Yes!But・・・

蒸し暑い夜は、寝苦しくて妙な夢をたくさん見る。

私はなぜか、大学の試験を受けるためにアメリカへ来ていた。
しかも自分では一生縁がないと思っている、理系の学部。

が、日常会話もままならないほどの語学力しかないので、当然のことながら試験もさっぱりだった。
そのあたりの設定は、夢でも現実的なのだ。


試験が終わって、受験生が教室で思い思いに休憩している時、女の先生がぼんやりしている私のところへやってきた。

「あなたはきっと受からないわね」
きっぱりと、先生は言った。

それは自分でも当然分かっていることなので、私は妙にさっぱりとした気持ちで答えた。
「YES!」

でもその後に、急に切実な気持ちが湧いてきた。


「それはよく分かっています」
と私は言った。
「でも、だめかもしれないと思って何もしないよりは、だめでもとにかく一度挑戦してみたかった。
はっきり結果が出ないと、納得できないような気がして」


そんなようなことを、前の席の男子学生に単語を確かめたりしながら、片言の英語で言った。
先生は特に何もおっしゃらなかったけれど、「ふんふん、なるほど」というような顔をして2,3回うなずいたので、
ちゃんと伝わったと分かった。


その後も夢は、妙な風に展開しながらだらだらと続き、最後はもう試験も何も関係ない状況で終わった。
一つの夢の中にいろんな人が出てきていろんなことをしたけれど、目が覚めて真っ先に思い出したのは、その試験後の場面だった。


布団の中でもぞもぞしながら、よく言ったなぁと我ながら感心してみる。

実際の私が先生にそんなことをずけずけと言われたら、
顔を真っ赤にして下を向いて、何も言えずに終わったかもしれない。
でも、夢の中の私は妙に堂々として、周りは英語がぺらぺらの人ばかりなのに、
恥ずかしげもなく下手な英語を大きな声でしゃべり、自分の考えを主張した。


よくやったなぁ、と思う。
夢の中であっても、私は十分に満足である。


が、いくらだめもとであっても、もう少し勉強してから受ければよかったのに、という気持ちもなくもないのであったが。

Yes!But・・・

Yes!But・・・

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-30

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