレスホーク
・ ハリオン
・ カグラ
・ ミッチャム
・ サリー
・ コキュン
・ イブ
・ ユーサ
・ ナッツ
・ ジャガー
・ カーズマン
(スミレ)
あたしたち四人は、得体の知れない不安を抱えながら、
シンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーの外に出た。
ペンタス「…来たか」
千本崎ユリ「…ペンタス…!」
クレオメ「ゴブリン達とは仲良く遊べたかしらん?」
千本崎ユリ「…やはり。あのモンスターはお前達の差し金だったのか…!」
ペンタス「ふ。まぁそうヘソを曲げるな。
怖じ気づかづにこの場所に来たことは、素直に褒めてやろう」
伊達ツバキ「ふん…とことん生意気な小僧だ」
クレオメ「あ〜ら、あんたツバキとか言ったっけ?
ペンタスやあたしはこう見えて60年は生きてるわ?小僧はどっちかしらね?」
ツバキ「な…60年だと…?」
クレオメ「そ。見た目で判断しないことね。さもないと…火傷、しちゃうわよ?」
ペンタス「クレオメ、そろそろ時間だ」
クレオメ「はいな」
ペンタス「ではゲームを始める。ルールは簡単だ。
これから我々と貴様らは、このデッドスター・エンドで、「聖戦」と呼ばれる闘いに立ち会う」
スミレ「…聖戦…!」
ペンタス「歴史どおりの展開なら、貴様ら魔人どもがこの闘いに勝利し、
平和な未来とやらを手に入れるわけだが…。我々がいる以上、そうはさせん」
ユリ「つまり僕らは、お前達とは逆に、
この闘いに歴史どおりの勝利を導けばいいんだな…!」
ペンタス「そうゆうことだ。簡単なゲームだろう」
スミレ「こんなことがゲームだなんて…あたしは認めないッ!」
ペンタス「好きにするがいい。主張したければ生き残れ。以上だ」
クレオメ「さて、坊やたち。ルールも分かったところで、このデカイ縦穴の中を覗いてごらんよ」
ツバキ「…ふん、貴様らの指図など受けるか。
背を見せたら最後、後ろから襲いかかるつもりだろう」
サクラ「うんうん、絶対そうだよ。こんなとこから落ちたら、あたしたち即死だし…!」
ペンタス「落ちる…?もしや貴様ら…飛行出来ないのか?」
スミレ「…あたしは、少しなら…」
サクラ「スミレ…⁉︎あんた、飛べるの…?」
スミレ「うん…でも、別に秘密にしてたわけじゃないよ、サクラ。
その必要があるシーンなんて、普段特に無かったから…」
サクラ「うんうん、大丈夫よスミレ。羨ましいなって思っただけ」
ペンタス「やれやれだな…仕方ない」
クレオメ「ペンタス?」
ペンタス「ゲームというものはやはり、フェアじゃないとな。というわけで、貴様らに翼をやろう」
ユリ「僕らに…翼を?…くっ、皆さんッ!注意してくださいッ!」
ペンタス「ふ、まあそう構えるな。既に貴様らには催眠をかけた。背中の翼を動かしてみるがいい」
ユリ「な…催眠…っ⁉︎背中の…あっ!」
ツバキ「おい…千本崎。信じられるか、この状況を」
ユリ「伊達さん…僕らの背中に、漆黒の翼が…生えてます…ッ」
ツバキ「ふん。これがどんな罠か知らんが、術をかけられてしまったなら仕方あるまい。
試しに動かし…うをををッ!」
サクラ「ツバキッ!大丈夫…ッ⁉︎ってキャァァァァ!」
ユリ「あ…。伊達さんにサクラさん…二人とも飛び立ってしまった…。
どうやらこれは、信じるほか道は無さそうだ…」
スミレ「ユリ君…あたし、ジパングに来てから、この翼を誰かに見せるのは初めてなんだ…
ちょっと恥ずかしいけど、そうも言ってらんないから…見せるね…バサバサッ」
ユリ「スミレさん…!僕らとは違う…真っ白な翼…!」
ペンタス「ほう。神速の白き翼か。さすがにあの忌々しい魔女の伴侶の血を引いた娘だな」
ツバキ「オアアアアアッッ!」
サクラ「キャァァァァッッ!」
ツバキ「ぐっ…な、なんとか着地出来たか…!」
サクラ「ツバキ…うちら、ガチで飛んだよね…」
ツバキ「ああ。飛んだな。なかなかにスリリングで愉快だったな」
サクラ「いや…愉快ではないけど…はは…」
ツバキ「うむ…すまん」
ペンタス「準備はいいか、クズども。ではゲームを開始する。
せいぜい頑張ることだな…我々は一足先に戦場で待っている。殺す気でかかってくるがいい」
スミレ「…未来は…絶対に守ってみせる…ッ!」
ペンタス「戯言だな。我々は貴様らを皆殺しにするのみだ。
情けなど期待するなよ?クレオメ、行こう」
クレオメ「あいよん!」
ユリ「…伊達さん、縦穴の内部状況は?」
ツバキ「うむ。まさに目を疑う光景だ。
巨大な怪物を取り囲んで10数人の魔人が激闘を繰り広げている…ッ!」
ユリ「分かりました。皆さん、バトルエフェクトにファスト・ヒーリングを
随時切り替えて発動してください!それと…これから僕らは過去に生きる方々と接触します。
くれぐれも僕らの正体は明かさないようにお願いします!」
スミレ「ユリ君、分かった!」
ユリ「スミレさんは特に…現場にご両親がいらっしゃるようなので、気をつけてください!」
スミレ「ハイッ…!」
ツバキ「俺たちに何が出来るか分からんが…ここまで来たらもう後戻りは出来ん。全力で挑むだけだ…!」
サクラ「ツバキ、スミレ、ユリ君ッ、行こう!」
ユリ「ハイッ!」
スミレ「うんっ」
ツバキ「よし」
(スミレ)
あたしたちは、慣れない動作に少し戸惑いながらも、
巨大な縦穴の中へと羽ばたいていった。熱気が下から押し寄せてくる。
戦況は、よく分からないけど、魔人サイドが押しているように見えた。人数のせいかも知れない。
でも…みんな傷だらけだった。
崖の中腹に誰かが運ばれてゆくのが見える。男の子と女の子だ。
グッタリとして、周囲の人がものすごく心配そうに介抱をしている。
あたしたちは、意を決してそこへ近づいていった。
ソレイユ「…我々は、間違いなくあの怪物を追い詰めている...!」
トレスホーク「この二人のおかげで…勝利は目前だッ!」
ハリオン「ミッチャムはひとまず沈黙したが…事態は未だ予断を許さない状況だ」
ミュー「ええ」
ハリオン「ミュー、二人の治療を最優先してくれ」
ミュー「しかし…ッ…ハリオン、あなたや他の皆とて満身創痍のはずなのに…ッ!」
ハリオン「なぁにこれしきの傷…ッ。…それに、この場にいる全員が分かっているはずだ。
…この惑星最後の希望は、その二人の手にかかっていることを…ッ!それにしても...追い詰めたとはいえ、未だ奴の力が強大であることに変わりはない…!」
カグラ「悔しいけど…決定打となるのは…この二人の一撃しかあり得ない…ッ!」
ミュー「…分かりました。…ではドロシとシェインの回復を優先します…!
ナディアナディアゴロナーゴ…!」
ミッチャム「ガァァァァッ!効いたぞクズども…!
まさかここまで僕を追い詰めるとはな…ッ!許さなァァァァい!
全員八つ裂きにしてやるッッッッ!」
ソレイユ「くっ…奴め…目覚めたぞ…!トレスホークッッ!援護しろッッ!」
トレスホーク「ソレイユ隊長ッッ…!このトレスホーク、地獄までお供しますよォッッ!」
サリー「コキュン様。この私にも出撃命令を頂きたく思います…ッ!」
コキュン「サリー…分かったわ。でも勘違いしないで。
あんただけを行かせやしない。あたしも一緒に行く…ッ!」
イブ「お待ちなさい…。先頭には私が立ちます。そして二人とも…。
死ぬことだけは許しませんからね…。絶対に勝ちましょう…!」
サリー「イブ様…」
コキュン「イブ姉さん…」
ハリオン「ふはは…!お前たち三姉妹が熱くなるなんて珍しいじゃあないか。
王であるこのハリオンも、遅れを取る訳にはいかんな…!」
イブ「ふふ、ハリオン様こそ、お変わりになりましたわ」
ハリオン「んん?ハッハッハ、そうかもしれんな!
…ミュー、我々が時間を稼ぐ。二人の治療、頼んだぞ…!」
ミュー「ハリオン…。ええ」
ユーサ「さて…ナッツ。わらわ達も参ろうぞ…ッ!」
ナッツ「...姉貴、いやな予感がするけど....。この戦い…勝てるよな....?」
ユーサ「愚問じゃ」
ナッツ「はは...ごめん。...ルンカ、ドロシ、シェイン…負けるなよ…ッ!」
ユーサ「ナッツッ!遅れを取るでないッッ!」
ナッツ「あっ…姉貴ィ!待てよォッッ!」
ジャガー「ミュー様。我輩も老体ながら、せいぜい張り切ってくるのであーる。
まだまだ若い者達にひけを取る訳にはいきませんのでな…!」
ミュー「ジャガー…武運を祈ります…ッ!それにしても…この二人、なんて深い傷なの…!
私の治療魔法ですら即効性がないだなんて…!」
カーズマン「こいつらはよ、突然に馬鹿でかいチカラを手に入れちまったのさ。
コントロールする術を知らねぇんだ。スッカラカンになるまでよう、ありったけの魔力で
あの化け物と打ち合った。まだ生きてるのが不思議なくらいだ」
ミュー「カーズマン…あなたの傷や消耗だって尋常ではないはず…!」
カーズマン「はっ、こんなもんこいつらの痛みに比べたらたいしたこたねえよ。
それに…弟子の前で情けない格好見せんのはよ、この俺様のプライドが許さねえ。
…んじゃ行ってくるわ」
ミュー「…ええ…武運を祈ります…!」
トナ「ミュー様。最後になりましたが…私も行きますわ」
ミュー「トナ…。くれぐれも気をつけて。彼女達が目覚め、
いの一番に探すのは…母親であるトナ、きっとあなただから…」
トナ「…ありがと、ミュー様。娘たちのこと、それに…
娘の未来の旦那さんのことも…よろしくお願いしますね」
ミュー「ええ…、このミューの名に賭けて、
ドロシ、ルンカ、シェインの命は繋ぎ止めてみせる…!武運を祈るわ、トナ…」
トナ「…ドロシ…ルンカ…。ママが帰ってくるまでに…ちゃんと支度しとくのよ…!」
スミレ「…あれがトナおばあちゃん…ミューおばさま…」
ミュー「ナディアナディア……ハッ…!あなたたちは…誰…?」
ツバキ「おい、千本崎…どう受け答えすればいい…?」
スミレ「ユリ君…」
ユリ「こ、こんにちは…僕らは…えーと…」
ミュー「いったい…あなたたちは…?」
第8幕へ続く
クロノ・サーカス/第8幕「罠と罪と罰」
クロノ・サーカス
第8幕
「罠と罪と罰」
第8幕 登場人物
・ スミレ・メアリード
・ 津田サクラ
・ 千本崎ユリ
・ 伊達ツバキ
・ ペンタス
・ クレオメ
・ トナ・メアリード
・ ミュー・ライオネル
・ ソレイユ
・ トレスホーク
・ ハリオン
・カグラ
・ミッチャム
・サリー
・コキュン
・イブ
・ユーサ
・ナッツ
・ジャガー
・カーズマン
ミュー「ナディアナディア……ハッ…!あなたたちは…誰…?」
ツバキ「おい、千本崎…どう受け答えすればいい…?」
スミレ「ユリ君…」
ユリ「こ、こんにちは…僕らは…えーと…」
ミュー「いったい…あなたたちは…?…いえ、余計な詮索はやめましょう。瞳を見れば分かります。私はミュー。今少し取り込んでるの。失礼ですが、お名前だけ伺っても?」
ユリ「は、はい…!僕はユリ。そしてこちらがツバキさん、サクラさん、です…!」
ミュー「もう一人の方は…?」
スミレ「あ、あたし…!」
(スミレ)
ユリ君が目配せをしてきた。そして改めて悟った。この場の状況を。あたしは名前を明かすべきではない。目の前に横たわる両親とミューおばさまと、将来的に密接な関係が築かれる、と直感で思ったから。
スミレ「あたしは…シュ、シュミーレ…ですッ」
ミュー「まあ。シュミーレさんというのね…可愛らしいお名前だこと。他の皆さんも美しい、そうね…まるで花の名前のように素敵だわ…。私はミューと申します。ゆっくりお話ししていたいけど、今はゴメンなさい。見ての通り、取り込み中なの。それにここは危ないわ。どこか安全なところへ避難なさい」
ユリ「あ…えっと…僕らは…」
ミュー「…この気配…そこにいるのは、どなたかしら?」
ユリ「…⁉︎」
ペンタス「貴様が大魔女ミュー…すべての災いの元凶か」
クレオメ「…あ〜。この女のせいであたしたちの計画、ほころんじゃった、って訳ネ」
ミュー「あなたたちは……夢魔の一族、ですね?」
ペンタス「その通りだ。僕の名はペンタス。貴様ら魔人を皆殺しにするためにやってきた」
ミュー「!…話が見えないわ。この四人とあなたたち夢魔の一族…いったい何者なのですか…!」
ペンタス「死にゆく貴様にあれこれ説明する必要はない。これはゲームだ。この惑星の未来を賭けたゲームさ…!」
ミュー「ゲーム…?」
ペンタス「そうだ。これから起こることに刮目するがいい。貴様らはこの闘いに勝利すると信じているようだが…」
ミュー「当然です…!」
ペンタス「勝つさ…もっとも、それは我々が来なかったらの話、だがな」
ミュー「な…!」
ペンタス「そう、この闘い、貴様ら魔人が勝つはずだった。しかし…その結末では困るんだ。そこでこのゲームを提案することにしたわけだ」
ミュー「…いったい何が目的なのです?」
ペンタス「…この四人を貴様らに与える。対して僕らはミッチャムに加勢する。僕らは3人、貴様らは総勢10余名。足りなければ好きなだけ増援を呼んで構わない。そして、ルールはシンプルだ。勝て。勝って未来を掴め。それだけだ。では失礼する」
ミュー「あっ…!」
ミッチャム「処刑してやるぞォオ貴様らァァア!全員でかかってくるがいいいい!」
ペンタス「やあ、ミッチャム」
ミッチャム「⁈…なんだ貴様は…」
ペンタス「僕らは君の味方だよ」
ミッチャム「…貴様らの顔など見たこともないな…いったい何者だ…?」
ペンタス「自分の胸によくよく尋ねてみるがいい。…そのハートを悪に染めたのが誰だったのか…思い出せ…ッ!」
ミッチャム「うっ⁉︎…まさか…まさか…あれは夢じゃなかったのか…ッ…君は…」
クレオメ「ふふふ」
ミッチャム「君たちは…ペンタスと…クレオメ…?」
ペンタス「そうさ…同胞よ。この戦局、君一人で充分だとは思うが、万が一も起こりうるかもしれないからな…ここはひとつ、僕らが助太刀しようじゃあないか」
ミッチャム「…それはありがたい申し出だ…このハエども、五月蝿くてかなわなかったんだ…!一緒にやっつけようじゃあないか、なあ!」
ペンタス「……口の利き方に気をつけろ、ミッチャム」
ミッチャム「うっ…」
ペンタス「君は、僕の駒でしかないってことを忘れるな。…主人は僕だ。分かったな?」
ミッチャム「…はい…ペンタス様…」
クレオメ「ほ〜んとペンタスの魔力って強烈ねぇ」
ペンタス「さて、クレオメ。…始めようか」
クレオメ「ほいほい」
ソレイユ「…おい、ユーサ。あの二人は何者か分かるか…ッ?」
ユーサ「ほほ…ソレイユ、おぬしもちと、口の利き方に気をつけたほうが良いぞ?」
ソレイユ「ふん、我ら王宮御三家にッ!上下関係などないッ!」
ユーサ「相変わらず生意気な小娘よの、ほほほ…まだおしめが外れぬのかえ?」
ソレイユ「何ィッ!」
シーマ「は〜いはい、そこまでになさいな」
ユーサ「む…その声は…」
シーマ「ユーサ様もソレイユを煽るのはおよしになって」
ソレイユ「シ、シーマッ!お前…ッ来たのかッ!」
シーマ「ええ、城下町の混乱はきちんと治めて参りましたわ。その後の対処に関してもミニベルに指示を出してありますのでご心配なく。さ、ユーサ様、お話をお続けになって?」
ユーサ「ふ。涼しい顔でこの局面に馳せ参じるとは…。シーマお主、以外と暑苦しい奴よのう」
シーマ「ふふ!確かに気持ちが滾っておりますわ」
ユーサ「…久方ぶりじゃ。我ら三人が揃いで戦に臨むのは…」
シーマ「ですわねぇ」
ユーサ「よかろう、では教えてやるとしよう。…あやつらは、夢魔と呼ばれる種族じゃ」
ソレイユ「夢魔…イマイチ話が見えんが、ひょっとしてこの闘い、ユーサ、貴様は黒幕を奴らだと見ているのか?」
ユーサ「定かではないが…恐らく」
ソレイユ「夢魔だかなんだか知らないが…敵とあらば討ち取るのみだッ!」
シーマ「ソレイユ…お待ちになって」
ソレイユ「何だッ!」
ユーサ「ふ。夢魔がこちらへ来よるわ…油断するでないぞ…奴らはわらわと同じく、幻術の類いを得意とする。けして欺かれるでないぞ…」
シーマ「…承知いたしました」
ソレイユ「心得たッ!」
ペンタス「よく聞け魔人諸君ッ!これよりパーティを開催するッ!」
ソレイユ「パ、パーティ…だと?」
ペンタス「世界の終焉を記念して、舞踏会なんてのもおつじゃあないかッ…!くくく…」
シーマ「舞踏会…?」
ペンタス「そうだ…!全員振り返るがいい。僕がパートナーを用意してやったぞ…!」
ソレイユ「後ろ…?ハッ…!こ、これは…!」
ユーサ「奴め…なかなかに強力な術を扱いおるわいなぁ…やれやれじゃ…!」
ペンタス「その者たちは貴様ら自身から抽出した悪の心…!ダークサイドの自分と認識するがいい…!」
ユーサ「…小賢しい奴よ…」
ペンタス「僕を倒したいならば…まずは己に打ち勝ってからにするんだな。では諸君の健闘を祈る…!」
ハリオン「幻ではなさそうだ…。お前たち、気をつけなさい」
カグラ「お父様ッ!来るッ!」
ハリオン(悪)「死ねエエエエエエエエエ!!!!」
ハリオン「グッ!このパワー…ッ!」
カグラ「すぐにお助けしますッ!」
ハリオン「カグラッ!私のことはいいッ!お前はお前の闇を討てッ!」
カグラ「お父様…。ゾク」
カグラ(悪)「キャ…カ…キャハハハ!どうやって殺そ〜か!八つ裂きにしてあげましょ〜か!」
カグラ「これが…私の…闇…ッ」
ジャガー「この場の全員に告ぐッ!まずは目の前の自分に打ち勝ていッ!真の闘いはそれからであぁるッ!」
ペンタス「くく…殺せ殺せ殺せ…!愚かな魔人どもに死をッ!かかれェェッ!」
クレオメ「ねぇペンタス。な〜んであの女だけダーク・ドールがヤル気ないわけ?」
ペンタス「何?…どいつだ…」
ユーサ「…ほほほ」
ペンタス「奴は…ユーサ・パルシェ…!僕の術が効いてないのか…?」
ユーサ「このようなまやかし…わらわに通用するとでも思うたかえ…?ほほほ…ダーク・ドールとはのう…愉快じゃ。だが…弱き我が悪の化身に命ずる。…失せよ」
ペンタス「ち…」
クレオメ「な〜に、あの女。ひと睨みでダークドールをかき消しちゃったわ」
ペンタス「貴様…なぜだ」
ユーサ「そうじゃのう…わらわの存在が…基本的に、悪、ゆえにかも知れぬのう…」
ペンタス「…なるほどな、分かりやすい。予定外ではあったが…ユーサよ。悪いことは言わない。こちら側につく気はないか…?」
ユーサ「良いアイデアじゃ。昨今の浮世は退屈でのう…」
ペンタス
(ふん…この女にここで暴れられるのはなにかと面倒だ。ひとまずこちらに取り込み、戦局が予定通り運び次第、すぐに始末してやる…)
クレオメ「ふ〜ん。じゃああんたも仲間にしてあげる。こっちに来なさいよ」
ユーサ「それもまた一興…とでも言うと思うたかえ?たわけが…!」
ペンタス「…貴様」
ユーサ「…じゃが、この局面。さすがのわらわとて、いささか分が悪いわいなぁ…困ったものじゃ…。ひとまず、一服とするかのう…」
クレオメ「性格悪い女ねぇ…殺したくなっちゃうじゃない」
ユーサ「ふ〜…、妙な動きはするでない。結末を見ずに、あの世に送られたくはなかろ…?」
クレオメ「決めた…。あんたのことはあたしが絶対に殺したげる…最期の一服、せいぜい楽しむことネ…!」
トナ「くっ…!まさか自分を相手に戦うことになるだなんて…!仕方ないわ…ッ!全力でいくしかないッ!…ウラガーノ…ジェットストリームッ!」
「殺すッ!ヒャアッッ」
トナ「うっそ⁉︎これをかわすの…ッ⁉︎」
トレスホーク「やれやれ…こいつが俺の悪の化身か。さすがに色男ときてやがる。にしてもドス黒い眼差しだぜ…路地裏でチンピラやってたあの時の俺は…こんな眼をしてたっけか…」
ソレイユ「トレスホークッ!貴様絶対勝てッ!」
トレスホーク「ソレイユ隊長…。はは、当たり前だろ。この闘いが終わったらさ…俺はあなたに結婚を申し込むんですから」
ソレイユ「…なんだッ!よく聞こえなかったがッ!」
トレスホーク「ソレイユ隊長こそ!負けたら承知しませんよってッ!」
ソレイユ「ふん…この私が悪などに負けるか…ッ!バリカンデ…!トラガリータァァッ!」
トレスホーク「というわけだ。悪なるトレスホーク君。お前はこの場にお呼びじゃあないッ!メテオホークダウンッッ!そりゃッ!」
シーマ「…あなたが、あてくしの闇の化身ね。ふふん。笑っちゃう!その目つき…まるでケダモノじゃないの…!
「殺す…殺す…殺す…」
シーマ「…でも、もう目を背けるのはイヤ。あなたに勝って、、あてくしは…ッ!本当のあてくしに生まれ変わるッ!覚悟はよろしくって⁉︎弾け飛びなんしッ!ポップコーンエクスプロ〜ジョンッ!!」
ナッツ「こんな下衆な顔した俺の分身...!ははっ、ルンカには絶対見せられねえ...!悪いんだけどさ、お前にはここで灰になってもらうぜ...!燃え尽きろッ!!サタニック・ブレイザーッ!!」
コキュン「ハァッ…ハァッ…。…その下品な笑顔…吐き気はしないけど…やっぱり気にくわないわ。馬鹿にしてるでしょ?少し頭を冷やすといいわ。…スンヴァレルナ…デラ・マージサミーガッ!!」
サリー「不思議ですねぇ…どこか懐かしくもあるその眼差し。。でもごめんなさい。もうその眼差しに戻る気はさらさら無いの。さようなら、いつかの私。…オクターヴァー・ファズディストーションッッ!」
イブ「…サリーの言うとおりだわ。ふふ。でも…あなたがもうひとりの私とはいえ、ほ〜んとにやんなっちゃう。その生意気でふしだらな笑顔。私を殺すだなんて…キツイお仕置きが必要のようね。スンヴァレルナ…ツンデラ・ヒョーガッッ!」
ハリオン「むう…悪なる己の姿を改めて眺めてみると、実に禍々しいものだ…」
カーズマン「まったくだな」
ハリオン「ビースティ・カーズマン、それにジャガーよ」
カーズマン「あん?」
ハリオン「余計な心配かとは思うがね…。負けてくれるなよ」
ジャガー「うむ!」
カーズマン「ハリオンさんよ、あんたはあんたの心配してりゃいい。世界最強のこの俺に、心配なんざ無用だ」
ハリオン「はっは!頼もしい男だ!」
煙草に火をつけるカーズマン。
カーズマン「…なあ、ジャガーさん。あんたに喰ってかかってたあの頃の俺は…こんな面してたかい?ハハッ」
ジャガー「まったくもって異なるのであーる。若き日のおぬしは、純粋に強さを求める眩しい青年じゃった…!そこに陰りなど微塵もなかったのであーる」
カーズマン「そうか?俺は最初、あんたを殺すつもりで飛びかかったぜ?」
ジャガー「ふ。心底ではない。それはカーズマン、おぬしが一番よくわかっているであろう!」
カーズマン「ハハッ!忘れたよ、んな昔のことぁよ!さてと...んじゃ爺さんたちよう。そろそろおっぱじめよーかッ!」
ハリオン「誰が爺さんだ、カーズマン。君とは改めて、誰が世界最強なのか、拳で語り合いたいものだ」
カーズマン「ハハッ!おっかねーな!望むところだがよ、今は生き残ることに集中だ。この勝負で張り切りすぎて腰やんねーよーにな!」
ジャガー「うむ。確かに最近運動不足なのであーる。よいトレーニングになりそうじゃい!ゆくぞっ!」
カーズマン「おお!」
ハリオン「うむ!」
ツバキ「な、なんて激しい闘いなんだ…!彼らはいったい…!」
千本崎ユリ「皆さん…この状況から、更に予期せぬ事態が起きてしまいました…!
この状況…ッ。このままでは本当に歴史が…ッ!」
ミュー「この二人…ドロシとシェインが回復すれば…戦局は好転するはずなのですが…思った以上に私の回復魔法ですら…効き目が…ッ…ううっ…」
スミレ「ミュー様ッ…!」
ミュー「大丈夫です…ッ。私の全魔力を彼らの蘇生に…ッ…!」
サクラ「でも…ッ…それじゃあミュー様が倒れちゃう…ッ!」
ミュー「…ハァッ…ハァッ…なぜなの…。なぜ二人は目を覚まさないの…?」
クレオメ「やっほ〜!」
ペンタス「大魔女ミューよ。二人の回復は順調か…?」
ミュー「…くっ…こんなはずは…ッ」
ツバキ「ペンタス…クレオメ…!貴様ら…何をしにきたッ…!」
ペンタス「…ひとつ、いいことを教えてやろうと思ってな」
ミュー「…ううっ…」
ユリ「ミュー様ッ…!しっかりしてください…ッ」
ペンタス「くくく。かの大魔女ミューともあろう者が…無様に膝をついている。傑作だな…!」
ミュー「…何が…おかしいのですか…ッ…」
ペンタス「ふふ。では教えてやろう。その二人には、先ほど僕が次元魔法をかけておいた」
ミュー「…次元…魔法…?」
ペンタス「そうだ。そこのゴミクズ二人とミュー、貴様らの間には見えない次元の扉が開かれている」
ミュー「見えない次元の扉…?」
ペンタス「そうだ。そして貴様の施した回復魔法…。行き先は…」
ミッチャム「…フフ…フハハ…!なんだこの漲るエネルギーはッッ!フハハ…!」
ミュー「…ハッ…!まさか…私は…私は…ッ!」
第9幕へ続く
クロノ・サーカス/第9幕「絶対なる絶望」
クロノ・サーカス
第9幕
「絶対なる絶望」
第9幕 登場人物
・ スミレ・メアリード
・ 津田サクラ
・ 千本崎ユリ
・ 伊達ツバキ
・ ペンタス
・ クレオメ
・ミッチャム
・ ミュー
・ ソレイユ
・ トレスホーク
・ ハリオン
・カグラ
・サリー
・コキュン
・イブ
・ユーサ
・ジャガー
・カーズマン
ミュー「…ハァッ…ハァッ…なぜなの…。なぜ二人は目を覚まさないの…?」
クレオメ「やっほ〜!」
ペンタス「大魔女ミューよ。二人の回復は順調か…?」
ミュー「…こっ…こんなはずでは…ッ」
伊達ツバキ「ペンタス…クレオメ…!貴様ら…何をしにきたッ…!」
ペンタス「ひとつ、いいことを教えてやろうと思ってな」
ミュー「…ううっ…」
スミレ「ミュー様ッ…!しっかりしてください…ッ」
ペンタス「くくく。かの大魔女ミューともあろう者が…無様に膝をついている。傑作だな…!」
ミュー「…何が…おかしいのですか…ッ…」
ペンタス「ふふ。では教えてやろう。その二人には、先ほど僕が次元魔法をかけておいた」
ミュー「…次元…魔法…?」
ペンタス「そうだ。そこのゴミクズ二人とミュー、貴様らの間には見えない次元の扉が開かれている」
ミュー「見えない次元の扉…?」
ペンタス「ああ。そして貴様の施した回復魔法…。行き先は…」
ミュー「…まさか…私は…私は…ッ!」
ペンタス「ハハッ!そのまさかだ、大魔女ミューよ。ミッチャムはおかげさまで全快したよ。ご苦労だったな…!」
ミュー「…なんてことを…私はッ…!」
ペンタス「ふん。そこのボロ雑巾ともども、くたばっているがいい…くくくッ!さあ大魔女ミュー!貴様の仲間どもを見てみろ…!」
ミュー「…みんな…ッ…。あ…」
ソレイユ「よしッ…!このまま行けば勝てる…ッ!皆ッ!絶対に負けるなッ!」
カーズマン「おう!こっちもじきに決着だっ!」
トレスホーク「よーしッ!全員で勝つぞッ!」
ペンタス「ふふ…クズどもが…瀕死ながらも自らの悪の化身に競り勝とうとしているな…素晴らしい。褒美をやるとしよう…!」
ミュー「…何を…ッ」
ペンタス「ダークドールのエネルギー源は、奴ら自身の魔力、体力から構成されている。すなわち、リカバリーは何度でも可能ということだ」
ミュー「…なんですって…?」
ペンタス「残念だったな…ッ」
ハリオン「…何かがおかしい…」
ジャガー「どうしたんじゃい!ハリオンッ!」
ハリオン「魔力が…抜けていく感覚だ…ッ」
ジャガー「ぬぅ…ッ…これは…!」
カーズマン「ち…。んだよこれぁ…!こいつら…また息を吹き返しやがったぞ…!くッ…」
イブ「それに引き換え…私たちの魔力は…ッ…なぜか…ッ…底を尽きかけている…ッ!」
カグラ「このままでは…ッ…」
ハリオン「…ぐ…お…お前たち…ッ」
サリー「コキュン様…ご無事ですか…ッ」
コキュン「サリー…ッ…危ないッ…ッ!」
サリー「…え…ッ」
轟音と共に、遥か彼方の断崖まで吹き飛んだサリー。
イブ「コキュン…ッ!前を見なさい…ッ」
コキュン「イブ姉さ…ぐゥッ…」
イブ「…コ、コキュン…」
またしても轟音が辺りを包む。氷漬けのコキュンが凄まじいスピードで宙を舞い、断崖に突き刺さった。
ハリオン「コキュン…ッ…サリー…ッ!」
ソレイユ「全員目の前の敵に集中しろォォッ!」
相次ぐ爆発に炸裂音。次々と敗北に倒れ、断崖に磔にされてゆく戦士たち。
ペンタス「ハッハッハッ!痛快とはこのことだな…ッ!クレオメ、こいつらの絶望の味はどうだ?」
クレオメ「ん〜♥︎蜜の味って感じ!でも…まだ足りないわ」
ペンタス「ふふ。当然だな。こいつらには究極の絶望を味わってもらう。そう簡単には殺さんよ」
ミュー「…もう…やめてください…ッ」
千本崎ユリ「やめろ…ッ!ペンタスッ!」
サクラ「やめてよぉ…ッ!」
ペンタス「ハッハッハッ!いい顔だ貴様ら…ッ!もっと恐怖しろ…ッ!僕はこの惑星の王になるんだ…ッ!」
スミレ「…いい加減にして…」
ペンタス「貴様らの命はッ!」
ユリ「スミレさんッ…⁉︎」
スミレ「トルナーダ…ッ!
ペンタス「この僕の手
スミレ「インパクトォォッ!」
ペンタス「にッ…⁉︎グゥ…ッハァァアッ‼︎
クレオメ「ペンタスッ⁉︎」
スミレ「…ハァッ…ハァッ…」
サクラ「スミ…あ、シュミーレ…今の…」
スミレ「ミュー様…ッ…」
ミュー「…」
スミレ「ミュー様ッ!」
ミュー「…はい…」
スミレ「この腕時計をつけて、ファストヒーリングと唱えてください…ッ!」
ミュー「…動け…ないの…」
スミレ「!…失礼します…ッ…」
ミュー「…」
スミレ「これで大丈夫ですから…ッ」
ミュー「…よく…わからないけど…やってみるわ……ファスト…ヒー…リング…」
ユリ「よし…ッ!シュミーレさん!ナイスアイデアですッ!」
スミレ「ユリ君…。まだ私たち、負けてないよね…?」
ツバキ「スミレ…ッ」
サクラ「ちょ…ツバキ…」
ツバキ「す、すまん…だがしかし…思ったんだが、この展開…もう未来は…」
ユリ「…かもしれませんね…。今更素性を隠したところで…この局面が僕らの生きる最後の時間だとしたら…そんなこと、たいしたことじゃあないかもしれませんね…」
サクラ「あ…ユリ君!ミュー様が回復したよッ!」
ミュー「…これはいったい…。いえ、まずはあなたたちにお礼を言わなくては。不思議な魔法でした。この通り私は全快したようです。ありがとう。。」
ユリ「よしッ!」
スミレ「ミュー様ッ!やられてしまった他の皆さんを…ッ」
ミュー「大丈夫。必ず助けます…!もう失敗は許されませんから。…手始めにこの二人を一瞬で蘇生してみせます。じかに手を触れた状態であれば、確実に魔法は届けられるはず…!ナディアナディア…ゴロナギスタ…ッ!」
(スミレ)
ミュー様が呪文を唱える。直後、とても優しくて暖かい空気が私たちを包みこんで。。パパとママが目を覚ました。
シェイン「…うう…ハッ、ミュー様ッ!」
ドロシ「んぅ…わたし…気を失って…」
ミュー「シェイン、ドロシ。事態は依然、深刻なままよ」
シェイン/ドロシ「…ハイッ」
ミュー「やはり…あなたたちがこの闘いの鍵。ミッチャムを食い止めてください…!わたしは皆の救援に向かいます…ッ!」
シェイン「分かりました…ッ。…あ、ミュー様。ちなみに彼らは…?」
ミュー「彼らは…わたしの命の恩人です」
ドロシ「ミュー様の…恩人…!」
ミュー「そうです。いざという時は、彼らに協力を得てください…ッ!私は、急ぎ負傷者の回復に向かいますッ!」
ドロシ「あっ…ミュー様ッ!」
シェイン「お気をつけてッ!…あ、はじめまして。僕はシェインといいます」
ドロシ「はじめまして…わたしは、ドロシです…あの…皆さん、お名前を伺っても…?」
ユリ「…は、はい。僕は、ユリといいます」
サクラ「あ、あたしサクラです」
ツバキ「俺は…ッ…ツバキです」
ドロシ「…あなたは…?」
スミレ「あたしは…。…スミレ」
シェイン「スミレさんをはじめに、皆さん。こんな状況だけど…よろしくお願いします」
ドロシ「…ん〜…スミレちゃん…。私たち、以前に何処かで会った…?」
スミレ「え…ッ。それはないよ…」
ドロシ「...でもなんだか不思議。スミレちゃんとは初めて会った気がしないの」
シェイン「うん。僕もスミレさん、声になんだか聞き覚えがあったんだよなぁ…勘違いだったかなぁ」
スミレ「勘違いだよぉ!あはははは…」
ユリ「スミレさん、二人にクロノ・サーカスを…」
スミレ「あ、そうだね!あの…お二人とも、多分まだ魔力は全快してませんよね…」
シェイン「あ、うん…。ミュー様のおかげで体力は回復したけど、魔力は正直、ほとんどすっからかんだね。ドロシは?」
ドロシ「わたしも同じ。でもやらなくちゃ…。この星を守るために。。」
スミレ「うん…あのこれ、ドロシちゃん。つけてみてください…」
ユリ「シェインさんには僕のクロノ・サーカスを…」
シェイン「これ…僕らにくれるのかい…?」
ユリ「あ、いえ、お貸しするだけですが、、これで魔力を回復出来るんです…」
ドロシ「え…?」
ユリ君が二人にクロノ・サーカスの回復機能、ファスト・ヒーリングの説明をした。
シェイン「すごいや!なるほど…やってみるよ!」
ドロシ「うん。やってみる…」
ドロシ/シェイン「ファスト・ヒーリング…!」
ドロシ「…こ、これは…シェイン?わたし、魔力がどんどん回復して…信じらんないけど…満ち溢れてるの…!」
シェイン「僕もだよ…!これはなんてすごい魔導アイテムなんだ…!」
ユリ「…よし。これで一安心、ですね」
シェイン「ありがとう…!あ、じゃあこれは返しておくね!」
ドロシ「ありがとう、スミレちゃん。わたし、また頑張れるよ!」
スミレ「ドロシちゃん、シェインさん…!絶対にこの闘い…勝とうね…!」
ドロシ「うん!シェイン…行こう」
シェイン「あ…ドロシ。。この闘いが終わったらさ…。君に伝えたいことがあるんだ」
ドロシ「……うん。わたしも。。じゃあなおさら…!この闘いには絶ッ対に負けられないわっ!ふふっ!ルンカ!行くよッ」
ルンカ「呼ばれて飛び出て よっこらセックス!てかほんとあんたたちってばさぁ…なんでこんなときにラブラブしてるわけぇ?」
ドロシ/シェイン「ラ、ラブラブ⁉︎」
ルンカ「マジ訳わかんないし」
ドロシ「あぁぁぁぁ!シェインッ!行くよッ!」
シェイン「う、うん!行こうっ!」
ルンカ「ちょっ!ああんもう!二人で勝手にイクな〜〜〜〜〜〜!!」
スミレ「あっ…行っちゃった…。お父さんとお母さん…。会えて良かった…!」
ツバキ「こらこらスミレ。今生の別れじゃああるまいしだな。俺たちは俺たちのなすべきことに尽力するのみだ」
スミレ「ツバキくん…そうだね」
ユリ「それにしてもさっきの一撃。すごかったですね、スミレさん…!」
サクラ「うんうん!ペンタスの奴、向かいの崖まで吹っ飛んでったし!」
スミレ「うん…でもまだ終わってない…!きっと、ここからが本番だよ。みんな、油断しないで…!」
ユリ「ええ。そしてあの、ミッチャムと呼ばれていた巨大生物…。先ほど、スミレさんのご両親が再び戦闘に向かいましたが、大丈夫でしょうか…!」
スミレ「うん。邪魔にならないところで援護しよう。てゆうか…お父さんとお母さんが闘うとこ見るなんて…初めて。ちょっとドキドキする…」
ツバキ「ああ。話の流れからすると、スミレの両親はとんでもなく強いらしいが…あんな巨大なやつを相手に太刀打ちできるのだろうか…」
スミレ「お父さんとお母さんなら…きっと勝つ。絶対勝つよ…!」
ミッチャム「ふはは…。君たちィ…ようやくお目覚めかい?」
シェイン「ミッチャム…ッ!次こそ決着をつける…ッ!」
ドロシ「ミッチャムさん…。私も全力であなたを止めます…ッ!この星の未来は…みんなのものだから…ッ!」
ミッチャム「みんなの…もの?違う違う違ァァァァァうッ!この惑星は僕のものッ!そうさ…エウロパの未来は僕がデザインするんだよォオ!」
シェイン「違うッ…!僕らが共存出来る方法はあるはずだ…!」
ドロシ「そうだよ…ッ!わたしもみんなも…ッ…もっと今からやれることがあるはずよ…ッ!」
ミッチャム「…お前らの戯言は聞き飽きたよ。。なぜ僕の考えに賛同しない…?リセットするんだよ…!この惑星を…あるべき元の姿に…!アースを復活させるためには…!お前ら魔人がいちゃダメなんだ…!」
シェイン「ミッチャム…僕は。君の敵じゃあない…。僕らは…!この星に生きる仲間だ…!」
ミッチャム「…仲間…だと…?」
ドロシ「そうだよ…!わたしたちは…まだやり直せるよ…!お願い、ミッチャムさん…!もう一度…未来を信じて…ッ!」
シェイン「そうさ...!未来は僕らの手の中にある...っ!!」
ミッチャム「仲間なら…僕を助けてくれよ…。僕の願いを…叶えてくれよ…ッ!今すぐ全員死んでくれよォォオッッ!ッドッッラアアアアアッッ!」
ドロシ「シェイン…ミッチャムさんのこと…絶対に助けよう…ッ!」
シェイン「ああ、絶対に助けるッッッ!行くぞ…ッ…ミッチャムッッ!」
ドロシ「ルンカ、行くよ…ッ!」
ルンカ「オッケー...!ぶちかますッッッ!」
ドロシ/ルンカ「…ティアドロ…ダブル…ッ…ジェットストリィィィィムッッ!!!」
(スミレ)「お父さん...お母さん...!頑張って...っ!」
全てが、スローモーションに見えた。あたしはただ…祈った。
ドロシ「ダブルはッ!…速度もパワーも二倍だから…ッ!
シェイン「…終わりだ。…ミッチャムッッ!
ルンカ「ぶっ飛ばせ〜!シェイ〜〜ンッッ!」
ドロシ「シェインッッ!風に乗ってッッッッ!」
シェイン「ドロシーーッ!こっちだーーーッッ!!」
ミッチャム「そんな攻撃が僕に届くものかァァァッッ!」
ドロシ「シェイン…ッ!闘いを…終わらせて…ッ!」
シェイン「この白い稲妻で...ッ...ミッチャムッ!君の悪の心をッッッ貫いてみせるッッ!!
ホワイト...ギガストライクーッッ!!いっけぇぇぇぇェェッッ!」
場面変わり、断崖足場にて会話をしているペンタスとクレオメの姿。
ペンタス「ぐっ…スミレメアリードの奴め…。このダメージは予想外だったが…まあいい」
クレオメ「…私の最愛を傷つけた代償は…後で必ず払わせるわ…ッ」
ペンタス「…くっくっく…後でなんて生易しい真似はしないさ…この痛みはスミレに、今すぐ百倍にして返してやる」
クレオメ「…どうゆうこと?」
ペンタス「クライマックスだよ、クレオメ」
クレオメ「…クライマックス?」
ペンタス「そうさ…!大魔女ミューは力尽き、そして今…どうやって復活したかは不明だが、我々の宿敵ドロシとルンカ、それにシェインは、ミッチャムとの戦闘に全神経、全力を尽くしているはずだ…」
クレオメ「…それってつまり…ッ」
ペンタス「そうさ…!邪魔なシェインもミッチャムに飛び込んで行った…!」
クレオメ「…遂にやるのね」
ペンタス「ああ…この瞬間を待っていた…!あの憎い魔女どもが希望を抱き、勝利を信じ…!無防備になるこの瞬間を…!スミレには見届けさせてやるさ…母親が目の前で死ぬ瞬間をッ!」
クレオメ「それ最っ高じゃない…!」
ペンタス「くく…君は一足遅れて瞬間移動で現れてくれ。僕のドロシへの襲撃に動揺するルンカを...背後から殺るんだ」
クレオメ「了〜解っ」
ペンタス「遂にこの時が来た…。魔女ドロシ、そしてもうひとりの魔女、ルンカ…!…サヨナラだ…ッ」
瞬間移動で突如ドロシの背後に現れたペンタス。
ミッチャムとの戦いに集中していたため、一手遅れてその危機に気がついたルンカ。
ルンカ「…ッ⁉︎ドロシ…ッ!逃げ…」
ペンタス「…チェックメイトだ」(静かに邪悪な口調で
ドロシ「…誰…ッ…⁉︎」
ペンタスの凶刃がドロシの背中に突き立てられる。
ドロシ「……ッ……ぁ…ッ…」
ペンタス「…ふふ…ッ…ふふ…!僕の手を伝うこの生暖かい温度…真紅の液体…ッ…この感触だ…。待ちわびていた…!」
ドロシ「…あ…ッ…ぅう…ルンカ…ッ…シェイン…ッ…」
ペンタス「魔女ドロシ…ッ!貴様にこの手でとどめを刺す今日という日を…ッ!」
ルンカ「…ちょ…ッ…ドロシ…やだ…ッ…」
動揺するルンカの背後に突如現れるクレオメの姿。
クレオメ「隙だらけ〜」
続けざまにルンカまでもがクレオメの凶刃の餌食となる。
ルンカ「しまッ…!グッ…ぅ」
クレオメ「あんたもここでッ…!…死ぬのよんっ」
一方、ミッチャムと交戦中のシェイン。
シェイン「ミッチャムゥゥゥゥッ!!」
ミッチャム「うっ…うあああ…ッ!......って言うとでも思ったか?このクズがッッ!遅いッ!」
シェイン「まさか…ッ!僕らのこの一撃を超えるスピードを…ッ…⁉︎マズイ…ッ」
ミッチャム「蝿なんだよ…貴様などな…ッ…フンッ!!」
シェイン「しまっ…グッ…」
ミッチャム「フハ…ッ…!頭ひとつ仕留め損じたか…!だがシェイン…貴様の全身は複雑骨折だ…もはや使いものにならんだろう…!」
シェイン「う…あ…ド…ドロシは…ッ…」
ミッチャム「んん?あぁあの魔女二人ならあの通りだ。ペンタス様とクレオメ様が刺し殺したよ…!」
シェイン「そ...そんな...馬鹿な...」
ミッチャム「傑作だな!これでお前たちの未来は終わりだッ!ハーッハッハッハッハッ!」
事態の一部始終を遠巻きに見ていたユリ達。
ユリ「…一瞬の出来事だった…!身動きすら取れなかった…ッ!」
スミレ「…いや…ッ…お父さん……お母さァァァァァんッッ!」
ツバキ「千本崎ッ…!」
サクラ「ユリ君ッ!スミレの身体が…また透明になってく…!」
ユリ「落ち着け…落ち着いて考えろ…この極限状態を…乗り越える方法があるはずだ…落ち着け…落ち着け…。そうか…よし…、クロノ・サーカスッ!リワインドアクションッ!」
ツバキ「そうだその手があったッ!千本崎でかしたぞッ!」
(スミレ)
涙でよく見えないけど…!ユリくんの叫ぶ声が聞こえた…。
その直後…あの感覚。あたしが数秒前に見たあの悪夢が…まるでビデオを巻き戻すように逆再生してゆく…。
ユリ「スミレさんッ!ドロシさんたちとシェインさんが攻撃体制に入る前まででッ!一度クロノ・サーカスの時間逆流を解除しますッ!時間が動きだしたらすぐにッ!三人を連れて一旦あの場所から離脱しますッ!この未来を伝えた上で、、策を練り直す必要がありますッ!」
スミレ「…ユリくん…分かった…!」
ユリ「それにしても…ペンタス達の今の行動…」
ツバキ「ああ、なんの躊躇いもなく…ドロシとルンカを刺したな…」
ユリ「はい…ペンタスがいかに本気かということがよくわかりました…それに…あの場面、本来ならシェインさんのあの攻撃で、決着がついていたように思います。でもそうはならなかった…!」
ツバキ「ああ…。やはり、未来はもう歴史をなぞりはしない…!今この時が。歴史上最悪の、絶対絶望的な瞬間なんだ…」
ユリ「はい…シェインさんも重傷を負い、危ないところでした。…スミレさん、行きましょう。大丈夫。時間は巻き戻ります」
スミレ「…ハァ…ッ…ハァ…ッ…ユリくん…!」
ユリ「あっ…」
スミレ「ゴメン…。5秒でいいの…こうしてて…ッ…」
サクラ「スミレ…」
ユリ「分かりました…ッ!エフェクト…ハイパー・スロー。…スミレさん、落ちついたらで大丈夫ですから…」
スミレ「…ありがと…ユリくん…ッ」
(千本崎ユリ)
僕の胸に顔をうずめ、必死に心を落ちつけようとするスミレさんに、僕は…。気持ちを抑えられなかった。
なぜ僕が今、ここに存在しているのか…。
すべてを話す時は今なんだと、不意にそう感じた。
第10幕へ続く
クロノ・サーカス/第10幕「告白」
クロノ・サーカス
第10幕
「告白」
第10幕 登場人物
・ スミレ・メアリード
・ 津田サクラ
・ 千本崎ユリ
・ 伊達ツバキ
・ 時空王クロノス
・ スミレ(壮年期)
(千本崎ユリ)
僕の胸に顔をうずめ、必死に心を落ちつけようとするスミレさんに、僕は…。気持ちを抑えられなかった。
僕がなぜ、今ここに存在しているのか…すべてを話す時は今なんだと、不意にそう感じた。
ユリ「伊達さん、サクラさん。そして…スミレさん」
ツバキ「どうした、千本崎」
サクラ「ユリ君…どうしたの…?」
スミレ「…えへっ…みんなゴメン…ッ…ユリくん…ありがと、もう大丈夫だから…ッ」
ユリ「ここから先は、正直まったく予測のつかない場面の連続になるかと思います…」
スミレ「うん…本当に命がけなんだって…さっきの場面見て、心底よく分かった…」
ユリ「はい…僕をはじめ皆さんも、いつ脱落するか分からないシビアな場面です。…だから」
スミレ「…ユリくん?」
ユリ「僕からスミレさん、あなたに…そして皆さんにも、お伝えしたいことがあります…!」
スミレ「え…あたし…?」
サクラ「ちょ、なになに…?」
ツバキ「……サクラ。千本崎の話を聞こう」
ユリ「…ありがとうございます。では今から、なぜ僕らがこの場に存在しているのか…そのすべてをお話しします。」
スミレ「…分かった。ユリくん、話して…」
ユリ「…まず、僕についてですが…。僕は、皆さんと出会ったあの時空から、およそ60年後の未来の人間です…」
ツバキ「!…なんだと…?」
スミレ「…それって…あたしやサクラ、ツバキ君が…えっと…17+60…つまり、
あたし達が77歳の時空から来た人間だってこと…?」
ユリ「その通りです、スミレさん。…あなた方とこの時空旅行に行くことになったのも、
すべて前もって僕が計画し、描いていたものです。…ペンタス達と出会うこと以外は…」
ツバキ「千本崎…お前…!それって…つまり…」
ユリ「…」
スミレ「…ユリ…くん?」
ツバキ「…お前、ダイレクトに過去に干渉して…」
サクラ「…それ、世界時空保護法で一番やっちゃダメって…!」
ユリ「…はい、サクラさんの仰るとおりです…」
スミレ「ユリ君…なんで…?」
ユリ「スミレさんッ…いや、…スミレ先生…!」
スミレ「…え…?あたしが…先生…?」
ツバキ「千本崎…?」
ユリ「…驚くな、というのは難しいと思いますが…。
時計職人としての僕に、時計造りのすべてを教えてくれたのは……スミレ先生、あなたです」
スミレ「…え…」
サクラ「…ちょ…スミレが…未来で時計職人やってて…その教え子が…ユリ君なわけ…?」
ユリ「そうです…。スミレ先生は、77歳で……亡くなりました…。看取ったのは…僕だけです…」
スミレ「…あたし…77歳で…死んじゃうんだ…」
ユリ「…いつかの未来では、の話です…。まずは、僕がここに存在する理由を、順番にお話しさせてください…」
スミレ「…うん…分かった…」
ユリ「…スミレ先生は、生涯独身でした。僕は、スミレ先生からたくさんの昔話を聞かせてもらったんです…」
スミレ「あたしの…昔話…」
ユリ「ええ。スミレ先生が、若い頃に負った心の傷。
それが原因で、異性に対して積極的になれず、晩年を迎えてしまったことや…」
サクラ「…スミレ…それって、まさに今のあんたの境遇と…おんなじ…!」
スミレ「…うん…だからあたし…お母さんを助けるお父さんの姿を見て…弱い自分にサヨナラしたかったの…!
だからシンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーに乗りに来たの…!」
ユリ「はい…すべて、知っています。。ですが、スミレ先生の過去…つまり、
今のスミレさん、あなたの時空では、スミレさんは…このタイミングで
シンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーに乗りそびれていたんです…!」
スミレ「え…なんで…?」
ユリ「はい、スミレ先生から伺った話によれば…施設に向かう途中、
些細なことからサクラさんと口論になり…結局スミレ先生は、搭乗することなく帰宅したそうです」
サクラ「…スミレと…喧嘩…?」
ユリ「ええ。…そして、そのサクラさんとの争いが尾をひき、
友人にまでも不信感を抱くようになってしまったそうです…。
それからのスミレ先生の人生は、僕が聞いた限り…。一言で語るには余りある、孤独な人生でした…。」
スミレ「…そう…なんだ…」
ユリ「……僕がスミレ先生に弟子入りしたのは、スミレ先生が亡くなる約2年前です…。
短い間ではありましたが、一人前の時計職人になるために、たくさんのコーチをして頂きました…」
スミレ「…ユリくん…」
ユリ「…そして…僕と先生、二人で暮らしながら、厳しくも幸せな時間は…過ぎていきました。
ちなみに僕は…見ての通り、皆さんと同じく若い世代ですが…当時、恋をしていました…」
サクラ「そりゃそうだよ…だって17歳だもんね…」
ユリ「はい…その相手は…」
サクラ「うんうん、どんなコだった訳…?」
ユリ「…スミレ先生です」
サクラ「あー、なるほど。…って…え?スミレ、その時おばあちゃんだよね…⁉︎」
ユリ「はい…」
スミレ「ユリくん…おばあちゃんのあたしに…恋をしてたの…?」
ユリ「正確には…結論から言うと、僕とスミレ先生は、恋人同士でした…。時間にして、わずか1分程度でしたが…」
スミレ「…1分?」
ユリ「はい…。僕らが結ばれたのは、スミレ先生が亡くなる、1分ほど前です」
今の僕のすべては…あの時空で決まったんだ…。
スミレ「ウッ…!ゴホッゴホッ…!」
ユリ「スミレ先生…ッ!大丈夫ですか⁉︎しっかりしてくださいッ!!すぐに病院へ連れていきますからッ!」
スミレ「…ユリ。もういいの…」
ユリ「な…何がいいんですかッ!馬鹿なこと言わないでくださいッ!」
スミレ「…自分の寿命くらい…分かるわよ…ふふ…」
ユリ「…スミレ先生…ッ」
スミレ「…じきにお迎えが来るわ…それまでの間…ユリ、あなたとおしゃべりがしたいの…」
ユリ「…こんなとぎに…ッ…おしゃべりだなんて…ッ…」
スミレ「…最後のお願いよ…ユリ」
ユリ「!…最後とかッ…やめて…ください…ッ」
スミレ「…聞いてちょうだい…ユリ…」
ユリ「…はい…ッ」
スミレ「…死を前にして…こんなこと思うなんて…ちょっと恥ずかしいんだけどね…」
ユリ「…絶対…笑いませんから…ッ」
スミレ「…ありがとう…。……実はあたし…」
ユリ「はい…」
スミレ「恋をしてるみたいなの…」
ユリ「…恋…?」
スミレ「そうよ…」
ユリ「スミレ先生が…恋を…ですか?」
スミレ「ええ…不思議ね……もうこんな気持ち…味わえるとは思わなかった…」
ユリ「…ぼ…僕だって…ッ…恋をしてます…」
スミレ「…まあそう…!素晴らしいことだわ…!ふふ…。
それにしても…どうしてこうなっちゃったのかしらね…」
ユリ「…なんででしょうね…」
スミレ「思い返せば…寂しい人生だった…………でも…」
ユリ「…でも…?」
スミレ「…でもね、…最後の最後で…わたし…勇気を出せたの…。
好きなひとに…今…わたし恋をしてるって…告白してるのよ…ふふ…」
ユリ「…スミレ…先生…?」
スミレ「…おばあちゃんだって…恋をしてもいいでしょう…?」
ユリ「はい…ッ…素敵なことです…」
スミレ「…もうちょっと若いときに…ユリに出会えてたらね…。
ふふ…わたしもう、こんなおばあちゃんですもの…やんなっちゃう…」
ユリ「そんなの…関係ないです…ッ…僕だって…ッ…僕だってこんな小僧だけど…ッ…
おばあちゃんに恋をしたらおかしいですか…ッ?」
スミレ「…ふふ…おかしいわよ」
ユリ「な…ッ…」
スミレ「私たち…二人とも…ね!」
ユリ「…ハハッ…スミレ先生…ッ…」
スミレ「…ユリ…」
ユリ「はい…ッ」
スミレ「わたし…あなたに…恋をしてるわ…」
ユリ「…スミレ先生…僕だって…先生に…」
スミレ「ゴホッ!ゴホッ…」
ユリ「先生ッ⁉︎大丈夫ですかッ⁉︎」
スミレ「…ユリ…よく聞いて…もう時間が無いの…」
ユリ「…スミレ先生…ッ…」
スミレ「…未来は…」
ユリ「未来は…?」
スミレ「…未来は………一つじゃ…ない…」
ユリ「…はい…ッ」
スミレ「…ユリ…」
ユリ「…スミレ先生…ッ…!行かないで…お願いだよ…ッ…」
スミレ「…わたしを…」
ユリ「スミレ先生ッ…いやだ…ッ…」
スミレ「…わたしを…見つけ…て…」
ユリ「…………スミレ……先生……?」
スミレ「………」
ユリ「…スミレ…先生…返事…してください……」
スミレ「………」
ユリ「…どうして…?僕ら…やっと出会えたのに…どう…して…なんだよぉ…ッ!」
スミレ「………」
ユリ「…いやだ…こんな結末…理不尽だよ…!」
(千本崎ユリ)
もし…あの時…。スミレ先生が…勇気を取り戻しに向かった過去への旅を…無事に済ませていたら…。
スミレ先生は…こんな悲しい人生を送らずに済んでたってゆうのか…?
もしあの時…人を信じる気持ち…勇気を取り戻せていたら…。
ユリ「…未来は…一つじゃない…。わたしを……見つけて…?」
(千本崎ユリ)
それってつまり…スミレ先生、あなたは僕に……そうだ。そうに違いない…ッ!
望むところだ…!あなたの存在しないこんな時空…。僕にはただ虚しいだけだから…。
だがしかし…この計画を実行するためには…用意周到に事を進めなくちゃあならない…下手すれば一級大罪人だ。
それに…時空警察だけじゃあない。おとぎ話としか捉えてなかったけど…時空の神、クロノスの存在…。
果たして、神などという存在を出し抜けるのだろうか…いずれにせよ、一筋縄ではいかないだろうな…
そして、あまりにも唐突にその瞬間は訪れた。
悲しみに暮れる僕の前に…突如として現れた謎の空気の裂け目。
荒い吐息とともに、ニュッと姿を現した…瀕死のような男性…。
意味が分からなかった。僕は呆然としたまま、成り行きをただ見つめていた。
クロノス「ハァッ…ハァッ…少年よ…!これから私の言うことをよく聞きなさい…!」
ユリ「……あ、あなたは…誰なんですか…?」
クロノス「私は…世界の時空の治安を管理する者である…ッ…」
第11幕へ続く
クロノ・サーカス/第11幕「神との遭遇」
クロノ・サーカス
第11幕「神との遭遇」
そして、あまりにも唐突にその瞬間は訪れた。
悲しみに暮れる僕の前に…突如として現れた謎の空気の裂け目。
荒い吐息とともに、ニュッと姿を現した…瀕死のような男性…。
意味が分からなかった。僕は呆然としたまま、成り行きをただ見つめていた。
クロノス「ハァッ…ハァッ…少年よ…!これから私の言うことをよく聞きなさい…!」
ユリ「……あ、あなたは…誰なんですか…?」
クロノス「私は…世界の時空の治安を管理する者である…ッ…」
ユリ「…はは…僕はおかしくなっちゃったのかな…。クロノスなんておとぎ話に決まってるよ…」
クロノス「私の名を知っているのか、少年…!」
ユリ「な…ッ!」
クロノス「私は…自分の直感に従いここへ来た…!
詳しいことを説明してる暇はないが…残された時間の限り、
君にメッセージを伝える…ッ!気を確かに持てッ!」
ユリ「ウッ…!…はい…ッ…分かりました…!」
クロノス「宜しい…ではまず、結論から言おう…私の肉体と精神は、間も無く封印されるだろう…ッ!」
ユリ「…封印…?あなたは…仮にも神様でしょう…?そのあなたを封印だなんて…!」
クロノス「世界の平和が…乱されようとしているのだ…!邪悪なる…ナイトメアの手によって…ッ!」
ユリ「…ナイトメア…?」
クロノス「そうだ…ッ…奴らは…この私を排除するチャンスを…虎視眈々と狙っていた…!
私という存在がいなくなれば…ッ…私と同じく時空を行き来できるナイトメア達は…
自分達の都合のいいように未来を塗り替えるだろう…ッ!」
ユリ「未来を…塗り替える…?」
クロノス「そうだ…ッ…それは、自然界の摂理を蹂躙する悪しき行いだ…ッ…!
絶対に阻止しなくてはならない…ッ!」
ユリ「…まさか…その役目を…僕にしろとでも…?」
クロノス「その通りだ…!…今この瞬間に…君に出会えた可能性を…私は信じる…ッ…」
ユリ「はは…無理だ…そんなこと僕に出来るわけないだろォォォッ!!勝手なこと言わないでくれッ!」
クロノス「…これを君に授ける…ッ…受け取ってくれ…ッ…ぐぐっ…」
ユリ「わ…わあっ!…あっ…」
(ユリ)
突然クロノスから差し出されたそれに、僕は恐れおののきうっかり手を滑らせてしまった。
クロノス「…破損してしまったものは仕方ない…ッ…いいか少年…ッ…その腕時計の名は…カーサ…クロノス…ッ!」
ユリ「カーサ…クロノス…ッ!」
クロノス「自由自在に時間を駆けることが出来…これを持つものは…ッ…この惑星の時間軸を支配する…ッ!」
ユリ「…無理だ…こんなもの…いくら僕が時計職人だからって…完璧に修復なんて出来っこない…ッ!」
クロノス「…君の可能性を…信じる…ッ!その腕時計に…ッ…生きとし生けるものすべての命運がかかっているのだ…ッ!」
ユリ「なっ!…今…なんて言ったんですか…!」
クロノス「一言で言うならば…ッ…ここで君が諦めた瞬間に…世界は、ナイトメアの手に落ちる…ッ!」
ユリ「…本気で…言ってるんですか…?」
クロノス「当たり前だッ!」
ユリ「っ…!」
クロノス「この世界から…ッ!…すべての尊い未来が失われると言ったのだ…ッ!
ここで途方に暮れていたところで…ッ…いつ訪れるかもしれない消滅に怯えて過ごすだけだ…ッ!」
ユリ「…未来を…守る…?」
クロノス「そうだ…ッ…誰しもに訪れるべき幸せな未来を…ッ…守って…く…れ…ッ!うがぁぁぁッ!」
ペンタス「クロノス…!随分遠い未来まで逃げたなッ!…だが無駄だ…!
貴様は我らナイトメアに敗北するのだ…!このドス黒い闇の淵が…貴様の終焉の地だ…ッ!」
クロノス「ぐ…がぁ…ッ…駄目だ…吸い込まれる…ッ!」
ユリ「…クロノス…僕の名前は…ユリ」
クロノス「ッ!…そう…か…ッ…ユリッ!この惑星の希望はッ…お前に託した…ッ!
さらばだ…ッ…ユリッ…!ぐぐっうがぁぁぁッッ!」
(ユリ)
一瞬のような、永遠にも思えるような…そんなひと時だった。
床に壊れて落ちた、カーサ・クロノスを見つめながら、
僕の心にはある感情が芽生えつつあった。
誰しもに訪れるべき…幸せな未来を守れ…。クロノス…あなたは確かにそう言った…。
そして僕に…この惑星の未来を託した…。
カーサ・クロノス…。その構造は、人智を遥かに超える代物だった。
無残に床に散らばったその細かいパーツに目をやると、
このカーサ・クロノスには…少なく見積もっても、1000を上回る針が存在しているのだ。
その動作を司る歯車。これまた驚愕するほかない。
そのほとんどが1ミリに満たない超極小サイズなのだ。
数に関しては針と同じく膨大な個数だろう。とてもじゃないが、数える気にならない。
そして、時空の神と言われるクロノスのあの言葉…。
このとんでもない時計で…世界を救え、か…。
僕がやらなきゃ…世界が終わる。スミレ先生との思い出も、何もかも、失われる…。
そんなこと絶対にあってはならない…!僕にしか出来ないのなら…やるしかない。
ユリ「皆さん、ご静聴いただきありがとうございました。
これが…僕とスミレ先生、そして…僕がこの場所に存在するにあたり、
すべてのきっかけとなった出来事です…」
スミレ「ユリくん…。ありがとう…。でも…」
ユリ「…スミレさん。僕がしたこの選択ですが…、後悔はしてません…ッ」
スミレ「…うん…うん。大丈夫…。それに…元はと言えばあたしがそそのかしたことだから…」
ユリ「…スミレ先生のあの一言が無かったら…僕はこんなに勇気を持って行動出来なかったと思います…」
スミレ「…ふふ。なんか…照れちゃうね…」
ユリ「ええ…なんだか僕も急に…照れてきました…ッ」
ツバキ「…人は見かけによらないと言うが…千本崎、貴様はなかなかに芯のしっかりしたやつだな」
サクラ「うんうん…あたし、ユリ君の話聴いてて、最初はちょっとびっくりしたけど…!
なんかね…なんかすっごく感動してる…ッ!」
ユリ「サクラさん…、僕はここまで、事情があったとはいえ、
心とは裏腹な発言もいくつかしてしまいました…皆さんにお詫びさせてください。…すみませんでした…!」
サクラ「ユリ君…」
ツバキ「ふん…。ペンタスと同じく、過去に干渉するという究極の大罪とやらを、
まさかお前が犯していたことには流石に驚いたが…」
ユリ「…巻き込む形になってしまったことは…本当にすみません…」
サクラ「…ツバキ、ユリ君のこと怒ってる?」
ツバキ「…いや。俺が千本崎の立場でも、同じ行動に出たかもしれん」
ユリ「…伊達さん…」
ツバキ「それが…恋だったり愛、ってものかもしれんな」
スミレ「ツバキ君…」
ツバキ「…それにこの非常事態、貴様が動かなければ、いずれにせよ俺やサクラも消滅していたかもしれん」
ユリ「…ええ、結果として僕の行動は今、世界を救うために、と思われるかもしれませんが…。
もしその危機に晒されなかったとしても…僕は、スミレさんとの新しい未来を選択していました…」
ツバキ「…千本崎。心中察する」
スミレ「…みんな」
サクラ「…スミレ」
スミレ「なんかあたし…戸惑ってばっかりだけど…!少しね、気持ちの整理が出来てきた…!」
ユリ「…スミレさん」
スミレ「変な感じだけど…未来の自分がユリ君に言ったこと。今のあたしでも同じ気持ちになれるの」
ツバキ「…まあ、未来とはいえ、スミレ自身の口から出た言葉だからな。当然の発想かもしれん」
スミレ「うん。未来はひとつじゃない。今こうして存在しているこの時間が…真新しい未来なの。
何回だってあたし達は生まれ変われる。ユリくん、そうでしょ?」
ユリ「…その通りだと思います」
スミレ「あたし達は、幸せになるために生まれてきたんだもん」
ユリ「スミレさん…ッ…」
スミレ「この闘い…絶対勝とう。さっきお父さんも言ってたけど…みんなが一緒に笑える世界はきっとある。
ペンタス達とだって、きっと…」
サクラ「スミレ…すごい…」
ユリ「はい。スミレさんは…強いです。…さっきみたいなショッキングなシーンを経て尚…
ペンタス達との共存を考えられるんですから…」
ツバキ「うむ。千本崎の言う通りだ。さて…これからどうするんだ」
ユリ「…僕もスミレさんの考えに賛成します…ですが、ペンタス達の執念、覚悟は、
先ほど僕らが目の当たりにした通りです。一切の油断は出来ません」
スミレ「うん…あたし達が先に殺されちゃったらおしまいだもんね…」
ユリ「はい。ですが、策はあります」
ツバキ「千本崎、その策とはなんだ」
ユリ「…クロノスの復活です」
サクラ「あ…クロノスって、さっきユリ君の回想に出てきた…時空の神様だっけ…?」
ユリ「はい。クロノスは、封印されただけで、失われたりはしていません」
スミレ「でも…どうやってそのクロノスを救い出すの?」
ユリ「ええ、そこなんですが…実はクロノスは、僕らがいるこの時空のある場所に封印されています」
ツバキ「…この時空に…クロノスが…?」
ユリ「はい。このクロノ・サーカスは、そもそもがクロノスの所有物なんです。
すなわち、この時計自体の物質波動を、クロノ・サーカスはメモリーしている、ということです」
サクラ「…あ。分かった…」
ユリ「サクラさん、正解です。要するに、持ち主であるクロノスの波動が、記憶されているわけです。
よって、どこの時空にクロノスがいるのかを、僕は計り知ることが出来る、そうゆうわけです」
ツバキ「…うむ。で、そのクロノスが…この時空のどこに封印されてるんだ⁉︎」
ユリ「…はい。クロノスは…ペンタスのどこかに封印されています…!」
サクラ「え…ペンタスの身体の中ってこと?」
ユリ「…詳細な場所は特定出来ませんが、確かにクロノスの波動はペンタスから感知しています」
スミレ「それで、クロノスを救出することが出来たらどうなるの?」
ユリ「…恐らく、この闘いが集結を迎えるでしょう。なぜなら、クロノスは時空の覇者。
つまり、時間概念そのものを自在に操ることが出来る存在だと推測しています」
ツバキ「…分からなくもないが…ちょっと待て。ならばその無敵の神とやらは、なぜペンタスに封印されたんだ?
ペンタスのほうがクロノスのチカラを上回っていたからじゃあないか?」
ユリ「いえ…それは無いと思われます…。もし伊達さんの仮説が正しければ、
僕らが子供の頃以前から広く伝承されていた時空を支配する絶対の神、クロノスの神話には、
ペンタスの存在が記されているはずです」
ツバキ「確かに」
ユリ「あくまで推測の域を出ませんが...この事件、クロノスは何者かの謀反により追い詰められ、封印されたのではないかと、そう僕は睨んでいます」
ツバキ「…謀反。例えば、クロノスの最も信頼する身内の誰か、とかか?」
ユリ「そうかもしれませんね…。考えられるとしたら、クロノス最愛の人物、などでしょうか…」
サクラ「…あ。その神話にさ、クロノスの妻ってゆうか、恋人みたいな女の人出てこなかったっけ…?」
ユリ「あ…ちょっと待てよ…クロノスの…妻…。そうか!思い出したぞ!」
スミレ「ユリ君?」
ユリ「うろ覚えではありますが、なんとかその女性の名前を思い出しました…!」
ツバキ「おお、でかしたぞ千本崎ッ!」
スミレ「で、そのひとの名前は⁉︎」
ユリ「はい。確か、クロノス最愛の女性、その誉れ高き名前は……」
ツバキ「…うむ…ッ」
ユリ「…ムスカーリ、…だったと思われます」
サクラ「ムスカーリ…聞き覚えがあるし。確かね、えっと…あたしが子供の頃に聞かされた別の昔話に出てきた出てきた!」
スミレ「えっ…、それどんな昔話?」
サクラ「…うん。あたしが知ってる、もう一つの昔話のその女性は…
「亡者の集う地獄の女王、またの名を…、冥王、ムスカーリ…」
ユリ「…まさか、その昔話が確かならば…悪夢を司るペンタス達ナイトメアと、
地獄の女王であるムスカーリとの関係性に、いささかの可能性を疑えます…!」
ツバキ「何か裏がありそうだな…」
ユリ「彼女達がなぜこの謀略の実行に行き着いたのか…!
その経緯は知り得ませんが…もしこの推測が正しければ、僕らは神話中の存在に闘いを挑むことになる…!」
スミレ「ペンタス達だけでもこんなに手強いのに…!あたし達…どうなっちゃうのかな…」
ユリ「スミレさん…。その答えを、僕らはこの先の未来で勝ち取るためにここにいるんです…ッ!」
スミレ「…分かってる…分かってるよユリくん…」
ユリ「アクションしなければ、僕らはただ死を待つことになる…ッ!
だから僕は…ッ…どんな結末が待っていようとも…ッ…受けて立ちます…。
スミレさん、あなたを守りたいから…!」
スミレ「…ありがとう。。あたしだって…全力でみんなを守る…ッ…!」
ユリ「…はい…ッ…!…では皆さん、そろそろ時空が正常化します。
僕らが戻る局面は、途轍もないピンチですが…絶対に勝ちましょう…!」
ツバキ「ああ、もちろんだ…ッ!」
サクラ「超ドキドキしてきた〜…ッ!」
スミレ「…あ、ユリくん、最後に一個質問なんだけど…」
ユリ「はい、なんでしょうか」
スミレ「…うん、今もそうなんだけど、この時間のコントロールって、あたし達のクロノ・サーカスでも出来るの?」
ユリ「…可能ですが、このあたりの機能を駆使するには、ちょっとした勘が必要です。
時空に作用する機能全般は、使用者の精神や体力を著しく消費します…」
ツバキ「…そうなのか…!」
ユリ「ええ。正直言って、まだクロノ・サーカスに不慣れな皆さんには、時空制御機能はお勧め出来ません。
ですから、基本そのシステムを熟知した僕が、状況に応じて皆さんをフォローしたいと思います」
スミレ「…そうなんだね、分かった。でも…ユリくんがどうしようもないピンチに陥った時は…
あたし、迷わずクロノ・サーカスの時空制御を発動するから…!」
ユリ「分かりました。その際は、自分のリカバリーも忘れないで下さい。
ファスト・ヒーリングが命綱になるくらい、激しい消耗に襲われますので」
ツバキ「…委細承知だ」
ユリ「基本的に、その機能の使用は僕に任せてください。
今ここで皆さんにすべてのシステム詳細を教えきるには、時間の猶予的にも難しいですから…」
サクラ「了解〜!ユリくんにお任せしますっ」
ユリ「はい!まずはスミレさんのご両親の安全確保が僕らの至上命題…!では皆さん、時空が正常化しますッ!」
スミレ「よ〜しっ!」
ツバキ「うむっ!」
サクラ「行くぞ〜!」
第12幕へ続く
クロノ・サーカス 第12幕「すべては愛する君の為に」
クロノ・サーカス
第12幕
「すべては愛する君の為に」
ユリ 「まずは、スミレさんのご両親の安全確保が僕らの至上命題…!
では皆さんッ!時空が正常化しますッ!」
スミレ 「よ〜しっ!」
ツバキ 「うむっ!」
サクラ 「行くぞ〜!」
あたし達は次の瞬間、さっき見た悪夢のような光景の数分前にいた。
スミレ 「みんなッ!急ごうッッ!」
ユリ 「作戦開始です…!皆さんくれぐれも油断しないようにお願いしますッ!」
サクラ 「りょーかいっ!」
ツバキ 「おうっ!」
スミレ 「急がなきゃ!ハッ!」
僕らは、程なくしてスミレさんのお母さん達に合流し、
そしてこれから起こる事実を簡潔に説明した。
ドロシ 「じゃあ…わたしもシェインもルンカも…」
シェイン「このままだと重傷を負う…ってことか…」
ルンカ 「むぅ…いや、でもぉ…そんな簡単にウチらやられないと思うけど?」
ユリ 「今はとにかくッ!僕らを信じてください…ッ!!」
スミレ 「ドロシちゃん、シェインくん、ルンカちゃん…一旦態勢を整えようッ!」
ドロシ 「……分かった。じゃあその言葉…信じる。…シェインとルンカもそれでいい?」
シェイン「ああ、もちろん」
ルンカ 「…りょーかい。となると…あの崖の窪みがいい。背後さえ壁なら、不意打ちなんて絶対させないしネ」
ユリ 「了解です…!では皆さん!あの崖の窪みへ急いでくださいっ!」
あたし達は、ルンカちゃんの指示通り、
安全を確保出来そうな崖の窪みに緊急避難した。
ユリ 「ペンタスとクレオメ…今、姿は見えませんが…この闘いの黒幕は、その二人です…!」
ドロシ 「まさか…ミッチャムさんの背後に…更に大きな敵がいたの…⁈」
スミレ 「そうよ…!あの二人を止めなくちゃ、この闘いは終わらないの…!」
ルンカ 「くぅ…あのミッチャムだけでもめっちゃくちゃ厄介だっつーのにッ!」
ユリ 「はい…!それと…申し上げにくいんですが、仲間の皆さんはすでに…ッ!」
ドロシ 「そんな…ッ!カーズマンさんやミュー様達、みんなやられちゃったの…?」
スミレ 「分からない…!でもあの中の何人かは…ッ…。
向こうの崖に張りつけられたのを見たの…ッ!」
ルンカ 「…状況はズバリ、最悪ってことね。。じゃあどーすんのかッ!
ユリオッ!あんたの策を聞かせてみっッ!」
ユリ 「ハ…ハイッ!では作戦をご説明しますッ!
僕らがまず抑えるべき相手はッ!ペンタスとクレオメですっ!」
ルンカ 「ペンタスと…クレオメね…!」
ユリ 「はいッ!彼らを抑止することが!この闘いを終わらせる最善策です…ッ!
しかしッ…強行策ではダメですっ…!」
ドロシ 「…でもッ!説得なんて通じるの…?
しかも…彼らの使う魔法は神出鬼没で…!恐らく、かなりハイクラスな時空魔法…!」
ユリ 「…時空戦なら、僕らにも分がありますッ!
それに…うまく事が運べば、事態は一気に収束するはず…。
ですから、ドロシさん達はお仲間の皆さんの救援に向かってくださいッッ!」
ルンカ 「いや、それも難しい。悪いけどあのミッチャムって巨大生物、マ・ジ・で・危険なんだっつ〜の!」
ユリ 「…いえ、先ほども言ったように、ここから展開するのは…時空戦ですッ!」
シェイン「いまいち合点がいかないけど…!」
ユリ 「つまり、僕らやペンタス達、それに対してドロシさんや他の皆さんは、
異なる時間軸での戦闘になります!」
スミレ 「ユリくん…!クロノ・サーカスが作戦のカギなのね…?」
ユリ 「はいッ!残念ながら状況は最悪、このままではこちらに犠牲者が出る可能性が高いですッ!」
ドロシ 「…シェイン、ルンカ。ここから先、一瞬の油断もしないで…ッ!ユリくんの作戦に従おうッ!」
ルンカ 「うぇ…超心配だけど。。ま、やるっきゃないか!」
シェイン「分かった…!みんな、必ず無事で…ッ!行こうッドロシッッ!」
ドロシ 「うん…ッ‼︎」
ルンカ 「ちょ…あたしを差し置いてラブラブすんなっつの!なんか無性に切ないからァァァ!」
ユリ 「ご理解ご協力、ありがとうございますッ!」
ドロシ 「みんな…。絶対負けないでネッ…!」
仲間の救助に飛び立ったドロシ、シェイン、ルンカ。
ユリ 「…さて皆さん。いよいよ大詰めです…!」
ツバキ 「うむ。作戦の概要は?」
ユリ 「はい。まず、クロノ・サーカスを使って僕ら4人とあの二人、
ペンタスとクレオメを時空の狭間へ隔離しますッ!」
スミレ 「隔離?その間、外の世界はどう変化するの⁈」
ユリ 「先程言ったように、時間軸の違う世界、と言ったら分かり易いでしょうか。
つまり、その隔離空間と外界には時差があり、うまく事が運べば再び外界と接続された際には、
一分にも満たない時間しか流れていないかと思われます」
サクラ 「ウチらのまだ知らないクロノ・サーカスのエフェクトね…!」
ユリ 「はい…!では皆さん。ここからが正念場です…!必ずペンタス達を食い止めま…」
ユリの言葉を遮るように、突如として飛来したペンタスとクレオメ。
ペンタス「やはり貴様らの仕業か…」
ユリ 「ぐゥ…ッ!ペンタスッ!」
クレオメ「どんなトリックを使ったのかしらネ〜?…腹立つこのガキ共がッッ!」
スミレ 「腹立ってるのは…!あたしだよッ!」
ペンタス「…スミレ・メアリード。やはり貴様らの血脈が。。最後の最後まで僕の行く手を阻むか…」
ユリ 「…それは違う…ッ!」
クレオメ「はぁ?」
ユリ 「お前達の目的を…僕は否定するつもりなど無い…ッ!だがしかしッ!」
ツバキ 「…千本崎」
ユリ 「…罪もない人々を犠牲にしなくちゃ叶えられない夢など…ッ!
見過ごす訳にはいかないだけだ…ッ!」
クレオメ「ハッ、なぁにこいつ。正義の味方ってやつ?」
ユリ 「行くぞ…クロノ・サーカス…。僕らにチカラを貸してくれ…ッ!」
ペンタス「…クレオメ、油断するな」
クレオメ「…分かってる」
ユリ 「クワイエット…アクションッ!」
ユリがそう唱えた瞬間。
世界を静寂が包んだ。
ペンタス「…千本崎ユリ。貴様…このチカラ…!」
ユリ 「…僕ら以外のすべての時空をスーパー・スローにさせた…」
クレオメ「…こんなことやってのけるなんて…あの男くらいしかいないはずでしょ…!」
ペンタス「…時空王クロノス。奴がなぜその絶対的存在となり得たのか…
その答えを体現する貴様は、やはりクロノスの意思を継ぐ者、ということだな?」
ユリ 「…その通りだ」
クレオメ「…ねぇペンタス、ゲームなんてもうやめない?こいつらさっさと始末しちゃおう?」
ペンタス「…何を怯えている、クレオメ」
クレオメ「…嫌な予感がすんのよ」
ユリ 「…その予感は正しい。お前たちの野望は、僕らがここで絶対に阻止する…ッ」
ペンタス「クレオメ…ゲームは続行だ…!こいつらを倒してこそ、クロノスへの完全勝利だ…!」
スミレ 「ユリ君。作戦会議、途中で終わっちゃったけど…出来る限りあたし頑張るッ…!」
ユリ 「ハイ…ッ!」
ペンタス「…覚悟はいいか、千本崎ユリ」
ユリ 「…そのセリフ、そのまま返そう。クロノスは、必ず僕らが助け出す…ッ!」
クレオメ「…まさか…ッ…」
ペンタス「…驚いたな。千本崎ユリ、貴様…なぜクロノスを救うなどと僕に言うんだ?」
ユリ 「…封印されたクロノスは、この時空にいる。
そう、ペンタス…お前からクロノスの波動を感知してるんだッ…!」
ペンタス「…面白い。まさかそこまで調べがついてるとはな…!やってみろッッ!」
ユリ 「グッ…!」
ペンタス「ほう…少しは戦闘の心得があるようだな」
ユリ 「…この至近距離での接触を待っていた…場所は特定したぞ…ッ」
ペンタス「⁉︎バカな…貴ッ様ァッッ!」
ユリ 「そのピアスだッッ!」
ペンタス「チッ!…グゥッッ!」
ユリ 「…は…外した…!今のは…僕の渾身の一撃だった…!」
ペンタス「…よくもこの僕に…手傷を負わせたな…!千本崎ユリィィッッッッ!」
ユリ 「…仕切り直しだッッ!クロノスを解放さえすればッッ!この闘いは幕を閉じるッッ!」
クレオメ「ペンタス…ッ!」
ペンタス「クレオメッッ!君はその三人を仕留めろッッ!あの二人も駆り出せッ!
僕はこいつを…ッ…全力で始末するッッ!」
スミレ 「…クレオメッ!あんたの相手はあたしがするッッ!」
クレオメ「なめんじゃあないわよ…ッ!小娘がッッ!こんな連中あたしひとりで充分ヨ…ッ!
三人まとめてかかってきやがれッ!」
ツバキ 「馬鹿を言うな。そんな卑怯な真似などせん。スミレ…負けるなッッ!」
クレオメ「ガキが…ッ!こうなったら仕方ないわ…あいつらを出すしかない…!
あたしの中の…もう二人をね…!」
サクラ 「…クレオメの中の…もう二人…⁉︎」
ツバキ 「ほう、多重人格ってやつか。…ふん、今さらそんなことで驚きやせん。
それよりサクラ、俺たちにも試練が来るぞ…!構えろッッ!」
サクラ 「…了解ッ!」
クレオメ「…マインド・ディビジョン…!」
サクラ 「クレオメが…ッ…分裂していく…ッ!」
クレオメ「ちっ…やれやれだわ…。…ウッ⁉︎」
ロベリア「やあクレオメ」
クレオメ「くっ…ちょっとあんた!今すぐその剣の切っ先をこいつらに向けんのよッ!」
ロベリア「お断りですねぇ。私が今すぐ殺したいのは、いつも私やネリネを閉じ込める…君だよ…!」
クレオメ「…これだからあんたたちを解放したくなかったのよ…ッ!畜生ッ!」
ネリネ 「きゃはは…!んもう…ダメようロベリア。ネリネ達は一蓮托生。
クレオメを殺せばあたしたちも死ぬ。分かってるでしょ?」
ツバキ 「おい…仲間割れしてるぞ、こいつら…」
ロベリア「いいでしょう。クレオメの命、今のところは預けます」
クレオメ「…ハァッ…ハァッ…、まったく…ッ!あんたらの敵はこのガキどもヨッ!」
ネリネ 「ふーん。このお姉さん、ネリネと同じ、アーチャーみたいね」
サクラ 「…あ、あたし…?」
ネリネ 「そうよ。あ…はじめまして、ネリネだよ。
そして…また会えるのを楽しみにしてます。…さよーならっ!」
ツバキ 「⁉︎サクラッ!よけろォォッ!」
サクラ 「…えっ…⁉︎」
ツバキ 「サクラーーーッッッ‼︎」
ネリネ 「はい、死んだ♥︎」
サクラ 「ひ…ッ⁉︎…あれ…?…ネリネってコがあたしに放った矢が…目で追えるくらいに…遅い…ッ?」
ツバキ 「サァァァァ…クゥゥゥゥ…ラァァァァァ…ッッッ…!」
サクラ 「…ツバキ…ッ?…これは…ッ…もしかして…」
ネリネ 「はぁぁぁい…死ぃぃんんん…だぁぁぁ」
サクラ 「…理解したわ…ッ!あたし…あの瞬間危険を感じて、瞬時に時がスローになれって思った…!
それにクロノ・サーカスが反応したんだ…!そうゆうことなら…ッ!ちょっとカッコつけてやるわ…ッ!
この矢を…ッ掴んでやるッ!えいっ!」
ネリネ 「…次はお兄ちゃん、あなたが死ぬ番だよ」
ツバキ 「サ…ッ…サクラ…ッ…。……ッ…貴ッッッ様ァァァァ!」
サクラ 「…ツバキ、落ち着いて」
ツバキ 「⁉︎な…ッ…無事なのか…サクラ…ッ」
スミレ 「サクラ…ッ…矢を掴んでる…ッ!」
クレオメ「…信じられない…!あの至近距離で放たれたネリネの矢を…掴んだ…⁈」
ネリネ 「あれ?…死んでないの…?」
サクラ 「ふわぁ…。まったく…あくびが出ちゃうわ。この程度の攻撃で、あたしを倒せると思った…?」
ネリネ 「…うっ」
サクラ 「…もう分かったでしょう。あたしとあんたの力の差が…。
悪いことは言わないわ。そこから動かないで。さもないと…」
ネリネ 「…ひっ…さもないと…なんなの…?」
サクラ 「…知りたいなら見せてあげる。あたしの最強の一撃を。
首から上が吹っ飛ぶかもだけど…許してね?…ギリギリギリギリ…!」
ネリネ 「ひっ…⁉︎降参する…ッ!降参ッッッ!ネリネ大人しくしてるからァァァァッッッ!」
サクラ 「…お利口さん。ツバキ、スミレ。こっちは勝負あったわ」
クレオメ「ち…ッ!」
スミレ 「サクラ…なんかカッコいい…!」
ツバキ 「まったく…心配させやがって…!」
ロベリア「シィィィッッッ!」
鋭い金属音!
ツバキ 「⁉︎グウッッッ‼︎」
スミレ 「ツバキくんッッ!」
サクラ 「ツバキッッッ⁉︎」
ロベリア「ほお…今の一撃を受けるとは。。どうやら退屈しないで済みそうですねえ」
ツバキ 「…こんの…下衆野郎…ッ!」
ロベリア「おやおや…なんて野蛮な口の利き方でしょう。失礼にも程があります」
ツバキ 「立ち会いの礼節を欠きッ!不意打ちするような貴様が礼儀を語るなッッ!」
ロベリア「…それは対等な立場での話でしょう。
私は、迅速にゴミ掃除をしようとした。するとそのゴミが、
高貴なる私に悪態をつき暴言を吐いた、今ここです」
サクラ 「…ねぇ、そのゴミって…ひょっとして…ツバキのことじゃあないわよね…?」
ロベリア「私に話しかけるんじゃあない。…ゴミと会話する趣味はありませんから」
スミレ 「ちょっと…!あなた、私たちのこと…ゴミだなんて思ってるんですか…!」
ロベリア「…違うんですか?」
クレオメ「…自分の分身ながら、ほんとヤナ奴だって思うわ」
ネリネ 「…クレオメに同じ」
ツバキ 「…おい、確か貴様、ロベリアといったな」
ロベリア「…」
ツバキ 「…ふん。どうやら貴様には、教育ってもんが必要なようだな」
ロベリア「…」
ツバキ 「確かに。男の勝負に言葉はいらない。となれば…いざ、尋常に勝負だ」
スミレ 「ツバキくん…気をつけて…ッ!」
ツバキ 「…構えろ」
ロベリア「…その必要があればそうしますよ」
ツバキ 「…」
ロベリア「…」
サクラ 「…うぁ…空気が…張り詰めてく…ッ!」
ツバキ 「…ツェアッッッ!!」
ロベリア「ィィヤッッッ!」
鋭い金属音
クレオメ「…スピードは、互角」
ロベリア「…ゴミのわりに…ッ…なかなかいい太刀筋ですね…ッ」
ツバキ「…ふん…ッ…ようやく俺を相手にしやがったな…ッ!」
ロベリア「…我が名はロベリア。君の名を伺いましょう」
ツバキ「…自分から名乗るとは、いい心掛けだ…ッ…よかろう…俺は伊達ツバキ…ッ…そして予言してやる…ッ」
ロベリア「…予言…ッ?」
ツバキ「…これから貴様には…ッ…敗北が訪れる…ッ…一度学ぶがいい…ッ…その痛みを…ッ!」
ロベリア「伊達ツバキ…か。…面白い、私に敗北を与えてみろ!…ハ!ハ!ハ!ドララララッッッ!」
ツバキ「ぐぬぬッ‼︎この剣速で…ッ…なんて重い連撃だッ‼︎…だが焦りは禁物だ…!ぐ…ッ…見極めろ…ッ…この窮地を乗り越えられんようでは…伊達の血を継ぐ者としてまだまだ未熟だ…ッ…!」
ロベリア「ドララララッシャアォッッ‼︎」
ツバキ「…見切ったッ!…伊達豪快流後の先の太刀ッッッ!疾風迅雷怒涛ォォォッッッ!!」
ロベリア「‼︎突きを受け流して回転だと⁉︎」
ツバキ「嵐に備えな…ッ…!」
ロベリア「小賢しいャァァァァァッッッ」
ツバキ「ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ‼︎‼︎‼︎」
ロベリア「クッ…⁉︎ソガキ…ッガァァァァッッッゴベバギガザダバゴギャバガガガガッッッ‼︎‼︎」
ツバキ「…ッダァリャアッッッ!…勝負ありだッッッ!」
サクラ「やったぁッッッ!ツバキがあのスカメン撃破撃破撃破ァァァァッッッ!」
ネリネ「あーあ…。…こりゃお兄ちゃん、死んだわね」
スミレ「ツバキくんッッッ!すごいすごいすごいッッッ!」
クレオメ「…確かに、勝負あったわね」
ツバキ「うむッ、この勝負、俺の…」
ロベリア「負けだッッッ!死ねェェッッッ!」
ツバキ「⁉︎⁉︎…ッ…ウ…ァ…ッ…バ…カな…ッッッ!」
サクラ「…え…ッッッ⁉︎」
ネリネ「ほーら死んだ。心臓串刺し…ロベリアの勝ちィ」
ロベリア「クックッッッ…フッハッハッハァーーッッッ!馬鹿は貴様だッッッ!
一時の優勢に油断しおってッッッ!殺さずの剣などで…ッッッこの私に勝てるかァァァァッッッ!
詰めが甘いんだよォォォォォォッッッ!」
クレオメ「…さて、次はあたし達の番よ、スミレ」
スミレ「…嘘…でしょ…ッ?…ツバキくんッッッ…!」
サクラ「イヤァァァァッッッ…ツバキィィィッッッ!」
ツバキ「…負け…だ…」
ロベリア「ああそうとも!これが貴様の完全なる敗北ッッッ!」
ツバキ「…伊達の血を…ナメ…るな…よ…」
ロベリア「…あ?」
ツバキ「恩に着るぞ…マサムネ…。…存分に猛るがいい…ッ!伊達豪快流奥義…!神鳴覇天哮ォォォォォォッッッッッッ!!」
ロベリア「…なぜそこに剣がッッッ…⁉︎ウガァァァッッッ‼︎」
ツバキ「ハァッ…ハァッ…!…くっ…!…我が伊達家…伝家の宝刀マサムネ…。
俺は、常に肌身離さずこの懐刀を胸に忍ばせている…!」
ロベリア「馬鹿…な…ッ…グゥッ…」
クレオメ「ふふ。なかなかやるじゃない」
サクラ「ヅバギ…良がっだぁ…!」
スミレ「ツバキくんッッッ!」
ツバキ「奥の手、というやつだ…!しかし…ッ…際どい立ち回りだった…ハァッ…ハァッ…!」
ネリネ「…ねぇお兄ちゃん、ロベリア死んだ…?」
ツバキ「だ、誰がお兄ちゃんだ…ッ。…いや、死んではいない。
最終奥義、神鳴覇天哮も…例に漏れず活人剣だ。だが…そいつの心臓は、
とてつもない衝撃の雷鳴が貫いた。しばらくは意識不明だろう」
クレオメ「きゃはは。あんた、ほんとにロベリアに敗北を教えてくれたわけね。
殺さずも見事に貫いたわ」
ツバキ「…これが俺の流儀だ。…それより、さっきから千本崎とペンタスの姿が見えんが…」
スミレ「うん…あの出会い頭の立ち会いの後…気配は感じるのに姿が見えなくなったの…。
地響きみたいな音が聞こえてるだけ…」
クレオメ「…まぁペンタスに限って負けるなんてあり得ないし。
さぁ、次で最後よ。スミレ、かかってきなさい」
スミレ「…クレオメ。…なんか、あんた別人みたい。少し前とは人が変わったみたいな気がする…」
クレオメ「そりゃそうでしょうね…普段のあたしは…ネリネとロベリアを孕んで成立してるからネ」
ネリネ「そうそう。ネリネが可愛い担当なの」
スミレ「…なんか気が進まないけど、あたしとあんた、闘わなくちゃいけないの…?」
クレオメ「…ふふ、スミレは優しいね。…でも。例え間違いだとしても…
愛する人の叶えたい夢だもん…。その邪魔をするものはすべて…排除してあげたいの」
スミレ「…クレオメ…ッ」
クレオメ「だから…」
ツバキ「…スミレ、集中しろ…!」
スミレ「分かってるッ…でもッ…」
クレオメ「来ないならこっちから行くわね。…バーニン・スーサイドッ…!」
スミレ「ううっ…!この黒い炎は…ッ⁉︎」
クレオメ「そのまま火葬してあげるわ、スミレ」
スミレ「まだ話は終わってないよ…!ハァッッ!」
クレオメ「グッ…この風は…ッ!スミレの身体から放たれたのッ⁉︎」
ツバキ「…まただ。あの時みたいな爆風で…クレオメの炎をかき消した…ッ!」
スミレ「…ハァッ…ハァッ…!好きな人の夢を…ッ…叶えるためなら何でもする…ッ?
そんなのおかしいッ!大好きな人が過ちを繰り返そうとしてるんなら…ッ!
止めるのが助けることでしょ…ッ⁉︎」
クレオメ「小娘のくせに…分かったふうな口効かないでよ…ッ!
…スミレ、やっぱりあんたは危険だわ…。ここで始末しなくちゃ…あたしの正義がブレる…ッ!」
スミレ「…言葉で通じないんなら…ッ!闘う…ッ!その魂に直接問いかけるッ!」
クレオメ「ッ…!まったく…ッ…調子狂うのよあんた…ッ!…早く死になさいよッ!」
ツバキ「スミレッ!奴は武器を持ってるぞッ!」
スミレ「…あたしは」
クレオメ「さよならよッ…!スミレェッ!」
サクラ「スミレ…ッ⁉︎なんで躱そうとしないの…ッ⁉︎」
クレオメ「…あああああッッッッッッ!!」
スミレ「…あたしはッッッ!…うっ…」
クレオメ「…ハァッ…ハァッ…なんなのあんた…ッ!確かに刺したわよね…ッ!
なのになんで…ッ…なんで…あたしを抱きしめてるの…?」
スミレ「…ううッ…ハァッ…ハァ…ハァッ…あたしは…見てるの…ッ…ぐぅッ…」
クレオメ「…見てる…ッ?何を…?スミレッッッ!答えなさいッッッ!
あんたは一体…何を見てるの…?」
サクラ「スミレェ!…なんでなんで…なんでよォォッッッ!」
ツバキ「…ぐぐぐっ…サグラ…ッ…手を出すな…ッ…ううっ!」
スミレ「…ハァッ…ハァッ…あたしは…クレオメ…それに…ペンタスとだって…ッ
…いつか一緒に笑い合えるような…ッ…ハァッ…ハァッ…そんな…ッ
…そんな未来を見てるのッッ…!!!」
クレオメ「あんた…馬鹿なの…ッ…?…あたしやペンタスと笑い合う未来…?」
スミレ「…この痛みは…ッ…クレオメ…ッ!あんたの心の痛みじゃあないの…ッ?そうでしょ…ッ⁉︎」
クレオメ「…うっ…ああ…ッ…あたしは…ッ…あたしは…ッ」
スミレ「まだ…ッ…間に合うから…ッ!目を覚まして…ッ…お願いクレオメ…ッ!」
クレオメ「や…やめなさい…ッ…あたしの心を見透かすのをやめてェェッ!」
ネリネ「…クレオメ…泣いてるの…?」
クレオメ「…あたしは…ッ…ペンタスを…守りたい…ッ。…彼を…ッ…救いたい…ッ…!」
サクラ「スミレッ!早く回復してェッ!無茶しすぎだよぉ…ッ」
スミレ「…うん…ッ。…ファスト・ヒーリング…ッ」
クレオメ「…ハァッ…ハァッ…。あ…スミレ…?あたしがあんたに負わせた傷は…ッ⁉︎」
スミレ「…この通りだよ、クレオメ」
クレオメ「…ううっ…。良かった…ッ…良かった…!」
スミレ「ありがとう」
クレオメ「…⁉︎…なんであたしにお礼を…?」
スミレ「ふふ。分かってくれたから、かな…」
クレオメ「スミレ…。うん、あたし、なんか吹っ切れたわ…あんたが身体張ったおかげでさ…」
ツバキ「まったく…ッ、無茶しやがって…ははっ」
スミレ「ツバキくんッ…!まだ終わってないッッ‼︎」
ツバキ「…なにッ⁉︎」
ネリネ「ロベリア!」
クレオメ「うぐッ…」
ロベリア「…ハァッ…ハァッ…ふはは…ッ!クレオメぇ…なんだそのザマは…ッ!もう終わりだ…ッ!お前は私の存在を…ッ…悪の心を裏切りやがったんだ…ッ!」
クレオメ「…あ…あ…ッ…」
ツバキ「ロベリアァァァッ‼︎馬鹿野郎ォォッッッ‼︎」
ロベリア「私の手で殺すと言ったはずだ…ッ…クレオメッ…!」
クレオメ「…ペンタス…ッ…あたし…ッ…あたし…ゴメン…ね…」
スミレ「ハァッッ‼︎」
ロベリア「…む…?ごァァァッ‼︎」
スミレ「…ハァッ…ハァッ…!」
クレオメ「…ス…ミレ…あたし…ッ…ここで…お別れ…ね」
スミレ「…ッ…今からあたしが言うことをよく聞いて…ッ!」
サクラ「スミレ…クロノ・サーカスをクレオメに…ッ」
スミレ「あんたをこんなとこで絶対死なせない…ッ…!今すぐファストヒーリングって唱えて…ッ」
クレオメ「…な…に…?」
スミレ「ファストヒーリングッ!今すぐ唱えてッッ‼︎」
クレオメ「…う…あ…ッ…ファ…スト…」
スミレ「クレオメッ‼︎ペンタスのことッ‼︎救いたいんじゃないのッ⁉︎頑張って…ッ‼︎」
クレオメ「…ヒー…リング…」
ネリネ「クレオメの傷が…みるみる塞がってく…。ネリネ、死なずに済みそう…!」
クレオメ「ありえない…こんなこと…!信じられないけど…ううん、信じるわ…スミレ。あんたがあたしを救ったんだって…!」
ツバキ「…やれやれだぜ」
スミレ「良かったね、クレオメ…!」
場面変わり、
亜空間にて戦闘、対峙するペンタスとユリ。
ペンタス「…僕と貴様だけを時空の狭間に隔離した能力…サイレント・アクション…と言ったな…」
ユリ「ああ…そうだッ…」
ペンタス「時の流れを限りなく止める…まさかそんなことがクロノス以外に出来るとはな…ッ」
ユリ「スミレさん達を…ッ…この激しい闘いに巻き込む訳にはいかなかった…ッ!」
ペンタス「ふ…。まさか貴様が…この僕とここまで渡り合うとは思わなかったよ…!」
ユリ「…こんな無茶なクロノ・サーカスの使い方をしたのは…初めてだよ…。
…さすがにちょっと負荷をかけ過ぎたみたいだ……システムの起動速度が鈍り始めてる…ッ」
ペンタス「チェックメイトだ…千本崎ユリ…ッ!」
ユリ「ッ…消えた…ッ!…」
全神経を集中させ、ペンタスの気配を探るユリ。
ペンタス「遅いッ!ハ!」
ユリ「ぐあァッ!」
ペンタスの攻撃が的確にユリのクロノ・サーカスを捉え破壊。それによりサイレント・アクションが解除され、スミレやツバキ達の前に出現したユリとペンタス。
ツバキ「千本崎…ッ⁉︎」
スミレ「ユリくんッ!?」
ペンタス「ハァッ…ハァッ…。くっくっく…!これにてゲームは終わりだな…ッ…!」
ユリ「ぐ…ッ…まだだ…ッ…僕はまだ闘えるぞ…ッ…ペンタスッッ‼︎」
ペンタス「それにしても…まさかそんな腕時計ごときが…この戦闘中の不可解な現象、
すべてのトリックだったとはな…ッ!しかしそれももう使えない…!
僕が破壊してやったんだからな…ッ!あの忌々しいクロノスの意思をッ‼︎僕が破壊したッ‼︎」
ユリ「グゥッ…!」
(なんとかしてこの危機的状況を打開しなくては…!ペンタスのピアスさえ破壊出来れば、クロノスは解放され、事態を収束させられるのに…!しかし、僕のバトルアクションが使えない今、あのピアスを狙撃出来るのは誰だ…!?)
その時、焦るユリの脳内に突如響く、
クレオメからのテレパシー。
クレオメ(千本崎ユリ…聞こえる?)
ユリ(なっ…この声は…クレオメ…ッ?)
クレオメ(そうよ。あんたの意識に直接話しかけてるわ)
ユリ(いったい…どうゆうつもりだ…!)
クレオメ(この状況。あんたの狙いはクロノスの解放でしょ?)
ユリ「…だとしたらどうだってゆうんだ」
クレオメ「手を貸すから。。彼を止めて…!」
ユリ「!?ペンタスを…止めろだって?
そんな言葉、、信用できると思うか…⁈」
クレオメ「…あたしが彼の注意を引いて隙を作るから。なんとかしてピアスを破壊して」
ユリ「…っ!本気なのか…!」
クレオメ「本気よ。スミレのおかげであたし…目が覚めたの」
ユリ「スミレさんが。。。確かに…以前のクレオメとはまるで別人みたいだ」
クレオメ「…ほら急いで。長くは持たせられない。今すぐ決断と行動をして」
ユリ「……分かった。その提案、乗らせてもらうよ」
クレオメ「ありがと」
ユリ「早速だけど頼みがある。この通信回路に、サクラさんを追加できるかい?」
クレオメ「お安い御用よ。…OK、繋いだわ」
ユリ「よし。。サクラさん!ユリです!」
サクラ「あっ…!」
ユリ「この声が聞こえますかッ?」
サクラ「…うん、聞こえてる。。」
ユリ「単刀直入ですが、落ち着いて聞いて下さい…!今僕は、クレオメのテレパシー能力を使って話しかけています!そして、このピンチを乗り越えるために、サクラさんの力が必要なんです!…まず、ペンタスの左耳のピアスを見て下さい。あのピアスにクロノスが封印されています!それを、サクラさんの弓矢で狙撃、破壊してほしいんです!」
時間が少し遡り、ユリのクロノ・サーカスがペンタスに破壊された直後のシーンから再開。
スミレ「ユリくん…ッ…クロノ・サーカスが…壊れて…ッ」
ユリ「ハァッ…ハァッ…」
ペンタス「スミレ・メアリードか…。もうしばらく待っているがいい…次は貴様…。。クレオメッ⁉︎なぜ君が血を流しているんだ…ッ⁉︎」
クレオメ「…」
ペンタス「なぜ何も言わない…?喋ることも出来ないほどの深手なのか…⁉︎」
サクラ「あっ…」
ツバキ「…?サクラ…どうした?」
サクラ「…うん…聞こえてる…」
ペンタス「…あ…あ…ッ…クレオメ…!僕が…少し目を離したばっかりに…ッ…」
サクラ「…了…解。」
ツバキ「おい…サクラ…ッ」
ペンタス「…こいつらの仕業…なんだな…?クレオメ…ッ…頼むから声を聞かせてくれ…ッ」
クレオメ「…」
サクラ「一発勝負かぁ…ぶっちゃけ…辛すぎる…でも…あたしにしか…出来ないのよね…ッ…」
スミレ「…サクラ…?」
ペンタス「クレオメッ‼︎何故黙っているんだッ…⁉︎」
サクラ「集中…集中…集中…。絶対に射抜く…ギリギリ…ッ…」
クレオメ「…ペンタス…」
ペンタス「…無事なんだな…ッ」
サクラ「安心して動きが止まった…ここしかないッ…!ハァッ!」
意を決してペンタスに矢を放つサクラ。
ユリ「…よしっ…!」
ペンタス「…ハッ…!しまっ…」
サクラ「津田サクラ…ッ…乾坤一擲ィィッッ‼︎」
ペンタス「グゥッ…!」
サクラの放った一矢が、ペンタスの右耳のピアスを見事に射抜いた。
サクラ「ドンピシャッ…!よっしゃァァァッ‼︎」
ペンタス「…マズイ…ッ‼︎」
ユリ「…終わりだ…ッ…ペンタスッ‼︎」
ペンタス「これは…ッ…貴様の差し金か…ッ…千本崎ユリィィィッッッ‼︎終わるのは貴様だッ‼︎死ねェェェッ‼︎…ウウッ⁉︎」
ユリ「…ゲームは終わりだペンタスッ…!…そして…ッ…このまばゆい光は…ッ!」
クロノス「……随分と待たせた。…だが…。私が戻ったからにはもう大丈夫だ。…安心するがいい…!千本崎ユリよッ‼︎」
ペンタス「ク…クロノス…ッ‼︎」
第13幕へ続く
クロノ・サーカス 最終回 第13幕 「最後の日に僕らが見た景色」
クロノ・サーカス
最終回 第13幕
「最後の日に僕らが見た景色」
サクラ「津田サクラ…ッ…乾坤一擲ィィッッ‼︎
ペンタス「グゥッ…!」
サクラの放った一矢が、ペンタスの右耳のピアスを見事に射抜いた。
サクラ「ドンピシャッ…!よっしゃァァァッ‼︎」
ペンタス「…マズイ…ッ‼︎」
ユリ「…終わりだ…ッ…ペンタスッ‼︎」
ペンタス「これは…ッ…貴様の差し金か…ッ…千本崎ユリィィィッッッ‼︎終わるのは貴様だッ‼︎死ねェェェッ‼︎」
ユリへ向かい猛然と駆け出すペンタス。
その背後で、先ほど破壊されたペンタスのピアスから、
まばゆい光が放射される。
ペンタス「…ウウッ⁉︎」
ユリ「…ゲームは終わりだ…ペンタスッ…!…そして…ッ…このまばゆい光は…ッ!」
光の中から重厚感を以って響くクロノスの声。
そして近づいてくる足音。
クロノス「……随分と待たせた。…だが…。私が戻ったからにはもう大丈夫だ。…安心するがいい…!千本崎ユリよッ‼︎」
ペンタス「ク…クロノス…ッ‼︎」
クロノス「久しぶりだな…ペンタス。まず、私を生かしておいてくれたことに礼を言う。
そして…封印を解かれた今。お前の暴走を…黙って見過ごす訳にはいかん」
ペンタス「…クレオメ…ッ…なぜ僕らが悪夢を見てるんだ…ッ?
この惑星を支配するのは…この僕だったはずだァァァッ‼︎」
スミレ「…彼が…クロノス…ッ」
クロノス「ユリよ。この度の働き、そしてその勇気ある行動を讃えよう。
この通りだ…ありがとう…ッ!」
ユリ「…僕は…望むべく未来を守るために、行動しただけです…」
ペンタス「…ハァッ…ハァッ…ちくしょう…ッ!」
クレオメ「…ペンタス。あたしなら大丈夫。スミレが助けてくれたの…」
ペンタス「⁉︎ッ…スミレが…君を…?じゃあその傷は誰が…ッ」
クレオメ「それも…もういいの。そんなことより…ペンタス。
あたし達は、ここで一度立ち止まることが必要よ…」
ペンタス「今さら何を…ッ!僕らはもう…ッ…後戻り出来ないとこまで来てるんだぞ…ッ?」
クレオメ「そんなことない…。あたし達は…!」
ペンタス「この闘いに負けたら…ッ…僕らの夢は一生叶わないんだ…ッ!
…それに…僕らは裁きにかけられ…ッ…自由さえ奪われるッ!」
クロノス「…真相を聞かせよ、ペンタス」
ペンタス「ハ…ッ…なんの事だかサッパリだな…ッ…この計画はッ…僕の独断で実行した…!」
クロノス「…調べればすぐに分かることだ、ペンタス…。お前の口から真実を話すのだ。
まあ…あらかた推測はついている。深い闇の中で、散々…思いを巡らせたのでな…」
ペンタス「…くどいぞクロノス…ッ!お前を封印し…アースの復活を試みたのは…僕だけの計画だ…!」
クロノス「…ムスカーリ。彼女がその企みに加担していない、と言うのか…?」
ペンタス「…くっ…!知らないと…言っているだろォォがッ!…この計画は僕のっ…ゾクッ」
突如として現れた空間の裂け目。そしてそこから漏れ漂う明らかに禍々しい殺気。
クロノス「噂をすれば、なんとやらか…」
ペンタス「…この…妖気は…ッ…」
ムスカーリ「……嫌な予感がして来てみたら。…やれやれ…一体この有り様はなんなんだい…」
ペンタス「…ムスカーリ…様…ッ!…ハァッ…ハァッ…!」
ムスカーリ「…おや、ペンタス…青ざめているじゃあないか…呼吸も荒い…
ふふ…何を怯えているんだい…?」
クロノス「ムスカーリ…やはり君が…」
ペンタス「ハァッ…ハァッ…!」
ムスカーリ「ペンタス…よくも私の期待を裏切ってくれたねぇ…。
使えない使い魔だなんて…洒落にもならないよ…」
ペンタス「…申し訳…ありません…ッ…」
ムスカーリ「…お前はしくじった…もう用済みさ…。あの約束も…無しにさせてもらうよ…」
蒼ざめるペンタス。
ペンタス「そんな…ッ!クレオメの病は…ッ…あなたの調合する薬でしか治らないんです…ッ!
ムスカーリ「みたいだねぇ…」
ペンタス「お…お願いですッ!僕の命なら喜んで差し出しますから…ッ
…お願いです…ッ…クレオメの病気を…ッ…治してやってくだ…」
ムスカーリの持つ大鎌が目にも止まらぬ速さで振るわれ、ペンタスの腹部に突き刺さった。
ムスカーリ「死人に口無し。くたばりな、ペンタス」
崩れ落ちるペンタス。
ペンタス「…あ…あ…ッ」
クロノス「ムスカーリ…なんてことを…ッ」
ペンタス「…グフ…ッ…ウウ…ッ」
クレオメ「ペン…タス…?いや…ッ…!イヤぁぁぁぁぁッ!
ハァッ…ハァッ…ッ…ムスカーリ…ッ!絶対に…許さない…ッ!」
ムスカーリ「やれやれ…暑苦しい連中だこと。お前たちのような使えないクズは…黙って死ね。
己の弱さを呪いながらな…!」
ペンタス同様にムスカーリから鎌での強烈な一撃を受けるクレオメ。
クレオメ「…あうっ…!」
ムスカーリ「…いい顔だよ、クレオメ。絶望に満ちて…たまらないね。
愛し合う二人仲良く…生涯にピリオドを打つがいい…」
スミレ「あんただけは…ッ…あんただけはッ‼︎あたしがぶっ飛ばすッッ!トルナーダインパクトッ‼︎」
ムスカーリ「速い…ッ…!グゥッ!」
スミレの強烈な一撃を喰らいダウンするムスカーリ。
スミレ「ハァッ…ハァッ…あんたには…ッ…あんたには誰かを愛するって気持ちが分からないの…⁉︎」
ムスカーリ「…そんな気持ち…随分前に忘れたねぇ…」
スミレ「愛する気持ちを…忘れた…?」
ムスカーリ「ああ…。それにしても久しぶりだ…私が地面に這いつくばるのは…。
お前がスミレ・メアリードかい…効いたよ、なかなかの一撃だ…」
傍で密談をするクロノスとユリ。
クロノス「…ユリよ。君に託した"カーサ・クロノス"だが…修復には成功したのか…?」
ユリ「…完全なる再現が出来たかは疑問ですが…僕になし得るアレンジ、リペアは施してあります」
クロノス「…その壊れた腕時計のことかね…?」
ムスカーリ「なにをこそこそ話してるんだい?クロノス…!」
密談に感づいたムスカーリが瞬時にクロノスの前に現れ、その胸ぐらを掴みあげる。
クロノス「⁉︎グッ…!」
ムスカーリ「今度は封印なんて生温いやり方はしない…!私が直接お前の息の根を止めてやるよ…!」
クロノス「何故なんだ…ムスカーリ…ッ!何故こんなことを…ッ…君は…ッ…世界を破滅させる気かッ!」
ムスカーリ「お前のせいだよ…クロノス…ッ!全部お前のせいだ…ッ!」
クロノス「話してくれ…ッ!その理由を…ッ!」
ムスカーリ「そこだよッ…お前はいつもそうだ…
わたしの気持ちなんざなにひとつ分かっていやしない…。
だが…いいだろう…冥土の土産に話してやるよ…」
ムスカーリの隙を見ながらツバキがサクラに囁く。
ツバキ「サクラ…手分けしてペンタスとクレオメを回復させるぞ…」
サクラ「…了解」
ムスカーリ「あの日…。そうさ、わたしとお前が最愛の存在を失ったあの日…」
クロノス「ムスカーリ…あれはッ…」
ムスカーリ「あんたは帰ってこなかった…。いつものように、
この惑星の時間軸の秩序を守っていたから…」
クロノス「駆けつけられなかったことは…今でも済まないと思っている…しかし…ッ」
ムスカーリ「職務が最優先だったんだろう…?私が許せなかったのはそこじゃあない…。
遅れてあの場に来たお前は…悲しみに暮れ…泣き叫ぶ私の願いをッ!…切り捨てたじゃないか…!」
クロノス「過去を塗り替えろという…君の願いか…」
ムスカーリ「そうさ…あんな事故が起こると分かっていたら…ッ!
…私は我が子から一瞬たりと目を離さなかった…!あの子が死んだのは…私のせいだ…ッ」
クロノス「それは違う…!あの事故は君のせいではない…ッ!
誰しもに訪れる不運…日常に潜む死角だ…!」
ムスカーリ「気休め言うんじゃないよ…。冥府であの子に再会した時…あの子はこう言ったよ…。
お母さん…僕もっと生きたかった…なんで僕を死なせちゃったの…?ってさ…!」
クロノス「うう…ッ…ムスカーリ…!」
ムスカーリ「お前は言ったね…未来は変えるべきじゃない…
正常なる時空の営みは…なんぴとたりとも干渉すべきものではないと…ッ!」
クロノス「ああ…ペンタスに封印されるまでは…確かにそう思っていた…」
ムスカーリ「…今さら誤魔化しをするんじゃあないよ…!」
クロノス「ムスカーリ…。私が千本崎ユリに未来を託した時点で…
私は…未来というものの在り方について…考えを改め始めていたのだ…。そして今ならば…」
ムスカーリ「もう手遅れさ…。私はお前を許さない。
この惑星には…滅びの未来しか無いんだよ…。皆殺しだ…ッ…さっさとくたばれェェッ!」
クロノス「くっ…!千本崎ユリ…!私にあれをくれ…ッ!正常に稼働しているものをッ」
ムスカーリ「なるほどねぇ…!そうはさせないよ…ッ!ほらほらほらッ!」
ムスカーリの手から放たれたレーザーのような魔法攻撃がツバキとサクラのクロノ・サーカスを直撃、破壊した。
ツバキ「ぐぁっ⁉︎俺のクロノ・サーカスが…ッ!」
サクラ「きゃッ…!あたしのも破壊されたッ…!」
スミレだけはその攻撃に瞬時に反応、間一髪でかわすと同時にムスカーリへの反撃に転じる。
スミレ「…ッ…!ハァッ!」
ムスカーリ「たいした反応速度だ、スミレ・メアリードよ…!グッ」
スミレの攻撃を片手で受け止めたムスカーリ。
スミレ「あたしはもう…絶対に負けない…ッ!ムスカーリッ!あんただって救いたいッ!」
クロノス「…この魔力の質!…高まりは…ッ…!まさか!アイズオブウェットの末裔か…ッ!」
ムスカーリ「この私を救うだと…ッ?図に乗りすぎだよ小娘がッ!…冥府の闇を纏いし裁きの大鎌よ…。今こそ彼の者らの魂に最後の審判を下さん…。デスペリア…!ラスト・ジャッジメントッ!」
みるみるうちに巨大化、8つに分裂したムスカーリの大鎌がスミレに襲いかかる。
スミレ「八方からの攻撃…ッ…クッ…!躱しきれない…ッ!」
ムスカーリ「八つ裂きにしろッ!ディアボロスッッ!」
スミレ「…それなら…ッ…!全部まとめて叩き折るッッ!!トルナーダ…エクスプロージョンッッ!!」
スミレの両拳が熱を帯び赤く光り出す。
ジャンプ一番からの一回転によるフックとバックブローの爆撃が、8つの大鎌を破壊した。
ムスカーリ「ううッ…!バカな…⁉︎ディアボロスが…ッ…砕かれただと…ッ⁉︎」
スミレ「まだ闘うのッ⁉︎それならとことん相手になるッ!」
遠巻きにそれを見ていたクロノスがスミレの手首に輝くクロノ・サーカスに気づく。
クロノス「ユリ…彼女の身に付けるあれが…最後のクロノ・サーカスか…ッ!」
ユリ「…ッ…。…」
クロノス「…ユリ…?」
ユリ「……はい」
(この窮地を乗り越えるには…どうすればいいんだ…!
クロノスと連携を取りたいところだが、ムスカーリには一縷の隙も無い…!
下手に動けば最悪の事態になる…!)
ムスカーリ「私は地獄耳でねぇ…。クロノス、お前が時空制御を管理するのに何が必要なのか…
すべてお見通しさ…ッ」
クロノス「…ムスカーリ…ッ…やめるんだァァッ…!」
スミレ「…狙いは…ッ!最後に残されたこのクロノ・サーカス…ッ!
なんとかしてクロノスさんに渡さなくちゃッ…!」
ムスカーリの狙いに気づき、クロノスへと意識を向けるスミレ。
一方、ユリもこの窮地ですべき最善の行動を模索していた。
ユリ(…焦るな…ッ…。しかしスミレさんのことも…ッ…守ならくては…ッ…!
やはりもう…この方法しかない…ッ!)
「ゴッドジャズタイム…フリージングアクション…!」
刹那の時空の揺らぎ、静止。
懐からおもむろに手紙と懐中時計を取り出し、
静止したクロノスの手に握らせるユリ。
しかし、究極のクロノ・アクションによる、
そのあまりにも激しすぎる魔力体力の消耗から、
見る見るうちに疲労困憊してゆく。
ユリ「限界だッ…!解除…ッ!」
時空が正常化する。荒い息遣いのユリ。
ユリ「ゼエーッ!ゼエーッ!…ハアッ!!…ハアッ!…」
ムスカーリ「…跡形もなく消し飛ばしてやる…ッ!
…冥府の常闇に燃え盛りし…地獄の黒炎よ…。焼き尽くせ…!
デスペリア…ッ!フレイム・アポカリプスッ!!」
呪文詠唱に入ったムスカーリの隙をついて、クロノスへと駆け出すスミレ。
スミレ「…今だ…ッ…クロノスさんッ!受け取ってッ…!」
ムスカーリ「…浅はかな…ッ!甘いッッッ!」
ユリ「ダメだスミレさん…ッ…遠すぎる…ッ!クロノスッ!………後は任せますッッ!」
最悪の事態を避けるべく、
意を決してユリがスミレを守るために駆け出す。
クロノス「…ユリ…まさか君は…ッ!」
ユリ「未来は…ッ…一つじゃないッ…‼︎…うおおおおああああァァァァッッッ!!」
スミレ「あと少し…ッッ…!え…ッ⁉︎ユリくん…ッ⁉︎キャッッ」
クロノスに駆け寄るスミレに迫る、
ムスカーリの魔法攻撃の軌道から逃すために、ユリがスミレを突き飛ばした。
その衝撃でユリの眼鏡が地面に落下。
素顔を晒し、懸命な表情でスミレに何かを訴えようとするが、
差し迫るムスカーリの凶撃の危機。
ユリ「ハアッ…ハアッ…スミレさんッ!…僕はッ!僕は必ずッッ!!」
スミレ「ユリくーーーーーんッ‼︎」
足首から下を残して、消し飛んだユリ。
ムスカーリ「余計な邪魔を…。泣かせるねぇ…己を犠牲に友を守るとはねぇ…ふふふ」
スミレ「あ……あっ…ユリ…くんが…無くなっちゃった…」
ムスカーリ「次はお前さ」
怒りと悲しみに震えるスミレ。
スミレ「…ユ…ユリくんは…ッ…ただの友だちなんかじゃない…ッ…。…彼は…ッ…彼はッ‼︎あたしの恋人だった…ッ」
ツバキ「千本崎…貴様…こんなに簡単に…ッ!」…ふざけるな…ッ…千本崎ィィ!返事をしろォォッ‼︎」
サクラ「ユリ…くん…?…嘘…でしょ…?」
ツバキ「…ふざけるな…ッ…千本崎ィィ!返事をしろォォッ‼︎」
ムスカーリ「目を背けるんじゃあない…。これが、死というものさ…!
そこに転がってるメガネ。それがあの小僧の形見さ…!」
ペンタス「ムスカーリ…ッ‼︎奴は…ッ…僕のゲーム相手だ…ッ…!
貴様だけは…ッ…貴様だけは絶対に許さん…ッ!!」
ムスカーリ「おやおや。死に損ないの使い魔の分際でなんだい、その口の利き方は…」
スミレ「…ううっ…えぐっ…えぐっ…て…あれ…?…あたし…なんで泣いてるんだろ…?」
ツバキ「…確かに…俺は今…怒りと悲しみに暮れていたような気がするが…その理由が思い出せん…!」
サクラ「…わかんない…なんでこの気持ちになってるのか…わかんないよ…!」
クレオメ「…ああんっ!忘れちゃったものは仕方ないわよ…ッ!
それより今はムスカーリをなんとかしなきゃでしょッッ!」
スミレ「え…。あ…ッ…うんっ…!」
ムスカーリ「…悲しいねぇ…神格的存在にある私やクロノス以外の者からは…
あの小僧の記憶が消えるのかい…。ふふ、傑作だな…」
スミレ「…違う…何かおかしい…ッ…!あたしは何か大事なことを忘れてしまっている気がする…ッ!
ものすごく大事な何かをッ…!」
ムスカーリ「時にクロノス…。…私に攻撃してこないところを見る限り…
お前はまだ時空制御出来ないようだねぇ…!」
クロノス「千本崎ユリよ…君の覚悟は…確かに私が受け止めた…ッ!」
ムスカーリ「…なんの話だい…?」
スミレ「…千本崎…ユリ…?」
ツバキ「せ、千本崎…なんだって…?」
サクラ「あ…誰だっけ…それ…。思い出せそうでわかんない…!」
ムスカーリ「…まぁいい。さて、フィナーレだ。全員あの世へ旅立つ準備をしな…!」
クロノス「…ムスカーリ、もうやめよう…。闘いは終わりだ」
ムスカーリ「何を言い出すかと思えば…。死の恐怖に気でも触れたのかい?クロノス…」
クロノス「今の私があるのは、すべてあの少年のおかげだ…。彼がこの惑星の未来に希望を繋いだ…!」
ムスカーリ「…この状況のどこに希望なんてあるんだい…!」
クロノス「希望なら…ここにある」
ムスカーリ「…なんだい。そのヘンテコな懐中時計は…」
クロノス「千本崎ユリは、確かに私へとバトンを繋いだのだ…。この手紙と共に…」
ムスカーリ「手紙?…なるほど、既にお膳立てされてあったってわけかい」
クロノス「この手紙にはこう書いてある。私の失った"カーサ・クロノス"…。
その完全なる復元は出来なかったが、彼のオリジナル・クロノ・ドライバー、
クロノ・サーカスの4つの試作品を経て、ある時計を完成させたと…」
ムスカーリ「まさか…!」
クロノス「この懐中時計…その名を、クロノ・サーカス最終モデル、ゴッド・ジャズ・タイム…!」
ムスカーリ「ゴッド・ジャズ・タイム…!」
クロノス「左様。クロノ・サーカスの数百倍のパーツ及びスペックを搭載しており、
およそ普通の人間では扱えない究極のクロノ・アクション、つまり…時空停止機能を備えていると…!」
ムスカーリ「…やってくれたねえ、あの小僧…。見事に繋いだってわけかい
…お前に最後の希望をッ‼︎」
クロノス「ムスカーリ…私は、認めざるを得ない。千本崎ユリの貫いた正義、それは…。
誰もが求める、限り無く眩しい未来。すべてはやり直せるのだと…!」
ムスカーリ「クロノス…何を言うつもりだい…ッ…」
クロノス「私は…つまらないことにこだわっていたのかもしれない…!
大切なものを失った悲しみ…それを運命だと決めつけ…自分を殺し続けてきた…ッ…!
だがそれも…!一人の少年が真理を教えてくれた今…ッ!…すべてを改めよう…!
千本崎ユリッ‼︎この惑星の未来はッ‼︎君の正義を選んだッ‼︎」
ムスカーリ「…こんな…ッ…こんなことが起きうるのか…⁉︎」
ユリ「…う…。ここは…。……そうか、クロノス…ありがとう。
ゴッド・ジャズ・タイムは、無事あなたの手に渡ったようですね…」
ムスカーリ「…なぜ…なぜお前が生きている…ッ!」
スミレ「…ッ…ユリ…くん…ッ!」
ユリ「…スミレさん。…千本崎ユリ、ただいま帰還しました…ッ!」
スミレ「…全部…。…全部…思い出した…!…大好きだよ…ユリくん…ッ…」
ユリに駆け寄るスミレ。
ユリ「あっ…スミレさん…ッ!…んんっ…」
口づけを交わす二人。
スミレ「………。」
ユリ「………。」
ツバキ「はっはっは!千本崎ィィ!貴様見事に生き返りやがったかッ‼︎」
サクラ「なんなのなんなのォこれぇ!全部ぜぇぇぇんぶ思い出したしぃッ‼︎」
ユリ「…はいッ!」
スミレ「…ユリくん…もう一回だけ…」
ユリ「えっ…⁈あっ…あ、えっと……。…はい……。。…ッ」
ツバキ「まったく貴様ら…ッ。けしからんな!」
サクラ「…スミレ…おめでとう。本当に…本当に…ッ!」
ツバキ「…ああ。俺からも祝福するぞ、スミレ…」
ムスカーリ「クロノス…ッ…これで私に勝ったつもりかい…!」
クロノス「…私は…今でも君たちを愛しているよ…」
ムスカーリ「…!…今更何を言い出すんだい…ッ…幻想に浸ってるんじゃあないよ…ッ!」
クロノス「…幻想ではない…。ニゲラ…母さんならそこにいる」
ムスカーリ「…その名前…は…ッ…!」
ニゲラ「…母さん…。あれ…僕、なんか不思議な気分だよ…」
ムスカーリ「そんな。。。ばかな。。。」
ニゲラ「母さんと久しぶりに会った気がするんだ…。おかしいよね…ッ…母さん…!」
ムスカーリ「…ニゲラ…ッ…?私は…夢を見ているの…ッ?」
ニゲラ 「…泣かないで母さん」
ムスカーリ「お母さんも…嬉しいのに…
なんでこんなに涙が止まらないんだろう…ッ」
ニゲラ 「僕や父さんがついてるよ…。だから…もう大丈夫だよ、母さん」
ムスカーリ「ニゲラ...っ」
クロノス「…ムスカーリ。もう一度三人で…新しい未来を生きないか…!」
ムスカーリ「…あなた…ッ…。ええ…もちろんですとも…ッ…。…私は…
…私はずっとこの日を…待ち続けていましたから…!」
クロノス「ムスカーリ…すまなかった…!」
ムスカーリ「もういいのよあなた…。ニゲラ…ありがとう。あなたは…母さんと父さんの…宝物よ…。
本当に…本当に生まれてきてくれて…ッ…ありがとう…!」
ニゲラ 「母さんッ…そんなに強くぎゅうしたら痛いよお…っ」
ムスカーリ「ごめんね…ごめんね…ッ…!…でももう少しだけ…こうさせていて…!」
ニゲラ「母さんは甘えん坊さんだから…。これからも僕が守ってあげるからね」
ムスカーリ「うん…うん…ニゲラ…ありがとね…」
クロノス「…千本崎ユリ。君には改めて礼を言わなくてはならない…。本当に…ありがとう」
ユリ 「いえ…僕は僕の正義に従っただけです。それに…お礼ならスミレさんに言ってください(笑)
未来は一つじゃないって、僕に教えてくれたのは彼女ですから」
クロノス「そうだな…」
スミレ 「…あ…はじめまして、スミレ・メアリードと申します…!」
クロノス「…スミレ。私は君の歴代のお母さん、すべてを知っている。
全員が大きな宿命を背負って命を紡いでいった…」
スミレ 「あたしの…お母さんたち…ですか…!」
ユリ 「くすっ…スミレさんのお母さんたちって…なんだか凄い方ばかりのようですね」
クロノス「今回の件といい、メアリードの血脈には、やはり何か大きな宿命を感じずにはおれん…」
スミレ 「メアリードの…血脈…」
クロノス「そうだ。この先の未来でまた、世界がピンチに直面した時には…。次は、スミレとユリの娘が、またもや世界を救うかもしれぬな」
スミレ「え…。あたしと…ユ、ユリくんの娘…///」
ユリ「ク、クロノス…ッ!ぼぼぼ僕らはまだそうゆう関係になるって決まったわけでは…ッ…」
スミレ「…決まって…ないんだ…?」
ユリ「ス、スミレさん…ッ…」
ペンタス「ふん、千本崎ユリ…貴様それでも男か。情けないやつだ」
ユリ「なっ…ペンタス。君には関係…」
ペンタス「そうでもないさ。僕はこれからクレオメにプロポーズする。
まぁ、貴様には到底真似出来ないだろうが、ぜひ参考にすることを勧める」
ユリ「プ…プロポーズ…ッ⁉︎」
クレオメ「ちょ…ペンタスってば…やだ、この場面で…するの…?」
ペンタス「…クレオメ、聞いておくれ。…僕には、君しか見えない。…君しかあり得ないんだ。
君を…絶対幸せにする。君を絶対に守るから………どうか、僕の妻になってくれないか…?」
ツバキ「ち…ペンタスのやつ…バッチリ決めやがったな…」
サクラ「うん…パーフェクト」
クレオメ「…あたしなんかで…いいの…?」
ペンタス「…君じゃなきゃいやだ」
クレオメ「…あたしも…ペンタスじゃなきゃいや…。愛してるの…。ずっとそばにいさせて…!」
ペンタス「…うん、ありがとう…」
クロノス「これはこれは…素晴らしい場面に立ち会えたものだ…。心から君たちを祝福しよう…!」
ペンタス「クロノス…。一つだけ頼みがある」
クロノス「ふむ、何だね?」
ペンタス「僕はこれから罪を問われることになるが…、
クレオメについては情状酌量してもらえないだろうか…。彼女を巻き込んだのは僕だから…頼む」
クレオメ「そんなのお断りよ、ペンタス」
ペンタス「どうして…?」
クレオメ「ペンタスの罪に罰があるなら…あたしも一緒に背負いたいから…」
ペンタス「…クレオメ」
クロノス「…私は千里眼でね。ペンタス、君がこの件において最終的にどう行動したのか、
把握しているのだ」
ペンタス「…僕のことを…?」
クロノス「ふむ。例えば、千本崎ユリ達とのゲーム。これも、過程を辿れば、
公正な試合であったと言える」
ペンタス「ふ、ふん…あんなのはただの遊びさ…ッ」
クロノス「ふ…君が彼らにかけた翼の暗示。
あれも途中で解除していれば、千本崎ユリ達は早い段階で墜落死していただろう。
だが君は、最後までフェア精神を貫いた」
ペンタス「…ただの気まぐれだ」
クロノス「そうか…。不思議な男だ、君は」
ペンタス「…そ、そんなことよりッ!さっさと処遇を下してくれないか…!」
クロノス「ふむ…。このクロノス、仮にも時空を統治する立場にありながら、
これまで自身に於いてもタブーとしてきた過去への干渉をしたのだ。
よって、私に君を裁く資格は無い、ということになる」
ペンタス「ああ、そうみたいだな。だが…どういう風の吹き回しだい?」
クロノス「…大切なことに、ようやく気がついた。…それだけだ。
そしてこの改正について、これから私は世界に問いかけてみようと思う」
ペンタス「…始めは誰もが戸惑うだろうけど、、悲しみの無い世界を築くための改正案だ。
すぐに理解と支持は得られるんじゃないかな」
クロノス「うむ。私はこれまで通り、時空における不正の取り締まり、
管理に従事するつもりではある。多角的に判断し、
社会悪及びその他の生物の存在を脅かすような者や事象に関しては、
過去への干渉を規制するつもりだ」
ペンタス「…とりあえず、僕らの裁きは不問、てことでいいのか」
クロノス「うむ。それに…君には、大いなる夢があるだろう。
アースの復元は、私も意欲的に調査を進めていた案件だ。出来ることについては協力しよう」
ペンタス「…驚いたな!アースはこの先の未来でも…復元の可能性があるのか…ッ!」
クロノス「もちろん。既にペンタスの知らない所では、密かにその研究が行われていたのだ…ッ」
ペンタス「そうだったのか…!分かった、その時は…また世話になるよ…!
クロノス「大歓迎だ」
ペンタス「ありがとう…じゃあ僕らは行く。ミッチャムの暗示も解除しておいた。
これから奴は、普通の人間として生活していくはずだ」
クロノス「手際の良い処置に感謝する」
ペンタス「クレオメ。連中に挨拶はもう済んだかい?」
クレオメ「あ…ちょっと待ってて」
サクラ「ねぇツバキ…クレオメ来た…」
ツバキ「ん?」
クレオメ「ねえちょっとあんたたち。…なんかさ、いろいろあったけど…」
ツバキ「ふん、まぁな…。ところで俺とサクラに何の用だ」
クレオメ「お礼くらい言わせなさいよ。ペンタスとあたしを助けてくれて…ありがとう」
サクラ「あ…そんな、別にお礼なんて…。あたし達、当然のことしただけだから」
ツバキ「うむ。さっきまでの敵は、今の友、ということわざに従ったまでだ」
サクラ「な、なんか微妙に違う気がするけど(笑)まぁそゆこと!」
クレオメ「…うん。じゃあ、そろそろあたし達行くね」
ロベリア「伊達ツバキ…先ほどの落雷のような一撃のおかげで、
なんだか嘘みたいに清々しい気分ですが…次は、負けませんよ?」
ツバキ「ふん…いい面構えになったな、ロベリア。何度でも相手になってやる」
ロベリア「ふふ…ええ。ぜひまたいつかお手合わせ願いますよ。…ではこれにて」
ツバキ「うむ、達者でな」
ネリネ「おねえちゃん。今度ネリネに弓のお稽古つけてほしーな」
サクラ「あ…あはは…うん、そうだねー!って言っても!おねえちゃんもまだまだ修行中だから…!」
ネリネ「ふーん。…でもさっきの一矢、すっごかったよ。ネリネ驚いちゃった!
尊敬の眼差しキラキラキラーって感じ。じゃあまたね」
サクラ「うん…ネリネちゃん、またね」
突如現れるシンクロサイクロトロン・スピリチュアライザーの着陸音
ボタン「千本崎くんッ!」
ユリ「?ああっ!栗原管制官!」
ボタン「無事だったのね…!良かった…!」
ドロシ「スミレッ…!」
スミレ「?…ママ!それにルンカ叔母さま…!」
シェイン「良かった…スミレは無事みたいだ…!」
スミレ「パパも…!どうして…?」
ドロシ「どうもこうもないわよ…!娘のピンチに駆けつけない訳ないでしょ!」
スミレ「ごめんねママ…。でもこうやってハグしてると…ママの匂いがして…なんか…泣けてきちゃう…」
ドロシ「そうね…よしよし」
スミレ「…えへへ、もう大丈夫だよ、ありがとう…。
それにしても、まさかパパとママが駆けつけてくれるなんて…びっくりしちゃった…!」
ルンカ「こらこらスミレ?ルンカお姉さんもお忘れなくぅ!」
スミレ「あっ、もちろん!ルンカ叔母さんにもすごく感謝してます…!」
ルンカ「叔母さん言うなっての(笑)」
スミレ「ごめんなさ〜い!汗 あ…でもパパ、今日は世界会議の日じゃなかったの…?」
シェイン「スミレが事件に巻き込まれた、って知らせを受けてね。
後のことはジャガーさんにお願いして、全速力でママ達と合流したんだ」
ルンカ「そーそー。あんたのママったら無茶言うんだから」
ドロシ「仕方ないわよう!だってスミレだよ⁈スミレのピンチだよ?!」
ルンカ「そりゃそーだけど!いきなり
10分以内にジパングまで来いとか…ねえ?」
スミレ「ひえ〜!ご迷惑をおかけしてすみませ〜ん!」
ルンカ「ふふ。まあでも?可愛いスミレのピンチだし?
速攻駆けつけるしかなかったって訳よん」
スミレ「ありがとうございました〜涙」
ドロシ「あっそれはそうと…状況から見るに、事態は無事収束したのかしら…?」
スミレ「うん…。彼のおかげであたし、無事でいられたの…。
あ、紹介するね、こちら千本崎ユリくん」
ユリ「え…あ、う…。ハッ!た、ただいまスミレさんよりご紹介に預かりました、
千本崎ユリ!と申しますッ…!」
ドロシ「う〜ん…はじめまして…かしら…?」
シェイン「…確かに、妙な感じだ…。僕らは彼に…既にどこかで出会っていやしないか…?」
ユリ「…そうか…!既に未来は…!」
ドロシ「うん…不思議ね。私たち、あなたの名前に覚えがある…!」
スミレ「そうなの…?」
ドロシ「ええ。確か…今から20年前、そう、この時空で…!千本崎ユリという少年と一緒に戦ったわ…!」
シェイン「うん。てことは…あそこの二人、ツバキくんとサクラさん、だね?」
スミレ「そうだよ!え〜!びっくりだこれは〜…!」
スミレらに歩み寄ってくるツバキとサクラ。
ツバキ「あのう…失礼ですが、あなたは…」
サクラ「ん?!ああっ…ツバキ!シェインくんだよ!あとドロシちゃんとルンカちゃん!」
ドロシ「ふふふ!スミレのお友達にちゃん付けで呼んでもらえるなんて…なんだか新鮮!
サクラさん、ツバキくん、いつも娘がお世話になっております」
ツバキ「い、いえ!おい!サクラ!現在時空のお二方はお偉いさんだぞッ…!
失礼のないようにしろッ…!」
サクラ「あ…そだね(汗)」
シェイン「ふふ、気にしないで。僕ら、戦友じゃないか!」
ツバキ「こ、光栄です…!」
ユリ「クス、伊達さん!なんだか借りてきた猫みたいになってますよ!」
ツバキ「う、うるさいぞ千本崎ッ…!」
スミレ「あはは!確かに〜!」
ドロシ「さて、皆さんの無事も確認出来たみたいだし、ママ達は一足先に現在に戻るわ。
シェインは世界会議に戻って」
シェイン「そうだね」
ドロシ「私もいろいろと片づけがあるから」
スミレ「え…もう行っちゃうの…?」
ドロシ「もう、大袈裟ね。いい?スミレ。よく聴いて」
スミレ「…うん」
ドロシ「ママもパパも、あなたのピンチにはす〜ぐ駆けつけるから…。
だからほーら!そんなに寂しがらないの!」
スミレ「…うん、分かった」
シェイン「じゃあ、パパ達は行くよ。
またスミレが帰国した時には、三人で何処かに遊びに行こう」
スミレ「うん!」
ドロシ「栗原さん、お願いします」
ボタン「承知いたしました。この度は大変ご迷惑をおかけし、更にご足労までいただき…
誠に申し訳ありませんでした…」
サクラ「…あ、そーだ。ツバキ、あたし達もちょっと散歩しに行こ?」
ツバキ「散歩?サクラ、俺は今、かなり疲労困憊なんだが…」
ユリ「?」
サクラ「もう…ツバキったら野暮ねぇ!いーから早くぅ!スミレ!ユリくん!
じゃ後は二人でごゆっくり〜」
スミレ「…みんな行っちゃった…ね」
ユリ「はい…。クロノス達も、一家団欒そうで…微笑ましい限りです」
スミレ「本当だね…」
ユリ「…」
スミレ「…」
ユリ/スミレ「…あの!」
ユリ「あ…スミレさんからどうぞ…ッ」
スミレ「うん…。そういえばさ、あたしとユリくん、まだ出会ってから一日も経ってないんだよね…」
ユリ「…ふふ。僕はスミレさんに出会ってから随分経ってますよ!」
スミレ「あ、そっか」
ユリ「ええ」
スミレ「…ねえユリくん。あたし、さっき目の前でユリくんを失った時ね…」
ユリ「はい…」
スミレ「少し…ううん、たくさんたくさん。ユリくんがおばあちゃんのあたしを失った時の気持ちが分かったの…」
ユリ「…あれは、最大の賭けでした…(笑)」
スミレ「も〜!笑いごとじゃないよ〜」
ユリ「…そうですね。でも…あなたを。…スミレさんを目の前で失うのは…二度と嫌だったから…」
スミレ「だからって…。…ユリくんのばか…」
ユリ「…すみません…」
スミレ「…でも…」
ユリ「…はい」
スミレ「…あたしを…」
ユリ「…スミレさん…」
スミレ「…あたしを見つけてくれて…ありがとう」
(スミレ)
月日が流れ、無事あたしは繚蘭高校を卒業、故郷であるオケムジークへと帰国していた。
そして只今あたしは、人生で一番と言っても過言ではない緊張の真っ只中にいる。
隣りの彼はといえば…。
ユリ「…スミレちゃん…。落ち着いて…!ぼ…僕がついてるから…!」
スミレ「ふふ…ッ。ユリくんこそ落ち着いて?ん〜…仕方ないなぁ…。。。」
ユリ「……はぁ♥︎いや!スミレちゃん!確かにちょっと落ち着きそうになったけど!
やっぱり俄然ドキドキするからダメだって!」
スミレ「でも…今のをみんなの前でするんだよ?大丈夫かなぁ…」
ユリ「だ…大丈夫…たたた多分…ッ」
場面代わり、式場来賓席
ミュー「それにしても…思い出すわね、この教会。あなたたちの結婚式も、最高に素敵だった」
シェイン「ええ…まさか親子揃って同じ会場で挙式することになるとは…思いもよりませんでした」
ドロシ「本当よね…しかもスミレ、自分から私のウェディングドレスを着たい、って言ってくれたのよ?」
ミュー「まあ…!その申し出、娘を持つ母親として、この上なく嬉しいことね」
ドロシ「はい…!」
〔その時、館内スピーカーから微小なハウリング〕
司会/栗原ボタン「皆様、お待たせいたしました。間も無く新郎新婦が入場いたします。ご起立くださいませ」
会場を埋め尽くす群衆が一斉に起立する。
ツバキ「う〜む!一国の王女の結婚式となると…さすがに絢爛豪華だな…!」
サクラ「うん…この教会、確か惑星遺産でしょ…。なんか有名な建築家が設計したってゆう…」
ペンタス「おい、ツバキ。もう千本崎ユリとスミレの間には、血の契約が成立しているのか?」
ツバキ「血の契約…だと…?」
クレオメ「あっはっは!ペンタス〜!魔人が結婚するのにそんな儀式しないわよォ!」
ペンタス「そうなのか?僕とクレオメは慣習に従い、
互いにつけた傷口をすり合わせてより強い結びつきを図る血の契約をしたがなぁ…」
サクラ「へー。ナイトメアの結婚にはそんなイベントがあるのか〜。ツバキ、ウチらの時もやってみる?」
ツバキ「ほ、本気かサクラ…ッ!滝汗…む…おいッ!教会の扉が開いてくぞ…!」
ムスカーリ「まぁ…スミレさん、なんて華やかなんでしょう…!」
クロノス「ふむ…。さすがに王女の風格を漂わせているね…。澄み切った眼差し、美しい…」
ニゲラ「スミレお姉ちゃーん!おめでと〜!」
ボタン「千本崎くんっ!スミレさん!おめでとうございます〜!」
スミレ「…ユリくん、行こう」
ユリ「はい…ッ!」
参列者のざわめき
ロベリア「はて…新郎新婦が立ち止まりましたね…」
ネリネ「ワクワク…ワクワクっ!」
ユリ「…み、みなッ…」
ツバキ「千本崎〜!落ち着け〜!」
スミレ「ふふ!」
ユリ「ふぅ…。よし…ッ!……皆様ッ!本日はわたくし、千本崎ユリと!
スミレ・メアリードの結婚式にご出席いただき!心より御礼申し上げますッ!」
ペンタス「ふん…なかなか気合いの入ったいい挨拶だ」
クレオメ「うんうん!」
スミレ「…次はあたし…。つきましては!ご列席いただきました皆様とともに…ッ!……」
ユリ「…スミレちゃん…まさかセリフ…ッ」
スミレ「ご一緒に…ッ!…結婚式!心ゆくまでお祝い!祝福ッ!よろしくお願いしま〜すッ!」
サクラ「はは…なんかスミレらしいけど汗…なんとか乗り切ったァァァッ!」
ツバキ「うむっ!とにかく祝福だ貴様らァァァッ!ハンドアーチを急げ〜!」
ネリネ「ワクワク!ワクワク!」
ムスカーリ「スミレさん、花道をプレゼントさせてちょうだいな」
スミレ「わぁ…ムスカーリさん…!ありがとう…これって…百合と菫のフラワーロード…!」
ユリ「本当だ…!これはなんてゆうか…ハッピーウェディングアクションッ!ありがとうございますッ!」
スミレ「ねえユリくん、見て!」
ユリ「降り注ぐはずの無数の花びら達が…まるで粉雪みたいに…!これは…ッ!エフェクトハイパースロー!」
クロノス「ユリ、これは私からの餞(はなむけ)だ。おめでとうっ!」
ユリ「クロノスさん…ありがとう…ございます…ッ!」
サクラ「スミレ…」
スミレ「サクラ…」
サクラ「…ごめん…えぐっ…言葉にならないよぉ…っ…えぐっ…」
スミレ「もうやだぁ…サクラ…泣かせないでよ…えぐっ…!」
ツバキ「ハッハッハ!溢れる涙は嬉しきかな…!頬なでる涙の!
なんと暖かきかなあああああ!っと来たもんだ〜ッ!千本崎ィ!スミレッ!幸せになれッ!」
ユリ「だっ、伊達さん…ッ…!まさか伊達さんが…ッ…ポエムをくれるなんて…ッ!ズルいですよ…えぐっ…」
スミレ「ツバキくんッ…!サクラッ…!次は二人の番だかんね⁉︎その時は〜ッ!
絶対泣かせてやるんだから〜ッ!…ふぇぇぇん!」
ペンタス「ふふっ!二人揃って顔ぐしゃぐしゃだぞっ!」
クレオメ「あっはっは!誓いのキスはこれからよん!」
ユリ「そうだ…った…ッ!くぅぅぅ…!」
司会/栗原ボタン「では皆様、ご着席ください。これより、新婦の祖母にあたるトナ様による祝福の儀を行います」
トナ「では…。新郎ユリ、新婦スミレ。あなた方は、健やかなる時も、病める時も、
互いを労わり、尊敬し、生涯に渡り支えあっていくことを、誓いますか…?」
ユリ/スミレ「はい、誓います…」
トナ「宜しい。では、皆の見守る前にて、誓いの口づけを…。…ユリくん…ファイト…!」
ユリ「ゴク…ッ…。スミレちゃん…!」
スミレ「…はい…。」
ユリ「…絶対に。絶対に君を幸せにするよ……」
スミレ「…うん」
サクラ「はぁ。。なんてロマンティックなの…」
ツバキ「うむっ…千本崎…ッ!貴様の男らしさ…確かに見せてもらった…!」
参列者一同から鳴り止まぬ拍手と歓声
ユリ「皆さんっ!ありがとうございます…ッ!スミレちゃん!お姫様抱っこ失礼しますっ!」
スミレ「ハイッ!これにて!クロノ・サーカスはめでたくフィナーレを迎えました〜!
最後までご試聴いただき、応援してくださった皆様にも、クロノメンバー全員を代表し、
心よりの感謝と御礼を申し上げますっ!ありがとうございました〜!めでたしめでたしっ♪」
FIN
「クロノ・サーカス 」(ボイスドラマ用シナリオ版)全13話/完結