権威15階の住人達

初めての作品です。
よろしくお願いします。

「お昼のニュースです。来週水曜日の早朝、『テスター』が5体15階区へ動作確認のため送られることが決定しました。又、これによりまもなくロシア攻略のための戦力補充が完了となります。今回も我が国の勝利を祈りましょう。お昼のニュースでした。」

「はぁ……」

 淡々とレポートのようなニュースを聞きながらため息をつく黒澤司。年齢26歳。ため息の理由はニュースで話されていた『テスター』にあった。
『テスター』とは、戦闘に特化した生物兵器のことだ。ロボットのように資材は使わず突然変異で生まれた細胞を研究、実験を繰り返し、生物に与える量によって力など身体能力が驚くほど飛躍する、通称「カミハテ」と呼ばれている薬が開発された。

そしてその薬を人間に使うのではなく、カマキリやクモ、スズメバチといった昆虫に使う。するとその薬を与えられた昆虫たちはあっという間に巨大化、そして人をも簡単に殺してしまう様な生物兵器が完成する。作られたばかりの生物兵器は総称として『テスター』呼ばれるのだ。

今回黒澤にあてられた任務は、その『テスター』を15階区への配送、それの護衛だ。別に失敗するとは考えてはいないがそれの他に不安、というより行きたくない理由が一つあった。

「15階区か……どんな所なんだろうな。」

 今まで護衛任務で15階区に行って帰ってきた人たちは全員顔が死んだかのようだった。理由を聞いてもあまり要領を得ておらず、終始何を言っているのか分からず仕舞いだったのだ。おそらく疲労も少なからずあるとは思うがそれよりも15階区の現状、そこに住む者たちの有り様をみてそうなったのだと思っている。

そんな顔を見て行ってみたいなどと誰が思うだろうか。しかし、上からの命令、逆らえば自分も階区を下げられかねない。

しかし、いつまでもこんな弱気では自分もその死んだ顔になりかねない。まぁ、目は昔から死んでいるといわれているが。
 
権威15階の階級……10年前に政府が出した法令だ。聖徳太子の冠位十二階の改造版の様なものだ。その法令は1階区から15階区までの身分区別。1階区には政治家や皇族などがいる。それより下は大富豪がいる2階区、3階区から10階区までは大きな違いと言えば貧富の差ぐらいで住みやすさは実際そこまで差はない。黒澤は6階区だが特に不自由なく生きている。

問題は11階区から15階区だ。

11階区から少しずつ着るものがボロボロになっていったり、治安が悪くなって行ったりする。3階区から10階区までの様に11階区から14階区まではまだ生きていける。

しかし最下級の15階区はそうはいかない。テスターの実験のための場所に使われるわ、ほぼ時給自足の毎日で生きていかなければならない。

吸いかけのタバコの火を消し、もう一度ため息をつくと護衛任務の書類に目を通し、色々と確認しておくことにした。

15階区が本当はどんなところかも知らずに。

自分にこれから起こる出来事も知らずに。

権威15階の住人達

権威15階の住人達

新しい憲法、権威15階の法令を出され階級化された国民。黒澤司は護衛任務のため最下級の15階区へ行くこととなる。 そこで見た15階区の姿とは。

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-04

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