Untitled #1
この町の風景
ここは草原市。
人口は3万人程度の田舎町だ。
これは、ここで暮らす人々の物語。
#1
「ょおおおおおおおお!」
昼のご飯時に誰かが奇声を放つ。
ここは草原市にある3つの中学校の中の1校、草原第2中学校だ。
1年90人ちょうど、2年68人、3年108人と人数もバラバラ、1ヶ月に1回の間隔で行われる学年を超えての絆を深めるということで作られた『仲間運動』、というヘンテコな名前の学年交流会でも違う学年同士での喧嘩が、毎回勃発している。それ程までにバラバラなのだ。
さて、先程の奇声が聞こえてきたのは3年の教室からだ。
――3年3組。
そこには昼休み前だからといって給食中に机の上に乗っている生徒がいた。
「うおおおおおお!! やっと3年だあああああいやっふー!!」
と叫んでいる。
周りの生徒は笑っていたり、迷惑そうに見ているだけだ。先生にいう生徒はいない。
「ったく、なんでこんな時に限って先生がいねーんだよ、柿山が暴走してるじゃねーか……」
柿山という名前は奇声をあげる生徒の名前だろう。その柿山という生徒の近くの席の全ボタンを堂々と開けた生徒がそれを言った。
「っつーか、俺ら1ヶ月前から3年じゃねーか!!」
その生徒が今更かよ! と柿山に抗議の目を向ける。
すると柿山という少年は、
「知ってるよ手越君! でも暴れたいんだああああ!!」
と言った。
「もうだれにもとめられねぇよ、アイツは……」
そう言って手越という全ボタン開の少年は黙々と給食を食べ始めた。キュウリの漬物を。
「キュウリ美味しいよねえええええええ!!」
「君……ちょっとうるさいよ」
誰かがやっと柿山に注意した。声からすると女だ。
「おおおうう!! 生徒会長さんじゃないっすかー!」
生徒会長を前にしても全く動じず、更には机の上でフラダンスを踊り始めたではないか。
「じゃないっすかー、じゃないよ!」
生徒会長は優しく、それでいて力がこもっている注意の仕方で言った。周りからは「うおさっすがせいとかいちょー!」というようなことを言っていた。
すると、
ガラガラガラ
教室のドアが開いた。
「…………」
皆が一斉に見ると、それはこの教室の担任、平川西広先生だった。
「センセー、柿山君が暴れてます」
誰かがそう言った。先生は怒鳴ることもなく、ただ柿山の席へ近づいていく。
「センセーおひさああああ!!」
「…………」
先生は何も言わない。
この教室にいる生徒全員がこの『超絶対決! 先生VS柿山、戦慄の教室 in 3−3』に釘付けだ。
「せんせー?」
「おい、柿山……」
「はい?」
次の瞬間、教室中がカチコチになることになる。
「キュウリの漬物美味しいよねえええええええ!!」
「……」
「…………」
「………………」
教室中の生徒が口をあの字に開け、この対決をただ、呆然と見ていた。いや、もう見ていないのかもしれない。
これがこの学校――この草原市という町の風景。少年少女おっさんおばっさんおじいちゃまおばあちゃまが見る、小さな幸せの風景。
「先生……」
柿山が今までの超ハイテンションとは全然違う口調で、言った。
「それなああ!」
Untitled #1
どもども、defaultです!
今回から不定期で連載小説を書いていこうと思います。
ギャグ小説になりそうです(笑)
まあどうか、適当に見てってくだされ!
できるだけ面白くします!