命は軽い

命はまるで風船のようで
気を抜けば風に煽られて
手の届きようもないどこかへ
地上の人々を置いて飛んで行ってしまう
ちょうどそのように きっと誰かは死んだのだ

命はまるで石ころのようで
気が付けば歩道に放り投げられて
通りすがりの見知らぬ誰かに
何の気無しに蹴り飛ばされてしまう
ちょうどそのように きっと誰かは死んだのだ

重量はありふれた硬貨の半分すら満たさず
単価は人を脅かす兵器よりも安く
水たまりを微かに揺らす一滴にも如かず
たかが数グラムの粉末に脆く壊される

轢かれて死んだ犬の死体が
翌日 跡形も無く消えていた

命は軽い

命は軽い

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-09-03

CC BY-ND
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