神様のレシピ

親友の手紙が獄中から届いた

親友の手紙が獄中から届いた。料理の修行のために海外へ留学していると聞いていたが、一体何があったのだろうか。
彼の作る料理の味を思い出す。あれは不思議な経験だった。その料理は美味かったかと問われれば、美味かったと言えるだろう。ただ、それよりもしっくりくるのは巧かったという言葉だ。彼は料理が巧かった。
それまでに食べたことのあるものならば、その味から何まで、全てを忠実に再現することができたのだ。その不思議な手腕のおかげで、僕は彼の味わった美食の記憶をいくつも平らげさせてもらった。
手紙を読み進める。どうやら、彼は殺人の罪を犯してしまったらしい。なんということだ。親友として僕は嘆いた。
救いとしては、いま、彼はその料理の腕前のおかげで獄中にあっても破格の扱いを受けているらしい。料理を作ることを認められ、なんとその料理は看守たちにも振舞われているのだという。誰ひとり彼が毒を盛るとは考えていないそうだ。
僕は以前、彼にどうしてどんな料理でも再現して作ることができるのか聞いてみたことがある。彼が言うには、一口料理を食べるとすぐさま材料から調理法まで全てのことがわかってしまうとのことだった。理屈などない。これはもはや超能力の一種なのだろう。
ところでこの手紙の最後にはある料理を作るために必要な材料のリストが書かれていた。秘密裏にこれらの材料を届けてほしいのだという。リストに書かれた材料たちを眺めながら僕は彼が獄中にいる理由についてぼんやりと考えていた。

どうやら彼は、人間を食い殺してしまったらしい。


++超能力者++
獄中の彼
ESP:一度味わったものを忠実に作りなおす

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1分で読めます。「話の中に必ず超能力者がひとりは出てくる」というしばりで掌編の連作を執筆中。 超能力者の名前と能力が必ず最後に記載されてますので、答え合わせ感覚で読んでいただければ幸いです。

  • 小説
  • 掌編
  • サスペンス
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-05

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