本日は晴天なり

右は崖、左は校庭、正面は体育館。
ここは学校の屋上。
実は生徒立ち入り禁止。
しかしかまわない。私は先生。

私は大の字になって、仰向けに寝た。
空で太陽は燃えている。
まぶたを閉じる。ゆっくり深呼吸をする。

どうも今日は仕事に身が入らない。
午前の授業も何を話したか覚えていない。
生徒に心配された。先生失格だ。
こういう日もある。人間だから。

飼い猫が亡くなった。

私が中学生のとき、母が子猫をもらってきた。
それからずっと一緒に住んでいた。

毎日、一緒にご飯を食べた。
たくさん撫でた。
何回も抱きしめた。
暖かかった。

最後は冷たくなった。
それでも抱きしめた。

それから何も考えていない。

屋上は風がきもちいい。
大の字のまま、屋上で私はしばらく寝ていた。
すると猫の鳴き声が聞こえた、気がした。
私はまぶたを開ける。私は顔を空に向けたまま、まわりの気配を探る。
どこかにいるのか。この屋上にいるのか。
しかし体育館から生徒の声が聞こえるだけだった。
私は再び、まぶたを閉じる。

ちくしょう。ああ、ちくしょう。
見えてしまった。聞こえてしまった。わかってしまった。

私は屋上で寝ている。
そこには風が吹いている。
あんなにも太陽は燃えている。

今、雨はふっていない。
雨はふっていないのに。

本日は晴天なり

本日は晴天なり

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2014-08-28

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