勇者イケメン才斗の魔王討伐物語
第一話 旅立ちの日に
人は、どうしようもない困難に立ち向かわなければならないとき、どうするだろう。逃げ出すだろうか。たとえ最悪な結果になったとしても、立ち向かうだろうか。 これは、そんな困難に立ち向かう1人のイケメンの物語である。
季節は春うらら、満開の桜が咲いていた。そんな中、田舎村を一人の男が歩いていた。名をサイトという。イケメンである。
サイトの町では、学校などない。まだ人類が文化をもってからそれほど経っていないため、学校教育を受けられるのは都会の街に住む若者だけであった。
サイト「おーい、帰ったぜー」
サイトの母「おかえりサイト、今日は誰と遊んだべ?ハナちゃんか?それともナギちゃんかい?それとも別の女かい?」
いつものことだ。母が嫌味を言ってくるのは。
母「そういうとこだけは父さんに似ただなあ。顔がいいから女にモテやがって。まったく・・・・」
母の嫌味は続く。ここのところ俺への態度が冷たい。父に浮気でもされた思い出でもあるのか、それとも俺の将来を心配してだろうか。たしかにこの年で 赤ちゃんでも作りかねないモテっぷりだ。
サイト「俺部屋にいくわ。勉強しないと。」
もちろん勉強などしないが、こういうときのために何冊か勉強の本を買ってあるのだ。
部屋に戻ったサイトはベッドに寝転がり、ゴロゴロしていた。今日も村の女の子と遊んでエッチなこともしちゃったのだ。疲れていた
サイト「ふぁ~あ。」
これがサイトの日常である。
夕食時
サイトの父「ぷえ~一仕事した後の酒はうめえなあ。サイト、おまえもそろそろいい年だ。どうだ?そろそろ父ちゃんの仕事手伝わねえか?」
サイト「は?嫌だよ。言っとくけど、俺父ちゃんのあと継ぐつもりねえからな。畑仕事なんてまっぴらだぜ。」
サイトの父「そうはいってもよお、この村じゃあ畑仕事くらいしかやることねえべ?」
サイト「なんでこの村で働くことを決め付けんのさ、俺都会にいくよ。都会で仕事探して暮らすんだ。」
サイトの母「おやまあ、あんたろくに教育も受けてねえのに、都会で仕事なんかみつかるわけねえべよ。」
サイトの父「まあまあ母さん、少年よ大志を抱け、夢はでっけえほうがええべさ、がっははははは。」
父と母は、そういいながらも、サイトは結局は村の畑仕事を継ぐものだと決め付けていた。なぜなら教育も受けず都会に出てうまくいったものなど聞いたことがないからだ。 たいていが都会の冷たい風に当てられて、逃げて帰ってくるのだ。
サイト「ぜってえこんな村で一生終えるなんて嫌だからな・・」
サイトの決意は固かったが、それは世間を知らないことの証明でもあったのだ。
それから1ヶ月ほどの時が流れた。
村長のもとへ1通の手紙が届いた。首都バファリンからであった。
村長「え~なになに、魔王復活?魔王討伐の勇者求む。各町から強きものを最低1名出すように。・・・。」
村長「んなこといったってべ、うちの村にはそんな魔王と戦えるものなんていねえべよ。鍬もって畑耕すことしか脳のない連中ばかりだべさ。 役にたたねえ人間送ったって仕方ねえ。わりいが断るしかねえべ。」
ところがその知らせがサイトの耳に届いた。村長の娘メーリンがサイトに話したのである。
サイト「その話ほんとうか?メーリン。すげーぜ、やっとチャンスがきた。」
メーリン「えーほんとうだけどー。サイトあなた顔はいいけどそれ以外はてんでじゃないの。魔王なんかと戦ったら死ぬわよ。」
サイト「なんとかなるさ。ヤバけりゃ逃げればいいしよ、都会にいけるってことが重要なんだ。その後はなんとでもするさ。」
メーリン「えー嫌よお。サイトは私のお婿さんになるのよお。」
メーリンの制止を聞かず、サイトは村長に勇者として都会にいくことを話した。
村長「うむ、決意は固いようじゃな。とめても無駄なようじゃ。いってこいサイト。」
だが村長は内心こう思っていた。「うひゃひゃ、これでサイトを追い出せるわい。あんな顔がいいだけのボンクラにうちの娘をやれるかっての。ひゃっひゃひゃ。」と。
こうしてサイトは旅立つことになった。行く道は険しい。だがサイトは期待に胸を膨らませ首都へ向かっていた。 to be continued
第二話 ロマンスのはじまり
首都についたサイトは、もう遅いので、受付もしまってるであろうと思い、とりあえず街の宿屋を探していた。その途中、ふと酒場が見えたので、入ってみることにした。
サイト「ああ、そうだ、俺は魔王討伐の勇者に応募しにきたんだ。」
気さくに自分の話をするサイトだった。サイトはうれしかった。憧れの都会人とこうして対等に話をしているのだ。
サイト「それでよ、今夜とまる宿を探してるんだけど、どっかいいとこないかな。」
酒場の客「ああ、それならここからちょっと王宮のほうへ行ったところにちょうどいい宿屋があるよ。だいたいいつも空きはあるけど、念のため早めに手続き済ませておいたほうが いいな。」
サイト「ああ、わかった、サンキュー。」
その客の言ったとおり、宿屋はあった。サイトは手続きを済ませ、さっきの酒場に戻った。
サイト「あんたの言ったとおりだったよ。あんがとな。」
そうしてサイトの首都での一日目は過ぎていった。
次の日、サイトは王宮へ向かった。王宮には勇者募集のビラが貼ってあった。門の兵士に自分が勇者に応募しにきたことを伝える。 兵士は確認をとりにいって、しばらくして戻ってきて、サイトを城の中へ案内した。とくにテストとかはないようだった。
兵士「この部屋がおまえの部屋だ。魔王討伐に向かえば命の保障はないんだ、しばらくゆっくりとしているがいい。ああ、トレーニングルームは好きに使っていいぞ。」
兵士はそういうと部屋をでていく。サイトはとりあえず城の中を探索することにした。入ってはいけないといわれたところには入らないようにして。
謎の女性「わっ!」
サイト「!!」
とつぜん謎の大声が後ろから聞こえてきて、サイトはびっくりした反応をみせる。
謎の女性「あっはっはっは、驚いた?あなたも勇者に募集しに来た人ね、さっき兵士に案内されるのを見てたわ。あたしはマリ。あたしも魔王討伐の勇者として この城に来たの。よろしくね。」
サイト「ああ、そうなの、こちらこそよろしく。」
田舎で幼馴染の女としか話したことのないサイトは、都会の綺麗な女性と話すのはかなり緊張した。
マリ「あらら、なんだか冴えない感じね、顔は結構ハンサムなのにね。」
サイト「ああ、悪かったな、田舎から出てきたもんでこういうのは慣れてないんだ。」
マリ「あら、そうなの、にしても田舎から勇者に応募だなんて珍しいわね。ほとんどの村は断ったはずよ。だってろくに訓練も受けていない人が魔王やその部下と 戦えるはずないもの。あなたはなにか武術を?私はこれでも都市で一番の剣術道場で一番の剣の腕前なのよ。」
サイト「いや、俺はとくになんにも。ていうか都市で一番の剣術道場で一番の腕前って、君すげーんだな。」
サイトは改めて思った。自分では勇者は無理だと。だがこのまま村へ帰るのも、ほらあたしの言った通りじゃない、というメーリンの顔が浮かんで、嫌だなと思った。 そうはいくかよ、絶対なんとかしてやるぜ。と、サイトは決意を新たにしたのであった。
その後マリとは何回か顔を合わせて、なんでもない会話をした。サイトの田舎での話とか、マリの都市での剣術訓練の話とかを。
そして、ついにその日がやってきた。王が魔王討伐へ向かわせるべく、勇者達を呼び出したのである。to be cotinued
第三話 フセイン王の気まぐれ
兵士「王様のおな~り~。」
ゴクッ。俺は大陸で一番偉い人と聞いていた王様とはじめて会うということですごく緊張していた。どんな人物なのだろうかとか、俺みたいな田舎者で大丈夫なのかとか、失礼なことして つまみだされやしないだろうかとか。
フセイン王「やあ諸君。このたびは遠くからご苦労であった。面を上げい。」
勇者達「はっ。」
顔をあげるとそこには、威風堂々とした、りりしく、いかにも立派な服装をした高齢の男性が王座に座っていた。
フセイン王「諸君らをここに集めたのは他でもない、少し前に復活した魔王を倒すためじゃ。知っているとは思うが、1000年前に世界を支配していた魔王は、その時代の勇者達 によって倒された・・・と思われていた。だが、完全には倒しきれていなかったのじゃ。勇者達に滅ぼされる寸前で魔王は自らの分身を作り出した。勇者達が倒したのはその 分身だったのじゃ。本体はどこかに身を潜め、逃げおおせていたのじゃ。そして1000年のときをへて、完全復活したというわけじゃ。 諸君らは、その勇者達の子孫の血を引いており、その技をも受け継いでいると聞く。どうか、その命をかけて魔王をたおしてほしい。 残念じゃが我が城の兵はだせん。魔王軍は少数じゃが協力じゃ、半端な兵では足手まといになるか無駄死にするじゃろう。 こちらも少数精鋭で行く。1000年前もそうじゃった。魔王を倒したのは5人の勇者達じゃ。諸君らは7人、1000年前より2人多い、 ぜひとも魔王を討ち取って世界を救ってくれ。」
サイトは王の話をきいていて、ふと疑問に思った。1000年前の戦いについてはなんとなく聞いたことがあったが、勇者の子孫?その技を受け継いでいる? そんなの初耳であった。各都市や村から1人ずつ代表が選ばれるのではなかったのか。
その答えはサイトの村の村長が握っていた。村長はわざと教えなかったのである。娘のメーリンをサイトにとられたくなく、サイトを追い出す口実にちょうどいいと 考えていたからだ。
サイト「(くっ、どうする?素直に聞いてなかったと謝るか?)」
村でのほほんと過ごしていたサイトの始めてのピンチであった。こんなときどうすればいいかなど当然サイトにはわからない。
王の側近「王様、リーダーを決めてはいかがでしょう。」
サイトの苦悩をよそに話は進められていた。
フセイン王「そうじゃな、ここにいるのは勇者の血をひいたつわものばかりなはずだが、はたしてだれが一番リーダーにふさわしいのか。」
王の側近「王様、そのようなテストをしている時間はありませぬぞ。もう出発の時間でございまする。」
フセイン王「まあよいか、だれがリーダーでも、ただの建前じゃ。そうじゃ、そこの若いの、おぬしリーダーをやれ。ふぉっふぉ、なかかないい顔立ちをしておる わしの若い頃を思い出すわ。」
サイト「え?俺?えーと、は、はい!喜んで!」
王様の言葉にさからえるはずもない。
そうしてサイトは実力も経験も超のつくド素人であったが、リーダーとして魔王討伐に参加することになった。
サイト「えーと、みんなよろしく、名前は?」
剣客風の男「タムラと申す。武器は刀だ。」
一流の剣客タムラ。刀の腕は超一流だ。戦闘力5000。
剣士風の男「リュウジだ。剣を使う。よろしくう。」
明るくさわやかな剣士リュウジ。超一流の剣士。戦闘力4500。
マリ「マリよ。サイトとは何度か話したわね。改めてよろしくね。武器は剣よ。」
女剣士マリ。戦闘力4400。
そのほかに、斧戦士ジグ、槍使いザグ、剣士ルークが軽く自己紹介をした。
サイト「よおし、さあいくか。」
ちなみにサイトの戦闘力は50であった。一般人と戦士の実力差ははてしない。無駄死にするか足手まといにしかならない。だからこその少数精鋭なのだ。
そうして7人は旅立った。
ここで時は少しだけさかのぼる。
王の間から解散したあと、サイトだけが1人ある研究室に呼ばれていた。
ドクターマルコ「よくきた勇者よ。わしは長年魔王の研究をしておる。おまえに話しておかなければならないことがあるのだ。」
サイト「なんだよ、これから魔王討伐にむかおうってときに、そんな大事な話なのか。」
マルコ「うむ。そうじゃ、この話を聞かねば魔王は倒せん。」
サイト「なんだって!」
マルコ「魔王はな、不死身なのじゃ。いくら傷つけても即座に回復してしまう。首を切り落としてもじゃ。そうでなくても最強の強さをもっておるのに その上不死身なのじゃ。ちなみに魔王の戦闘力は6000。1000年前の勇者達も強力でのう、6000以上の戦闘力をもつものも何人かおったが、 その不死身さの前に何人もが倒れた。そして最終的に5人になってしまったのじゃ。」
サイト「おいおい、そんなやつどうやって倒すんだ。」
マルコ「魔王の不死身を無効化する魔法を使う魔法使いが現れたのじゃ。伝説の魔法使いと呼ばれておる。」
サイト「じゃあその魔法使いを仲間にすればいいのか?」
マルコ「ダメじゃ。魔法使い自体滅んでしまって今では存在せん。」
サイト「そんな、じゃあ勝てねえってのかよ。」
マルコ「じゃが安心せい、魔法と同じ効果をもつマジックアイテムが受け継がれておる。これがそうじゃ。じゃが使い方に少々難があってな。」
サイト「うんうん」
マルコ「魔王の背中にはクボミがある。それはその伝説の魔法使いが魔法によってつけたクボミじゃ。そのクボミにこのマジックアイテムをセットして、 このボタンを押せば、魔法が発動して魔王を完全消滅させることができるのじゃ。」
サイト「なんだってえ、そんな簡単な方法があるならなぜ当時やらなかったんだよ!」
マルコ「うむ、その魔法使いは魔王の背中にクボミをつけたあと魔王に瞬殺されてしもうたのじゃ。簡単に説明すると、こうじゃ、魔王不死身、勇者達死んでいく、 魔法使い現る、魔王の不死身打ち消す魔法使う、魔法使い魔法で魔王にクボミつける、魔法使い殺される、勇者達が魔王の不死身がきいている間に魔王を倒す。じゃ。」
サイト「なんだか魔法使い無駄死にしたみたいじゃねえか。」
マルコ「そうでもないわい。実際勇者達も満身創痍だったようだしな。どっちが勝っていたかわからん。魔法使いが命をかけて後世に魔王を倒す方法を残したのじゃ。」
サイト「なるほどな。たしかにそのおかげでこの時代にも魔王を倒す手段が残っているってわけか。」
マルコ「ただし言ったように魔王は不死身がなくとも強い、身体は鋼鉄のように硬く、そして素早く攻撃をあてられん。このマジックアイテムをクボミにセットしている 余裕などないじゃろう。アイテムを使うのは魔王を十分に消耗させて、動けなくしてからじゃ。十分に消耗させれば、魔王も回復のために動きをとめるはずじゃからな。」
サイト「へえ、戦いながら回復はできないのか。完全無欠ってわけでもないんだな。」
マルコ「ああ、じゃが今の勇者達の実力は1000年前の勇者達の実力に及ばんじゃろう。戦いの中で多少は成長するじゃろうがな。くれぐれも気をつけるようにな。」
そうしてサイトは魔王を倒す切り札のマジックアイテムを受け取った。だが、一番最初に死んでしまいそうなのがサイトだとは、マルコは夢にも思っていなかった。」
マルコ「ふう、なかなか物分りのいいやつじゃったな、さすが王様がリーダーに任命するだけのことはある。」
そうして人類の命運をかけた戦いは始まった。
勇者イケメン才斗の魔王討伐物語