理想論
おまえはおれの詩のノートを見て
「おまえらしいよな」って言って笑った
おまえにおけるおれのおれらしさって
いったいなんだったのかと今に成って知りたくなってくる
自分の部屋の明かりをブラックライトにして
モンゴルで手に入れた民族衣装を着て
中国で大量に買ってきた一個二十円のタバコを吸う
大草原でオオカミの遠吠えを聞きながら野宿した時
地球と自分は一つの生命体だと確信したという
お前は迷いのない憂いを持つ男
女をなぐり容赦なく人を見下し差別を繰り返す
お前は迷いのない憂いを持つ男
度の入ったサングラスをかけて タバコをくゆらせながら
おれとお前は気が合う、っていった
おれとお前は気が合う、っていった
おれは一度もそう思ったことはなかったけども。
お前の書いた短編小説がどこかの出版社の文学賞に入選した
友達が友達でなくなり、友達だった男をリンチする
そしてハッピーニューイヤーが訪れる
ぼくは小説をよみながら、これがお前らしさって何かを考えていた
ある年の正月 お前からメールが来た
それにはお前が書いたエロ小説が添付してあった
そこでは明らかにお前と思われる主人公が、風呂場で女をよがらしていた
それが、ぼくが読んだお前の最後の小説だった
お前は迷いのない憂いを持つ男
女をなぐり容赦なく人を見下し差別を繰り返す
お前は迷いのない憂いを持つ男
度の入ったサングラスをかけて タバコをくゆらせながら
おれとお前は気が合う、っていった。
おれとお前は気が合う、っていった。
おれは一度もそう思ったことはなかったけども。
おまえは僕のノートを見て
おまえらしいよなって言って笑った
そしておれのノートの隅に
理想論、って 書きなぐった
理想論、って 書きなぐった
おれは一度もそう思ったことはなかったけども。
理想論