みあちゃんの石ころ 3

石田 はじめ

みあちゃんの石ころ 3

みあちゃんの家の隣には、年をとったおじいさんとおばあさんが二人で住んでいました。

白い石ころ

白い石ころ

 いつものように下を向いて、石ころをけ飛ばしながら、歩いていると、みあちゃんのけった石ころが、まあるい白いものにぶつかってボヨン!と、跳ね返りました。
「あいたっ! あら、みあちゃん」
「あっ! おばあちゃん、ごめん、ぶつかっちゃった…」
 ぶつかったのは、みあちゃん家の隣に住んでいるおばあちゃんのエプロンでした。
 おばあちゃんはうずくまって地面を見つめていたのです。 
 そのお尻にみあちゃんの石ころがボヨン!っとぶつかりました。
「何かさがしてるの?」
「そうなの…おじいちゃんが…」
「おばあちゃん、おじいちゃんは石ころの中にはいないと思うよ」
「…」おばあちゃんは目を丸くしてみあちゃんを見ました。
 そして、「ははは!」と笑いました。
 みあちゃんも「ははは!」と笑いました。
「おじいちゃんがね、私の大切な真珠のネックレスを壊しちゃって、けんかしちゃって、そしたら、おじいちゃん、外へ飛び出して、そこらじゅうにばらまいちゃったのよ」
「おじいちゃん、また、いなくなっちゃったの?」
「ううん、今、寝てる」
「真珠が落ちちゃったんだね」
「そう、目が悪くて、よく見えないのよ」
「わたしも、探してあげる!」

 隣のおじいちゃんは時々、帰り道がわからなくなってしまうので、みあちゃんのパパも、探しに行く事があります。
 おじいちゃんは、『もの忘れ病』って病気になっちゃったんだ、ってパパが言っていました。
 みあちゃんも、大きなお店で迷子になった事があります。
 その時はほんとに怖くて、悲しかったのを覚えています。
 おじいちゃんが、あんな怖い思いを何回もしなくちゃいけない病気になって、本当にかわいそうです。

「ひい・ふう・みい・・・、これで全部だわ。みあちゃん、ありがとね」
「おばあちゃんのサンダルの下にもう一つあるよ」
「あら、変だね、ちゃんと数えたのに」
「ほら、これは石ころだよ」
おばあちゃんの手の平をのぞき込んで、みあちゃんが言いました。
「あら、そう? この頃よく見えなくて・・・・」

 その夜、またおじいちゃんが行方不明になりました。

 それから何日かして、みあちゃんがパパとお風呂に入っている時に、おばあちゃんが訪ねてきて、ママと玄関で話をしていると、パパも慌ててお風呂から出て行きました。
 ママは、家に入るように盛んにすすめますが、おばあちゃんは遠慮して、何度も何度も頭を下げて帰って行きました。
「おばあちゃん、引っ越すの?」
「おじいちゃんがね、施設に入るから、おばあちゃんは息子さんの家に行くんだよ」
「シセツって?」
「おじいちゃんのように『もの忘れ病』になった人が行くお家よ」
「おじいちゃんとおばあちゃん、離れ離れになるの?」
「そうだよ」
「さみしいけど、しかたないのよ」

 テーブルの上に、おばあちゃんがお別れのしるしに持ってきたお菓子の箱が、ぽつんと置いてありました。

 みあちゃんは、ぬれた髪のままで外に飛び出しました。
 おばあちゃんはもう迎えの車に乗るところです。
「あら、みあちゃん、かぜひくよ。お家に入んなさい」
「おばあちゃんも、おじいちゃんも、遠くに行くの? もう会えないの?」
「今までありがとね、いっぱい食べて大きくなってね。あ!そうそう、忘れるところだった!」
 おばあちゃんは、バックの中から小さな白い石ころを出してみあちゃんの手に握らせました。
 それは、おばあちゃんが真珠と間違えた石ころです。
「もっともっときれいな石ころ、いっぱい集めてね」
 おばあちゃんは、涙ぐんでいます。
 しばらく石ころを見つめて、みあちゃんは言いました。
「おばあちゃん、あのお菓子の箱、もらってもいい?」
「もちろんだよ。どうするの?」
「たから箱にする!」

 家に帰ったみあちゃんは、テーブルの上にお菓子を全部出して、箱を空にしました。
 箱は、固くしっかりしていて、みあちゃんが両手で抱えてちょうどいい大きさです。
 その箱に、おばあちゃんからもらった白い石ころを入れてみました。
 カランっときれいな音がしました。

 
 

みあちゃんの石ころ 3

みあちゃんの石ころ 3

みあちゃんの家の隣には、年をとったおじいさんとおばあさんが二人で住んでいました。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
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